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第四部 私の心はミシェルとともに
その3
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「僕は琴音を探しに来たんだよ」
「私を……?」
「そうだよ、琴音。だから教えて欲しいんだ、どうして急に、僕の前からいなくなったりしたんだい?」
「そ、それは──」
薄暗い橋の下、ミシェルに後ろから優しく抱擁されながら、私はあそこから逃げ出した理由を話そうか迷っていた。
本当のこと言ったら、ミシェルはきっと私を嫌うに決まってる。そんなの絶対にイヤだよ、ミシェルに嫌われたら私は……。
でも──ミシェルにウソはつきたくない。だって、それこそミシェルを裏切るのと同じになっちゃうもん。うぅ、私はいったいどうすればいいの……。
答えがまったく見つからず、ミシェルの温もりに甘えることしか出来なかった。何も喋らないで、ずっとこのままだったら幸せなのかもしれない。
ミシェルに嫌われたくない想いと、ウソをつきたくないという想いが交差する中、私の出した答えは──。
「ミシェルあのね、本当のことを言うけど、私を……嫌わないで欲しい。お願いだから、それだけは約束して」
「僕は琴音を嫌ったりなんかしないよ。それに、琴音が話したくなければ、話さなくても大丈夫だよ。琴音が落ち着くまで、いつまでも僕はずっとこうしているから」
ミシェル……私はアナタのそういう優しさが好きよ。
本当にアナタと出会えてよかった。
暗い道を彷徨っていたとき、眩い光で私を照らし明るい道へ引き戻してくれる。それが私の中でのミシェルという存在なの。
きっとそれは、運命の人とかロドピス王国の王子様とかなんてまったく関係ない。ミシェルというひとりの人間がいたからこそ、私は何度でも暗闇から這い上がれるのよ。
「ありがとう、ミシェル。でも、もう大丈夫だよ。私ね、ミシェルに話さないといけないことがあるんだ」
「僕にかい?」
「うん、ミシェルには聞いて欲しいの。私ね、親が再婚してるのよ。ミシェルと初めて出会ったのは、再婚したあとだったんだ。あのときは幸せだったのよ」
大丈夫、私の心は乱れたりしていない。
辛い過去を思い出しても、私は震えたりしていないよ。
だって、ミシェルが私を優しく包んでいてくれるから。
そうよ、ミシェルは私だけの白馬に跨った王子様なんだもん。
「でもね、その幸せは長く続かなかったの。大きく変化したのは、私が中学生になったときよ。小さな変化はその少し前からあったんだけどね。私の幸せな時間は、お父さんが生まれたときから崩れ始めたんだ」
あの日を境に、私の人生はどん底へと転落したの。
闇堕ちへの始まり──当時の私は、なんの罪もない弟を恨んでいた。憎くて憎くて仕方がなく、弟の顔を見る度に鋭い視線を向けるほどだった。
何も知らない弟は無邪気なもので、私を見る度に微笑んでくる。だけど、その可愛らしさが逆に、私の中で怒りに火を付けたんだ。
どうして私は愛されず、弟だけが愛されるの?
弟に対する憎しみだけが増していき、私は顔を見るのもイヤになってしまったのよ。
「それからだよ、家に私の居場所なくなったのはね。ううん、なくなっただけじゃないの。何かと理由をつけては、お父さんから暴力を受けるようにもなったんだよ。お母さんは助けもせず、ただ見てるだけだったし。だからね、私は三年間耐え抜いて、その地獄から頑張って抜け出したんだよ。それなのに──」
やっと地獄から抜け出して、ミシェルという白馬の王子と出会えたのに、あの人は再び私を地獄へ引きずり込もうとしてる。
心の奥より悔しさが顔を出すと、私の瞳から自然と涙がこぼれ落ち、乾いた地面を湿らせていた。
「琴音……。もう何も言わなくていいから。ここには琴音を傷つける人なんていないから」
「ミシェル、ミシェル──」
私は恥ずかしげもなく、ミシェルの胸に顔を埋めながら大声で泣いてしまった。さっきまで音を遮っていた雨は止み、かわりに私の声が周囲に響き渡る。
自分の心に巣食っている闇を吐き出してる間、ミシェルは何も言わず黙って私の頭を撫でてくれたんだ。
優しくて大きくて、そして温かい手。
私の冷えきった心と体は、ミシェルから与えられた温もりで暖かさを完全に取り戻す。この心地よい感覚が私から悲しみを奪い去り、私は時間を忘れミシェルに甘えていた。
「ありがとう、ミシェル。もう大丈夫、ちゃんと落ち着いたよ」
「そっか。……ねぇ、琴音、こんなときに言うのは気が引けるんだけど」
「どうしたの? そういうのはミシェルらしくもないから、ハッキリ言っていいよ」
「本当にかい?」
「本当だよ。それで、私に言いたいことって何かな?」
「琴音、僕と結婚してくれないか?」
「えっ……」
結婚って、ミシェルと私が……?
