上 下
60 / 71
第6話 約束の約束

引き出される記憶 その一

しおりを挟む
「沙織さん・・・・・・やっぱり味方は貴方だけだわ。この差出人・・・・・・約束をかなり気にしているみたいね。直哉、何か心当たりないの?」
「う~ん、思い当たるのは・・・・・・夢でもそんな事言ってたような・・・・・・」
「それどんな夢よ!名前とか言ってなかった?約束の内容は?」

 優子が直哉の襟を掴むと、思い出せと言わんばかりに首を前後に揺さぶったのだ。その激しさで、目を回しそうになる直哉を亜子と葵が助けに入った。

「落ち着きなさいよ。全く、これじゃ直哉が可哀想よ。ねぇ直哉、その夢の子・・・・・・どこに住んでるの?ちょっと手を出させないように、優し~く話をつけてくるわ」
「葵ちゃん・・・・・・顔が笑ってないよ・・・・・・」
「それが、大体の場所は分かるんだけど、他が全然思い出せないんだよ。何か大切な事を約束してたような・・・・・・そうでないような・・・・・・」

「もし、その夢が今回の差出人と関係あるのでしたら、その場所に向かわれてはどうでしょう?何か思い出せるかもしれないですわ」
「よし、そうと決まれば早速行くしかないよね。直哉、その場所ってどこなの?」
「多分・・・・・・実家の近くだと思うんだけど・・・・・・」
「よしそれじゃ、今から行くわよ~」

 部屋を真っ先に飛び出そうとする葵を、沙織が散歩中の犬の様に髪の毛を掴み止めてみせる。

「痛いわね。髪の毛が抜けたらどうしてくれるのよ」
「そしてらウィッグでもお付けになればよろしいかと。それにもうすでに夕方ですから、今から向かっても遅くなってしまいますわ。明日、朝早くからその場所へ向かわれるのはどうでしょう?」
「沙織さんの言う通りにしようか。昔よく行った場所に行けば何か思い出せるかもしれないし」

「それじゃ、明日ね。ふふふ、見てなさいよ。私の直哉を誑かす女がどうなるかをねっ」
「南雲様、明日は仕事ですわ。ですから、必然的に不参加となります」
「この一大事に何を言ってるのよ!仕事なんかよりも大切だわ」
「・・・・・・仕方ありませんわね。直哉様、明日はお任せ致しますわ。この駄々っ子を仕事に連れてかなくてはなりませんので」

 突如黒いオーラを吹き出した沙織に、産まれたての子鹿のように怯える葵。絶対的な力の前にあがらう事が出来ず、葵は沙織の監視の元で仕事へと向かったのだ。

 直哉の記憶引き出しツアーの参加者は、優子、紗英、亜子と直哉の四人となった。

 一旦直哉のアパートに集合してから実家の周辺まで移動し、歩き回りながら思い出して貰う事だけ決めて、その日は解散となったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ

みずがめ
恋愛
 俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。  そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。  渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。  桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。  俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。  ……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。  これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

恋人の水着は想像以上に刺激的だった

ヘロディア
恋愛
プールにデートに行くことになった主人公と恋人。 恋人の水着が刺激的すぎた主人公は…

処理中です...