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ここまで来るのに、長かったわね。
昔の事が、走馬灯のように駆け巡る。それを遮ったのは、耳障りなジルベール様の声だった。
「逃げる気か?! 自分の犯した罪を見もせずに、尻尾を撒いて逃げるのか?」
建国記念のパーティー会場を出ようとした私に、ジルベール様が問いかけてくる。
ここで逃がしておけば良かったと後悔するのは自分だという事にも気づかずに、本当に馬鹿なお方ね。
いいわ、売られた喧嘩は買おうじゃないの。
どこで攻撃されようが、返り討ちに出来るぐらいに下準備はバッチリしてるからね。
「言っている意味がわかりかねます。私が何の罪を犯したとおっしゃるのですか?」
「お前は、義妹であるリリアナにいつも冷たく当たり虐めていたであろう!」
私が受けた仕打ちに比べれば、あんなもの虐めたうちにも入らないわ。
それを女々しくジルベール様に言いつけていたのね。
まぁいいわ、復讐劇のスタートよ。
「義妹ですか? ジルベール様、何か勘違いをされていませんか?」
リリアナ、貴方は私の持つものを全て奪ってくれたわよね。そのお返しをきっちりさせてもらうわ。
「勘違いだと?」
「リリアナは私の妹でも、公爵家の令嬢でもございません。そうですよね? ロバーツ公爵閣下」
エスコートしてもらって一緒にパーティーへ参加していたお兄様に、私はそう言って視線を送った。
「ああその通りだ、我が可愛い妹よ!」
少し芝居がかってはいるが、周囲にはたくさんの観客がいることだしちょうどいいわね。
「お前は公爵子息のレイス・ロバーツではないか!」
「何を仰っておられるのですか? 三年前からこの私、レイス・ロバーツが妄想虚言癖が酷く精神的に病んでしまった父アルダートン・ロバーツから爵位を受け継いでおりますが? まさかその汚らわしい娼婦の娘に虚言を吹き込まれ、ご存知ありませんでしたか?」
「なっ! どういう事だ? リリアナ」
「そんなはずありませんわ! 私はお父様の養子になって、公爵令嬢になったのですから!」
「残念ながら、その娘も父の虚言に騙され信じ切っているようですね。全く父の病気には困ったものです。まぁ、神殿で戸籍を確認すればその誤解も全て解ける事ですし、嘘だと思うならどうぞご確認なさって下さい」
私が前世で権力を失ったのは、強力な後ろ楯だったお母様とお兄様を失った事が大きい。
ユグドラシル様から絶対防御の祝福を受けたおかげで、お母様とお兄様は勿論無事だ。
お母様のおかげで、前世のように私が離れに隔離される事も、お兄様が騎士団へ入団させられる事もなかった。
まぁ、お父様がミレイユとリリアナを本邸に招待していることはよくあったけど、それはあえて泳がせていた。
お金を湯水の如く使うしか脳がないリリアナ親子と、一緒に豪遊する馬鹿なお父様のおかげで、裏で楽にお父様からお兄様へ爵位継承ができたわ。
普段から仕事を全て部下にさせていたツケよね。彼等を買収して味方につければ、後は簡単だったわ。
仕事も出来ないほど精神的に病んでいると、お医者様に診断書を書いてもらい、後は手続きをするだけ。
当主が病を患ってその職務を全うできないと判断された時、爵位は自動的に長男へと引き継がれる。
そうやってこっそりと、爵位を交代した上で適当に演技して合わせておいてあげたから、未だに自分達は偉いのだと思い込んでいる。
さらにお金さえ与えておけば、いつの間にか自分達から権力が失われている事にさえ全く気付かないんだもの。ほんと笑えるわ。
まぁ気付いて騒いだところで後の祭りだけどね。精神的に病んでる設定のお父様が何を言おうが、誰も信じないもの。逆に騒ぎを起こしてくれたら処分しやすいから、こちらとしても一石二鳥だわ。
薄汚い愛人のミレイユ共々、辺境の何もない領地で療養という名のみすぼらしい生活でもしてもらおうかしら。
昔の事が、走馬灯のように駆け巡る。それを遮ったのは、耳障りなジルベール様の声だった。
「逃げる気か?! 自分の犯した罪を見もせずに、尻尾を撒いて逃げるのか?」
建国記念のパーティー会場を出ようとした私に、ジルベール様が問いかけてくる。
ここで逃がしておけば良かったと後悔するのは自分だという事にも気づかずに、本当に馬鹿なお方ね。
いいわ、売られた喧嘩は買おうじゃないの。
どこで攻撃されようが、返り討ちに出来るぐらいに下準備はバッチリしてるからね。
「言っている意味がわかりかねます。私が何の罪を犯したとおっしゃるのですか?」
「お前は、義妹であるリリアナにいつも冷たく当たり虐めていたであろう!」
私が受けた仕打ちに比べれば、あんなもの虐めたうちにも入らないわ。
それを女々しくジルベール様に言いつけていたのね。
まぁいいわ、復讐劇のスタートよ。
「義妹ですか? ジルベール様、何か勘違いをされていませんか?」
リリアナ、貴方は私の持つものを全て奪ってくれたわよね。そのお返しをきっちりさせてもらうわ。
「勘違いだと?」
「リリアナは私の妹でも、公爵家の令嬢でもございません。そうですよね? ロバーツ公爵閣下」
エスコートしてもらって一緒にパーティーへ参加していたお兄様に、私はそう言って視線を送った。
「ああその通りだ、我が可愛い妹よ!」
少し芝居がかってはいるが、周囲にはたくさんの観客がいることだしちょうどいいわね。
「お前は公爵子息のレイス・ロバーツではないか!」
「何を仰っておられるのですか? 三年前からこの私、レイス・ロバーツが妄想虚言癖が酷く精神的に病んでしまった父アルダートン・ロバーツから爵位を受け継いでおりますが? まさかその汚らわしい娼婦の娘に虚言を吹き込まれ、ご存知ありませんでしたか?」
「なっ! どういう事だ? リリアナ」
「そんなはずありませんわ! 私はお父様の養子になって、公爵令嬢になったのですから!」
「残念ながら、その娘も父の虚言に騙され信じ切っているようですね。全く父の病気には困ったものです。まぁ、神殿で戸籍を確認すればその誤解も全て解ける事ですし、嘘だと思うならどうぞご確認なさって下さい」
私が前世で権力を失ったのは、強力な後ろ楯だったお母様とお兄様を失った事が大きい。
ユグドラシル様から絶対防御の祝福を受けたおかげで、お母様とお兄様は勿論無事だ。
お母様のおかげで、前世のように私が離れに隔離される事も、お兄様が騎士団へ入団させられる事もなかった。
まぁ、お父様がミレイユとリリアナを本邸に招待していることはよくあったけど、それはあえて泳がせていた。
お金を湯水の如く使うしか脳がないリリアナ親子と、一緒に豪遊する馬鹿なお父様のおかげで、裏で楽にお父様からお兄様へ爵位継承ができたわ。
普段から仕事を全て部下にさせていたツケよね。彼等を買収して味方につければ、後は簡単だったわ。
仕事も出来ないほど精神的に病んでいると、お医者様に診断書を書いてもらい、後は手続きをするだけ。
当主が病を患ってその職務を全うできないと判断された時、爵位は自動的に長男へと引き継がれる。
そうやってこっそりと、爵位を交代した上で適当に演技して合わせておいてあげたから、未だに自分達は偉いのだと思い込んでいる。
さらにお金さえ与えておけば、いつの間にか自分達から権力が失われている事にさえ全く気付かないんだもの。ほんと笑えるわ。
まぁ気付いて騒いだところで後の祭りだけどね。精神的に病んでる設定のお父様が何を言おうが、誰も信じないもの。逆に騒ぎを起こしてくれたら処分しやすいから、こちらとしても一石二鳥だわ。
薄汚い愛人のミレイユ共々、辺境の何もない領地で療養という名のみすぼらしい生活でもしてもらおうかしら。
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