128 / 141
閑話 ~日常や裏話など~
#千隼の妄想話
しおりを挟む
#……第七章の「騒動」後の千隼の話です。
「猿の大将の話では、まだマガツヒに成っていない可能性があります。本当に討ち取っても宜しいのですか? 」
動員された鬼道衆の温羅が尋ねる。
号令で動くものの前ノ坊九郎とは面識がある者も多い。千隼の率いる若い精鋭たちは血気盛んだが、古顔の鬼道衆には疑問を呈する者もいた。
「今マガツヒでなくても、いずれ成るかもしれない危険分子を放って置けと? 」
「それは……」
千隼の厳しい指摘が飛び、温羅は口を噤んだ。そんな折り月読が見つかって保護されたと一報があった
発見した丙が邸宅へ来たものの、肝心な月読の姿は無かった。御山へ帰ってこなくて連絡もない、千隼の苛立ちは心の内へ積もる。
祖父が裏でコソコソと動いていることを知った。
千隼は廊下を行く湯谷を引きとめて説明を求めた。最初は言葉を濁していた湯谷も凍てつく視線にさらされ、口を割ることを余儀なくされた。
「お爺様が、月読様と秘密裏に交渉するということですか? 」
湯谷から一端を聞き出した千隼は、聡い頭で事のすべてを理解した。
若輩者だけれど、当主である千隼を差しおいて重要人物と交渉など、祖父に出し抜かれた気分だった。湯谷の制止を振り切って、すぐに祖父の居室へと向かう。
月読のしようとしている事を知り、千隼は計画を練った。それとなく護衛の若衆に吹聴して鬼達へ知らせた。
鬼平でも抑えられないほど、内部で反発の気運が高まった。鬼達の気質から分かりやすい方法が最適だと、交渉に皆を直接参加させることを祖父へ提案する。
月読が要求を口にすれば、当然鬼たちは反発するだろう。そこへ千隼が助け舟を出す予定を立てて再会に臨んだ。
目論見は途中まで達成されたものの、助け船を出す前に月読が意外な物を出して大広間の空気は一転した。父・隼英の偉大な威力で、涙もろい鬼達は氷解してしまった。
しかし一時の感情に流されても残る問題を自室で話しあう、千隼の提案に月読は驚いていた。
「震えているのですか? 可愛いですね、月読様」
動揺した月読の肩がふるえている、ように千隼には見えた。スッと近づいて月読を押し倒す、悪代官のごとく帯を解いて服を脱がそうと――――帯の解き方が分からない。
仕方なく抱きついて着物の胸元へ顔を埋めたところで、抵抗を止めた月読がため息を吐いた。雄っぱいの感触を確かめたいけれど、重なった着物が邪魔をして千隼の欲しい感触はわずかにしか伝わってこない。
叩いた頬の赤みは引いていた。月読が提案の続きを話してきたので千隼は答える。2人きりで話した本音に、瞼をふせて悲しげに微笑んだ月読は想いを伝えてきた。
まだまだ千隼の道のりは遠そうだ。
鬼達からの反発を防ぐため、表面上の関係を偽装して当主同士の親密さをアピールする事にした。
月読が風呂へ入ってるあいだ、千隼が色々とセッティングしていると湯谷が様子を見にきた。ついでに手伝うよう頼み、ちょっと足りない物もあるけれど思い通りに仕上がった。淡いピンクのふんわりした枕は、さぞ似合うにちがいない。
「千隼様……ええと、あのぅ、本当にこれで宜しいのですか……」
布団を敷き終わった湯谷が訊いた時、扉を開けて月読が現れた。
襟元から風呂あがりの湯気が上がり、ほのかに石鹸の良い香りがした。長風呂で丁寧に体を洗う姿を想像して、千隼の妄想に火がつく。
夜も遅く湯谷が去った後、指定した布団へ月読が横になった。なにげない会話を交わしながら千隼は月読へ迫る。
――――手が触れて温かい体温が伝わった。手を握ると月読が恥ずかしそうに身をよじり布の擦れる音がする。千隼はそのまま月読を引き寄せた。
「さあ、僕を楽しませて下さい」
月読の目の前へ熱り立ったものを見せつけた。月読は恥じらいながらも千隼の雄へそっと手をはわせ、一心不乱に奉仕する。
口を吸って身体を愛撫すると月読の口から吐息がもれた。筋肉の張った豊満な胸を揉みしだけば桃色の実が起ち上がり、誘うようにゆれている。指先で突くと月読は身体をビクリと震わせ、指を噛んでもれ出る声を抑えた。
浴衣が乱れて指を噛む月読は、男に似つかわしくない煽情的な姿をさらす。千隼は覆い被さり、胸元へかぶり付いた。
