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第九章 文化祭に向けて
勝利を掴み取ったのは、まさかの……
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美香、カナちゃん、シロ、私の順で選んだ服を審査する事になり、まずは美香が選んだ服を皆で見に行く事になった。
実際に私が試着をして、前後左右から写真を撮って残しておき、それを見て最後に判断するらしい。
美香が選んだのは、綺麗系の服だった。
淡いクリーム色の丸襟のシフォンブラウスを着て、襟元をネイビーのリボンで結ぶ。そしてリボンと同じネイビーの膝丈のプリーツスカートの中にブラウスを入れて、腰にはモカ色の細めのベルトをアクセントに締めたら完成だ。
ファッション雑誌で勉強しておいてよかった。昔の私なら、ペラペラのシャツとヒダヒダのスカートとしか認識できなかっただろう。
鏡をみて、上品なお姉さんになったような気がした。
やっぱり美香はセンスがいいなと思いつつ、試着室のドアを開けた。
「桜は清潔感のある綺麗めの装いが似合うと思うわ」
「確かにたまにはそんなんもええな、グッと女度が増したわ」
「まぁ、悪くはないが物足りないな……」
ぶつぶつ言いながらシロがこちらに近づいてきて、私のベルトに手をかけてくる。
「もうちょいスカートを短く……」
器用にクルッとスカートを曲げて、裾を短くしてしまった。
「何しとんねん、アホ!」
すかさずカナちゃんが止めに入って、シロをお店の外まで引きずってゆく。
「全く、短ければ良いってわけじゃないのよ」
そうため息をこぼした美香は、すかさず乱されたスカートを元に戻してくれた。スマホで写真を撮ってくれて、次の店に移動だ。
カナちゃんが選んだのは、カジュアル系の服だった。
濃緑のチェックシャツに白の鍵編みニットのレイヤードのトップスを重ね着する。そしてネイビーのスキニーデニムをはいて、飾りのアクセントに羽をモチーフにしたカジュアルなペンダントを首にかけたら完成だ。
お洒落で動きやすいし、こういう装いは好きだ。
カナちゃんはやっぱり分かってるなと思いつつ、試着室のドアを開けた。
「桜は運動するん好きやし、こてこてに飾り立てたもんよりシンプルな装いが似合うで」
「無難なとこを突いてきた感じね」
「全然面白味がないぞ。お前、本当に男か?」
頭の天辺からつま先まで、何かを確認するかのように訝しげな視線をシロはカナちゃんに向けている。
その視線が気持ち悪かったのか、カナちゃんは大きく身震いした。
「は? いきなり何言うてんねや……」
「こんなガチガチに肌隠したら何も楽しめんだろうが」
「いや、だからお前は何を……」
何やら不穏な空気を醸し出す二人を放置して、美香は黙々と写真を撮り、次の店に移動することに。
シロが選んだのは、小悪魔系の服だった。
胸元に大きなリボンをあしらい、サイドは黒の紐で編み込んだ身体のラインを出すピンクのオフショルダーのトップスを着る。そして裾に白のレースが印象的な黒のミニプリーツスカートをはいて、首元に薔薇をモチーフにしたチョーカーをつけたら完成だ。
可愛いけれど、上も下も心許ない布しかない。薄々感じてはいたけど、シロってオープンにエロいよなと思いつつ、試着室のドアを開けた。
「女の武器を最大限生かすならこれしかないだろ。桜は普段からもっと胸と足を出すべきだ」
「貴方の趣味全開なだけじゃないの。でも、その胸は武器になるわね」
「お前ってほんと本能のまま生きてるって感じやな。少しだけ、羨ましいわ」
その時、シロが持っていたハンガーを落とした。私の近くに滑ってきたので、反射的に屈んでそれを拾う。すると──
「分かったか、西園寺。こうでないと楽しめないだろ」
不適な笑みを浮かべて、シロがカナちゃんに話しかける。
「あ、あかんわ、桜! はよ着替えてや」
カナちゃんは手の甲を口元にあて、顔を赤面させながら私にそう訴えかけてきた。
「桜、付き合うなら今の結城君みたいな人より、西園寺君の方を俄然おすすめするわ」
私の肩をポンポンと叩いて、美香がため息まじりに言った。
どうやら今回の件で、美香のシロに対する評価はがた落ちしたようだ。
私はそれに苦笑いを漏らすしかなかった。
とうとう私の番が回ってきてしまった。
今までの皆のコーディネイトが上手すぎて全く自信がない。
意を決していざ試着室へ向かい着替えを済ませる。
ガラッと勢いよくカーテンを開けると、驚いたように瞳を大きく見開いた三人の姿が目に入った。
「ど、どうかな?」
「ないわね」
「ねぇな」
「あかんやろ」
