上 下
15 / 27

第15話 手紙を出すわたくしは可愛いかしら?

しおりを挟む
 正式に国王となったレオの隣にはレーナがいる。
 まだ婚約という形だがすでに王妃扱い。
 その権力は国王であるレオを超えそうなほど。

 美貌の前に意見する者などいない。着実に下地を作り上げていった。

「やっとここまでたどり着きましたわ。道はまだまだ長いですから油断は禁物ね」

 大きな部屋にレーナひとりだけ。
 ここは婚約者専用として用意された部屋で、今は机に向かい何かを書いている最中。

 これも復讐の一部。
 書いているのは二通の手紙だ。
 一通はセーナへで、もう一通はというと──。

「ふふふ、これで完璧ですわ。この計画で復讐はさらに進みますわ」

 不敵な笑みを浮かべレーナは手紙に封をする。
 あとはこの手紙を届けて貰うだけ。メイドを呼び出すとすぐ届けるよう命令した。


 手紙の一通はグラッセ公爵家へすぐに届けられた。
 受け取ったのはセーナ、すぐにレーナからの手紙だと分かり、開封して中身を確認しようとしていた。

「お姉様から手紙だなんて。きっと復讐に関するものに違いないわね」

 双子特有の力なのだろう。レーナからの手紙は、次の手伝いについてだと感じ取る。次なる計画はどんなものなのか。期待と不安が半々で混じり合う中、セーナは尊敬する姉からの手紙に目を通した。

『セーナにお願いありますの。明日の夜、そうね20時にお城の裏庭に来て欲しいのよ。そこでレオ国王と密会を演じてもらいたいの。レオ国王にはわたくしがおびき出しますわ』

 ようやく自分が役に立てる──セーナは復讐の手伝いが出来るのを心から喜んでいた。が、それと同時に湧き上がる初めての感情がセーナを困惑させる。

 レオと会える喜び。なぜ、喜ばなければならない?
 姉を傷つけた相手は、たとえ王族だろうと許すはずがない。
 それなのに、憎しみと未知の感情がブレンドされ心を大きく揺らがす。

 このままでは目的を達成できない。セーナは心を凍らせて感情を固定した。

「もう大丈夫ですわ。わたくしのお姉様を傷つけた罪は重いのですから。万死に値する屈辱を与えなければなりませんし」

 冷徹な瞳でレーナの力になろうと固く誓いを立てる。
 この先は絶対に揺らいだりしない。
 外道にはそれ相応の罰を与える必要がある。

 勝負のドレス服に身を包み、セーナは自己暗示でレーナへと変貌した。

「これでバッチリかしら。変……じゃないですわよね」

 鏡の前で身だしなみをチェックするセーナ。
 凍らせた心が溶けないよう注意しながら、念入りに時間をかけて何度も見直す。

 平常心を保たなければ──その言葉を頭に繰り返し、セーナは約束の地へと向かっていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。 「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」 最愛の娘が冤罪で処刑された。 時を巻き戻し、復讐を誓う家族。 娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。

里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。 でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!! 超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。 しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。 ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。 いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——? 明るく楽しいラブコメ風です! 頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★ ※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。 ※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!! みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*) ※タイトル変更しました。 旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』

処理中です...