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第十一話 トラウマ
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早乙女君を追いかけてきたものの、結局そのまま保健室についてしまった。
ウジウジしていた時間が長すぎたせいか、間に合わなかったらしい。
結局、力になれなかった……悔しくてうなだれていたその時、突如保健室のドアが開く。
「お前、こんな所で何してんだ?」
「早乙女君! 笠原君の具合は? 大丈夫なの?」
「あ、ああ。いつものことだ、少し休めば大丈夫だろう」
私の気迫に驚いたのか、早乙女君は目を丸くして答えた。
次の瞬間、しまったという表情になった早乙女君。それを私は見逃さなかった。
「いつもの事ってどういうこと?」
「お前には関係ねぇ」
「あんなに苦しそうなのが、いつもの事なの?」
「お前には関係ねぇ」
「もしかして、何か悪い病気なの?」
「お前には関係ねぇ」
取り付く島もない早乙女君の態度に心が折れそうになる。
しかし、もう逃げないと決めた以上、自分に出来る事なら力になりたい。その一心で私は言葉を続ける。
「迷惑かもしれないけど……笠原君には色々気をつかってもらってるし、私に何か出来るなら力になりたい」
早乙女君は真偽を確かめるかのように、私の目を数秒じっと睨んできた。目を逸らさず見つめ返すと早乙女君が軽くため息をつく。そして、ぶっきらぼうに口を開いた。
「──付いて来い」
早乙女君の後を追い、到着したのは屋上。授業中ということもあり、流石に人は居ない。
まぁ、私が屋上に呼び出されて以来、屋上は悪魔のテリトリーという暗黙の了解が広まったせいでもあるが。
「お前、三琴に何をした?」
「何もしてないよ。ただ横を通りすぎようとしたら、いきなり手首掴まれて。振り返ると笠原君、物凄く具合悪そうで」
「お前から近づいたわけじゃないのか?」
「うん、むしろ近寄りがたい雰囲気だったから避けてたよ」
「じゃあ、何で手首掴まれたんだ?」
「具合が悪かったからじゃないの?」
理由が分からない以上、質問に質問で返すのは仕方ない。
お互い真相がわからないためか、沈黙が流れる。
「そういえば、笠原君を見かける前に泣きながら走っていく女子を見かけたんだけど、何か関係あるのかな?」
「……なるほどな」
何かを察したかのように早乙女君が呟いた。
「何か分かったの?」
「だいたいな。たが、いくら気分が悪くてもあいつが自分から──」
早乙女君は、途中まで言いかけた言葉をハッとした表情で飲み込んだ。その様子から察するに、きっと何か事情があるのだろう。
何か特別な事情が──そういえば初めて笠原君に会った時、私が潰れたサンドイッチを受け取ろうと近付くと後ずさっていた。
屋上に呼び出された時、リクちゃんを見て警戒してた。
さっき笠原君を見かけた時、近寄りがたい雰囲気だったのは事実だが、あそこまで具合が悪そうには見えなかった。
むしろ、私の手首を掴んだ後急に様子がおかしくなったような?
掴まれた手首から感じたのは、強い力と徐々に増してく小刻みな震え。
それはまるで人が恐怖を感じている時、無意識にものをギュッと掴むような感じだった。
加えて早乙女君の「近づくな」という必死な叫びから導き出した答えを私は半信半疑で口に出した。
「もしかして、笠原君は……女性恐怖症?」
驚きを隠しきれない程大きく開かれた早乙女君の瞳が、どうやら肯定の証のようだ。
私からそっと視線を外した早乙女君は、フェンス越しに運動場を眺めて口を開く。
「お前、それ誰にも言うなよ。もし周りにばれるようなことがあれば──」
今までの比ではない程、恐ろしくドスの利いた声で早乙女君が言った。そして、氷のように冷たい視線が私に突き刺さる。
「絶対に言わないよ、約束する」
その本気に応えるように、私も真剣に答えると、「そうか」と短く呟いて早乙女君は再び視線を運動場へ移した。
先程とは打って変わって、その横顔は普段では想像出来ないほど穏やかだった。
もしかして、早乙女君が必要以上に周りを威嚇するのは笠原君のため?