まるで示し合わせて重ねたかのように、三人の否定的な言葉が返ってきた。皆の哀れんだ視線が、いたたまれない。
分かってはいたけど、私は本当に美的センスが皆無なのを改めて実感した。
「お前、普段は服どうやって決めてんだよ」
「あれは全部、姉がコーディネイトしてくれてて」
不思議そうに尋ねてくるシロに、苦笑いしつつ真実を打ち明ける。
「このままだと第二ステージ突破は絶望的だわ。困ったわね」
美香は難しい顔をして頭を抱えている。
「桜……それ、何をイメージして選んだんや?」
「私に似合うのは道着だよなって思って……」
「せやかて男もんの甚平持ってきてどないすんねや。お前は可愛えんやからもうちょい……ほら、このワンピースみたいな女っぽいもん選んでくれや」
カナちゃんは物凄く悲しそうな目でこちらを見た後、視線の先にあった服を指差した。
振り返ってみると、淡い色合いの可愛らしいワンピースが視界に入り、ふと思いついた感想を述べる。
「あ、それコハクが好きそう」
「それよ! 桜、結城君が好きそうな服選んでみて。この変態じゃない方のね」
「だれが変態だ!」
「西園寺君、ちょっとそこの変態抑えてて」
「おーけい、まかせとき」
覚醒した美香とカナちゃんの連携プレーでシロを無力化し、私は美香の指示に従ってコハクが好きそうな服を物色する。
彼が好きそうなのは──以前遊園地にデートに行った時、姉がコーディネイトしてくれた膝丈の白いふわふわのワンピースみたいな可愛らしい感じの奴だ。
胸元や足を出す露出したファッションより、彼は最初に一緒に出掛けた時の女の子らしいその服装を一番嬉しそうに褒めてくれた。
それをイメージして、膝丈の柔らかい生地のふわふわしたワンピースを手に取ると、試着室へと促された。
着替えて試着室のドアを開けると
「いいわね、でもせっかくのスタイルを隠すのは勿体ないわね……」
そう言って美香は店内を物色し、細いベルトを持ってきて私の胸の下辺りに巻いた。
「お、ええな……でも首元がちょい寂しいな……」
今度はカナちゃんが店内を回って、存在感のあるペンダントを持ってきて私の首にかけた。
「フン……まぁ、悪くはないが足元がな……」
そう言ってシロは似合いそうなアンクルストラップのついたパンプスを持ってきて私の足に履かせた。
鏡を見ると、コハクが喜んでくれそうなコーディネイトが完成していた。
「よく似合っているわ」
「せやな、桜のためにあしらわれたような服やな」
「まぁ……いいんじゃないか?」
満場一致の結果、コーディネイト対決で勝利をもぎ取ったのは、まさかのコハクだった。
実際に私が試着をして、前後左右から写真を撮って残しておき、それを見て最後に判断するらしい。
美香が選んだのは、綺麗系の服だった。
淡いクリーム色の丸襟のシフォンブラウスを着て、襟元をネイビーのリボンで結ぶ。そしてリボンと同じネイビーの膝丈のプリーツスカートの中にブラウスを入れて、腰にはモカ色の細めのベルトをアクセントに締めたら完成だ。
ファッション雑誌で勉強しておいてよかった。昔の私なら、ペラペラのシャツとヒダヒダのスカートとしか認識できなかっただろう。
鏡をみて、上品なお姉さんになったような気がした。
やっぱり美香はセンスがいいなと思いつつ、試着室のドアを開けた。
「桜は清潔感のある綺麗めの装いが似合うと思うわ」
「確かにたまにはそんなんもええな、グッと女度が増したわ」
「まぁ、悪くはないが物足りないな……」
ぶつぶつ言いながらシロがこちらに近づいてきて、私のベルトに手をかけてくる。
「もうちょいスカートを短く……」
器用にクルッとスカートを曲げて、裾を短くしてしまった。
「何しとんねん、アホ!」
すかさずカナちゃんが止めに入って、シロをお店の外まで引きずってゆく。
「全く、短ければ良いってわけじゃないのよ」
そうため息をこぼした美香は、すかさず乱されたスカートを元に戻してくれた。スマホで写真を撮ってくれて、次の店に移動だ。
カナちゃんが選んだのは、カジュアル系の服だった。
濃緑のチェックシャツに白の鍵編みニットのレイヤードのトップスを重ね着する。そしてネイビーのスキニーデニムをはいて、飾りのアクセントに羽をモチーフにしたカジュアルなペンダントを首にかけたら完成だ。
お洒落で動きやすいし、こういう装いは好きだ。
カナちゃんはやっぱり分かってるなと思いつつ、試着室のドアを開けた。
「桜は運動するん好きやし、こてこてに飾り立てたもんよりシンプルな装いが似合うで」
「無難なとこを突いてきた感じね」
「全然面白味がないぞ。お前、本当に男か?」
頭の天辺からつま先まで、何かを確認するかのように訝しげな視線をシロはカナちゃんに向けている。
その視線が気持ち悪かったのか、カナちゃんは大きく身震いした。
