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第1話 偽りの恋人の始まり
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「なぁ、聞いたか? あの氷姫にカレシが出来たんだって」
「マジで!? どういうヤツが口説いたんだよ」
「それが噂じゃ氷姫の方から告白したらしいぜ」
「くそー、羨ましすぎるぜ」
誰から伝わったのか、誠也と瑞希が付き合ったという噂は、一瞬で学校内に広まった。
当然、偽りの恋人というのは秘密で、登下校だけは一緒にする。
ふたりが学校に姿を見せると、女子からは黄色い歓声がか、男子からは嫉妬の怨念じみた視線が飛ばされる。
瑞希は氷姫と呼ばれるだけのことはあり、一切表情を変えることがない。だが、こういう経験が乏しい誠也はというと、周囲の視線が気になり挙動不審な態度。
止まることのない冷や汗の滝。
こんな関係がいつまで続くのか。
誠也は胃に穴が空きそうなくらいプレッシャーを感じていた。
「あ、あの、どうして西園寺さんは平気なんですか?」
「周りがどう思うと私には関係ないわ。だって私は私なんだから」
「西園寺さんは強いんですね。僕は自分に関係ないことは気にしませんけど、自分のことを言われると落ち着かなくて……」
会話の内容が聞こえない周囲からは、ラブラブなカップルに見える。
実際はラブのラの字さえない会話なのに。
「そうだ、西園寺さんに聞きたいことがあるんですけど」
「何? くだらなかったら張り倒すわよ」
威圧感がハンパない。
これが数々の男たちを沈めてきた氷姫の力。
ここで負けちゃダメだ、そう何度も自分に言い聞かせ、誠也はなけなしの勇気を振り絞り重い口を開いた。
「えっと、その……。どうせ付き合うなら、西園寺さんが好きなタイプの人とかの方がいいのかなって思ったんだけど……」
視線を合わせようとはせず、瑞希からの返事をドキドキしながら待った。
長い、この待ち時間が途方もなく長く感じてしまう。
まさか本気で張り倒されるのだろうか──恐怖に怯えながら誠也は瑞希からが話すのを静かに待った。
「理由を知りたいの? いいわよ、教えてあげる。だけど、他の人に言ったら絶対に許さないわよっ」
「うん、大丈夫ですよ。約束は必ず守りますから」
「じ、実はね……私って、男の人が大っ嫌いなの。下心丸出しなところとか、最低って感じでね。本当は近寄りたくもないのよ」
あからさまに瑞希がイヤそうな顔をする。
誠也も一応男ではあり、突然肩身が狭くなってしまった。
「そうだったんですね。でも、僕も男なんですけど……」
「そうね、本当は死ぬほどイヤなんだけど、下心丸出しで告白してくる男子に比べたらマシな方よ。これはふたりだけの秘密だからねっ」
ついさっきまで嫌悪感丸出しだったはずの瑞希。
それが一瞬だけ仮面がはずれ、天使の微笑みを見せる。
──ドキッ。
誠也の中で何かがときめいた。
三次元の女性になど興味がないはず。それなのに──なぜかその笑顔が頭に焼き付いて離れなかった。
違う、これはただの社交辞令にすぎない。
心に湧いた不思議な感情を押し込め、誠也は瑞希と一緒に校舎へと歩いていった。
お昼休み──誠也はなぜか瑞希に呼び出された。
「どうして呼び出されたのか理由が聞きたいんですけど……」
誰もいない校舎裏にある芝生の上。
恋人たちの憩いの場とはまさにこの場所のこと。
誰にも邪魔されない木の下で、瞳を潤ませた瑞希が誠也に迫っていた。
「あのね、その、別に私は気にしないんだけど。友達、そうよ友達にカレシのことを話すときに困っちゃうのよ」
「やっぱり僕とは釣り合わないってことですか?」
「違うわよ、ばかっ。デートに決まってるじゃないのっ!」
なぜ怒られないといけないのか。
いくらなんでもこれは理不尽すぎる、悪いことなどしていないのに。しかし誠也は、そっとその気持ちを心の奥にしまい込んだ。
「で、で、デート!?」
最初は理不尽さに意識を奪われ気づかなかった。
それは『デート』という誠也とは最も無縁の言葉。
時間差で動揺が湧き上がり、鼓動が激しいリズムを奏でる。
「デートごときで何をそんなに動揺してるのよっ」
「だって、デートとか僕はしたことありませんし……」
「そんなの私だって──って、それよりも今度の休みにデートにいくわよ。場所は誠也が決めて、ちゃーんと私を楽しませるのよ?」
言いかけたことが気になるも、それを聞いたらまた怒られそうで。
それよりも問題はデートを成功させる方法だ。陰キャでインドアな誠也には未知なるもので、何を参考にすればいいのかすら分からない。
デートの日までは僅か三日。とにかく今は、デートとはどういうものなのか、情報を集めるしかない。このあとの授業など一切頭に入らず、誠也はデートのことだけしか考えられなかった。
