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第七章 すれ違う歯車
芽生える友情?
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その日の放課後、私はコハクとカナちゃんに写真の事をお願いした。
二人とも快く了承してくれたものの、リストを見せた瞬間……二人の顔が物凄く引きつったのは見なかった事にした。
とても一日で撮りきれる量ではなく、数日にかけて撮影する事に。制服の写真は昼休みを利用し、私服の写真は次の土日で撮ることにしてその日は解散。
次の日の昼休み、お昼を済ませた私達はさっそく写真を撮るべく屋上に居た。
「まずは、制服バージョンの『痛めちゃった系ポーズ』から消化していこうと思う」
写真リストを見て、まずは簡単そうな所から取りかかってみようとするも、「『痛めちゃった系ポーズ』って何?」とコハクはきょとんとした顔でこちらを見ている。
「コハク君そんな事も知らへんの? こう雑誌でよく見る首や頭に手おいたりするポーズやで」
そう言うとカナちゃんは、ノリノリで実際に首に手を置いてポージングした。
「流石、雑誌モデルは違うね。コハク、先にカナちゃん撮るから見てて。そしたらどんなポーズか分かると思うから」
「うん、分かった」
コハクが了承したのを確認して、私は撮影に取りかかった。
えーと首から始まり、頭、目、顎、肩、腕、腰。
こんなに痛めたら撮影どころじゃないだろうと思いつつも、リストにあるから仕方ない。
すごいのは、コハクとカナちゃんで同じ部位を痛めてるのに、指定された手の角度が違ったりするこの細やかさ。そしてポーズごとに表情まで丁寧に指定してある。笹山さんのパンフレットにかける熱い想いが伝わってくるようだ。
カナちゃんは部位を指定すると的確にポーズを決めてくれて、表情を作るのも上手く中々撮影慣れしているのが分かる。
流石は『浪花の貴公子』という異名を持っているだけあるなと、感心させられた。
「あれが腕を痛めちゃったポーズなの?」
不思議そうにカナちゃんを見るコハクにそうだよと頷くと──
「腕組みしてるだけなんじゃ……」
「……そうとも言うね」
正論過ぎて肯定するしかなかった。
カナちゃんの撮影が終わった頃、いつの間にか遠巻きにその様子をたくさんの女子が見物していた。
「ほな次はコハク君の番やで」
涼しい顔をしたカナちゃんに対し、頷いたコハクはどこか元気がない。それでもコハクは先程までカナちゃんが立っていた位置に移動すると、私の指示に従ってポーズを構えてくれた。
スマホの画面越しに見ても、やはりコハクは格好いい。
思わずそれに見惚れていたら、「桜、指止まってんで」とジト目でカナちゃんに睨まれた。
苦笑いしつつ撮影に戻るも、コハクの表情が強張っていて指定された笑顔が中々撮れない。
どうしたものかと頭を悩ませていると、カナちゃんが遠巻きに見てる女子の方へ近付いた。
「ごめんな、今文化祭の準備してんねや。これ以上は企業秘密やから、すまんけど見物は控えてもらえる?」
伏し目がちにカナちゃんがお願いしたら、「すみません、奏様……」と遠巻きの女子達は慌ててペコリと頭を下げた。
「その代わり、当日楽しみにしとってな。今日のお詫びにぎょうさんサービスしてやんで。せやから、うちのクラス絶対遊びに来てな」
そう言ってカナちゃんが天使の笑みを浮かべると、「はい! 楽しみにしてます! 頑張って下さい!」と言って女子達は頬を赤く染めて屋上から出ていった。
「西園寺君……」
カナちゃんのその行動に、コハクが目を丸くして驚いている。
「か、勘違いすなや。はよ撮ってしまわな桜が困っとるやろ」
恥ずかしかったのか、カナちゃんはプイッと顔を背けた。
その様子を見て私は思わず笑ってしまった。
「何笑うてんねん、桜」
「いや、素直じゃないなと思って。本当はコハクのためでしょ?」
「勝手に言うてろ」
そう言うカナちゃんの頬は少し赤くなっていた。
何だかんだ言っても面倒見がいいんだよな、カナちゃんは。
情にもろい所があるのはきっと関西人の両親譲りなのだろう。
彼の不器用な優しさに気付いたようで、コハクも笑っていた。
「ありがとう、西園寺君」
その時、指示通り優しい笑みを浮かべたコハクの写真が撮れた。
少しは二人が仲良くなったんじゃないかと喜んだのも束の間──
「あかん、そこはもうちょい手をこう上げてやな。ちゃうちゃうこうや!」
カナちゃんがコハクにダメ出しを続けた結果、コハクは徐々に不機嫌になる。
「じゃあ手本見せてよ」
「ええか、よう見とくんやで」
その時突如飛んできた蜂に、カナちゃんが「おわっ!」と頭を押さえてしゃがみこんだ。
「クスッ、それが頭痛めちゃったポーズなの? 何か情けないね」
そう言ってコハクが可笑しそうにお腹を抱えて笑い出した為、また喧嘩が始まってしまった。