「は? いきなり何言うてんねや……」
「こんなガチガチに肌隠したら何も楽しめんだろうが」
「いや、だからお前は何を……」
何やら不穏な空気を醸し出す二人を放置して、美香は黙々と写真を撮り、次の店に移動することに。
シロが選んだのは、小悪魔系の服だった。
胸元に大きなリボンをあしらい、サイドは黒の紐で編み込んだ身体のラインを出すピンクのオフショルダーのトップスを着る。そして裾に白のレースが印象的な黒のミニプリーツスカートをはいて、首元に薔薇をモチーフにしたチョーカーをつけたら完成だ。
可愛いけれど、上も下も心許ない布しかない。薄々感じてはいたけど、シロってオープンにエロいよなと思いつつ、試着室のドアを開けた。
「女の武器を最大限生かすならこれしかないだろ。桜は普段からもっと胸と足を出すべきだ」
「貴方の趣味全開なだけじゃないの。でも、その胸は武器になるわね」
「お前ってほんと本能のまま生きてるって感じやな。少しだけ、羨ましいわ」
その時、シロが持っていたハンガーを落とした。私の近くに滑ってきたので、反射的に屈んでそれを拾う。すると──
「分かったか、西園寺。こうでないと楽しめないだろ」
不適な笑みを浮かべて、シロがカナちゃんに話しかける。
「あ、あかんわ、桜! はよ着替えてや」
カナちゃんは手の甲を口元にあて、顔を赤面させながら私にそう訴えかけてきた。
「桜、付き合うなら今の結城君みたいな人より、西園寺君の方を俄然おすすめするわ」
私の肩をポンポンと叩いて、美香がため息まじりに言った。
どうやら今回の件で、美香のシロに対する評価はがた落ちしたようだ。
私はそれに苦笑いを漏らすしかなかった。
とうとう私の番が回ってきてしまった。
今までの皆のコーディネイトが上手すぎて全く自信がない。
意を決していざ試着室へ向かい着替えを済ませる。
ガラッと勢いよくカーテンを開けると、驚いたように瞳を大きく見開いた三人の姿が目に入った。
「ど、どうかな?」
「ないわね」
「ねぇな」
「あかんやろ」
まるで示し合わせて重ねたかのように、三人の否定的な言葉が返ってきた。皆の哀れんだ視線が、いたたまれない。
分かってはいたけど、私は本当に美的センスが皆無なのを改めて実感した。
「お前、普段は服どうやって決めてんだよ」
「あれは全部、姉がコーディネイトしてくれてて」
不思議そうに尋ねてくるシロに、苦笑いしつつ真実を打ち明ける。
「このままだと第二ステージ突破は絶望的だわ。困ったわね」
美香は難しい顔をして頭を抱えている。
「桜……それ、何をイメージして選んだんや?」
「私に似合うのは道着だよなって思って……」
「せやかて男もんの甚平持ってきてどないすんねや。お前は可愛えんやからもうちょい……ほら、このワンピースみたいな女っぽいもん選んでくれや」
カナちゃんは物凄く悲しそうな目でこちらを見た後、視線の先にあった服を指差した。
振り返ってみると、淡い色合いの可愛らしいワンピースが視界に入り、ふと思いついた感想を述べる。
「あ、それコハクが好きそう」
「それよ! 桜、結城君が好きそうな服選んでみて。この変態じゃない方のね」
「だれが変態だ!」
「西園寺君、ちょっとそこの変態抑えてて」
「おーけい、まかせとき」
覚醒した美香とカナちゃんの連携プレーでシロを無力化し、私は美香の指示に従ってコハクが好きそうな服を物色する。
彼が好きそうなのは──以前遊園地にデートに行った時、姉がコーディネイトしてくれた膝丈の白いふわふわのワンピースみたいな可愛らしい感じの奴だ。
胸元や足を出す露出したファッションより、彼は最初に一緒に出掛けた時の女の子らしいその服装を一番嬉しそうに褒めてくれた。
それをイメージして、膝丈の柔らかい生地のふわふわしたワンピースを手に取ると、試着室へと促された。
着替えて試着室のドアを開けると
「いいわね、でもせっかくのスタイルを隠すのは勿体ないわね……」
そう言って美香は店内を物色し、細いベルトを持ってきて私の胸の下辺りに巻いた。
「お、ええな……でも首元がちょい寂しいな……」
今度はカナちゃんが店内を回って、存在感のあるペンダントを持ってきて私の首にかけた。
「フン……まぁ、悪くはないが足元がな……」
そう言ってシロは似合いそうなアンクルストラップのついたパンプスを持ってきて私の足に履かせた。
鏡を見ると、コハクが喜んでくれそうなコーディネイトが完成していた。
「よく似合っているわ」
「せやな、桜のためにあしらわれたような服やな」
「まぁ……いいんじゃないか?」
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