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第13話 王位継承は突然に訪れましたの
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お詫びの晩餐会から数週間。
レーナは頑なに婚約発表を拒否続けた。
理由はただひとつ、まだその時期ではないからだ。
その時が訪れるまでひたすら待つ。天に選ばれし者は自分であり、慌てる事など一切なく優雅な日々を送っていた。
「お姉様、復讐は順調なんですの?」
「えぇ、怖いくらい順調よ。果報は寝て待てとも言うべきかしら、今は待つのが最善なのですわ」
余裕の笑みでセーナを安心させるレーナ。
紅茶をひと口含みアフタヌーンティーを楽しでいた。
勝利とは自ら転がってくるもの。
いや、正確にはこの美貌が引き寄せてしまうだけ。
絶世の美女とは罪すぎる──自画自賛で心が満たされ、朗報が飛び込んで来るのを待っていた。
「あら、誰か来たみたいですわね」
チャイムの音に気がついたセーナが玄関へと向かっていく。
扉を開けた先には正装した男性が立っていた。
「こんな時間にどうかしましたの?」
「突然の訪問申し訳ありません。ですが、国王陛下が……急死しましたので、それをお知らせに参った次第にございます」
あまりにも突然すぎる訃報にセーナは固まってしまう。
健康で有名な国王が亡くなるなど、信じられないという気持ちが強かった。
頭の中はすでに白一色。
冗談であって欲しいと思うも、現実とは非常に残酷であった。
思考がようやく回復し、レーナに国王の死去を伝えに行くセーナ。
その胸中は少し複雑であった。
「セーナ、誰だったのかしら?」
「お姉様……。その、国王が亡くなられたとの報せでしたの」
「そう、これで次に進めますわね」
「やはりお姉様が何かしたのですね」
「もちろんよ、わたくしはレオ王子から全てを奪うためなら、どんな事でもいたしますわ」
国王の死は自然死ではない。
レーナが間接的に手を下したのだから。
あの日、晩餐会に呼ばれた日に毒を盛った。どうやってか疑問が残るも、答えはシンプルである。
国王にプレゼントしたクッキーに毒を混入させただけ。
しかも遅効性で証拠が残らない代物。
いつ効果が現れるかは人によって異なり、レーナはそのタイミングをずっと待っていた。
「さてと、わたくしはお城に行ってまいりますわ」
「分かりましたわ。どうかお気をつけて」
心配するセーナをよそに、レーナは全く動じることなく服を着替え城へと向かい始めた。
黒一色で統一された服でさえレーナの美しさを強調する。周囲の視線を集めるも、当の本人は全く気にしていない。
城へ着くと真っ先に向かったのはレオ王子のところ。
居場所は分からないが、メイドがすぐに案内してくれた。
「レオ王子……。あまりにも突然の事でビックリしましたわ。まさか、お義父様が亡くなられるなんて……」
「俺様も突然すぎて驚いているんだ。それに──俺様が王位を継承する事になったんだ」
涙を流しながらレオに寄り添うレーナ。
もちろん演技であり、そんな事を知らないレオが優しく包み込む。
胸に埋めたレーナの顔は悪魔の笑みを浮かべていた。
レーナは頑なに婚約発表を拒否続けた。
理由はただひとつ、まだその時期ではないからだ。
その時が訪れるまでひたすら待つ。天に選ばれし者は自分であり、慌てる事など一切なく優雅な日々を送っていた。
「お姉様、復讐は順調なんですの?」
「えぇ、怖いくらい順調よ。果報は寝て待てとも言うべきかしら、今は待つのが最善なのですわ」
余裕の笑みでセーナを安心させるレーナ。
紅茶をひと口含みアフタヌーンティーを楽しでいた。
勝利とは自ら転がってくるもの。
いや、正確にはこの美貌が引き寄せてしまうだけ。
絶世の美女とは罪すぎる──自画自賛で心が満たされ、朗報が飛び込んで来るのを待っていた。
「あら、誰か来たみたいですわね」
チャイムの音に気がついたセーナが玄関へと向かっていく。
扉を開けた先には正装した男性が立っていた。
「こんな時間にどうかしましたの?」
「突然の訪問申し訳ありません。ですが、国王陛下が……急死しましたので、それをお知らせに参った次第にございます」
あまりにも突然すぎる訃報にセーナは固まってしまう。
健康で有名な国王が亡くなるなど、信じられないという気持ちが強かった。
頭の中はすでに白一色。
冗談であって欲しいと思うも、現実とは非常に残酷であった。
思考がようやく回復し、レーナに国王の死去を伝えに行くセーナ。
その胸中は少し複雑であった。
「セーナ、誰だったのかしら?」
「お姉様……。その、国王が亡くなられたとの報せでしたの」
「そう、これで次に進めますわね」
「やはりお姉様が何かしたのですね」
「もちろんよ、わたくしはレオ王子から全てを奪うためなら、どんな事でもいたしますわ」
国王の死は自然死ではない。
レーナが間接的に手を下したのだから。
あの日、晩餐会に呼ばれた日に毒を盛った。どうやってか疑問が残るも、答えはシンプルである。
国王にプレゼントしたクッキーに毒を混入させただけ。
しかも遅効性で証拠が残らない代物。
いつ効果が現れるかは人によって異なり、レーナはそのタイミングをずっと待っていた。
「さてと、わたくしはお城に行ってまいりますわ」
「分かりましたわ。どうかお気をつけて」
心配するセーナをよそに、レーナは全く動じることなく服を着替え城へと向かい始めた。
黒一色で統一された服でさえレーナの美しさを強調する。周囲の視線を集めるも、当の本人は全く気にしていない。
城へ着くと真っ先に向かったのはレオ王子のところ。
居場所は分からないが、メイドがすぐに案内してくれた。
「レオ王子……。あまりにも突然の事でビックリしましたわ。まさか、お義父様が亡くなられるなんて……」
「俺様も突然すぎて驚いているんだ。それに──俺様が王位を継承する事になったんだ」
涙を流しながらレオに寄り添うレーナ。
もちろん演技であり、そんな事を知らないレオが優しく包み込む。
胸に埋めたレーナの顔は悪魔の笑みを浮かべていた。
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