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第34話 見た目で差別するんじゃねぇよ!
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「──というわけでして、エレイン様。放課後、少しお暇を頂いてもよろしいでしょうか?」
俺の話を聞いて、エレインは一言、「なるほどねぇ……」と呟いたまま黙りこんだ。何かを考えているようで、俺はじっとその答えが返ってくるのを待った。
「シリウスがティアナを呼び出すなんて、大胆な真似してくれてるねぇ……ほーんと、困ったものだ。ルーカス、僕も一緒に行くよ」
「……え?」
予想外の言葉に、思わず驚きの声が漏れてしまった。
「最近、シリウスの件でちょっと良くない噂聞くんだよねぇ。杞憂ならいいけど、もし何か裏があるなら見過ごせない。それに、君一人付き添った所で、早々に門前払いされるのが目に見えてるし」
「あ、ありがとうございます!」
心強い助っ人を獲得し喜んでいる俺に、エレインは焦った様子で訂正を入れてくる。
「勘違いしないで。ティアナは僕の大事な友達だから協力するだけだよ。決して門前払いされた君がやけ起こして、厄介事持ってくるのが面倒くさいからとかじゃないからね」
「エレイン様、後半は心の中だけにしまっておいて頂けるとなお良かったのですが」
いつから俺は、トラブルメーカーになったんだ? ああ、そうか、レオンハルト達の件か。自覚があるだけに、文句は言えない。
「……あれ、漏れてた?」
「はい、しっかりと」
「まぁそれくらい、最悪の事態を想定しといてって事さ」
シリウスって、そんなヤバい噂があるのか?
くそー俺の所には全然情報来ねぇ。だが、わざわざエレインが自ら出動するくらいだ。嫌な予感しかしないな。
「ルーカス、僕の本当の正体を知ってるのは、学園内ではレオンとハイネ、そして今はプラスして、サンドリアとティアナ、そして君だけだ。シリウスには話していない」
「どうして、シリウス様にはお話しされてないのですか?」
「まぁ、レオンとハイネは昔からの馴染みだし親戚だし、関係はそれなりに良好さ。ただシリウスだけは……血族じゃないっていうのもあるけど何よりも、あの目が嫌い」
「目、ですか」
「男の君には分からないだろうけど、あの眼鏡の下で女性を値踏みするかのような視線が嫌だ」
「それって……」
「馬鹿な真似をするような男ではないと思っていたつもりだけど、最近は少々火遊びが過ぎるみたいでね。放課後、女の子を頻繁に美術室へ呼んでるらしいんだ」
なるほど、女関係に緩い奴なのか。見た目は一番真面目そうな癖に、やることはやってんだな。
◇
放課後、待ち合わせていた人気のない裏庭に向かうと、そこにはティアナとサンドリア様の姿もあった。どうやら元気のないティアナの様子が心配で、話を聞くうちに「私も行きますわ!」という事になったらしい。
「やぁ、ティアナ。話はルーカスに聞いたよ。微力ながら僕も手伝わせてもらうよ」
「すみません、エレイン様。私のせいでご迷惑をおかけしてしまって……」
「ティアナには僕のドレスを作ってもらってるからね。嫌なら無理してシリウスの手伝いなんてしなくていいんだよ。僕が断っておいてあげるから」
「それがいいですわ! 手芸部としての活動もありますのに。自分の作品作りのためだけに忙しいティアナを誘うなんて、シリウス様も困ったものですわ」
「エレイン様、サンドリア様、そのお気持ちだけで胸がいっぱいです。本当にありがとうございます」
エミリオに男装したエレインがついているとはいえ、女好きらしいシリウスの所に彼女達を連れていくのは自分から罠にはまろうとしてるみたいだな。男として、ここは俺がしっかりしないといけないな。
「なにボサッとしてるの。ルーカス、置いてくよ」
気がつくと、俺のはるか前方を歩いている女三人衆……
「ちょっと、待ってくださいよ!」
たくましすぎて、なんか泣けてくる。
◇
「失礼するよ」
遠慮なくエレインが美術室のドアを開けると、そこにはシリウスと数名の美術部員が居た。長い紫色の髪を後ろで一つに束ねた眼鏡男、もといシリウスがこちらに近づいてくる。
「エミリオ様、こちらにおいでになるなんて珍しいですね。どうされました?」
学年よりも爵位の方が優先されるんだな、この学園。シリウスは家の爵位が上のエミリオには強くは出れなさそうな印象を受ける。
「ティアナに手伝いを頼んだらしいね。忙しいなら僕達も手伝うよ」
俺達の方を一瞥したシリウスは、嬉しそうな声をあげた。
「こんなに多人数で来ていただけるなんて、助かります。では……」
シリウスの指示に従って、手伝い始めたのはいいんだが──何故俺だけ仕事が違う?!
エミリオとサンドリア様とティアナはモデルとしての仕事を頼まれ、俺だけはバカみてぇに散らかったシリウスのアトリエの片付けなんて。
見た目か? 見た目の問題か?!
