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盛大な結婚式を終えて、エルがローザンヌ帝国へやって来た。

皇家の敷地内に、お祖父様が私達専用の新居を用意してくれたので、そこに住む予定だ。

といっても、お祖父様達の住む皇城がすぐ近くにあるため、いつでも遊びに行ける。

お婿に来てくれなんて無理難題をいったのだから、エルにはゆっくりとして欲しかった。
けれど結婚式の打ち合わせなんかでこちらに滞在している時に、ひょんなことからその優秀な能力を発揮してしまった結果、色んな部門から「助けてくれー!」と引っ張りだこなのだ。

流石は将来王になるはずだったお方だ。
文官としても武官としても外交官としても、何でもスマートにこなしてしまわれる。

従兄弟の皇子達のカイルやライオスから「くっ、やりますね……」「すごーい!」と称賛の声を浴びていた。

是非うちに! という声を全て突っぱねて、お祖父様がエルにやってもらいたいとお願いした仕事が、聖女補佐官。つまり、私の補佐をする仕事なのだ。

「私にとっては天職です。喜んでお受け致します!」

と、エルはあっさりと承諾していたものの、本当にそれでいいのだろうか?

お祖父様は呑気に、「ひ孫に会える日も近いかもしれんのう!」なんて言ってたけれども……

「フィオ、ぼーっとしてどうしました?」

「エル……聖女補佐官だなんて、本当によかったのですか?」

聖女補佐官の仕事は多岐にわたる。
救援要請があちこちからくるから、やり取りをして日程の調整。
現場に共に向かって状況確認、終わったら報告書を作成して提出。
それだけでも大変なのに、他にも行事や神殿の巡拝の調整など、こざこざと色んな雑用がある。

エルならスマートにこなしてしまうんだろうけども、王として人を導く素質のある人を補佐官なんかに止めとくのが勿体なさすぎると思ってしまうのだ。

やはり婿入りなんてさせない方がよかったんじゃないのかな……

「一番近くで大切な貴女を支えていけるのです。これ以上の幸せなんてありませんよ。それにこの帝国では、聖女様は何よりも尊い存在です。他国から来た私などに、こんなに貴重な役割を与えて下さったローザンヌ皇帝には、とても感謝しております」

そう言って優しく微笑んでくれるエル。笑顔の破壊力がやばい、天使のようだ。

婚約してからエルはこの国の文化やマナーなどをいちから勉強していた。

自国での職務や引き継ぎもあるのに、本当に大変だったと思う。

弱音一つ吐かずに、いつも優しくて、努力家で、私には勿体ないくらい素敵なお方だ。

どうしてそんな素敵なお方が、私を好きになって下さったのだろう。

誰にでも誠実で真摯に向き合って下さるアズリエル王子は、ルクセンブルグ王国で国民からかなりの支持を集めていた。

完璧すぎて、第二王子だったジルベール様が劣等感の塊に育ってしまったのも、ある意味仕方がないのかもしれないと思ってしまう。

社交界では令嬢達から絶大な人気を誇り、空白の婚約者の座を射止めようと奮起する女性も多かった。

『未熟な私には、まだそのような方は必要ありませんから』と、送られてくる釣書を全て拒否していたという話も有名だったんだよね。

「一つ聞いてもよろしいですか?」

「はい、勿論ですよ」

「私の……どこを好きになって下さったのですか?」

恥ずかしくなって、語尾が消え入りそうに小さくなってしまった。

「そうですね。話すと長くなりそうなので、少しだけ昔話に付き合って頂けますか?」

「はい、勿論です!」
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