いやらし天狗

風見鶏ーKazamidoriー

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いやらし天狗

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 ダルい朝を迎えた。アラームをかけたはずなのに気がつかなかった。日はすっかりのぼって、時計は朝の10時を過ぎている。
海斗かいとは重い体を起こし、着がえて1階へ下りた。廊下を渡っていると奥から山川が歩いてくる。

「おはようございます。すぐに朝食の準備をしますね」

 昨晩、海斗の様子がおかしかったので心配して起きるまで待っていたらしい。掃除道具を片付けた山川といっしょにダイニングへ向かう。

「具合が悪ければ、消化のいいおかゆやリゾットもできますけど」
「はは……大丈夫ですって、パンとか玉子焼きのボリューム多めでおねがいします」

 気だるさが残っているものの腹は減っていた。
手を洗ってエプロンを着けた山川は、冷蔵庫から材料を取り出し調理をはじめる。山登り客は皆出掛けてしまって、人けのないダイニングへ美味しそうな匂いがただよう。



「そうそう、朝早くにユーリと五郎を連れて探してきましたよ」

「置いてきた俺のカバンとくつ! なにからなにまでホントにありがとうございます! 」

 朝食を終えてから山川が持ってきたのは、谷のお堂へ忘れたカバンや服だった。忘れたというより追いがれたと言った方が正しい、昨日の出来事を思い出して気持ちが沈んだ。

それを察したのか、山川が近づいて海斗の顔をのぞき込む。

「熱は……なさそうですね……海斗くん、昨日――」

 ふいに山川の温かい手がおでこへ触れて心臓がはねる。こんな間近で宿の主人を見たのは初めてだった。無精ひげを生やしているけれど、彼は顔立ちが整ってなかなかハンサムだ。し目がちの目元のまつ毛は長く、妙につやめいた雰囲気に海斗はドキドキとした。

「な、な、なんでもないです。大丈夫ですよ! 朝食おいしかったです! 」
 今日は山へは入らずゆっくり過ごすと告げて、海斗は逃げるように自分の部屋へ帰った。

昨日から調子がおかしい、マエ様という天狗てんぐに出会ってから変になっている。山川を意識した時も体が熱くなって反応した。

「いったい俺どうなっちまったんだ……」

 海斗は体の熱を静めるように、大きく深呼吸してつぶやいた。



 宣言せんげんどおり山へは行かず、部屋で教授のノートを見ながら唸った。海斗は自分に起こった怪異かいいの事柄をメモする。詳細ははぶいてマエ様に会った日付や場所、ちいさな天狗に遭遇そうぐうした場所を地図へ記録する。

「やっぱりパンフレットや間崎教授のノートも、マエ様や谷のことは書いてないなぁ……」

 教授へ送った通信は不在で返ってこない。しかたなくノートをめくっていたら、天狗祭りの文言もんごんが目に入る。天狗祭りは海斗の調査の目的のひとつ、明日開催される村の祭りだ。

ノートには古い写真が張られ、神楽かぐらの演目も書かれていた。天狗の面をつけた者が人さらいの悪い天狗を成敗して改心させ、農作物の不作も天狗の神通力じんつうりきによって豊かになったという物語をまいで表現している。

天狗というのは珍しいけど、よくある民話の物語。しかし黒い天狗はその物語の中にはいない。海斗が見つけた奇妙な廃寺、どこにも記載されてない谷奥の隠されたお堂も気になった。

「あの寺……本当に存在してたのかな? でも穂波ほなみさんは谷の奥寺のことは話してたし……だいたいマエ様って……あっそういえば!? 」

 海斗は到着した初日を回想し、宿の軒先のきさきにいた小さなお爺さんがマエ様について話をしていたのを思い出す。マエ様のお堂のことを教えてくれた人だが、初日以来見かけてない。

「……穂波さんに聞いてみるか」
 もっと詳しい話を聞くため、お爺さんを探すことにした。宿の軒先に座っていたので、山川なら居場所を知っているだろう。



 海斗は意気揚々いきようようと階段を下りた。

「穂波さんにも心配かけちゃったなぁ」
 会ったら再度お礼を言おうと思いながら廊下を歩く。山川を探していたら、奥の部屋で人のうめき声が聞こえた気がして足を止めた。

「いまの声……なんだろう……? 」

 1階の奥にある部屋は山川の居室だ。足音をおさえて部屋へ近づくと、扉のすきまから明かりがもれて中の様子が見えた。

海斗はぎこちない動きですきまをのぞく。

「……くっ……あぁっ……」
 部屋の中で2人の男が組み合い、1人は押し倒されてる。日焼けした太ももは大きく開かれ、おおいかぶさった男がはげしく腰を動かしていた。

(ケンカじゃない……あれってもしかして!? )

 男同士の激しい絡みあいが扉の向こうで繰り広げられる。山川の日に焼けた肌がさらされて組みかれていた。彼は体格がいいのにしかかった男はさらに大きく熊のようだ。

腰を打ちつける大胆な音が戸の外まで聞こえる。

「おまえが朝、谷へ入ったことは分かってるんだ。何を隠してる? はやく言えっ!! 」

「……し……なにも知らないっ……あぐっ」

 覆いかぶさった男が腰を突き上げて、山川の体が跳ねる。外からでも見える男のいちもつは、血管が張って太い肉色にくいろの凶器だ。肉の凶器が尻をえぐって山川は声をあげた。

「へへ……最初は雄叫びあげて嫌がってたくせに、ケツも柔らかくなってすっかりヤラシイ体になっちまったなぁ」

 熊のような男は腰を動かしながら大きな手で山川の胸元を揉む、ぎゅうとつかんで持ちあげた胸の先に尖った乳首が見えた。日焼けしてやや茶色の乳首へ太い舌をわされ、山川は断続的にあえぎ声を上げる。

(穂波さん、女みたいな声……あんな声でるんだ……)
 男同士のからむ姿に目が釘付けになった。海斗は息を殺して扉へはりつき、部屋の様子をうかがう。

あられもない姿で犯されている山川を見ていたら、動悸がはげしくなってマエ様に犯された後孔がうずく。

覆いかぶさっていた男が体勢を変えて、絡みあった部分がよく見えるようになった。男が腰をスライドさせるたび、山川の勃起ぼっきしたものもブルンブルンとゆれる。遠目でも分かるほどたくましい一物いちもつは山川の尻へ埋まっていた。

(すげえ……)

 普通なら目をおおう光景なのに海斗は魅入みいってしまった。岩登りをするには少しムッチリとした筋肉の山川が組みしかれ、淫らな姿をさらしている。
見ている内に海斗の股間も熱くなった。先がツンとうずいて硬くなり、知らず知らず自身の股間へ手を伸ばす。

山川が揺さぶられる律動りつどうにあわせて自身のものを握る手をスライドさせたら、何とも言えない気持ちいい感覚につつまれ海斗は夢中で手を動かした。

「う"あ"ぁっ――――ああ――――っ!! 」
 日焼けした身体がのけぞって痙攣けいれんした。股間にそそり立っていた物から白い液体が飛びだす。
(うっ……!! )
 山川が絶頂をむかえた時、海斗もビクンと身をふるわせた。

みつをまき散らしやがって、もったいねぇなぁ」

 男が山川の茎の先っぽをめて、色っぽい声が聞こえる。そこだけ日焼けしていない陰茎を舐めていた熊男の視線がこちらへ向いて、心臓が跳ねあがった海斗は急いで離れた。

(やばいっ……見られたかな……?)
 海斗は白濁液はくだくえきで汚れた手をポケットへ入れて、あわてて部屋へ戻った。
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