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第五章 蒼と紅の力を合わせて頑張ろう!
44、さぁ、今こそ蒼と紅の力を合わせる時です!
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真剣な面持ちで、お姉ちゃんは口を開いた。
「蒼の吸血鬼女帝パメラとして、貴方に言っておきたい事があるの。私はアリシアが教えてくれた、両国で真の和平を結びたいという貴方の夢を叶える事に協力したいと思っているわ」
「ありがたきお言葉、誠に感謝致します」
「そこで尋ねたいのだけど、そちらに攻撃に特化した魔法道具はあるかしら? 会場を一気に破壊できるような、出来れば強力なものだとありがたいわ」
お姉ちゃんの質問にフォルネウス様は思考を巡らせた後、言葉を選んでお答えになった。
「……危険なので現状はありませんが、作る事は可能だと思います」
「こちらは強さが全ての世界。トップなんてコロコロ入れ替わるし、私もいつこの首を獲られるか分からない。だから私が女帝として居られるうちに、貴方にお願いがあるの」
「こちらで叶えられるものならば、何でもご助力致します」
「始祖の血を一番色濃く受け継ぐ蒼の吸血鬼には、蒼の血が流れる全ての吸血鬼を一時的に支配できる力を持っているわ。私はそれを使って、この世に存在している全ての蒼の吸血鬼を一か所に呼び集める。だからまとめて始末して欲しいのよ。それで、全てを終わらせましょう」
蒼の吸血鬼を一ヶ所に集めて攻撃する?
そんな事をしたらお姉ちゃんが……
「まさかレイラ、君もそのまま死ぬつもりなのか?!」
静かに話を見守っていたお兄ちゃんが、驚いた様子で尋ねた。
「蒼の吸血鬼が存在する限り、人々は安心して暮らせないでしょう。元々私は目的を達成したら、生き続けるつもりなんてなかった。でも今は守りたい者が出来た。貴方達が安心して暮らせる世界を作りたいのよ」
「お姉ちゃん、そんなのは絶対にダメ!」
「申し訳ありませんが、私もその意見には賛同しかねます」
「ダメだ、僕もそんな事は認めない!」
皆に否定されても、お姉ちゃんは譲ろうとしなかった。
「どうしてよ! 第二のアザゼルのような男が再びトップになれば、リグレット王国はまた甚大な被害を受けるわ。もう私のように、大切な人を冷酷な吸血鬼に奪われるような、そんな悲しい思いをしてほしくないわ」
復讐を誓って生きてきた頃のお姉ちゃんを、私は知らない。想像を絶するほどの苦痛の中で、必死に耐えて頑張ってきたお姉ちゃんの言葉には、すごく重みがあった。
「レイラさん。貴方に出会ってこの問題は、血筋が全てではないと分かりました。貴方は誰よりも冷酷と言われる蒼の吸血鬼の血を強く引きついでいるにも関わらず、こんなにも温かい心をお持ちです。蒼の吸血鬼を冷酷な存在へと変えてしまった要因は、環境が少なからず影響していると私は考えています。なので彼等が安心して暮らせる環境を作り、別の楽しみを見出だしていければ、そこに突破口があるのではないかと思います」
「フォルネウス君の言う通りだ、レイラ。自分を犠牲にするんじゃなくて、君の持つ力を有効に活用して変えていく方法を考えよう」
「そうだよ、お姉ちゃん! もし失敗してしまっても、私が回帰魔法で元に戻すよ。だから、良い方法をこれから一緒に考えていこう。独りで抱え込む必要はないんだよ!」
「みんな……ありがとう……っ」
お姉ちゃんの瞳からは、感極まったように涙が流れ出した。そんな姿を見ていたら、私も思わずもらい泣きしてしまって、結局お姉ちゃんに慰められてしまった。
「そこで提案があります。蒼の吸血鬼をハイグランド帝国に受け入れて行けるよう、環境を整えるつもりです。衣食住を安定させ、自我を保っていけるよう正しい知識を身に付けさせ、少しずつ更生させていければと思っているのですが……」
「そうね。それが出来ればいいのだけれど、良くも悪くも生き残っている蒼の吸血鬼は一筋縄ではいかない面倒な奴等ばっかりなのよ。力を持たない吸血鬼は奴隷のように操られて、搾取され続けるしかない。優しい吸血鬼は生き残れない狂った世界だったから」
そう言ってお姉ちゃんは深くため息をついた。
「それだったら、私の回帰魔法で失っていった感情を少しずつ取り戻してあげるのはどうかな? 望むなら繰り返し何度もかけてあげれば、いつかは人間に戻してあげれる日も来るかもしれない」
環境が彼等をそのように狂暴な姿へ変えてしまったのなら、そうなる前まで回帰させてあげればいい。
そしてハイグランド帝国で正しいマナーや知識を教えて、自立を手助けしてあげたら全うな生活を送れるようになるはずだ。
「確かに、蒼の吸血鬼は元を正せば皆が無理やり人間から吸血鬼にされた者達です。人間に戻れるなら戻りたいと思っている者が居てもおかしくありません。アリシアさんの力を使えば、少しずつ彼等を更正していけると思います。問題はどうやって彼等を見つけ出し、ハイグランド帝国へ連れていくか、ですね」
「それならレイラの力で蒼の吸血鬼を呼び出して、連れていけばいいんじゃないかな? その時に一人一人希望を聞いていったらどうだい?」
「確かに、それは良い考えですね。一人一人の思いを受け入れて、一番良い方向へ導いていける素晴らしい案だと思います!」
お兄ちゃんの意見に、フォルネウス様も喜んで同意された。
「方向性が見えてきたね。レイラ、これは君の力がなければ実行できない作戦だ。バカな真似をするより、僕はこっちの作戦の方がいいと思うよ」
「そうだよ、お姉ちゃん。皆で力を合わせて頑張ろう!」
「こちらも出来る限りの協力は惜しみません。蒼も紅も、元を正せば始祖ネクロード様の子孫です。再び手を取り合って、共に歩む事も出来るはずです」
「そうね。私もその案に乗ったわ!」
こうして、蒼の吸血鬼救出作戦が始まった。ハイグランド帝国側で受け入れ態勢が整ってから、実行に移していく事で話はまとまり、定期的に連絡を取り合って協力していく事を約束した。
「アリシア、フォルネウス、気を付けて帰るのよ」
「二人とも、またいつでも遊びにおいで」
「うん、お姉ちゃんとお兄ちゃんも元気でね! あんまり喧嘩しちゃだめだからね!」
「レイラさん、フレデリックさん、色々ありがとうございました。準備が出来たら、またご連絡します」
お姉ちゃんとお兄ちゃんに見送られ、私とフォルネウス様は次の目的地に向かう事にした。次の目的地、それはお母さんの所だ。
「蒼の吸血鬼女帝パメラとして、貴方に言っておきたい事があるの。私はアリシアが教えてくれた、両国で真の和平を結びたいという貴方の夢を叶える事に協力したいと思っているわ」
「ありがたきお言葉、誠に感謝致します」
「そこで尋ねたいのだけど、そちらに攻撃に特化した魔法道具はあるかしら? 会場を一気に破壊できるような、出来れば強力なものだとありがたいわ」
お姉ちゃんの質問にフォルネウス様は思考を巡らせた後、言葉を選んでお答えになった。
「……危険なので現状はありませんが、作る事は可能だと思います」
「こちらは強さが全ての世界。トップなんてコロコロ入れ替わるし、私もいつこの首を獲られるか分からない。だから私が女帝として居られるうちに、貴方にお願いがあるの」
「こちらで叶えられるものならば、何でもご助力致します」
「始祖の血を一番色濃く受け継ぐ蒼の吸血鬼には、蒼の血が流れる全ての吸血鬼を一時的に支配できる力を持っているわ。私はそれを使って、この世に存在している全ての蒼の吸血鬼を一か所に呼び集める。だからまとめて始末して欲しいのよ。それで、全てを終わらせましょう」
蒼の吸血鬼を一ヶ所に集めて攻撃する?
そんな事をしたらお姉ちゃんが……
「まさかレイラ、君もそのまま死ぬつもりなのか?!」
静かに話を見守っていたお兄ちゃんが、驚いた様子で尋ねた。
「蒼の吸血鬼が存在する限り、人々は安心して暮らせないでしょう。元々私は目的を達成したら、生き続けるつもりなんてなかった。でも今は守りたい者が出来た。貴方達が安心して暮らせる世界を作りたいのよ」
「お姉ちゃん、そんなのは絶対にダメ!」
「申し訳ありませんが、私もその意見には賛同しかねます」
「ダメだ、僕もそんな事は認めない!」
皆に否定されても、お姉ちゃんは譲ろうとしなかった。
「どうしてよ! 第二のアザゼルのような男が再びトップになれば、リグレット王国はまた甚大な被害を受けるわ。もう私のように、大切な人を冷酷な吸血鬼に奪われるような、そんな悲しい思いをしてほしくないわ」
復讐を誓って生きてきた頃のお姉ちゃんを、私は知らない。想像を絶するほどの苦痛の中で、必死に耐えて頑張ってきたお姉ちゃんの言葉には、すごく重みがあった。
「レイラさん。貴方に出会ってこの問題は、血筋が全てではないと分かりました。貴方は誰よりも冷酷と言われる蒼の吸血鬼の血を強く引きついでいるにも関わらず、こんなにも温かい心をお持ちです。蒼の吸血鬼を冷酷な存在へと変えてしまった要因は、環境が少なからず影響していると私は考えています。なので彼等が安心して暮らせる環境を作り、別の楽しみを見出だしていければ、そこに突破口があるのではないかと思います」
「フォルネウス君の言う通りだ、レイラ。自分を犠牲にするんじゃなくて、君の持つ力を有効に活用して変えていく方法を考えよう」
「そうだよ、お姉ちゃん! もし失敗してしまっても、私が回帰魔法で元に戻すよ。だから、良い方法をこれから一緒に考えていこう。独りで抱え込む必要はないんだよ!」
「みんな……ありがとう……っ」
お姉ちゃんの瞳からは、感極まったように涙が流れ出した。そんな姿を見ていたら、私も思わずもらい泣きしてしまって、結局お姉ちゃんに慰められてしまった。
「そこで提案があります。蒼の吸血鬼をハイグランド帝国に受け入れて行けるよう、環境を整えるつもりです。衣食住を安定させ、自我を保っていけるよう正しい知識を身に付けさせ、少しずつ更生させていければと思っているのですが……」
「そうね。それが出来ればいいのだけれど、良くも悪くも生き残っている蒼の吸血鬼は一筋縄ではいかない面倒な奴等ばっかりなのよ。力を持たない吸血鬼は奴隷のように操られて、搾取され続けるしかない。優しい吸血鬼は生き残れない狂った世界だったから」
そう言ってお姉ちゃんは深くため息をついた。
「それだったら、私の回帰魔法で失っていった感情を少しずつ取り戻してあげるのはどうかな? 望むなら繰り返し何度もかけてあげれば、いつかは人間に戻してあげれる日も来るかもしれない」
環境が彼等をそのように狂暴な姿へ変えてしまったのなら、そうなる前まで回帰させてあげればいい。
そしてハイグランド帝国で正しいマナーや知識を教えて、自立を手助けしてあげたら全うな生活を送れるようになるはずだ。
「確かに、蒼の吸血鬼は元を正せば皆が無理やり人間から吸血鬼にされた者達です。人間に戻れるなら戻りたいと思っている者が居てもおかしくありません。アリシアさんの力を使えば、少しずつ彼等を更正していけると思います。問題はどうやって彼等を見つけ出し、ハイグランド帝国へ連れていくか、ですね」
「それならレイラの力で蒼の吸血鬼を呼び出して、連れていけばいいんじゃないかな? その時に一人一人希望を聞いていったらどうだい?」
「確かに、それは良い考えですね。一人一人の思いを受け入れて、一番良い方向へ導いていける素晴らしい案だと思います!」
お兄ちゃんの意見に、フォルネウス様も喜んで同意された。
「方向性が見えてきたね。レイラ、これは君の力がなければ実行できない作戦だ。バカな真似をするより、僕はこっちの作戦の方がいいと思うよ」
「そうだよ、お姉ちゃん。皆で力を合わせて頑張ろう!」
「こちらも出来る限りの協力は惜しみません。蒼も紅も、元を正せば始祖ネクロード様の子孫です。再び手を取り合って、共に歩む事も出来るはずです」
「そうね。私もその案に乗ったわ!」
こうして、蒼の吸血鬼救出作戦が始まった。ハイグランド帝国側で受け入れ態勢が整ってから、実行に移していく事で話はまとまり、定期的に連絡を取り合って協力していく事を約束した。
「アリシア、フォルネウス、気を付けて帰るのよ」
「二人とも、またいつでも遊びにおいで」
「うん、お姉ちゃんとお兄ちゃんも元気でね! あんまり喧嘩しちゃだめだからね!」
「レイラさん、フレデリックさん、色々ありがとうございました。準備が出来たら、またご連絡します」
お姉ちゃんとお兄ちゃんに見送られ、私とフォルネウス様は次の目的地に向かう事にした。次の目的地、それはお母さんの所だ。
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