「もしもし、あの、西園寺さん、今度のデートのことで電話したんですけど」
手元にある資料はマンガやラノベしかなく、誠也はそれらを参考にしデートの計画を立てた。それが瑞希に気に入られるか分からないが、ひとまず電話で伝えようとしていた。
緊張──心拍数は大きく跳ね上がる。
夜に女子と電話するなど生まれて初めての出来事。
制服姿でない瑞希が頭の中に浮かび上がるも、邪念を払い除け電話に集中しようとする。
「いいわよ、私も暇じゃないんだから手短にお願いね」
偽りとはいえ恋人に対して冷たい態度の瑞希。
デートの計画を丸投げしておいて、罪悪感の欠片も感じられない。
が……実を言うと、瑞希も夜に男子と電話するのは初めての経験。
共学だったのは高校からで、それまではずっと女子だけしか周りにいなかった。
初めて夜電話した男子が偽りの恋人──頭では分かっていても、実際は瑞希自身も緊張と照れくさが入り交じる。しかも、忙しいなどは嘘であり、暇を持て余していたくらいだ。
それなのに、この強気な発言は単なる照れ隠しなのか、それとも男嫌いだからこその発言なのか、本人でさえ分からなかった。
「え、えっとですね、行く場所は当日のお楽しみで、駅前に10時待ち合わせでどうかと思いまして……」
「そう、分かったわよ。デートはぜーんぶ誠也に任せるからね。そのかわり、目一杯私を楽しませなさいよっ」
通話時間は僅か1分という短さ。
とても恋人同士の通話とは思えない。
とはいえ、無事に要件を伝えられた誠也はホッと胸を撫で下ろした。
「こんな感じでよかったのかな。西園寺さん怒ってなかったよね……? でもこれであとは本番に備えるだけだよ」
緊張が一気に解けた誠也はベッドにダイブする。
何が正解なのか分からないが、ひとまず大仕事を終えその日はぐっすりと夢の中へ旅立っていった。
一方、電話の相手だった瑞希はというと──。
「何ドキドキしてるのよ私。誠也は単なる虫除けじゃないの。でも……初めてのデートの相手が誠也かぁ」
初めての異性との通話、初めてのデートの約束、初めてづくしで思考回路はパンク寸前。
別にタイプでもないし、好きになったわけでもない。それなのに、こんなにも胸がときめく自分が不思議で仕方がなかった。
「うん、深く考えるのをやめよう。これもすべて言い寄ってくる男を遠ざけるためなんだからっ」
偽りだと、演技だと、何度も自分に言い聞かせ、瑞希は顔をほんのり赤く染めながら、ふかふかのベッドで横になった。
きっと朝になればいつもの自分に戻れる。
そんなことを考えながら、瑞希もまた夢の中へ落ちていった。
「マジで!? どういうヤツが口説いたんだよ」
「それが噂じゃ氷姫の方から告白したらしいぜ」
「くそー、羨ましすぎるぜ」
誰から伝わったのか、誠也と瑞希が付き合ったという噂は、一瞬で学校内に広まった。
当然、偽りの恋人というのは秘密で、登下校だけは一緒にする。
ふたりが学校に姿を見せると、女子からは黄色い歓声がか、男子からは嫉妬の怨念じみた視線が飛ばされる。
瑞希は氷姫と呼ばれるだけのことはあり、一切表情を変えることがない。だが、こういう経験が乏しい誠也はというと、周囲の視線が気になり挙動不審な態度。
止まることのない冷や汗の滝。
こんな関係がいつまで続くのか。
誠也は胃に穴が空きそうなくらいプレッシャーを感じていた。
「あ、あの、どうして西園寺さんは平気なんですか?」
「周りがどう思うと私には関係ないわ。だって私は私なんだから」
「西園寺さんは強いんですね。僕は自分に関係ないことは気にしませんけど、自分のことを言われると落ち着かなくて……」
会話の内容が聞こえない周囲からは、ラブラブなカップルに見える。
実際はラブのラの字さえない会話なのに。
「そうだ、西園寺さんに聞きたいことがあるんですけど」
「何? くだらなかったら張り倒すわよ」
威圧感がハンパない。
これが数々の男たちを沈めてきた氷姫の力。
ここで負けちゃダメだ、そう何度も自分に言い聞かせ、誠也はなけなしの勇気を振り絞り重い口を開いた。
「えっと、その……。どうせ付き合うなら、西園寺さんが好きなタイプの人とかの方がいいのかなって思ったんだけど……」
視線を合わせようとはせず、瑞希からの返事をドキドキしながら待った。
長い、この待ち時間が途方もなく長く感じてしまう。
まさか本気で張り倒されるのだろうか──恐怖に怯えながら誠也は瑞希からが話すのを静かに待った。
「理由を知りたいの? いいわよ、教えてあげる。だけど、他の人に言ったら絶対に許さないわよっ」
「うん、大丈夫ですよ。約束は必ず守りますから」
「じ、実はね……私って、男の人が大っ嫌いなの。下心丸出しなところとか、最低って感じでね。本当は近寄りたくもないのよ」
あからさまに瑞希がイヤそうな顔をする。
誠也も一応男ではあり、突然肩身が狭くなってしまった。
