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第四章 貴方の隣に相応しくなりたい!
32、威厳をどこかに置き忘れた皇帝?
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暖かい陽だまりの中にいるような感覚に包まれて目を覚ます。鼻先を掠める花の良い香りが、まるでお花畑に居るような気分にさせた。しかしどうみても、ここはベッドの上だ。
「あ、姫様、おはようございます! ソフィア様からお祝いにお花を頂いております。こちらはリフィエル様からで、こちらはガブリエル様からです! あちらはシオン様からと、外に飾ってあるのは獅子院と鳳凰院、青龍院からも届いてます! 先ほどロージーとシーラから頂いた物も預かってます!」
「ちょっと待って、メルム。どうしてこんなにお花が来るの!?」
「それはもちろん、婚約のお祝いですよ! この国では婚約するとお祝いにお花を贈る風習があるのです。そしてこれは私からです! 姫様、ご婚約おめでとうございます!」
「ありがとう、メルム」
皆にもきちんとお礼を言っておかなければ。それにしても、昨日の今日でどうしてこんなにも広まるのが早いのだろう?
入りきれない分は廊下にまで飾ってあり、部屋が一気に華やかになった。まぁ元々私には身に余る豪華な部屋ではあったけど、それが今は五割増しぐらいになっている。
「おはよう、アリシア。たくさん届いているな」
身支度を整え終えた頃、フォルネウス様がお越しになった。
「おはようございます、フォルネウス様。皆さんからこんなに沢山のお花が届いて驚きました」
「昨日届出を出しておいたからな」
「流石若様、行動力が違いますね!」
「届出……?」
「正式に婚約しましたよーっていう書類を提出する事で周知させて、余計なトラブルを防ぐのです!」
「余計なトラブル……?」
「まぁ、姫様に手を出そうとする命知らずな方は多分いらっしゃらないと思うので、気にしなくて大丈夫ですよ!」
メルムがそう言うなら、深く気にしなくてもいいのかな。
「アリシア、そろそろ父上を紹介しておきたいと思うのだが……今から少し、時間を借りても良いか?」
「はい、勿論です! ディートリヒ様にお会いできるなんて光栄です」
ソフィー様からお話だけは聞いていたけど、勝手に会わせるとフォルネウス様の機嫌が悪くなるからって、直接お会いした事はなかったのよね。
「あーその……期待されるような方では……」
どこか歯切れの悪いフォルネウス様に連れられて、レッドクロス城の玉座の間に移動する。
「父上は少々変わっておられる。ただあれでも一応皇帝なのだ。威厳というものをどこかに置き忘れてきた……皇帝なのだ」
威厳をどこかに置き忘れた?!
フォルネウス様の口から聞いたことがない単語が飛び出したわ。
この扉の奥には、一体どんな皇帝がいらっしゃるのかしら……フォルネウス様のお父様だもの、失礼がないようにしなければ。
「父上、今日はご報告があって参りました」
「やっと来たか、フォルネウスよ。首を長くして待っておったぞ。して、そちらのお嬢さんが……」
漆黒の長髪に整った顔立ちをされたディートリヒ陛下の青い双眼が、こちらに向けられる。
「はい。以前リグレット王国で俺を助けてくれたアリシアです。彼女と婚約したので、そのご報告に参りました」
「お初にお目にかかります、ディートリヒ陛下。アリシアと申します」
ドレスの裾を軽く持ち上げて、カーテシーのポーズをとる。
「よく来てくれた、アリシアよ。其方が居なければ今頃フォルネウスはここには居なかったかもしれぬ。息子を救ってくれた事、誠に感謝する」
玉座から立ち上がった陛下は、わざわざ私の方まで降りて来て握手をして下さった。
「い、いえ、私は当たり前の事をしたまでで……それに私もフォルネウス様に命を助けて頂きました。彼に生かして貰ったこの命、これからはフォルネウス様を支えるために、尽力していきたいと思っております」
「何とも健気な! こうして其方を皇室に迎えられた事、とても嬉しく思うぞ。12年と1ヶ月8日、フォルネウスが其方に寄せ続けた思いを受け入れてくれてありがたい限りじゃ」
陛下はそう言って涙ぐんでおられる。そういえばソフィー様が仰ってたわね、陛下の涙腺は緩いって。
「ち、父上! 何で数えているのですか!?」
フォルネウス様は瞠目して陛下を見ていらっしゃる。
「ん? それは勿論可愛い息子が好きな人が出来たと打ち明けてくれたあの日から、毎日欠かすことなく数えておったぞ? いつ紹介してくれるのだろうなと、首をながーくして待っておったのだ」
「全く貴方って人は……母上とは別の意味で達が悪いです」
額に手を当てて、フォルネウス様はため息をつかれた。
ソフィー様が仰っていた通りだわ!