くそー、キラキラした綺麗な顔立ちのお貴族様達に囲まれると薄れる顔だが、スノーリーフ村では俺だってそこそこイケメンの部類だったんだぞ! たとえそれが井の中の蛙だとしても……自分で言っててなんかむなしくなってきた。さっさと仕事、始めるか。
俺の話を聞いて、エレインは一言、「なるほどねぇ……」と呟いたまま黙りこんだ。何かを考えているようで、俺はじっとその答えが返ってくるのを待った。
「シリウスがティアナを呼び出すなんて、大胆な真似してくれてるねぇ……ほーんと、困ったものだ。ルーカス、僕も一緒に行くよ」
「……え?」
予想外の言葉に、思わず驚きの声が漏れてしまった。
「最近、シリウスの件でちょっと良くない噂聞くんだよねぇ。杞憂ならいいけど、もし何か裏があるなら見過ごせない。それに、君一人付き添った所で、早々に門前払いされるのが目に見えてるし」
「あ、ありがとうございます!」
心強い助っ人を獲得し喜んでいる俺に、エレインは焦った様子で訂正を入れてくる。
「勘違いしないで。ティアナは僕の大事な友達だから協力するだけだよ。決して門前払いされた君がやけ起こして、厄介事持ってくるのが面倒くさいからとかじゃないからね」
「エレイン様、後半は心の中だけにしまっておいて頂けるとなお良かったのですが」
いつから俺は、トラブルメーカーになったんだ? ああ、そうか、レオンハルト達の件か。自覚があるだけに、文句は言えない。
「……あれ、漏れてた?」
「はい、しっかりと」
「まぁそれくらい、最悪の事態を想定しといてって事さ」
シリウスって、そんなヤバい噂があるのか?
くそー俺の所には全然情報来ねぇ。だが、わざわざエレインが自ら出動するくらいだ。嫌な予感しかしないな。
「ルーカス、僕の本当の正体を知ってるのは、学園内ではレオンとハイネ、そして今はプラスして、サンドリアとティアナ、そして君だけだ。シリウスには話していない」
「どうして、シリウス様にはお話しされてないのですか?」
「まぁ、レオンとハイネは昔からの馴染みだし親戚だし、関係はそれなりに良好さ。ただシリウスだけは……血族じゃないっていうのもあるけど何よりも、あの目が嫌い」
「目、ですか」
「男の君には分からないだろうけど、あの眼鏡の下で女性を値踏みするかのような視線が嫌だ」
「それって……」
「馬鹿な真似をするような男ではないと思っていたつもりだけど、最近は少々火遊びが過ぎるみたいでね。放課後、女の子を頻繁に美術室へ呼んでるらしいんだ」
なるほど、女関係に緩い奴なのか。見た目は一番真面目そうな癖に、やることはやってんだな。
◇
放課後、待ち合わせていた人気のない裏庭に向かうと、そこにはティアナとサンドリア様の姿もあった。どうやら元気のないティアナの様子が心配で、話を聞くうちに「私も行きますわ!」という事になったらしい。
「やぁ、ティアナ。話はルーカスに聞いたよ。微力ながら僕も手伝わせてもらうよ」
「すみません、エレイン様。私のせいでご迷惑をおかけしてしまって……」
「ティアナには僕のドレスを作ってもらってるからね。嫌なら無理してシリウスの手伝いなんてしなくていいんだよ。僕が断っておいてあげるから」
「それがいいですわ! 手芸部としての活動もありますのに。自分の作品作りのためだけに忙しいティアナを誘うなんて、シリウス様も困ったものですわ」
「エレイン様、サンドリア様、そのお気持ちだけで胸がいっぱいです。本当にありがとうございます」
エミリオに男装したエレインがついているとはいえ、女好きらしいシリウスの所に彼女達を連れていくのは自分から罠にはまろうとしてるみたいだな。男として、ここは俺がしっかりしないといけないな。
「なにボサッとしてるの。ルーカス、置いてくよ」
気がつくと、俺のはるか前方を歩いている女三人衆……
「ちょっと、待ってくださいよ!」
たくましすぎて、なんか泣けてくる。
◇
「失礼するよ」
遠慮なくエレインが美術室のドアを開けると、そこにはシリウスと数名の美術部員が居た。長い紫色の髪を後ろで一つに束ねた眼鏡男、もといシリウスがこちらに近づいてくる。
「エミリオ様、こちらにおいでになるなんて珍しいですね。どうされました?」
学年よりも爵位の方が優先されるんだな、この学園。シリウスは家の爵位が上のエミリオには強くは出れなさそうな印象を受ける。
「ティアナに手伝いを頼んだらしいね。忙しいなら僕達も手伝うよ」
俺達の方を一瞥したシリウスは、嬉しそうな声をあげた。
「こんなに多人数で来ていただけるなんて、助かります。では……」
シリウスの指示に従って、手伝い始めたのはいいんだが──何故俺だけ仕事が違う?!
エミリオとサンドリア様とティアナはモデルとしての仕事を頼まれ、俺だけはバカみてぇに散らかったシリウスのアトリエの片付けなんて。
見た目か? 見た目の問題か?!
くそー、キラキラした綺麗な顔立ちのお貴族様達に囲まれると薄れる顔だが、スノーリーフ村では俺だってそこそこイケメンの部類だったんだぞ! たとえそれが井の中の蛙だとしても……自分で言っててなんかむなしくなってきた。さっさと仕事、始めるか。
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