いやらし天狗

風見鶏ーKazamidoriー

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いやらし天狗

絶望のさなか

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天狗てんぐ様は帰られたか? 」
「しっかりご堪能たんのうされたようだぞ、見てみろ」

 お堂の扉が開きヒンヤリした風が肌をでたが、身体の熱で寒さは感じない。数人に抱えられた海斗の体は、疲れててピクリとも動かなかった。

慎重しんちょうにはこべ」
 布でくるまれてお堂から運び出される。村人たちの声を聞きながら、意識は途切とぎ途切とぎれになり途絶とだえた。



 とても温かい場所へ座っていた。両脇を誰かに支えられて、ぬるめのお湯をかけられおけを置く音がひびく。
「ん……」
 うす目を開ければ男が海斗の身体を洗っていた。とても丁寧にやさしく泡を洗い流している。

それは見知った顔――助平すけべいの顔がすぐ近くにあった。

「ひひひ、気を失っておるのにみだらな声をだして……ここも天狗様にたんまり可愛がられたようじゃの」
 身体に力が入らず抵抗できない。まだ熱の残るすぼまりへ、助平の指が押し当てられる。海斗が吐息といきをもらしたら、しわだらけの指は揉むように刺激した。

「くぅぅ……っ」
「ひひっ、ちょっと味見してみるかのぉ」

「ダメですよ助平さん、巴那河はながさんに見つかったら怒られますよ……」

 反対側で海斗の体を支えていた男が声を出した。どうやら2人の男に風呂へ入れられている様子だ。

「バレやしない、きよめ役の役得やくとくじゃ。おまえもさっきからヨダレを垂らして見ているではないか、ひひ」
 そう言って、助平は海斗の右胸へ指をわせる。2本の指ではさまれると、乳頭から温かい蜜がひとしずくトロリとあふれる。助平はチュウチュウとその蜜を吸いだした。

豊潤ほうじゅんなよい蜜だのう、若返るようじゃ」
「うぅ……んふぅ……」
 吸いだされる感覚が気持ちよくて、吐息がもれてしまう。
もう1人の男ののどがゴクリと鳴り、海斗の肌へ舌を這わせる。男の舌は蜜をたらして誘うくきの先を舐めた。

「はぁ……あううっ、うぅっ! 」

「こりゃ、あとを付けては皆にバレてしまうぞ。もっとやさしくあつかわんか! 」

「あ、すんません」

 ペニスの先を強く吸われて海斗がうめいたら、助平の牽制けんせいの声が飛ぶ。謝ってはいるもののニヤけた顔の男は、うっすら赤くなった痕を消すように夢中で舐めている。

「は……うっ、うぅんっ……」
 敏感な部分を悪戯いたずらされて海斗が身もだえると、男たちのいやしい笑い声が風呂場へ反響した。



 洗われた後は運ばれ、最初に監禁かんきんされたろうへ寝かされた。
暗い部屋は昼か夜か時間が分からない。カラカラと音が鳴って、またX形の板に縛り付けられる。

いったん部屋から出ていく様子の助平は、なごり惜しそうに布の上から撫でた。敏感な部分を往復して、海斗が反応するといやらしげな笑みを浮かべる。

「こっちを味わうのが楽しみじゃ、ひひひ」
「やっ……くぅぅ……」
 助平の手は浴衣のすそへ忍びこみ、指で窄まりの弾力を楽しむように何度も押した。



(このまま村のやつらにも犯されるのか――)

 なぜ冒険心など出してしまったのだろう、うす暗い部屋の中で1人になった海斗は焦燥感しょうそうかんにかられる。

「誰か……」
 弱々しい声は暗闇に消えて誰にも届かない、なにもできない無力な自分。山川のことも、巻き込んでしまったのではないかとゆううつになる。

男たちに犯された後はどうなるのか、ひょっとしたら証拠隠滅しょうこいんめつで殺されて山に埋められてしまうかもしれない。

間崎まさき教授のよろこぶ顔が見たかっただけなのに……俺がいなくなったら捜索してくれるかな? 浮田うきたは? 穂波ほなみさん無事だろうか――? )

 いつも邪険にしている浮田や、間崎教授の顔が急になつかしくなって思い浮かべた。この世界に入るきっかけは間崎だったが後悔はしていない。

(あのとき俺になんて言ったんだっけ? ……間崎教授)

 陸上をやめてブラついてた頃に出会った間崎の笑顔が鮮やかによみがえる。目を閉じているといろいろな記憶が頭をよぎった。

(あ……これって走馬灯そうまとうってやつ? )

 温かい記憶、会えなくなるのだと考えたら目尻から涙がこぼれ落ちた。



「――――とくん」
海斗かいとくんっ」

 暗闇の中からささやくように呼ぶ声がした。閉じていた目を開けると、山川の顔が目の前にある。

穂波ほなみさっ――」
「しぃーっ、声出したら村の人が来ちゃうから」
 山川は人差ひとさし指を立てて唇の前へ置き、縛っていた縄をほどきはじめた。崖登りをしているせいかロープの扱いに手馴てなれている。

「あ……」
 自由になって床へ足を降ろすとふらついた。身体中に力が入らなくてフワフワした感じだ。

「天狗どもに吸われたからな、しばらく歩けないだろ」

 別の声がして暗闇から大きな影が現れた。熊のような男の姿をみて、叫び声を上げそうになった海斗の口を山川があわててふさぐ。

「海斗くん、声出したらダメだって。ほら富岡とみおか、はやく運んで! 」

 ささやき声なのににじみでる山川の剣幕けんまく、富岡はしぶしぶ海斗を肩へかつぎ牢の奥にある道具部屋へすすむ。肩の上から振り返ったら、山川はさっきまで海斗が張りつけられていた板へ再びロープを巻き直している。

「縛られていたのに中身だけ消えたら、天狗たちの仕業しわざだと勘違かんちがいするかも。逃げるための時間かせぎってやつです」
 ロープを元どおりに戻して小走りで来た山川が説明した。道具部屋の棚下たなしたの床板を外せば、そこに人が1人通れるくらいの穴が出現する。

「戦時中の地下壕ちかごうを掘り進めた穴です。彼らには気づかれていないから大丈夫」

 海斗はいったん下ろされ山川に抱えられる。

富岡が床下へ器用にもぐり、中から腕を出して海斗を引きずり込んだ。山川もそこへ入り床板を閉じる。海斗を担いで身をかがめた2人は、音もないせま洞穴ほらあなをひたすら歩いた。
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