フォルネウス様がこうして優しく真っ直ぐに育っていらっしゃるのは、お二人の愛の力なのね!
「アリシア、恥ずかしいから父上の言っている事は真に受けないでくれ……」
微笑ましい二人の光景を見ていたら、フォルネウス様にそう懇願されてしまった。
「とても素敵なお父様ではありませんか」
私は早くに父を亡くしてしまったから、少しだけフォルネウス様が羨ましくもあった。
「アリシアよ、其方はもう我が娘も同然じゃ! 遠慮なく我の事を本当の父と思って過ごすとよいぞ」
「陛下、ありがとうございます」
「そんな堅苦しい呼び方は嫌じゃ。お父様でも、パパでも何でもよいのじゃぞ? ソフィーのように愛称で呼んでくれてもいいのじゃぞ? ちなみに我の愛称はトリーじゃ」
「父上、アリシアに無理強いしないで下さい」
「ソフィーだけずるいではないか。我だってアリシアと仲良くなりたいのだ。ずっと待ち望んだ娘が出来たのだぞ……」
「いじけたってダメです。もう少し皇帝らしく威厳を保って下さい」
「うぅ……息子が冷たい……」
フォルネウス様がしっかりしていらっしゃるのは、いつもこうしてお父様を支えていらっしゃるからなのかもしれないわね。何故だろう、フォルネウス様が弟を諌めるお兄さんのように見えるのは……
「それでは、トリー様とお呼びしてもよろしいですか?」
「勿論じゃ! 我も親しみを込めてシアと呼ばせてもらおう」
「はい、ありがとうございます」
「アリシア、良いのか?」
不安そうにこちらを見ているフォルネウス様に、私は明るく言いきった。
「私は早くに父を亡くしてしまったので、こうしてお父様が出来るのは嬉しいです!」
「そうか、それなら良いのだが……」
本当にこの国は温かいなと思った。身分に厳しいリグレット王国では考えられない事だった。平民の私がこうして皇子様の隣にいる光景なんて。そしてそれを優しいご両親が温かく迎えて下さるなんて。
「ついに我も孫の顔が見れるのだな。実に楽しみじゃ!」
「父上、気が早すぎます!」
「そんな事はないぞ! 我はもう12年と1ヶ月8日も待ったのじゃ」
「だから数えないで下さいよ」
「シア、フォルネウスがこうやってすぐに怒るのじゃ。反抗期なのかのう……なだめてくれぬか?」
そう言ってトリー様は私の背中に隠れてしまった。
「父上、アリシアを盾にするなんて卑怯ですよ」
「フォルネウスがシアに弱いことは、12年と1ヶ月8日前から知っておるのじゃ! 残念じゃったのう」
ケケケという笑い声が背中から聞こえてくる。確かにトリー様は、威厳をどこかに置き忘れてこられたようね。フォルネウス様の仰っていた言葉の意味が少しだけ分かった。
でもいけないわ。このままからかわれ続けてはフォルネウス様の心労がたまってしまう。
「フォルネウス様、私も楽しみです。いつか貴方に似た、とても可愛い子に会える日が」
「アリシア……俺も楽しみだ。でも出来れば、アリシアに似た可愛い子が欲しいな」
「残念じゃったのう、フォルネウスよ! 我らの遺伝子は強いのじゃ! きっと其方によく似た子供が出来るだろう!」
勝ち誇った笑みを浮かべて言いきるトリー様を見て、フォルネウス様は軽くため息をついた。
確かに、フォルネウス様はディートリヒ様にそっくりね。違うのは髪の長さとソフィー様譲りの瞳の色ぐらいだわ。
「まったく、いちいち水をささなくて結構です。挨拶も済んだのでそろそろ失礼します。アリシア、行こうか」
「はい、フォルネウス様。それではトリー様、失礼致します」
「フォルネウス、シア、またいつでも来るのじゃぞ! 後でいっぱい花を贈っておくぞ!」
廊下に出て、フォルネウス様が申し訳なさそうに謝ってこられた。