だがしかし、かぶり付いた胸は大きく膨らんで千隼を圧迫する。
呼吸が苦しくなり藻掻いた。何とか逃れると目の前には月読は居なくて、大きな雄っぱいだけが佇んでいる。
身長よりも大きく卑猥な雄っぱいは、ジリジリと動き千隼に迫った。捕まったら窒息しそうになるので必死に逃走した。
雄っぱいはどこまでも千隼を追いかけてくる。
悶え苦しんでいた千隼が目を覚ますと、厚手の布団が視界をふさいでいた。
「千隼、おはよう」
声が聞こえて眼鏡をかけた千隼は周囲を見まわす。隣の布団はきれいに畳まれ、ピンクの枕も上へ載せられている。月読はすでに着替え、小さな鏡の前で髪を結っていた。柔らかそうな前髪がたれ落ちて揺れてる。
どこから夢だったのだろうかと、千隼は唸ってから鏡の前にいる男の顔を見た。
朝食の準備ができたと、湯谷が扉をノックして起床を促される。
「あのう……月読さま。僕らはどこまで……? 」
「寝ぼけているのか? ほら早く顔を洗いに往ってきなさい」
狐につままれた気持ちになって、大人しく起きあがり洗面所へ向かった。用意を済ませた月読は、千隼の布団をたたんで部屋の隅へ並べていた。
月読を伴って大きな食堂へ行くと視線が集まった。
雑多な会話の音で溢れる中、見ないふりをしながら鬼達がこちらを窺っている。
ここで食事を取るのも鬼達へ見せつけるためだ。茶碗を手に取った月読は、行儀よくおかずを箸でつまんで食べている。
千隼にとっては見慣れた光景なのに、寝起きの月読がラフな格好で朝食を食べる姿を他の者に見られて胸中は複雑だった。優雅に流れる箸さばきを見ながら、千隼はご飯を噛みしめる。
朝食後、月読は祖父に呼ばれて行ってしまった。
柔らかい残り香のする廊下を眺めていた。側に寄ってきた若衆が、月読を制したと千隼を賛辞する。
「その下衆な口を閉じなさい」
スゥと切れ上がった薄茶の目は若衆を窘めてから去った。千隼の目に震えあがった若衆達は、さすが氷の鬼だと讃えていた。
「猿の大将の話では、まだマガツヒに成っていない可能性があります。本当に討ち取っても宜しいのですか? 」
動員された鬼道衆の温羅が尋ねる。
号令で動くものの前ノ坊九郎とは面識がある者も多い。千隼の率いる若い精鋭たちは血気盛んだが、古顔の鬼道衆には疑問を呈する者もいた。
「今マガツヒでなくても、いずれ成るかもしれない危険分子を放って置けと? 」
「それは……」
千隼の厳しい指摘が飛び、温羅は口を噤んだ。そんな折り月読が見つかって保護されたと一報があった
発見した丙が邸宅へ来たものの、肝心な月読の姿は無かった。御山へ帰ってこなくて連絡もない、千隼の苛立ちは心の内へ積もる。
祖父が裏でコソコソと動いていることを知った。
千隼は廊下を行く湯谷を引きとめて説明を求めた。最初は言葉を濁していた湯谷も凍てつく視線にさらされ、口を割ることを余儀なくされた。
「お爺様が、月読様と秘密裏に交渉するということですか? 」
湯谷から一端を聞き出した千隼は、聡い頭で事のすべてを理解した。
若輩者だけれど、当主である千隼を差しおいて重要人物と交渉など、祖父に出し抜かれた気分だった。湯谷の制止を振り切って、すぐに祖父の居室へと向かう。
月読のしようとしている事を知り、千隼は計画を練った。それとなく護衛の若衆に吹聴して鬼達へ知らせた。
鬼平でも抑えられないほど、内部で反発の気運が高まった。鬼達の気質から分かりやすい方法が最適だと、交渉に皆を直接参加させることを祖父へ提案する。
月読が要求を口にすれば、当然鬼たちは反発するだろう。そこへ千隼が助け舟を出す予定を立てて再会に臨んだ。
目論見は途中まで達成されたものの、助け船を出す前に月読が意外な物を出して大広間の空気は一転した。父・隼英の偉大な威力で、涙もろい鬼達は氷解してしまった。
しかし一時の感情に流されても残る問題を自室で話しあう、千隼の提案に月読は驚いていた。
「震えているのですか? 可愛いですね、月読様」
動揺した月読の肩がふるえている、ように千隼には見えた。スッと近づいて月読を押し倒す、悪代官のごとく帯を解いて服を脱がそうと――――帯の解き方が分からない。