「そうだったんですね。でも、僕も男なんですけど……」
「そうね、本当は死ぬほどイヤなんだけど、下心丸出しで告白してくる男子に比べたらマシな方よ。これはふたりだけの秘密だからねっ」
ついさっきまで嫌悪感丸出しだったはずの瑞希。
それが一瞬だけ仮面がはずれ、天使の微笑みを見せる。
──ドキッ。
誠也の中で何かがときめいた。
三次元の女性になど興味がないはず。それなのに──なぜかその笑顔が頭に焼き付いて離れなかった。
違う、これはただの社交辞令にすぎない。
心に湧いた不思議な感情を押し込め、誠也は瑞希と一緒に校舎へと歩いていった。
お昼休み──誠也はなぜか瑞希に呼び出された。
「どうして呼び出されたのか理由が聞きたいんですけど……」
誰もいない校舎裏にある芝生の上。
恋人たちの憩いの場とはまさにこの場所のこと。
誰にも邪魔されない木の下で、瞳を潤ませた瑞希が誠也に迫っていた。
「あのね、その、別に私は気にしないんだけど。友達、そうよ友達にカレシのことを話すときに困っちゃうのよ」
「やっぱり僕とは釣り合わないってことですか?」
「違うわよ、ばかっ。デートに決まってるじゃないのっ!」
なぜ怒られないといけないのか。
いくらなんでもこれは理不尽すぎる、悪いことなどしていないのに。しかし誠也は、そっとその気持ちを心の奥にしまい込んだ。
「で、で、デート!?」
最初は理不尽さに意識を奪われ気づかなかった。
それは『デート』という誠也とは最も無縁の言葉。
時間差で動揺が湧き上がり、鼓動が激しいリズムを奏でる。
「デートごときで何をそんなに動揺してるのよっ」
「だって、デートとか僕はしたことありませんし……」
「そんなの私だって──って、それよりも今度の休みにデートにいくわよ。場所は誠也が決めて、ちゃーんと私を楽しませるのよ?」
言いかけたことが気になるも、それを聞いたらまた怒られそうで。
それよりも問題はデートを成功させる方法だ。陰キャでインドアな誠也には未知なるもので、何を参考にすればいいのかすら分からない。
デートの日までは僅か三日。とにかく今は、デートとはどういうものなのか、情報を集めるしかない。このあとの授業など一切頭に入らず、誠也はデートのことだけしか考えられなかった。
「もしもし、あの、西園寺さん、今度のデートのことで電話したんですけど」
手元にある資料はマンガやラノベしかなく、誠也はそれらを参考にしデートの計画を立てた。それが瑞希に気に入られるか分からないが、ひとまず電話で伝えようとしていた。
緊張──心拍数は大きく跳ね上がる。
夜に女子と電話するなど生まれて初めての出来事。
制服姿でない瑞希が頭の中に浮かび上がるも、邪念を払い除け電話に集中しようとする。
「いいわよ、私も暇じゃないんだから手短にお願いね」
偽りとはいえ恋人に対して冷たい態度の瑞希。
デートの計画を丸投げしておいて、罪悪感の欠片も感じられない。
が……実を言うと、瑞希も夜に男子と電話するのは初めての経験。
共学だったのは高校からで、それまではずっと女子だけしか周りにいなかった。
初めて夜電話した男子が偽りの恋人──頭では分かっていても、実際は瑞希自身も緊張と照れくさが入り交じる。しかも、忙しいなどは嘘であり、暇を持て余していたくらいだ。
それなのに、この強気な発言は単なる照れ隠しなのか、それとも男嫌いだからこその発言なのか、本人でさえ分からなかった。
「え、えっとですね、行く場所は当日のお楽しみで、駅前に10時待ち合わせでどうかと思いまして……」
「そう、分かったわよ。デートはぜーんぶ誠也に任せるからね。そのかわり、目一杯私を楽しませなさいよっ」
通話時間は僅か1分という短さ。
とても恋人同士の通話とは思えない。
とはいえ、無事に要件を伝えられた誠也はホッと胸を撫で下ろした。
「こんな感じでよかったのかな。西園寺さん怒ってなかったよね……? でもこれであとは本番に備えるだけだよ」
緊張が一気に解けた誠也はベッドにダイブする。
何が正解なのか分からないが、ひとまず大仕事を終えその日はぐっすりと夢の中へ旅立っていった。
一方、電話の相手だった瑞希はというと──。
「何ドキドキしてるのよ私。誠也は単なる虫除けじゃないの。でも……初めてのデートの相手が誠也かぁ」
初めての異性との通話、初めてのデートの約束、初めてづくしで思考回路はパンク寸前。
別にタイプでもないし、好きになったわけでもない。それなのに、こんなにも胸がときめく自分が不思議で仕方がなかった。
「うん、深く考えるのをやめよう。これもすべて言い寄ってくる男を遠ざけるためなんだからっ」
偽りだと、演技だと、何度も自分に言い聞かせ、瑞希は顔をほんのり赤く染めながら、ふかふかのベッドで横になった。
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