結局、昼休みの終わるチャイムが鳴り、その日はそこまでしか撮れなかった。
この調子で、二人同時撮影など出来るのかな……
二人とも快く了承してくれたものの、リストを見せた瞬間……二人の顔が物凄く引きつったのは見なかった事にした。
とても一日で撮りきれる量ではなく、数日にかけて撮影する事に。制服の写真は昼休みを利用し、私服の写真は次の土日で撮ることにしてその日は解散。
次の日の昼休み、お昼を済ませた私達はさっそく写真を撮るべく屋上に居た。
「まずは、制服バージョンの『痛めちゃった系ポーズ』から消化していこうと思う」
写真リストを見て、まずは簡単そうな所から取りかかってみようとするも、「『痛めちゃった系ポーズ』って何?」とコハクはきょとんとした顔でこちらを見ている。
「コハク君そんな事も知らへんの? こう雑誌でよく見る首や頭に手おいたりするポーズやで」
そう言うとカナちゃんは、ノリノリで実際に首に手を置いてポージングした。
「流石、雑誌モデルは違うね。コハク、先にカナちゃん撮るから見てて。そしたらどんなポーズか分かると思うから」
「うん、分かった」
コハクが了承したのを確認して、私は撮影に取りかかった。
えーと首から始まり、頭、目、顎、肩、腕、腰。
こんなに痛めたら撮影どころじゃないだろうと思いつつも、リストにあるから仕方ない。
すごいのは、コハクとカナちゃんで同じ部位を痛めてるのに、指定された手の角度が違ったりするこの細やかさ。そしてポーズごとに表情まで丁寧に指定してある。笹山さんのパンフレットにかける熱い想いが伝わってくるようだ。
カナちゃんは部位を指定すると的確にポーズを決めてくれて、表情を作るのも上手く中々撮影慣れしているのが分かる。
流石は『浪花の貴公子』という異名を持っているだけあるなと、感心させられた。
「あれが腕を痛めちゃったポーズなの?」
不思議そうにカナちゃんを見るコハクにそうだよと頷くと──
「腕組みしてるだけなんじゃ……」
「……そうとも言うね」
正論過ぎて肯定するしかなかった。
カナちゃんの撮影が終わった頃、いつの間にか遠巻きにその様子をたくさんの女子が見物していた。
「ほな次はコハク君の番やで」
涼しい顔をしたカナちゃんに対し、頷いたコハクはどこか元気がない。それでもコハクは先程までカナちゃんが立っていた位置に移動すると、私の指示に従ってポーズを構えてくれた。
スマホの画面越しに見ても、やはりコハクは格好いい。
思わずそれに見惚れていたら、「桜、指止まってんで」とジト目でカナちゃんに睨まれた。
苦笑いしつつ撮影に戻るも、コハクの表情が強張っていて指定された笑顔が中々撮れない。
どうしたものかと頭を悩ませていると、カナちゃんが遠巻きに見てる女子の方へ近付いた。
「ごめんな、今文化祭の準備してんねや。これ以上は企業秘密やから、すまんけど見物は控えてもらえる?」
伏し目がちにカナちゃんがお願いしたら、「すみません、奏様……」と遠巻きの女子達は慌ててペコリと頭を下げた。
「その代わり、当日楽しみにしとってな。今日のお詫びにぎょうさんサービスしてやんで。せやから、うちのクラス絶対遊びに来てな」
そう言ってカナちゃんが天使の笑みを浮かべると、「はい! 楽しみにしてます! 頑張って下さい!」と言って女子達は頬を赤く染めて屋上から出ていった。
「西園寺君……」
カナちゃんのその行動に、コハクが目を丸くして驚いている。
「か、勘違いすなや。はよ撮ってしまわな桜が困っとるやろ」
恥ずかしかったのか、カナちゃんはプイッと顔を背けた。
その様子を見て私は思わず笑ってしまった。
「何笑うてんねん、桜」
「いや、素直じゃないなと思って。本当はコハクのためでしょ?」
「勝手に言うてろ」
そう言うカナちゃんの頬は少し赤くなっていた。
何だかんだ言っても面倒見がいいんだよな、カナちゃんは。
情にもろい所があるのはきっと関西人の両親譲りなのだろう。
彼の不器用な優しさに気付いたようで、コハクも笑っていた。
「ありがとう、西園寺君」
その時、指示通り優しい笑みを浮かべたコハクの写真が撮れた。
少しは二人が仲良くなったんじゃないかと喜んだのも束の間──
「あかん、そこはもうちょい手をこう上げてやな。ちゃうちゃうこうや!」
カナちゃんがコハクにダメ出しを続けた結果、コハクは徐々に不機嫌になる。
「じゃあ手本見せてよ」
「ええか、よう見とくんやで」
その時突如飛んできた蜂に、カナちゃんが「おわっ!」と頭を押さえてしゃがみこんだ。
「クスッ、それが頭痛めちゃったポーズなの? 何か情けないね」
そう言ってコハクが可笑しそうにお腹を抱えて笑い出した為、また喧嘩が始まってしまった。
結局、昼休みの終わるチャイムが鳴り、その日はそこまでしか撮れなかった。
この調子で、二人同時撮影など出来るのかな……
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