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第24話 婚約破棄させていただきますわ
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これで全てが終わる。
忌々しい出来事をようやく記憶から消去できる。
この日をどれだけ待ち望んだ事だか。
ようやく奈落の底へ落とせる──これほど嬉しい事はない。
地獄の苦しみに悶えながら、絶望の波に飲み込まれればいい。レーナは悪魔の笑みを浮かべ玉座の間へ戻ってきた。
「おおー、レーナ、無事だったか。俺様は心配で仕方なかったぞ」
「わたくしは無事ですわ」
「そうか、そうか。それでクーデターはどうだったのだ?」
「何も心配ありませんわ。全て解決しましたので」
天使の笑みでレーナはレオの問いかけに答える。
その姿にホッとしたのか、レオからも笑みがこぼれた。
もう不安材料などない。この先の未来は薔薇色だと信じて疑わなかった。
「これで堂々と結婚式を挙げられるな。俺様とレーナの挙式なのだから、派手なものにしよう」
「レオ国王……いえ、レオ、何か勘違いされてませんか?」
「どうしたというんだレーナ」
態度が急変したレーナに違和感を覚える。
何かがいつもと違う──不安がレオの中で増大し、顔から徐々に笑みが消えていく。
その豹変ぶりと来たら言葉にならないほど。
頂きにいたはずが、いつの間にか転がり落ちてしまった。
「衛兵! そこの愚王を捕らえなさい。この男は本物のわたくしを区別できないほど愚かなのですわ」
「し、しかし……」
「わたくしの言う事が聞けないのかしら?」
冷酷な声だが怖さをまったく感じさせない。いや、むしろ心地よさを覚えさせるほど魅力的である。
絶世の美女からの命令に抗える者などいない。
レーナの言葉に操られ、衛兵はレオを拘束した。
「レーナ! どういうことだ!? どうして俺様を……。区別できないとは一体なんの事だ」
「お惚けになるつもりかしら? 最初のデートと庭での密会、ただ外見が似てるだけで、本物のわたくしを見分けられないなど言語道断ですわ」
「だ、だがな──」
「見苦しいですわ。レオ、アナタとは婚約破棄いたします。でも安心していいの、この国はわたくしが慰謝料として貰ってあげますから」
レーナ女王誕生の瞬間──レオが行った政策を全て無効とし、国民から絶大なる支持を得た。
地位も名誉もそしてお金も全て奪い取り、レオをゴミのように城から追い出してしまった。
「いいわ、最高の気分ですわ。このわたくしこそが選ばれし者なのですから」
玉座の間に響き渡るレーナの高笑い声。
見事に復讐を果たし、爽快な気分で玉座に君臨した。
城を追い出され全てを失ったレオはというと──。
「なぜだ、なぜ俺様がこんな目に合わなければならないんだ」
幸せの絶頂から奈落の底へ突き落とされ、レオはひとり嘆いていた。
味方は誰もいない、この世界でたったひとりだけ。
悲しもうにも涙が全く流れず、現実を受け入れられずにいた。
「レオ……国王。今は元ですわね」
「キミは──」
呆然と座り込んでいるレオに話しかけたのはひとりの女性。
その顔を見るやいなや、レオは狂ったようにその女性にしがみつく。
夢でもまぼろしでもない確かな温もり。
レオは優しく抱きしめ想いを打ち明けた。
「レーナ! あぁ、やはり俺様の勘違いだったようだな。レーナがあんな酷い事するわけないもんな」
「……そう、ですわね。わたくしが本物のレーナですわ。大丈夫、もう大丈夫ですの。レオは何も考えずわたくしだけのモノになればいいのですわ」
天は我を見捨てなかった──そこにもはや言葉はなく、ただレーナの姿をした女性に抱きついた。
「これでレオはわたくしのモノ。誰にも渡しませんからね。さっ、このような国など捨てて、わたくしと旅にでましょうか」
瞳からは光が失われるも、口元には笑みを浮かべている。
そう、レオがレーナだと思い込んでいる女性はセーナ。
名前を呼ばれなくてもいい、レオの傍にいられるのなら。
心は黒く染まり、自分だけのレオをようやく手に入れたのだ。