そうよね、ミシェルは運命の人──つまり、私と結婚するために日本へ来たんだもんね。だから、この告白は当たり前のことで──。
それに、私はミシェルのことが好き。
ううん、心から彼を愛してる。
でも、私がミシェルと結婚したら、お母さんたちは絶対についてくるに決まってるよね。
そんなの、私は絶対に認めない。
私の幸せよりもお金を選ぶ人なのよ?
それに……私から幸せな時間を奪っておきながら、お母さんが幸せになるなんて、私には耐えられないもん。
ミシェルへの返事に私は頭を抱えて悩んだ。ここでミシェルからのプロポーズを受け入れたら、お母さんだけじゃなく、私に暴力を振るい続けたお父さんまで幸せになってしまう。
だから、私は決めたんだ。
あの二人が幸せになるくらいなら──。
「ミシェル、あのね……。私はミシェルが好きよ。世界中の誰よりも愛してるの」
「それじゃ、僕と──」
「でもね、私がミシェルと結婚したら、お母さんとお父さんまで幸せになってしまうの。そんなこと、私は絶対に許したくないんだ。だって、私から普通の幸せを奪った人たちなんだよ?」
私はあの両親が幸せになるくらいなら、ミシェルとの結婚は絶対にしない。私を三年以上も虐げてきた人たちが、幸せになるなんて許せなかった。
たとえ、ミシェルに嫌われても、これだけは譲れないのよ。
本音はミシェルと幸せな結婚生活を送りたかった。
それはきっと、毎日が笑顔で楽しい日々に違いない。
もちろん、ケンカもするだろうけどね。
普通の幸せ──ミシェルが王子ってことを除けば、私はそういう生活がしたかった。普通に人として平穏な日常を過ごしたかっただけなの。
だけどね、私の運命は普通の幸せを許してないんだ。
私の存在は道に落ちてる石ころと同じ。
石ころが人並みの幸せを望んだらいけないのよ。
私はミシェルに涙を見せないように、満面の作り笑顔を彼に向ける。悲しくて今にも泣き出しそうだけど、感情を内側へ押し込め必死に我慢してた。
もちろん心の中は──土砂降りの雨が止むことなく降り続いていた。
「どうして琴音は泣いているの?」
「私は泣いてなんか──」
「たとえ涙が見えなくても、僕には泣いているようにしか見えないよ。だからもう一度きくね? 琴音、どうして泣きながら僕のプロポーズを断ったの?」
心に深く突き刺さるミシェルの言葉。
一瞬、本当に涙が出てるのかと思った。だけど、そんなものは私の瞳からは出ていない。
どうして泣いてるってわかるの?
私は感情を表に出てないのに、どうして……。
空を覆っていた雲の隙間から、ひとすじの光が私を照らす。その光景は月明かりという名のスポットライトで、私の存在をアピールしてくれてるみたいだった。
「私を……?」
「そうだよ、琴音。だから教えて欲しいんだ、どうして急に、僕の前からいなくなったりしたんだい?」
「そ、それは──」
薄暗い橋の下、ミシェルに後ろから優しく抱擁されながら、私はあそこから逃げ出した理由を話そうか迷っていた。
本当のこと言ったら、ミシェルはきっと私を嫌うに決まってる。そんなの絶対にイヤだよ、ミシェルに嫌われたら私は……。
でも──ミシェルにウソはつきたくない。だって、それこそミシェルを裏切るのと同じになっちゃうもん。うぅ、私はいったいどうすればいいの……。
答えがまったく見つからず、ミシェルの温もりに甘えることしか出来なかった。何も喋らないで、ずっとこのままだったら幸せなのかもしれない。
ミシェルに嫌われたくない想いと、ウソをつきたくないという想いが交差する中、私の出した答えは──。
「ミシェルあのね、本当のことを言うけど、私を……嫌わないで欲しい。お願いだから、それだけは約束して」
「僕は琴音を嫌ったりなんかしないよ。それに、琴音が話したくなければ、話さなくても大丈夫だよ。琴音が落ち着くまで、いつまでも僕はずっとこうしているから」
ミシェル……私はアナタのそういう優しさが好きよ。
本当にアナタと出会えてよかった。
暗い道を彷徨っていたとき、眩い光で私を照らし明るい道へ引き戻してくれる。それが私の中でのミシェルという存在なの。
きっとそれは、運命の人とかロドピス王国の王子様とかなんてまったく関係ない。ミシェルというひとりの人間がいたからこそ、私は何度でも暗闇から這い上がれるのよ。
「ありがとう、ミシェル。でも、もう大丈夫だよ。私ね、ミシェルに話さないといけないことがあるんだ」
「僕にかい?」
「うん、ミシェルには聞いて欲しいの。私ね、親が再婚してるのよ。ミシェルと初めて出会ったのは、再婚したあとだったんだ。あのときは幸せだったのよ」
大丈夫、私の心は乱れたりしていない。
辛い過去を思い出しても、私は震えたりしていないよ。
だって、ミシェルが私を優しく包んでいてくれるから。
そうよ、ミシェルは私だけの白馬に跨った王子様なんだもん。
「でもね、その幸せは長く続かなかったの。大きく変化したのは、私が中学生になったときよ。小さな変化はその少し前からあったんだけどね。私の幸せな時間は、お父さんが生まれたときから崩れ始めたんだ」
あの日を境に、私の人生はどん底へと転落したの。
闇堕ちへの始まり──当時の私は、なんの罪もない弟を恨んでいた。憎くて憎くて仕方がなく、弟の顔を見る度に鋭い視線を向けるほどだった。
何も知らない弟は無邪気なもので、私を見る度に微笑んでくる。だけど、その可愛らしさが逆に、私の中で怒りに火を付けたんだ。
どうして私は愛されず、弟だけが愛されるの?
弟に対する憎しみだけが増していき、私は顔を見るのもイヤになってしまったのよ。
「それからだよ、家に私の居場所なくなったのはね。ううん、なくなっただけじゃないの。何かと理由をつけては、お父さんから暴力を受けるようにもなったんだよ。お母さんは助けもせず、ただ見てるだけだったし。だからね、私は三年間耐え抜いて、その地獄から頑張って抜け出したんだよ。それなのに──」
やっと地獄から抜け出して、ミシェルという白馬の王子と出会えたのに、あの人は再び私を地獄へ引きずり込もうとしてる。
心の奥より悔しさが顔を出すと、私の瞳から自然と涙がこぼれ落ち、乾いた地面を湿らせていた。
「琴音……。もう何も言わなくていいから。ここには琴音を傷つける人なんていないから」
「ミシェル、ミシェル──」
私は恥ずかしげもなく、ミシェルの胸に顔を埋めながら大声で泣いてしまった。さっきまで音を遮っていた雨は止み、かわりに私の声が周囲に響き渡る。
自分の心に巣食っている闇を吐き出してる間、ミシェルは何も言わず黙って私の頭を撫でてくれたんだ。
優しくて大きくて、そして温かい手。
私の冷えきった心と体は、ミシェルから与えられた温もりで暖かさを完全に取り戻す。この心地よい感覚が私から悲しみを奪い去り、私は時間を忘れミシェルに甘えていた。
「ありがとう、ミシェル。もう大丈夫、ちゃんと落ち着いたよ」
「そっか。……ねぇ、琴音、こんなときに言うのは気が引けるんだけど」
「どうしたの? そういうのはミシェルらしくもないから、ハッキリ言っていいよ」
「本当にかい?」
「本当だよ。それで、私に言いたいことって何かな?」
「琴音、僕と結婚してくれないか?」
「えっ……」
結婚って、ミシェルと私が……?
そうよね、ミシェルは運命の人──つまり、私と結婚するために日本へ来たんだもんね。だから、この告白は当たり前のことで──。
それに、私はミシェルのことが好き。
ううん、心から彼を愛してる。
でも、私がミシェルと結婚したら、お母さんたちは絶対についてくるに決まってるよね。
そんなの、私は絶対に認めない。
私の幸せよりもお金を選ぶ人なのよ?
それに……私から幸せな時間を奪っておきながら、お母さんが幸せになるなんて、私には耐えられないもん。
ミシェルへの返事に私は頭を抱えて悩んだ。ここでミシェルからのプロポーズを受け入れたら、お母さんだけじゃなく、私に暴力を振るい続けたお父さんまで幸せになってしまう。
だから、私は決めたんだ。
あの二人が幸せになるくらいなら──。
「ミシェル、あのね……。私はミシェルが好きよ。世界中の誰よりも愛してるの」
「それじゃ、僕と──」
「でもね、私がミシェルと結婚したら、お母さんとお父さんまで幸せになってしまうの。そんなこと、私は絶対に許したくないんだ。だって、私から普通の幸せを奪った人たちなんだよ?」
私はあの両親が幸せになるくらいなら、ミシェルとの結婚は絶対にしない。私を三年以上も虐げてきた人たちが、幸せになるなんて許せなかった。
たとえ、ミシェルに嫌われても、これだけは譲れないのよ。
本音はミシェルと幸せな結婚生活を送りたかった。
それはきっと、毎日が笑顔で楽しい日々に違いない。
もちろん、ケンカもするだろうけどね。
普通の幸せ──ミシェルが王子ってことを除けば、私はそういう生活がしたかった。普通に人として平穏な日常を過ごしたかっただけなの。
だけどね、私の運命は普通の幸せを許してないんだ。
私の存在は道に落ちてる石ころと同じ。
石ころが人並みの幸せを望んだらいけないのよ。
私はミシェルに涙を見せないように、満面の作り笑顔を彼に向ける。悲しくて今にも泣き出しそうだけど、感情を内側へ押し込め必死に我慢してた。
もちろん心の中は──土砂降りの雨が止むことなく降り続いていた。
「どうして琴音は泣いているの?」
「私は泣いてなんか──」
「たとえ涙が見えなくても、僕には泣いているようにしか見えないよ。だからもう一度きくね? 琴音、どうして泣きながら僕のプロポーズを断ったの?」
心に深く突き刺さるミシェルの言葉。
一瞬、本当に涙が出てるのかと思った。だけど、そんなものは私の瞳からは出ていない。
どうして泣いてるってわかるの?
私は感情を表に出てないのに、どうして……。
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