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第一章 高校二年生編
第3話 かのんちゃんと初デート!?
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デート。
それは憧れていた男子と女子が休日や放課後に二人きりで出かけることだ。場合によっては女子同士……あるいは男子同士でも指すことがある言葉だが、今回に限っては前者だった。
……ただ、こんな形でまさか実現するとは思ってもいなかった。
花音は日直の仕事として残っていた日誌を手早く片付けた。元々ほとんど終わりかけていたこともあり、五分と待たずにそれは終わった。
学校を出ると、花音とともに俺は目的地を伝えられないまま少し離れた駅へと向かっていた。
二人とも徒歩通学だが、駅近くには色々と店があるためその中のどこかが目的だろう。
そのどこかに向かう間、花音はストレスを吐き出していた。
「もう本当に大変なんだよ。今日何人に告白されたと思う?」
「えぇ……、昼の人も合わせて二人とか?」
「残念、三人だよ。何もない日に三人なんて初めてかも」
自慢とも取れる話だが、その話をする花音はウンザリとしている表情だった。
告白をしたこともされたこともない俺には到底わからないが、モテる人もモテる人で苦労を抱えているということだ。
「青木くんが見てた昼に一回、放課後に呼び出されてもう一回、教室で日誌を書いてたらもう一回だよ。そんなに軽そうに見えるかなぁ……」
残って課題をしていた俺よりも遅くまで教室に残っていたことに疑問を浮かべていたが、告白されて手を止めながら日誌を書いていたということなら納得といく。
「軽そうに見えるっていうか、単純にかわ……人気だから付き合いたいって思っているだけじゃない?」
可愛いと言いかけたところで気恥ずかしくなった俺は言い方を変える。
人気があるということは、それだけ好意を寄せられているということだ。
特に花音は俺に対しても普段から声をかけてくれるくらい気さくなので、恋愛したい盛りの高校生が勘違いしてもおかしくはない。
「告白されるのは素直に嬉しいし、人気があるのも嬉しいし思い通りだけど、めんどくさいことになるのは嫌」
そう文句を言う花音は、主に昼の三年生のことを言っているのだろう。
こういうことが度々あるようで、そして恐らく振られた人が流したであろう花音の良くない噂をたまに耳にすることはある。それでも『かのんちゃんはそんな人じゃない』と噂が立ち消えになるため、それは日頃の行いの賜物だ。
「じゃあさ、青木くんも私と付き合いたいとか思ったりするの?」
突然の質問に俺は「へ?」と素っ頓狂な声が出た。
最初は理解が追いつかなかったが、数秒かけて言葉を頭の中で噛み砕いた。
付き合いたいか付き合いたくないかと言えば付き合いたいとは思うが、そもそも自分から告白する気もない。好きでもないし、好きだったとしてもそんな勇気はないからだ。
もし仮に告白されたなら応じるだろうが。
ただ、答えとしては難しい。困った俺は言葉を濁した。
「そもそもかのんちゃんと付き合うとか考えたことないかな。釣り合わないし」
それは本音でもあった。
花音は人気者だが、俺は良く言えば普通で悪く言えば個性がない。手に届かない存在だと思っていたからこそ、付き合うということは考えたこともなかった。
「ふーん……」
花音は意味深な相槌を打つ。
「まあ、今までキャラ作ってた私ならまだしも、本性見て幻滅したでしょ」
自虐気味にそう言う花音だったが、俺はそうは思わなかった。
「むしろ素の方がとっつきやすいって思ったよ」
俺の言葉に、今度は花音が「へ?」と素っ頓狂な声を上げる。照れているのか耳まで赤くなって取り乱していた。
「欠点がないのが欠点っていうのかな……正直関わりづらいなぁって思ってたけど、黒いところが無さすぎて逆に警戒してたかな」
表では良い顔をしていて裏では黒いなんて人はいるだろう。それも処世術の一つだが、良い人すぎて逆に俺は敬遠していた。
むしろ多少黒い素が見れたことで、裏が悪い人ではないということを知ったため話しやすく感じた。……もちろんさらに黒い部分もあるかもしれないが。
「あぁ……、そういうことね」
落ち着きを取り戻した花音は咳払いをすると言葉を続けた。
「実は前から青木くんとは話したいと思ってたんだよね。私に興味なさそうだから勘違いされなさそうだし、むしろ本性知られたのも良い機会だったのかも」
そう微笑む彼女に、不覚にも俺は胸を高鳴らせた。
すると微笑んでいた顔が悪い意味の笑顔に変わる。
「あ、ドキってしたでしょ」
「し、してない」
「青木くんは面白いなぁ」
ケラケラと笑う彼女を腹立たしく思いながらも、こんなやり取りを悪くないと思っている自分がいた。
「じゃあ、今日は仲良くなるためのデートっていうことで、楽しもー!」
花音は「おー!」と言いながら腕を高く上げる。
テンションの高い花音に俺はついていけていなかった。
それもそのはず、まだ重要なことを知らないからだ。
「そもそも、どこに行くつもりなんだ」
もう駅前には着いていた。しかし、その中の店に入る様子もなく、ただ商店街を歩きながら話していた。
すると花音は立ち止まり、「ん」と言うと指を差した。
「カラオケ」
学生カップルのデート場所の定番でもあり、趣味趣向を曝け出す場所。
ほとんど会話のなかった花音と行くにはハードルの高い場所でもあった。
それは憧れていた男子と女子が休日や放課後に二人きりで出かけることだ。場合によっては女子同士……あるいは男子同士でも指すことがある言葉だが、今回に限っては前者だった。
……ただ、こんな形でまさか実現するとは思ってもいなかった。
花音は日直の仕事として残っていた日誌を手早く片付けた。元々ほとんど終わりかけていたこともあり、五分と待たずにそれは終わった。
学校を出ると、花音とともに俺は目的地を伝えられないまま少し離れた駅へと向かっていた。
二人とも徒歩通学だが、駅近くには色々と店があるためその中のどこかが目的だろう。
そのどこかに向かう間、花音はストレスを吐き出していた。
「もう本当に大変なんだよ。今日何人に告白されたと思う?」
「えぇ……、昼の人も合わせて二人とか?」
「残念、三人だよ。何もない日に三人なんて初めてかも」
自慢とも取れる話だが、その話をする花音はウンザリとしている表情だった。
告白をしたこともされたこともない俺には到底わからないが、モテる人もモテる人で苦労を抱えているということだ。
「青木くんが見てた昼に一回、放課後に呼び出されてもう一回、教室で日誌を書いてたらもう一回だよ。そんなに軽そうに見えるかなぁ……」
残って課題をしていた俺よりも遅くまで教室に残っていたことに疑問を浮かべていたが、告白されて手を止めながら日誌を書いていたということなら納得といく。
「軽そうに見えるっていうか、単純にかわ……人気だから付き合いたいって思っているだけじゃない?」
可愛いと言いかけたところで気恥ずかしくなった俺は言い方を変える。
人気があるということは、それだけ好意を寄せられているということだ。
特に花音は俺に対しても普段から声をかけてくれるくらい気さくなので、恋愛したい盛りの高校生が勘違いしてもおかしくはない。
「告白されるのは素直に嬉しいし、人気があるのも嬉しいし思い通りだけど、めんどくさいことになるのは嫌」
そう文句を言う花音は、主に昼の三年生のことを言っているのだろう。
こういうことが度々あるようで、そして恐らく振られた人が流したであろう花音の良くない噂をたまに耳にすることはある。それでも『かのんちゃんはそんな人じゃない』と噂が立ち消えになるため、それは日頃の行いの賜物だ。
「じゃあさ、青木くんも私と付き合いたいとか思ったりするの?」
突然の質問に俺は「へ?」と素っ頓狂な声が出た。
最初は理解が追いつかなかったが、数秒かけて言葉を頭の中で噛み砕いた。
付き合いたいか付き合いたくないかと言えば付き合いたいとは思うが、そもそも自分から告白する気もない。好きでもないし、好きだったとしてもそんな勇気はないからだ。
もし仮に告白されたなら応じるだろうが。
ただ、答えとしては難しい。困った俺は言葉を濁した。
「そもそもかのんちゃんと付き合うとか考えたことないかな。釣り合わないし」
それは本音でもあった。
花音は人気者だが、俺は良く言えば普通で悪く言えば個性がない。手に届かない存在だと思っていたからこそ、付き合うということは考えたこともなかった。
「ふーん……」
花音は意味深な相槌を打つ。
「まあ、今までキャラ作ってた私ならまだしも、本性見て幻滅したでしょ」
自虐気味にそう言う花音だったが、俺はそうは思わなかった。
「むしろ素の方がとっつきやすいって思ったよ」
俺の言葉に、今度は花音が「へ?」と素っ頓狂な声を上げる。照れているのか耳まで赤くなって取り乱していた。
「欠点がないのが欠点っていうのかな……正直関わりづらいなぁって思ってたけど、黒いところが無さすぎて逆に警戒してたかな」
表では良い顔をしていて裏では黒いなんて人はいるだろう。それも処世術の一つだが、良い人すぎて逆に俺は敬遠していた。
むしろ多少黒い素が見れたことで、裏が悪い人ではないということを知ったため話しやすく感じた。……もちろんさらに黒い部分もあるかもしれないが。
「あぁ……、そういうことね」
落ち着きを取り戻した花音は咳払いをすると言葉を続けた。
「実は前から青木くんとは話したいと思ってたんだよね。私に興味なさそうだから勘違いされなさそうだし、むしろ本性知られたのも良い機会だったのかも」
そう微笑む彼女に、不覚にも俺は胸を高鳴らせた。
すると微笑んでいた顔が悪い意味の笑顔に変わる。
「あ、ドキってしたでしょ」
「し、してない」
「青木くんは面白いなぁ」
ケラケラと笑う彼女を腹立たしく思いながらも、こんなやり取りを悪くないと思っている自分がいた。
「じゃあ、今日は仲良くなるためのデートっていうことで、楽しもー!」
花音は「おー!」と言いながら腕を高く上げる。
テンションの高い花音に俺はついていけていなかった。
それもそのはず、まだ重要なことを知らないからだ。
「そもそも、どこに行くつもりなんだ」
もう駅前には着いていた。しかし、その中の店に入る様子もなく、ただ商店街を歩きながら話していた。
すると花音は立ち止まり、「ん」と言うと指を差した。
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