金色の悪魔と周囲に恐れさせることで、笠原君に極力女子を近づけないようにしているのではないだろうか。
事実、早乙女君が一緒にいる時、女子は恐くて笠原君に話しかけたりしない。
そう考えると、目の前の人物は悪魔なんかじゃなく友達思いの不器用な奴に見えてきた。
「ニヤニヤしてこっち見てんじゃねぇよ、気持ち悪ぃ」
おっといかん、顔に出てしまっていたか。
「早乙女君って、本当は優しい人だったんだね」
「ハァ? お前バカか?」
「ちょっと見直したよ! 俺様主義の自己中のイタイ奴だと思っててごめん」
「ハァ? お前、喧嘩打ってんのか?」
「いや、誉めてるんだよ」
「チッ、意味不明な奴」
印象が変わったせいか、今までカチンときていた言葉もわざと虚勢を張っているように見えてくるから不思議だ。
『わざわざ用意してくれてたみたいなのに、俺に気を遣わせないようにたまたま貰ったから持ってたんだって嘘までついてね』
笠原君に聞いた莓みるくの飴のエピソードを思いだし、今ならそれが素直に信じられた。
「ところでお前、さっき『私に何か出来るなら力になりたい』って言ってたよな?」
そう言って、悪人面でニヒルな笑みを浮かべる早乙女君。
「い、言ったけど…… 」
嫌な予感しかしないのは何故だろう。
私の身体を上から下まで一通りチェックした後、まだまだだと言わんばかりに視線を逸らせてため息を吐いた。
なんか、物凄く失礼なこと考えてる気がする。
「女としての魅力には欠けるが、最初はこんなもんで十分か。お前、三琴の練習台になれ」
「はい? それどういう意味?」
「最初のステップとして、ガキっぽいお前でまず三琴を慣れさせんだよ」
早乙女君の上から目線の言動は相変わらずだが、要するに笠原君の女性恐怖症を克服させたいという事だろう。
「ガキっぽいって、アンタだけには言われたくない」
私の身長は百五十センチ。
早乙女君とは、推測だけど数センチぐらいしか変わらない。だって、ほとんど見上げる必要ないし。
「ハァ? それどういう意味だ?」
「私がガキだってんなら、早乙女君。アンタだって身長そんなに変わらないじゃない」
「テメェ、俺の逆鱗に触れるのが相当好きらしいな?」
「人にはガキっぽいって言っといて自分が言われて怒るなんて、そっちの方がよっぽどガキじゃない」
「テメェは身長だけじゃなく、体型もお子様じゃねぇか!」
「私はこれから成長するの!」
「俺様もこれから伸びるんだ!」
フンと鼻をならしてお互いそっぽを向いた。今更だけど、私はコイツと似ているのかもしれない。
「で、返事はどうなんだ?」
「もちろん、私に出来ることなら何でも協力するよ」
「その言葉、肝に銘じておけよ」
早乙女君は、ニヤリと口角を持ち上げて不敵な笑みを浮かべた。
その笑みにやや不安を感じるが、一度やると言ってしまった以上引き下がることは出来ない。
「で、具体的にはどうするの?」
「ククク、今週の日曜『R-beat』に昼一時に来い」
話は済んだと言わんばかりに、早乙女君は返事を待たずに踵を返して屋上から去った。
相変わらずの傍若無人な態度に、私はこう結論付けた。
早乙女君は99%の自己中と、1%の優しさで出来ている。
だけど『R-beat』に呼び出されたのは嬉しい誤算だった。少なからず龍さんと話す機会があればいいな、と淡い期待を抱きながら私も屋上を後にした。
ウジウジしていた時間が長すぎたせいか、間に合わなかったらしい。
結局、力になれなかった……悔しくてうなだれていたその時、突如保健室のドアが開く。
「お前、こんな所で何してんだ?」
「早乙女君! 笠原君の具合は? 大丈夫なの?」
「あ、ああ。いつものことだ、少し休めば大丈夫だろう」
私の気迫に驚いたのか、早乙女君は目を丸くして答えた。
次の瞬間、しまったという表情になった早乙女君。それを私は見逃さなかった。
「いつもの事ってどういうこと?」
「お前には関係ねぇ」
「あんなに苦しそうなのが、いつもの事なの?」
「お前には関係ねぇ」
「もしかして、何か悪い病気なの?」
「お前には関係ねぇ」
取り付く島もない早乙女君の態度に心が折れそうになる。
しかし、もう逃げないと決めた以上、自分に出来る事なら力になりたい。その一心で私は言葉を続ける。
「迷惑かもしれないけど……笠原君には色々気をつかってもらってるし、私に何か出来るなら力になりたい」
早乙女君は真偽を確かめるかのように、私の目を数秒じっと睨んできた。目を逸らさず見つめ返すと早乙女君が軽くため息をつく。そして、ぶっきらぼうに口を開いた。
「──付いて来い」
早乙女君の後を追い、到着したのは屋上。授業中ということもあり、流石に人は居ない。
まぁ、私が屋上に呼び出されて以来、屋上は悪魔のテリトリーという暗黙の了解が広まったせいでもあるが。
「お前、三琴に何をした?」
「何もしてないよ。ただ横を通りすぎようとしたら、いきなり手首掴まれて。振り返ると笠原君、物凄く具合悪そうで」
「お前から近づいたわけじゃないのか?」
「うん、むしろ近寄りがたい雰囲気だったから避けてたよ」
「じゃあ、何で手首掴まれたんだ?」
「具合が悪かったからじゃないの?」
理由が分からない以上、質問に質問で返すのは仕方ない。
お互い真相がわからないためか、沈黙が流れる。
「そういえば、笠原君を見かける前に泣きながら走っていく女子を見かけたんだけど、何か関係あるのかな?」
「……なるほどな」
何かを察したかのように早乙女君が呟いた。
「何か分かったの?」
「だいたいな。たが、いくら気分が悪くてもあいつが自分から──」
早乙女君は、途中まで言いかけた言葉をハッとした表情で飲み込んだ。その様子から察するに、きっと何か事情があるのだろう。
何か特別な事情が──そういえば初めて笠原君に会った時、私が潰れたサンドイッチを受け取ろうと近付くと後ずさっていた。
屋上に呼び出された時、リクちゃんを見て警戒してた。
さっき笠原君を見かけた時、近寄りがたい雰囲気だったのは事実だが、あそこまで具合が悪そうには見えなかった。
むしろ、私の手首を掴んだ後急に様子がおかしくなったような?
