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第9話 王子様、もしかして浮気でしょうか?

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 何事も最初が肝心なもの。
 強気でいかなければ失敗は目に見えている。
 レーナはデートをすっぽかされた事に文句を言おうと、お城へと出向いていった。

 レオと会うのはこれで三度目・・・
 ほんのり怒りを外に出しながらレオが来るのを待っていた。

「遅いですわよ、レオ王子。わたくしを待たせるだなんて、あの愛は偽りだと言うのかしら?」
「そ、そんなわけないぞ。俺様の愛は本物だ。この間のデートでそれを証明しただろう」

 予想より早く出たデートという言葉。
 誰も気づかないくらいの笑みが口元に浮かぶ。
 ここからが勝負の時、レーナはレオに破滅への道を歩ませようとした。

「デート……? そうでしたわ、思い出しました。わたくしずっと待っていましたのよ?」
「そんなバカな……。俺様は確かにレーナとデートをしたはずだ」

 あのデートは夢であったのか。そう思えてくるほど衝撃で、レオは残酷な現実を受け入れられなかった。

 記憶を辿るも、レーナとすごした時間が鮮明に蘇る。
 もしかしたらイタズラをしているのかも──きっとそうに違いない。あの日の出来事は間違いなくレオの中に刻まれているのだから……。

「じ、冗談だよな? きっと俺様をからかっているだけだよな?」
「冗談なわけありませんわ。レオ王子とのデート、楽しみでしたのに」
「俺様は……。違う、信じてくれ、レーナ! 俺様の心はレーナだけのモノなんだからな」

 レオが必死に弁明する姿に冷たい視線を飛ばすレーナ。
 疑いの眼差し──そんなモノではない。精神的に追い詰めるための演技なだけ。心の中では高笑いを決め満足気な表情で見下す。

 この程度でレオの罪は消えない。
 地獄の底まで苦痛を味わせながら落としてみせる。
 燃え盛る復讐の炎は激しさを増していった。

「そう。それなら、誰と楽しいデートをしたのか教えて欲しいものね」

 どう答えるのか楽しみで仕方がない。
 表情こそ一切変化していないが、内心はその逆で小さな子供のように喜んでいる。

 苦しむ姿こそ最高の美酒。
 この一瞬の沈黙こそが歓喜の瞬間でもある。
 だが今は我慢が必要、これはまだ序の口にすぎないのだから。

「言い訳するつもりはないが、レーナにそっくりな人がいたんだ。まさか別人だとは思わなくてだな……。だいたい、その相手だって悪いんだぞ。レーナって呼びかけても返事したんだからな」
「なるほど……。要約すると浮気をした、という事ですわね」
「ち、違う、俺様はレーナひと筋なんだ。他の女なんて道端の石ころと同じ価値しかない」

 慌てて浮気を即否定するレオ。
 心はレーナに魅了され、その瞳に映るのはひとりの女性だけ。
 嫌われたくない──その想いは非常に強く、レーナの誤解を解こうとする。

 どうすれば自分の気持ちを伝えられるのか。
 今まで生きてきた中で一番頭を使い、必死に答えを手繰り寄せる。
 狭い空間を走り回りようやくたどり着いた先には──。

「そ、そうだ、俺様の愛を証明するため、晩餐会に招待しようではないか。贅沢にふたりだけの晩餐会な」
「まぁ、それはステキですわ。今度こそ・・・・楽しみにしていますね」

 レーナの鋭い言葉がレオに冷や汗を流させる。
 次こそは失敗するわけにはいかない──固い決意を胸に刻みつけ、レオは最高の晩餐会を用意しようと考えていた。
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