これで苦しみから開放される──セーナはレオと共にこの国から去り、一生幸せに暮らすと決めたのであった。
忌々しい出来事をようやく記憶から消去できる。
この日をどれだけ待ち望んだ事だか。
ようやく奈落の底へ落とせる──これほど嬉しい事はない。
地獄の苦しみに悶えながら、絶望の波に飲み込まれればいい。レーナは悪魔の笑みを浮かべ玉座の間へ戻ってきた。
「おおー、レーナ、無事だったか。俺様は心配で仕方なかったぞ」
「わたくしは無事ですわ」
「そうか、そうか。それでクーデターはどうだったのだ?」
「何も心配ありませんわ。全て解決しましたので」
天使の笑みでレーナはレオの問いかけに答える。
その姿にホッとしたのか、レオからも笑みがこぼれた。
もう不安材料などない。この先の未来は薔薇色だと信じて疑わなかった。
「これで堂々と結婚式を挙げられるな。俺様とレーナの挙式なのだから、派手なものにしよう」
「レオ国王……いえ、レオ、何か勘違いされてませんか?」
「どうしたというんだレーナ」
態度が急変したレーナに違和感を覚える。
何かがいつもと違う──不安がレオの中で増大し、顔から徐々に笑みが消えていく。
その豹変ぶりと来たら言葉にならないほど。
頂きにいたはずが、いつの間にか転がり落ちてしまった。
「衛兵! そこの愚王を捕らえなさい。この男は本物のわたくしを区別できないほど愚かなのですわ」
「し、しかし……」
「わたくしの言う事が聞けないのかしら?」
冷酷な声だが怖さをまったく感じさせない。いや、むしろ心地よさを覚えさせるほど魅力的である。
絶世の美女からの命令に抗える者などいない。
レーナの言葉に操られ、衛兵はレオを拘束した。
「レーナ! どういうことだ!? どうして俺様を……。区別できないとは一体なんの事だ」
「お惚けになるつもりかしら? 最初のデートと庭での密会、ただ外見が似てるだけで、本物のわたくしを見分けられないなど言語道断ですわ」
「だ、だがな──」
「見苦しいですわ。レオ、アナタとは婚約破棄いたします。でも安心していいの、この国はわたくしが慰謝料として貰ってあげますから」
レーナ女王誕生の瞬間──レオが行った政策を全て無効とし、国民から絶大なる支持を得た。
地位も名誉もそしてお金も全て奪い取り、レオをゴミのように城から追い出してしまった。
「いいわ、最高の気分ですわ。このわたくしこそが選ばれし者なのですから」
玉座の間に響き渡るレーナの高笑い声。
見事に復讐を果たし、爽快な気分で玉座に君臨した。
城を追い出され全てを失ったレオはというと──。
「なぜだ、なぜ俺様がこんな目に合わなければならないんだ」
幸せの絶頂から奈落の底へ突き落とされ、レオはひとり嘆いていた。
味方は誰もいない、この世界でたったひとりだけ。
悲しもうにも涙が全く流れず、現実を受け入れられずにいた。
「レオ……国王。今は元ですわね」
「キミは──」
呆然と座り込んでいるレオに話しかけたのはひとりの女性。
その顔を見るやいなや、レオは狂ったようにその女性にしがみつく。
夢でもまぼろしでもない確かな温もり。
レオは優しく抱きしめ想いを打ち明けた。
「レーナ! あぁ、やはり俺様の勘違いだったようだな。レーナがあんな酷い事するわけないもんな」
「……そう、ですわね。わたくしが本物のレーナですわ。大丈夫、もう大丈夫ですの。レオは何も考えずわたくしだけのモノになればいいのですわ」
天は我を見捨てなかった──そこにもはや言葉はなく、ただレーナの姿をした女性に抱きついた。
「これでレオはわたくしのモノ。誰にも渡しませんからね。さっ、このような国など捨てて、わたくしと旅にでましょうか」
瞳からは光が失われるも、口元には笑みを浮かべている。
そう、レオがレーナだと思い込んでいる女性はセーナ。
名前を呼ばれなくてもいい、レオの傍にいられるのなら。
心は黒く染まり、自分だけのレオをようやく手に入れたのだ。
これで苦しみから開放される──セーナはレオと共にこの国から去り、一生幸せに暮らすと決めたのであった。
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