掴まれた手首から感じたのは、強い力と徐々に増してく小刻みな震え。
それはまるで人が恐怖を感じている時、無意識にものをギュッと掴むような感じだった。
加えて早乙女君の「近づくな」という必死な叫びから導き出した答えを私は半信半疑で口に出した。
「もしかして、笠原君は……女性恐怖症?」
驚きを隠しきれない程大きく開かれた早乙女君の瞳が、どうやら肯定の証のようだ。
私からそっと視線を外した早乙女君は、フェンス越しに運動場を眺めて口を開く。
「お前、それ誰にも言うなよ。もし周りにばれるようなことがあれば──」
今までの比ではない程、恐ろしくドスの利いた声で早乙女君が言った。そして、氷のように冷たい視線が私に突き刺さる。
「絶対に言わないよ、約束する」
その本気に応えるように、私も真剣に答えると、「そうか」と短く呟いて早乙女君は再び視線を運動場へ移した。
先程とは打って変わって、その横顔は普段では想像出来ないほど穏やかだった。
もしかして、早乙女君が必要以上に周りを威嚇するのは笠原君のため?
金色の悪魔と周囲に恐れさせることで、笠原君に極力女子を近づけないようにしているのではないだろうか。
事実、早乙女君が一緒にいる時、女子は恐くて笠原君に話しかけたりしない。
そう考えると、目の前の人物は悪魔なんかじゃなく友達思いの不器用な奴に見えてきた。
「ニヤニヤしてこっち見てんじゃねぇよ、気持ち悪ぃ」
おっといかん、顔に出てしまっていたか。
「早乙女君って、本当は優しい人だったんだね」
「ハァ? お前バカか?」
「ちょっと見直したよ! 俺様主義の自己中のイタイ奴だと思っててごめん」
「ハァ? お前、喧嘩打ってんのか?」
「いや、誉めてるんだよ」
「チッ、意味不明な奴」
印象が変わったせいか、今までカチンときていた言葉もわざと虚勢を張っているように見えてくるから不思議だ。
『わざわざ用意してくれてたみたいなのに、俺に気を遣わせないようにたまたま貰ったから持ってたんだって嘘までついてね』
笠原君に聞いた莓みるくの飴のエピソードを思いだし、今ならそれが素直に信じられた。
「ところでお前、さっき『私に何か出来るなら力になりたい』って言ってたよな?」
そう言って、悪人面でニヒルな笑みを浮かべる早乙女君。
「い、言ったけど…… 」
嫌な予感しかしないのは何故だろう。
私の身体を上から下まで一通りチェックした後、まだまだだと言わんばかりに視線を逸らせてため息を吐いた。
なんか、物凄く失礼なこと考えてる気がする。
「女としての魅力には欠けるが、最初はこんなもんで十分か。お前、三琴の練習台になれ」
「はい? それどういう意味?」
「最初のステップとして、ガキっぽいお前でまず三琴を慣れさせんだよ」
早乙女君の上から目線の言動は相変わらずだが、要するに笠原君の女性恐怖症を克服させたいという事だろう。
「ガキっぽいって、アンタだけには言われたくない」
私の身長は百五十センチ。
早乙女君とは、推測だけど数センチぐらいしか変わらない。だって、ほとんど見上げる必要ないし。
「ハァ? それどういう意味だ?」
「私がガキだってんなら、早乙女君。アンタだって身長そんなに変わらないじゃない」
「テメェ、俺の逆鱗に触れるのが相当好きらしいな?」
「人にはガキっぽいって言っといて自分が言われて怒るなんて、そっちの方がよっぽどガキじゃない」
「テメェは身長だけじゃなく、体型もお子様じゃねぇか!」
「私はこれから成長するの!」
「俺様もこれから伸びるんだ!」
フンと鼻をならしてお互いそっぽを向いた。今更だけど、私はコイツと似ているのかもしれない。
「で、返事はどうなんだ?」
「もちろん、私に出来ることなら何でも協力するよ」
「その言葉、肝に銘じておけよ」
早乙女君は、ニヤリと口角を持ち上げて不敵な笑みを浮かべた。
その笑みにやや不安を感じるが、一度やると言ってしまった以上引き下がることは出来ない。
「で、具体的にはどうするの?」
「ククク、今週の日曜『R-beat』に昼一時に来い」
話は済んだと言わんばかりに、早乙女君は返事を待たずに踵を返して屋上から去った。
相変わらずの傍若無人な態度に、私はこう結論付けた。
早乙女君は99%の自己中と、1%の優しさで出来ている。
だけど『R-beat』に呼び出されたのは嬉しい誤算だった。少なからず龍さんと話す機会があればいいな、と淡い期待を抱きながら私も屋上を後にした。
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