「騒がしい父で本当にすまない。疲れなかっただろうか?」
「いいえ、賑やかで楽しかったですよ。それに温かく迎え入れて下さって、とても嬉しかったです」
「それならよいのだが……両親が原因でやっぱり結婚したくないと言われたら、どうしようかと思っていたよ」
「トリー様とソフィー様にお会いして、お二人の素敵なご両親に大事に育てられたから、今のフォルネウス様が在るんだってよく分かりました。そんなフォルネウス様が、私は大好きですよ」
フォルネウス様は恥ずかしそうに視線を彷徨わせた後、手のひらで顔を覆ってしまった。
「片想いが長すぎたせいか……こうしてアリシアが俺の隣に居てくれる事が、本当に奇跡のように思うんだ。この夢がいつか覚めてしまうのではないかと、正直不安で仕方ない」
確かに長い片想いがもし実ったとしたら……と想像して、考えるのを止めた。というか、考えられなかった。
自分でもびっくりするくらいに、フレディお兄ちゃんに抱いていた恋心がすっぽりと無くなっていたから。
優しくてとても良いお兄ちゃんだったのは変わらない。けれどそこに全くドキドキを感じなかった。
そして染々と実感する。こうして要らぬ心配をされているフォルネウス様が、今はとても愛しくて仕方ないということに。
その時私は良い事を思い付いた。
心配性なフォルネウス様に、最適な誕生日プレゼントを!
「あ、姫様、おはようございます! ソフィア様からお祝いにお花を頂いております。こちらはリフィエル様からで、こちらはガブリエル様からです! あちらはシオン様からと、外に飾ってあるのは獅子院と鳳凰院、青龍院からも届いてます! 先ほどロージーとシーラから頂いた物も預かってます!」
「ちょっと待って、メルム。どうしてこんなにお花が来るの!?」
「それはもちろん、婚約のお祝いですよ! この国では婚約するとお祝いにお花を贈る風習があるのです。そしてこれは私からです! 姫様、ご婚約おめでとうございます!」
「ありがとう、メルム」
皆にもきちんとお礼を言っておかなければ。それにしても、昨日の今日でどうしてこんなにも広まるのが早いのだろう?
入りきれない分は廊下にまで飾ってあり、部屋が一気に華やかになった。まぁ元々私には身に余る豪華な部屋ではあったけど、それが今は五割増しぐらいになっている。
「おはよう、アリシア。たくさん届いているな」
身支度を整え終えた頃、フォルネウス様がお越しになった。
「おはようございます、フォルネウス様。皆さんからこんなに沢山のお花が届いて驚きました」
「昨日届出を出しておいたからな」
「流石若様、行動力が違いますね!」
「届出……?」
「正式に婚約しましたよーっていう書類を提出する事で周知させて、余計なトラブルを防ぐのです!」
「余計なトラブル……?」
「まぁ、姫様に手を出そうとする命知らずな方は多分いらっしゃらないと思うので、気にしなくて大丈夫ですよ!」
メルムがそう言うなら、深く気にしなくてもいいのかな。
「アリシア、そろそろ父上を紹介しておきたいと思うのだが……今から少し、時間を借りても良いか?」
「はい、勿論です! ディートリヒ様にお会いできるなんて光栄です」
ソフィー様からお話だけは聞いていたけど、勝手に会わせるとフォルネウス様の機嫌が悪くなるからって、直接お会いした事はなかったのよね。
「あーその……期待されるような方では……」
どこか歯切れの悪いフォルネウス様に連れられて、レッドクロス城の玉座の間に移動する。
「父上は少々変わっておられる。ただあれでも一応皇帝なのだ。威厳というものをどこかに置き忘れてきた……皇帝なのだ」
威厳をどこかに置き忘れた?!
フォルネウス様の口から聞いたことがない単語が飛び出したわ。
この扉の奥には、一体どんな皇帝がいらっしゃるのかしら……フォルネウス様のお父様だもの、失礼がないようにしなければ。
「父上、今日はご報告があって参りました」
「やっと来たか、フォルネウスよ。首を長くして待っておったぞ。して、そちらのお嬢さんが……」
漆黒の長髪に整った顔立ちをされたディートリヒ陛下の青い双眼が、こちらに向けられる。
「はい。以前リグレット王国で俺を助けてくれたアリシアです。彼女と婚約したので、そのご報告に参りました」
「お初にお目にかかります、ディートリヒ陛下。アリシアと申します」
ドレスの裾を軽く持ち上げて、カーテシーのポーズをとる。
「よく来てくれた、アリシアよ。其方が居なければ今頃フォルネウスはここには居なかったかもしれぬ。息子を救ってくれた事、誠に感謝する」
玉座から立ち上がった陛下は、わざわざ私の方まで降りて来て握手をして下さった。
「い、いえ、私は当たり前の事をしたまでで……それに私もフォルネウス様に命を助けて頂きました。彼に生かして貰ったこの命、これからはフォルネウス様を支えるために、尽力していきたいと思っております」
「何とも健気な! こうして其方を皇室に迎えられた事、とても嬉しく思うぞ。12年と1ヶ月8日、フォルネウスが其方に寄せ続けた思いを受け入れてくれてありがたい限りじゃ」
陛下はそう言って涙ぐんでおられる。そういえばソフィー様が仰ってたわね、陛下の涙腺は緩いって。
「ち、父上! 何で数えているのですか!?」
フォルネウス様は瞠目して陛下を見ていらっしゃる。
「ん? それは勿論可愛い息子が好きな人が出来たと打ち明けてくれたあの日から、毎日欠かすことなく数えておったぞ? いつ紹介してくれるのだろうなと、首をながーくして待っておったのだ」
「全く貴方って人は……母上とは別の意味で達が悪いです」
額に手を当てて、フォルネウス様はため息をつかれた。
ソフィー様が仰っていた通りだわ!
フォルネウス様がこうして優しく真っ直ぐに育っていらっしゃるのは、お二人の愛の力なのね!
「アリシア、恥ずかしいから父上の言っている事は真に受けないでくれ……」
微笑ましい二人の光景を見ていたら、フォルネウス様にそう懇願されてしまった。
「とても素敵なお父様ではありませんか」
私は早くに父を亡くしてしまったから、少しだけフォルネウス様が羨ましくもあった。
「アリシアよ、其方はもう我が娘も同然じゃ! 遠慮なく我の事を本当の父と思って過ごすとよいぞ」
「陛下、ありがとうございます」
「そんな堅苦しい呼び方は嫌じゃ。お父様でも、パパでも何でもよいのじゃぞ? ソフィーのように愛称で呼んでくれてもいいのじゃぞ? ちなみに我の愛称はトリーじゃ」
「父上、アリシアに無理強いしないで下さい」
「ソフィーだけずるいではないか。我だってアリシアと仲良くなりたいのだ。ずっと待ち望んだ娘が出来たのだぞ……」
「いじけたってダメです。もう少し皇帝らしく威厳を保って下さい」
「うぅ……息子が冷たい……」
フォルネウス様がしっかりしていらっしゃるのは、いつもこうしてお父様を支えていらっしゃるからなのかもしれないわね。何故だろう、フォルネウス様が弟を諌めるお兄さんのように見えるのは……
「それでは、トリー様とお呼びしてもよろしいですか?」
「勿論じゃ! 我も親しみを込めてシアと呼ばせてもらおう」
「はい、ありがとうございます」
「アリシア、良いのか?」
不安そうにこちらを見ているフォルネウス様に、私は明るく言いきった。
「私は早くに父を亡くしてしまったので、こうしてお父様が出来るのは嬉しいです!」
「そうか、それなら良いのだが……」
本当にこの国は温かいなと思った。身分に厳しいリグレット王国では考えられない事だった。平民の私がこうして皇子様の隣にいる光景なんて。そしてそれを優しいご両親が温かく迎えて下さるなんて。
「ついに我も孫の顔が見れるのだな。実に楽しみじゃ!」
「父上、気が早すぎます!」
「そんな事はないぞ! 我はもう12年と1ヶ月8日も待ったのじゃ」
「だから数えないで下さいよ」
「シア、フォルネウスがこうやってすぐに怒るのじゃ。反抗期なのかのう……なだめてくれぬか?」
そう言ってトリー様は私の背中に隠れてしまった。
「父上、アリシアを盾にするなんて卑怯ですよ」
「フォルネウスがシアに弱いことは、12年と1ヶ月8日前から知っておるのじゃ! 残念じゃったのう」
ケケケという笑い声が背中から聞こえてくる。確かにトリー様は、威厳をどこかに置き忘れてこられたようね。フォルネウス様の仰っていた言葉の意味が少しだけ分かった。
でもいけないわ。このままからかわれ続けてはフォルネウス様の心労がたまってしまう。
「フォルネウス様、私も楽しみです。いつか貴方に似た、とても可愛い子に会える日が」
「アリシア……俺も楽しみだ。でも出来れば、アリシアに似た可愛い子が欲しいな」
「残念じゃったのう、フォルネウスよ! 我らの遺伝子は強いのじゃ! きっと其方によく似た子供が出来るだろう!」
勝ち誇った笑みを浮かべて言いきるトリー様を見て、フォルネウス様は軽くため息をついた。
確かに、フォルネウス様はディートリヒ様にそっくりね。違うのは髪の長さとソフィー様譲りの瞳の色ぐらいだわ。
「まったく、いちいち水をささなくて結構です。挨拶も済んだのでそろそろ失礼します。アリシア、行こうか」
「はい、フォルネウス様。それではトリー様、失礼致します」
「フォルネウス、シア、またいつでも来るのじゃぞ! 後でいっぱい花を贈っておくぞ!」
廊下に出て、フォルネウス様が申し訳なさそうに謝ってこられた。
「騒がしい父で本当にすまない。疲れなかっただろうか?」
「いいえ、賑やかで楽しかったですよ。それに温かく迎え入れて下さって、とても嬉しかったです」
「それならよいのだが……両親が原因でやっぱり結婚したくないと言われたら、どうしようかと思っていたよ」
「トリー様とソフィー様にお会いして、お二人の素敵なご両親に大事に育てられたから、今のフォルネウス様が在るんだってよく分かりました。そんなフォルネウス様が、私は大好きですよ」
フォルネウス様は恥ずかしそうに視線を彷徨わせた後、手のひらで顔を覆ってしまった。
「片想いが長すぎたせいか……こうしてアリシアが俺の隣に居てくれる事が、本当に奇跡のように思うんだ。この夢がいつか覚めてしまうのではないかと、正直不安で仕方ない」
確かに長い片想いがもし実ったとしたら……と想像して、考えるのを止めた。というか、考えられなかった。
自分でもびっくりするくらいに、フレディお兄ちゃんに抱いていた恋心がすっぽりと無くなっていたから。
優しくてとても良いお兄ちゃんだったのは変わらない。けれどそこに全くドキドキを感じなかった。
そして染々と実感する。こうして要らぬ心配をされているフォルネウス様が、今はとても愛しくて仕方ないということに。
その時私は良い事を思い付いた。
心配性なフォルネウス様に、最適な誕生日プレゼントを!
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