13 / 27
第13話 王位継承は突然に訪れましたの
しおりを挟む
お詫びの晩餐会から数週間。
レーナは頑なに婚約発表を拒否続けた。
理由はただひとつ、まだその時期ではないからだ。
その時が訪れるまでひたすら待つ。天に選ばれし者は自分であり、慌てる事など一切なく優雅な日々を送っていた。
「お姉様、復讐は順調なんですの?」
「えぇ、怖いくらい順調よ。果報は寝て待てとも言うべきかしら、今は待つのが最善なのですわ」
余裕の笑みでセーナを安心させるレーナ。
紅茶をひと口含みアフタヌーンティーを楽しでいた。
勝利とは自ら転がってくるもの。
いや、正確にはこの美貌が引き寄せてしまうだけ。
絶世の美女とは罪すぎる──自画自賛で心が満たされ、朗報が飛び込んで来るのを待っていた。
「あら、誰か来たみたいですわね」
チャイムの音に気がついたセーナが玄関へと向かっていく。
扉を開けた先には正装した男性が立っていた。
「こんな時間にどうかしましたの?」
「突然の訪問申し訳ありません。ですが、国王陛下が……急死しましたので、それをお知らせに参った次第にございます」
あまりにも突然すぎる訃報にセーナは固まってしまう。
健康で有名な国王が亡くなるなど、信じられないという気持ちが強かった。
頭の中はすでに白一色。
冗談であって欲しいと思うも、現実とは非常に残酷であった。
思考がようやく回復し、レーナに国王の死去を伝えに行くセーナ。
その胸中は少し複雑であった。
「セーナ、誰だったのかしら?」
「お姉様……。その、国王が亡くなられたとの報せでしたの」
「そう、これで次に進めますわね」
「やはりお姉様が何かしたのですね」
「もちろんよ、わたくしはレオ王子から全てを奪うためなら、どんな事でもいたしますわ」
国王の死は自然死ではない。
レーナが間接的に手を下したのだから。
あの日、晩餐会に呼ばれた日に毒を盛った。どうやってか疑問が残るも、答えはシンプルである。
国王にプレゼントしたクッキーに毒を混入させただけ。
しかも遅効性で証拠が残らない代物。
いつ効果が現れるかは人によって異なり、レーナはそのタイミングをずっと待っていた。
「さてと、わたくしはお城に行ってまいりますわ」
「分かりましたわ。どうかお気をつけて」
心配するセーナをよそに、レーナは全く動じることなく服を着替え城へと向かい始めた。
黒一色で統一された服でさえレーナの美しさを強調する。周囲の視線を集めるも、当の本人は全く気にしていない。
城へ着くと真っ先に向かったのはレオ王子のところ。
居場所は分からないが、メイドがすぐに案内してくれた。
「レオ王子……。あまりにも突然の事でビックリしましたわ。まさか、お義父様が亡くなられるなんて……」
「俺様も突然すぎて驚いているんだ。それに──俺様が王位を継承する事になったんだ」
涙を流しながらレオに寄り添うレーナ。
もちろん演技であり、そんな事を知らないレオが優しく包み込む。
胸に埋めたレーナの顔は悪魔の笑みを浮かべていた。
レーナは頑なに婚約発表を拒否続けた。
理由はただひとつ、まだその時期ではないからだ。
その時が訪れるまでひたすら待つ。天に選ばれし者は自分であり、慌てる事など一切なく優雅な日々を送っていた。
「お姉様、復讐は順調なんですの?」
「えぇ、怖いくらい順調よ。果報は寝て待てとも言うべきかしら、今は待つのが最善なのですわ」
余裕の笑みでセーナを安心させるレーナ。
紅茶をひと口含みアフタヌーンティーを楽しでいた。
勝利とは自ら転がってくるもの。
いや、正確にはこの美貌が引き寄せてしまうだけ。
絶世の美女とは罪すぎる──自画自賛で心が満たされ、朗報が飛び込んで来るのを待っていた。
「あら、誰か来たみたいですわね」
チャイムの音に気がついたセーナが玄関へと向かっていく。
扉を開けた先には正装した男性が立っていた。
「こんな時間にどうかしましたの?」
「突然の訪問申し訳ありません。ですが、国王陛下が……急死しましたので、それをお知らせに参った次第にございます」
あまりにも突然すぎる訃報にセーナは固まってしまう。
健康で有名な国王が亡くなるなど、信じられないという気持ちが強かった。
頭の中はすでに白一色。
冗談であって欲しいと思うも、現実とは非常に残酷であった。
思考がようやく回復し、レーナに国王の死去を伝えに行くセーナ。
その胸中は少し複雑であった。
「セーナ、誰だったのかしら?」
「お姉様……。その、国王が亡くなられたとの報せでしたの」
「そう、これで次に進めますわね」
「やはりお姉様が何かしたのですね」
「もちろんよ、わたくしはレオ王子から全てを奪うためなら、どんな事でもいたしますわ」
国王の死は自然死ではない。
レーナが間接的に手を下したのだから。
あの日、晩餐会に呼ばれた日に毒を盛った。どうやってか疑問が残るも、答えはシンプルである。
国王にプレゼントしたクッキーに毒を混入させただけ。
しかも遅効性で証拠が残らない代物。
いつ効果が現れるかは人によって異なり、レーナはそのタイミングをずっと待っていた。
「さてと、わたくしはお城に行ってまいりますわ」
「分かりましたわ。どうかお気をつけて」
心配するセーナをよそに、レーナは全く動じることなく服を着替え城へと向かい始めた。
黒一色で統一された服でさえレーナの美しさを強調する。周囲の視線を集めるも、当の本人は全く気にしていない。
城へ着くと真っ先に向かったのはレオ王子のところ。
居場所は分からないが、メイドがすぐに案内してくれた。
「レオ王子……。あまりにも突然の事でビックリしましたわ。まさか、お義父様が亡くなられるなんて……」
「俺様も突然すぎて驚いているんだ。それに──俺様が王位を継承する事になったんだ」
涙を流しながらレオに寄り添うレーナ。
もちろん演技であり、そんな事を知らないレオが優しく包み込む。
胸に埋めたレーナの顔は悪魔の笑みを浮かべていた。
0
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい
冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」
婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。
ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。
しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。
「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」
ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。
しかし、ある日のこと見てしまう。
二人がキスをしているところを。
そのとき、私の中で何かが壊れた……。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる