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第23話 ドキドキが止まらないのは誰のせい
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二人乗りのウォータースライダー。
向かい合いながら乗るものかと瑞希は思っていた。
しかし、ここのウォータースライダーは前後に座るタイプ。
つまりお互いの体が密着した状態で、下まで滑り降りなければならない。
密着──どちらが前でも避けられない事実。
どちらがいいのか、瑞希は悩むも答えが簡単に出ない。
仮に前に座った場合だと、後ろからハグされてるのと変わらない。
そんなの恥ずかしくて無理に決まっている。
では後ろに座ったとなると……誠也の頭が自分の胸に埋もれるはず。
想像しただけで顔が真っ赤に染まり、頭上から湯気が立ち上ってしまった。
「瑞希、前と後ろどっちに座る?」
「ふぇっ!? え、えっとそれは……」
答えなんて出てるはずがない。
どっちを選んでも暴走まったなし。
あたふたしながら誠也に返事をしようとしていると──。
「決められないなら私が代わりましょうかー? 幼なじみの私なら前でも後ろでも構わないしー」
まるで瑞希の心を見透かしたかのように挑発する瑠香。
交代する気満々で瑞希に近寄っていく。
これこそ神様がくれたチャンスなわけで、これを逃したら二度とチャンスが訪れない気がした。
あとひと息──もうひと押しすれば誠也を譲ると、瑠香は確信していた。
「ほら、後ろで待ってる人達もいることだし、それに無理してもしょうがないと思うよ?」
これで逃げ道は完全に塞いだ。
あとは瑞希からのバトンを受け継ぐだけ。
期待に胸を膨らまし返事を待っていると──。
「譲らない……誠也は私と乗るのっ! 誠也、私が後ろでいいわ。さっ、恋人らしく堂々としましょ」
瑠香の言葉は逆効果だったようで、瑞希の闘争心に火をつける結果となる。
吹っ切れた瑞希に怖いものなどなく、羞恥心をかき消し誠也の手を握ってゴムボートへと乗り込んだ。
羞恥心をかき消したと言っても、ドキドキが止まったわけではない。
むしろ、さっきよりも大きなリズムを奏でているように思える。
だがそれでも……誠也を誰かにとられるよりはマシだと思い、勇気を振り絞ったのだ。
「ちぇっ、もう少しだったのに……」
「そんなに落ち込まないでよ瑠香。私と楽しめばいいじゃない。それに、チャンスはまだあるかもよ?」
親友の沙織に慰められ、瑠香は少しだけ心が温かくなった。
誠也を奪えるチャンスはまだあると、ポジティブ思考に切り替える。
誠也の背中が大きく見える。
思ったより筋肉質で瑞希が見とれてしまうほど。
近い、思ったよりも誠也との距離は近く、ゴムボートがスタートする頃には、瑞希の胸のすぐ手前に誠也の頭がある。
ほんの少しでも動いたら自分の胸に当たるのは確実。
緊張がピークに達する中、係員の声が聞こえゴムボートは無情にも動き出した。
「思ったよりスピードが出るよね、瑞希、大丈夫?」
「だ、大丈夫よ、これくらい……。私は全然平気なんですからっ」
怖い、怖いに決まっている。だがそれよりも、誠也の頭が自分の胸に触れそうでそれどころではない。
やはり前に座った方がよかったかもしれない。
今さら後悔しとても時すでに遅し。一度動き出したらゴールまで止まらないのだから。
「面白かったね、って、瑞希本当に大丈夫なの?」
大丈夫なわけがない。
子犬のようにプルプル震えながら、真っ赤な顔で誠也を睨んでいる。
震えているのは怖かったというのもあるが、一番の原因は誠也の頭が自分の胸を枕代わりしたこと。
その感触がいまだに残っている。
制服とかならまだしも、水着という薄いものだとまた違うもの。
肌に直接触れられているようで、その恥ずかしさと言ったら悶絶するほどであった。
「大丈夫、大丈夫だから……。ちょっと落ち着かせてくれないかしら」
「分かったよ、僕に出来ることがあったら言ってね」
今はその優しさがかえって逆効果。
心配してくれるのは嬉しいが、冷静さを取り戻すには、少し放って置いて欲しいと思っていた。
「楽しかったですねー、って、西園寺さんどこか体調でも悪いんですか?」
「そ、そんなわけないでしょ」
「んー、もしかして誠也と乗るのが実はイヤだったとか?」
「それこそ絶対にありえませんわ」
瑠香の挑発で恥ずかしさがどこかへ消え去った。
渡さない、幼なじみになんかには誠也を渡すわけがない。
込み上げてきた怒りをエネルギーに替え、立ち直りを見せた瑞希は全力で否定した。
「ふたりとも本当に仲がいいんだね」
「「どこがっ!?」」
「ほら息もピッタリだし、それよりアイスクリームでも食べに行かない?」
わざとなのか、それとも天然なのか、誠也の真意は分からないが、アイスクリームを食べたいのは事実。
ここは一時休戦とし、休憩がてらアイスクリームで体を冷やそうとしていた。
「言い出しっぺの僕が買いに行くけど、さすがに4本は持てないか」
休戦は一瞬で崩壊し、どちらが誠也と一緒に買いに行くかで火花を散らす。
今度こそはと意気込む瑠香、追随などさせる気は毛頭ない瑞希。
どう決着をつけるべきかお互いが悩んでいると、心中を察した沙織から提案が飛んできた。
「ふとりとも、ここは平和的にジャンケンで決めたら?」
「沙織! それじゃ運任せじゃないのっ。アナタだけは私の味方だと思っていたのに……」
「大丈夫、勝てる方法があるから」
親友に裏切られたと肩を落とすも、沙織がこっそり耳打ちでフォローする。
ジャンケンの必勝法──とまではいかないが、かなり高確率で勝てるはず。どうせ勝負するのなら、確率の高い方がいいに決まっている。
その必勝法を聞いた途端、瑞希の顔に笑顔が戻る。
これなら今度こそ偽りの恋人に勝てると確信した。
「そう、ね。ジャンケンなら公平だもんね。西園寺さんもそれでいい?」
「いいも何も、ここは恋人である私が──」
「自信がないのね。分かる、分かるよー。運命の赤い糸が繋がってないから不安なんだよねー。自信がないならしょうがないかぁ」
言葉巧みに瑞希の心を揺さぶり、瑠香はジャンケンへと誘導した。
普通なら、このような見え見え挑発に乗るわけないのだが、運命の赤い糸という言葉が瑞希から平常心を奪い去る。
自分が負けるはずない。
幼なじみよりも恋人の方が強いはず。
運命の赤い糸は──恋人と結ばれているのだから。
「いいわよ、ジャンケンで。どうせ私が勝つに決まってますけど」
「それじゃ決まりだね。いくよー、最初はグー、ジャンケンポンッ」
勝利の女神が微笑んだのは──。
「ごめんね、西園寺さん。今回は私の勝ちだね」
「これは何かの間違いですわ……」
勝負は1回で決まった。
最初のグーに釣られた瑞希が、無意識にチョキを出しあっさり負けたのだ。
「誠也、アイスクリーム買いに行こうねっ」
「う、うん……」
勝者の笑みを浮かべながら、ちゃっかり誠也と手を繋ぎ歩く瑠香。
自らの力で勝ち取ったものだから、嬉しさも跳ね上がる。
久しぶりに感じる誠也の温もり。
手を繋いだのはいつ以来だろう。
いや、そんなことはどうでもいい。今はこの至福のひとときを味わなければならない。
今日一番の笑顔でお店に到着すると、さっそくアイスクリームを注文した。
「おじさーん、アイスクリーム4つくださーい」
「あいよ、カップルにはサービスしちゃうからなっ」
カップル──その言葉が瑠香の頭で何度も繰り返される。
他の人からだとそう見えるのが嬉しく、天使の微笑みで誠也に否定する隙を与えなかった。
いつか、そう、いつかでいい。幼なじみから本物の恋人になれる日を夢に見ながら、瑞希と沙織が待つテーブルへと戻っていった。
向かい合いながら乗るものかと瑞希は思っていた。
しかし、ここのウォータースライダーは前後に座るタイプ。
つまりお互いの体が密着した状態で、下まで滑り降りなければならない。
密着──どちらが前でも避けられない事実。
どちらがいいのか、瑞希は悩むも答えが簡単に出ない。
仮に前に座った場合だと、後ろからハグされてるのと変わらない。
そんなの恥ずかしくて無理に決まっている。
では後ろに座ったとなると……誠也の頭が自分の胸に埋もれるはず。
想像しただけで顔が真っ赤に染まり、頭上から湯気が立ち上ってしまった。
「瑞希、前と後ろどっちに座る?」
「ふぇっ!? え、えっとそれは……」
答えなんて出てるはずがない。
どっちを選んでも暴走まったなし。
あたふたしながら誠也に返事をしようとしていると──。
「決められないなら私が代わりましょうかー? 幼なじみの私なら前でも後ろでも構わないしー」
まるで瑞希の心を見透かしたかのように挑発する瑠香。
交代する気満々で瑞希に近寄っていく。
これこそ神様がくれたチャンスなわけで、これを逃したら二度とチャンスが訪れない気がした。
あとひと息──もうひと押しすれば誠也を譲ると、瑠香は確信していた。
「ほら、後ろで待ってる人達もいることだし、それに無理してもしょうがないと思うよ?」
これで逃げ道は完全に塞いだ。
あとは瑞希からのバトンを受け継ぐだけ。
期待に胸を膨らまし返事を待っていると──。
「譲らない……誠也は私と乗るのっ! 誠也、私が後ろでいいわ。さっ、恋人らしく堂々としましょ」
瑠香の言葉は逆効果だったようで、瑞希の闘争心に火をつける結果となる。
吹っ切れた瑞希に怖いものなどなく、羞恥心をかき消し誠也の手を握ってゴムボートへと乗り込んだ。
羞恥心をかき消したと言っても、ドキドキが止まったわけではない。
むしろ、さっきよりも大きなリズムを奏でているように思える。
だがそれでも……誠也を誰かにとられるよりはマシだと思い、勇気を振り絞ったのだ。
「ちぇっ、もう少しだったのに……」
「そんなに落ち込まないでよ瑠香。私と楽しめばいいじゃない。それに、チャンスはまだあるかもよ?」
親友の沙織に慰められ、瑠香は少しだけ心が温かくなった。
誠也を奪えるチャンスはまだあると、ポジティブ思考に切り替える。
誠也の背中が大きく見える。
思ったより筋肉質で瑞希が見とれてしまうほど。
近い、思ったよりも誠也との距離は近く、ゴムボートがスタートする頃には、瑞希の胸のすぐ手前に誠也の頭がある。
ほんの少しでも動いたら自分の胸に当たるのは確実。
緊張がピークに達する中、係員の声が聞こえゴムボートは無情にも動き出した。
「思ったよりスピードが出るよね、瑞希、大丈夫?」
「だ、大丈夫よ、これくらい……。私は全然平気なんですからっ」
怖い、怖いに決まっている。だがそれよりも、誠也の頭が自分の胸に触れそうでそれどころではない。
やはり前に座った方がよかったかもしれない。
今さら後悔しとても時すでに遅し。一度動き出したらゴールまで止まらないのだから。
「面白かったね、って、瑞希本当に大丈夫なの?」
大丈夫なわけがない。
子犬のようにプルプル震えながら、真っ赤な顔で誠也を睨んでいる。
震えているのは怖かったというのもあるが、一番の原因は誠也の頭が自分の胸を枕代わりしたこと。
その感触がいまだに残っている。
制服とかならまだしも、水着という薄いものだとまた違うもの。
肌に直接触れられているようで、その恥ずかしさと言ったら悶絶するほどであった。
「大丈夫、大丈夫だから……。ちょっと落ち着かせてくれないかしら」
「分かったよ、僕に出来ることがあったら言ってね」
今はその優しさがかえって逆効果。
心配してくれるのは嬉しいが、冷静さを取り戻すには、少し放って置いて欲しいと思っていた。
「楽しかったですねー、って、西園寺さんどこか体調でも悪いんですか?」
「そ、そんなわけないでしょ」
「んー、もしかして誠也と乗るのが実はイヤだったとか?」
「それこそ絶対にありえませんわ」
瑠香の挑発で恥ずかしさがどこかへ消え去った。
渡さない、幼なじみになんかには誠也を渡すわけがない。
込み上げてきた怒りをエネルギーに替え、立ち直りを見せた瑞希は全力で否定した。
「ふたりとも本当に仲がいいんだね」
「「どこがっ!?」」
「ほら息もピッタリだし、それよりアイスクリームでも食べに行かない?」
わざとなのか、それとも天然なのか、誠也の真意は分からないが、アイスクリームを食べたいのは事実。
ここは一時休戦とし、休憩がてらアイスクリームで体を冷やそうとしていた。
「言い出しっぺの僕が買いに行くけど、さすがに4本は持てないか」
休戦は一瞬で崩壊し、どちらが誠也と一緒に買いに行くかで火花を散らす。
今度こそはと意気込む瑠香、追随などさせる気は毛頭ない瑞希。
どう決着をつけるべきかお互いが悩んでいると、心中を察した沙織から提案が飛んできた。
「ふとりとも、ここは平和的にジャンケンで決めたら?」
「沙織! それじゃ運任せじゃないのっ。アナタだけは私の味方だと思っていたのに……」
「大丈夫、勝てる方法があるから」
親友に裏切られたと肩を落とすも、沙織がこっそり耳打ちでフォローする。
ジャンケンの必勝法──とまではいかないが、かなり高確率で勝てるはず。どうせ勝負するのなら、確率の高い方がいいに決まっている。
その必勝法を聞いた途端、瑞希の顔に笑顔が戻る。
これなら今度こそ偽りの恋人に勝てると確信した。
「そう、ね。ジャンケンなら公平だもんね。西園寺さんもそれでいい?」
「いいも何も、ここは恋人である私が──」
「自信がないのね。分かる、分かるよー。運命の赤い糸が繋がってないから不安なんだよねー。自信がないならしょうがないかぁ」
言葉巧みに瑞希の心を揺さぶり、瑠香はジャンケンへと誘導した。
普通なら、このような見え見え挑発に乗るわけないのだが、運命の赤い糸という言葉が瑞希から平常心を奪い去る。
自分が負けるはずない。
幼なじみよりも恋人の方が強いはず。
運命の赤い糸は──恋人と結ばれているのだから。
「いいわよ、ジャンケンで。どうせ私が勝つに決まってますけど」
「それじゃ決まりだね。いくよー、最初はグー、ジャンケンポンッ」
勝利の女神が微笑んだのは──。
「ごめんね、西園寺さん。今回は私の勝ちだね」
「これは何かの間違いですわ……」
勝負は1回で決まった。
最初のグーに釣られた瑞希が、無意識にチョキを出しあっさり負けたのだ。
「誠也、アイスクリーム買いに行こうねっ」
「う、うん……」
勝者の笑みを浮かべながら、ちゃっかり誠也と手を繋ぎ歩く瑠香。
自らの力で勝ち取ったものだから、嬉しさも跳ね上がる。
久しぶりに感じる誠也の温もり。
手を繋いだのはいつ以来だろう。
いや、そんなことはどうでもいい。今はこの至福のひとときを味わなければならない。
今日一番の笑顔でお店に到着すると、さっそくアイスクリームを注文した。
「おじさーん、アイスクリーム4つくださーい」
「あいよ、カップルにはサービスしちゃうからなっ」
カップル──その言葉が瑠香の頭で何度も繰り返される。
他の人からだとそう見えるのが嬉しく、天使の微笑みで誠也に否定する隙を与えなかった。
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