仕方なく抱きついて着物の胸元へ顔を埋めたところで、抵抗を止めた月読がため息を吐いた。雄っぱいの感触を確かめたいけれど、重なった着物が邪魔をして千隼の欲しい感触はわずかにしか伝わってこない。
叩いた頬の赤みは引いていた。月読が提案の続きを話してきたので千隼は答える。2人きりで話した本音に、瞼をふせて悲しげに微笑んだ月読は想いを伝えてきた。
まだまだ千隼の道のりは遠そうだ。
鬼達からの反発を防ぐため、表面上の関係を偽装して当主同士の親密さをアピールする事にした。
月読が風呂へ入ってるあいだ、千隼が色々とセッティングしていると湯谷が様子を見にきた。ついでに手伝うよう頼み、ちょっと足りない物もあるけれど思い通りに仕上がった。淡いピンクのふんわりした枕は、さぞ似合うにちがいない。
「千隼様……ええと、あのぅ、本当にこれで宜しいのですか……」
布団を敷き終わった湯谷が訊いた時、扉を開けて月読が現れた。
襟元から風呂あがりの湯気が上がり、ほのかに石鹸の良い香りがした。長風呂で丁寧に体を洗う姿を想像して、千隼の妄想に火がつく。
夜も遅く湯谷が去った後、指定した布団へ月読が横になった。なにげない会話を交わしながら千隼は月読へ迫る。
――――手が触れて温かい体温が伝わった。手を握ると月読が恥ずかしそうに身をよじり布の擦れる音がする。千隼はそのまま月読を引き寄せた。
「さあ、僕を楽しませて下さい」
月読の目の前へ熱り立ったものを見せつけた。月読は恥じらいながらも千隼の雄へそっと手をはわせ、一心不乱に奉仕する。
口を吸って身体を愛撫すると月読の口から吐息がもれた。筋肉の張った豊満な胸を揉みしだけば桃色の実が起ち上がり、誘うようにゆれている。指先で突くと月読は身体をビクリと震わせ、指を噛んでもれ出る声を抑えた。
浴衣が乱れて指を噛む月読は、男に似つかわしくない煽情的な姿をさらす。千隼は覆い被さり、胸元へかぶり付いた。
だがしかし、かぶり付いた胸は大きく膨らんで千隼を圧迫する。
呼吸が苦しくなり藻掻いた。何とか逃れると目の前には月読は居なくて、大きな雄っぱいだけが佇んでいる。
身長よりも大きく卑猥な雄っぱいは、ジリジリと動き千隼に迫った。捕まったら窒息しそうになるので必死に逃走した。
雄っぱいはどこまでも千隼を追いかけてくる。
悶え苦しんでいた千隼が目を覚ますと、厚手の布団が視界をふさいでいた。
「千隼、おはよう」
声が聞こえて眼鏡をかけた千隼は周囲を見まわす。隣の布団はきれいに畳まれ、ピンクの枕も上へ載せられている。月読はすでに着替え、小さな鏡の前で髪を結っていた。柔らかそうな前髪がたれ落ちて揺れてる。
どこから夢だったのだろうかと、千隼は唸ってから鏡の前にいる男の顔を見た。
朝食の準備ができたと、湯谷が扉をノックして起床を促される。
「あのう……月読さま。僕らはどこまで……? 」
「寝ぼけているのか? ほら早く顔を洗いに往ってきなさい」
狐につままれた気持ちになって、大人しく起きあがり洗面所へ向かった。用意を済ませた月読は、千隼の布団をたたんで部屋の隅へ並べていた。
月読を伴って大きな食堂へ行くと視線が集まった。
雑多な会話の音で溢れる中、見ないふりをしながら鬼達がこちらを窺っている。
ここで食事を取るのも鬼達へ見せつけるためだ。茶碗を手に取った月読は、行儀よくおかずを箸でつまんで食べている。
千隼にとっては見慣れた光景なのに、寝起きの月読がラフな格好で朝食を食べる姿を他の者に見られて胸中は複雑だった。優雅に流れる箸さばきを見ながら、千隼はご飯を噛みしめる。
朝食後、月読は祖父に呼ばれて行ってしまった。
柔らかい残り香のする廊下を眺めていた。側に寄ってきた若衆が、月読を制したと千隼を賛辞する。
「その下衆な口を閉じなさい」
スゥと切れ上がった薄茶の目は若衆を窘めてから去った。千隼の目に震えあがった若衆達は、さすが氷の鬼だと讃えていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
56
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる