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第五章 蒼と紅の力を合わせて頑張ろう!
46、建国祭は羞恥プレイの連続でした
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「姫様、いよいよ明日は建国祭ですね! 若様からドレスが二着届いておりますよ」
「二着も?」
「パーティードレスとナイトドレスです。見てください、この美しい光沢に洗練されたデザイン! どちらも素敵です!」
「確かに素敵なドレスだね」
パーティードレスは、建国祭当日にフォルネウス様の衣装と対になるように作りたいと仰られていたから贈られてくるのは知っていた。でも、何故ナイトドレスまで?
柔らかそうな素材の純白のナイトドレス。V字型の胸元には大きなフリルがついて、ウエストの所を大きなリボンで結んである。そのリボンを解けば、大きく前が開くから脱ぎやすくて着替えが楽そう!
「寝る時に着るには勿体ないくらい可愛いデザインのナイトドレスだね。でもどうしてフォルネウス様がこれを下さるの?」
「建国祭にはとあるジンクスがあるのです」
「ジンクス?」
「建国祭の日に愛する人と一日共に過ごすと、末長く共に幸せに居られるというジンクスです。ですのでこの日だけは、合法的に未婚の男女でも一昼夜を共にする事が許された日なのです!」
「えーっと、それってつまり……フォルネウス様がわざわざこのナイトドレスを贈って下さったという事は……まさか!?」
「勿論姫様と一日共に過ごしたいたいう、若様の意思表示ですね」
「ね、ねぇ、メルム……このナイトドレスいつも着てる物より薄くない? 若干透けているような気も……本当にこれ一枚で寝るの?!」
さっきまで可愛いと思っていたナイトドレスが、心許ない布にしか見えなくなっちゃったよ!
「ご安心下さい、姫様。共に眠るだけですよ。若様と言えど、婚前に手を出すのはご法度ですので」
「そ、そうなんだ……それでも、これを着て一緒に寝るの?!」
「まぁ、必ず一緒に寝なければならないというわけでもございませんが、断ると若様は一晩一人で膝を抱えていじけておいででしょうね」
どうしよう、そんなフォルネウス様の姿を簡単に想像できちゃう所に良心が痛む。
「十ヶ月後には結婚式も控えてますし、初夜の予行練習だと思って気楽に望まれて下さい」
余計に気楽じゃなくなったよ、メルム!
でも結婚したら一緒に眠るわけだし、今のうちに慣れておくと緊張せずに済むかな?
◇
建国祭は、中央広場で行われる。そう、奇跡の聖女像がある、あの公園だ。
「アリシア、よく似合っている。綺麗だ」
「ありがとうございます。フォルネウス様も格好いいです」
「ふふふ、こうしてお二人で並ばれていると本当にお似合いですね! ベストカップルコンテストで、是非とも優勝をもぎ取って来てくださいね! 応援してます!」
メルムの口から、よく分からない単語が飛び出してきた。
「ベストカップルコンテストって、何?」
「結婚を控えたカップルだけに参加権のある、建国祭の伝統イベントですよ!」
「まさか、それに私達も出るんですか?!」
「すまない、アリシア。婚約したら皇族は必ず出なければならないのだ」
リフィエル様が言っていた、「今年は盛り上がるでしょうね」っていう本当の意味が、ようやく分かった。
祭事である建国祭は鳳凰院主体で行われる。特に当日はやる事がないって聞いていたから、何でわざわざフォルネウス様が対になるドレスを仕立てられるんだろうって、少し疑問に思ってた。全ては、そのコンテストのためだったのだろう。
「俺と一緒に出るのは、嫌か?」
そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないで下さい、フォルネウス様!
「恥ずかしいけど、嫌じゃないですよ。一緒に優勝目指して頑張りましょう!」
そんなこんなで、始まったベストカップルコンテスト。ポータブルコールを没収され、早くも最初の審査で躓きそうになっていた。
「ベストカップルコンテスト! 一次審査はクイズです! お互いに同じ質問をしますので同時に答えて頂きます。十問中七問以上正解出来たカップルのみが次の審査に進めますよ!」
三問までしか間違いは許されない。ハードル高すぎないだろうか。
「第一問、ファーストキスの場所は? さぁ、このレコードキーパーに答えを強く念じて下さい」
な、なんて事を聞いてくるの! こ、これは……大丈夫、フォルネウス様ならきっとこう答えてくれるはずだ。
「では、お二人の回答を聞いてみましょう! 同時に起動をお願いします」
「星空の下」
「星空の下」
「お見事! ロマンティックな星空の下で、二人は何を囁きあって初めてのキスを交わしたのでしょうね!」
司会の方が、無駄に煽ってくるせいで恥ずかしい! これがまだ、後九問も続くの?!
メンタルをごりごりと削られながら、何とか一次審査を突破した。途中一問だけ間違った。
だって、最後の質問がとても意地悪だった。
絶体絶命の状況でもし一人しか助からないとしたら、自分と恋人どちらを助けますか? という質問が出て、私達は互いに相手の名前を答えた。勿論答えが合ってないから不正解。
でも中には正解したカップルも居て、その回答に私は感銘を受けた。「最後まで二人で助かる道を探す」って、二人とも同じ気持ちで最後まで諦めないその姿が、とても格好いいと思ったから。カップルコンテスト、すごく奥が深い!
「フォルネウス様。もし危険が迫った時は、私も二人で助かる道を探したいです!」
「そうだな。次からはそうしよう。アリシア、君は本当に可愛いな」
そう言いながら、フォルネウス様はとても優しい顔をして私の頭を撫でてくれた。まるで、愛玩動物を愛でるかのように。
ご主人様にえらいえらいと誉めてもらった犬にでもなった気分だったけど、たまには悪くないかもしれない。
「二着も?」
「パーティードレスとナイトドレスです。見てください、この美しい光沢に洗練されたデザイン! どちらも素敵です!」
「確かに素敵なドレスだね」
パーティードレスは、建国祭当日にフォルネウス様の衣装と対になるように作りたいと仰られていたから贈られてくるのは知っていた。でも、何故ナイトドレスまで?
柔らかそうな素材の純白のナイトドレス。V字型の胸元には大きなフリルがついて、ウエストの所を大きなリボンで結んである。そのリボンを解けば、大きく前が開くから脱ぎやすくて着替えが楽そう!
「寝る時に着るには勿体ないくらい可愛いデザインのナイトドレスだね。でもどうしてフォルネウス様がこれを下さるの?」
「建国祭にはとあるジンクスがあるのです」
「ジンクス?」
「建国祭の日に愛する人と一日共に過ごすと、末長く共に幸せに居られるというジンクスです。ですのでこの日だけは、合法的に未婚の男女でも一昼夜を共にする事が許された日なのです!」
「えーっと、それってつまり……フォルネウス様がわざわざこのナイトドレスを贈って下さったという事は……まさか!?」
「勿論姫様と一日共に過ごしたいたいう、若様の意思表示ですね」
「ね、ねぇ、メルム……このナイトドレスいつも着てる物より薄くない? 若干透けているような気も……本当にこれ一枚で寝るの?!」
さっきまで可愛いと思っていたナイトドレスが、心許ない布にしか見えなくなっちゃったよ!
「ご安心下さい、姫様。共に眠るだけですよ。若様と言えど、婚前に手を出すのはご法度ですので」
「そ、そうなんだ……それでも、これを着て一緒に寝るの?!」
「まぁ、必ず一緒に寝なければならないというわけでもございませんが、断ると若様は一晩一人で膝を抱えていじけておいででしょうね」
どうしよう、そんなフォルネウス様の姿を簡単に想像できちゃう所に良心が痛む。
「十ヶ月後には結婚式も控えてますし、初夜の予行練習だと思って気楽に望まれて下さい」
余計に気楽じゃなくなったよ、メルム!
でも結婚したら一緒に眠るわけだし、今のうちに慣れておくと緊張せずに済むかな?
◇
建国祭は、中央広場で行われる。そう、奇跡の聖女像がある、あの公園だ。
「アリシア、よく似合っている。綺麗だ」
「ありがとうございます。フォルネウス様も格好いいです」
「ふふふ、こうしてお二人で並ばれていると本当にお似合いですね! ベストカップルコンテストで、是非とも優勝をもぎ取って来てくださいね! 応援してます!」
メルムの口から、よく分からない単語が飛び出してきた。
「ベストカップルコンテストって、何?」
「結婚を控えたカップルだけに参加権のある、建国祭の伝統イベントですよ!」
「まさか、それに私達も出るんですか?!」
「すまない、アリシア。婚約したら皇族は必ず出なければならないのだ」
リフィエル様が言っていた、「今年は盛り上がるでしょうね」っていう本当の意味が、ようやく分かった。
祭事である建国祭は鳳凰院主体で行われる。特に当日はやる事がないって聞いていたから、何でわざわざフォルネウス様が対になるドレスを仕立てられるんだろうって、少し疑問に思ってた。全ては、そのコンテストのためだったのだろう。
「俺と一緒に出るのは、嫌か?」
そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないで下さい、フォルネウス様!
「恥ずかしいけど、嫌じゃないですよ。一緒に優勝目指して頑張りましょう!」
そんなこんなで、始まったベストカップルコンテスト。ポータブルコールを没収され、早くも最初の審査で躓きそうになっていた。
「ベストカップルコンテスト! 一次審査はクイズです! お互いに同じ質問をしますので同時に答えて頂きます。十問中七問以上正解出来たカップルのみが次の審査に進めますよ!」
三問までしか間違いは許されない。ハードル高すぎないだろうか。
「第一問、ファーストキスの場所は? さぁ、このレコードキーパーに答えを強く念じて下さい」
な、なんて事を聞いてくるの! こ、これは……大丈夫、フォルネウス様ならきっとこう答えてくれるはずだ。
「では、お二人の回答を聞いてみましょう! 同時に起動をお願いします」
「星空の下」
「星空の下」
「お見事! ロマンティックな星空の下で、二人は何を囁きあって初めてのキスを交わしたのでしょうね!」
司会の方が、無駄に煽ってくるせいで恥ずかしい! これがまだ、後九問も続くの?!
メンタルをごりごりと削られながら、何とか一次審査を突破した。途中一問だけ間違った。
だって、最後の質問がとても意地悪だった。
絶体絶命の状況でもし一人しか助からないとしたら、自分と恋人どちらを助けますか? という質問が出て、私達は互いに相手の名前を答えた。勿論答えが合ってないから不正解。
でも中には正解したカップルも居て、その回答に私は感銘を受けた。「最後まで二人で助かる道を探す」って、二人とも同じ気持ちで最後まで諦めないその姿が、とても格好いいと思ったから。カップルコンテスト、すごく奥が深い!
「フォルネウス様。もし危険が迫った時は、私も二人で助かる道を探したいです!」
「そうだな。次からはそうしよう。アリシア、君は本当に可愛いな」
そう言いながら、フォルネウス様はとても優しい顔をして私の頭を撫でてくれた。まるで、愛玩動物を愛でるかのように。
ご主人様にえらいえらいと誉めてもらった犬にでもなった気分だったけど、たまには悪くないかもしれない。
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