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第四章
もらった丸薬2
しおりを挟む開いた足のつけ根に形のあらわになったものが曝される。月読はあさましい姿を見られたくなくて顔を背けたが、無言の男はパンツの横ひもをほどき覆隠す布を無慈悲に取りはらう。蜜をたらした部分は反りかえり、黒い双眸にじっくり観察された。視線でさえも媚薬で色づく肌へ刺激を与える。
「う…………嫌ぁ……」
恥辱に身をよじった。頬は紅潮し目尻へ涙がたまり泣きたい気持ちだったが、かろうじて横目で九郎を見上げた。嫌だという割には膝をひろげた煽情的な格好だった。誘ってるように見えたのかもしれない、九郎のノドは鳴り獲物を捕らえた目が細められる。
「言えないのなら、身体に訊くしかないな」
サド気をふくむゾクリとする声が耳元へとどき、九郎が覆いかぶさる。激しく口を吸い、手は肌をまさぐる。
与えられる快楽になすすべなく翻弄される。手のひらが胸元へ触れて硬く尖った突起をゆっくり転がす。敏感になった乳首はさらに凝って手のひらの刺激にのたくる。腹筋の窪みをたどり下肢にも手がのびた。勃起した先端を指先で弄られ、先から雫が滴り陰茎は淫靡にぬめった。
「ひあっ……く……あうぅっ! 」
媚薬で朦朧とした意識のなか、下肢を弄ばれ出したくもない嬌声が口を衝く。
九郎の膝で尻と太腿を持ち上げられた。両足は胸元へつくほど折り曲げられ、秘めた場所まで丸見えになる。筋張った指が滴るしずくを鈴口へ擦りつけて遊んでいたが、双丘の奥にある秘めた入り口へたどり着いた。月読の淫精を掬いとり、喘ぐようにうごめく窄まりへ塗りひろげた。
恥ずかしい場所を観察されながら、丹念に弄られて身悶える。淫精で滑りがよくなり指が潜り込む、内側を刺激された窄まりはぎゅうと締めつけた。
「……ぐうっ!! あぁっ! はあ……はあ……」
のぼりつめて撓った月読のものから白い液が迸り腹を濡らした。全身は痙攣してこわばり、九郎の指を咥えて放さない。1本だった指は反対に増やされて内側をかきまわされる。浅い刺激がもどかしくなり、月読の奥はもっと太いものを欲するように疼いた。
九郎はシャツを脱ぎ、ズボンの前を寛げ腰を押しあてた。
「や…………くろ……だ、め……」
舌がもつれて上手く声が出ない、千切れかかってぶら下がる理性は九郎に抵抗した。それに反して身体の内側は九郎のものを呑みこもうと蠕動する。九郎の先端はすぐには挿入されず焦らすように何度も押しつける。入り口へ塗りつけられた精液と先端が擦れるたび卑猥な音がした。
身体はふるえて自然と足がひらき、入り口と奥は物欲しそうにヒクつく。火照った肌はどこを触られても泉みたいに快感が湧きでる。
「俺を欲しがれ明」
耳朶に熱い唇の感触がして鼓膜へ低い声が響く。拒絶と受諾の狭間でゆれる理性の欠片は溶けおち、その奥から何かが腕を伸ばす。
「…………ほ……しい……九郎……」
ようやく月読の口から言葉が落ちた。口の端をあげた九郎は月読の頭をたぐり寄せ濃密な口づけをした。入り口に押しつけられた先端が挿しこまれる。熱く脈打ったものは窄まりをこじ開け埋まり、奥までかき乱される。
「――――あぁっ!! 」
脳はしびれて理性は溶け落ち抑えるものはない。呼応するように楔を穿つ硬い肉杭が抜き挿しされる。月読の手は空を彷徨い、九郎の頭をつかんで唇をねだる。もはや制御もきかず快楽を求め、いやらしい肉の塊になった身が九郎へ絡みつく。
腰は深く打たれ、月読の最奥を突き上げる。
「くぅっ……あ――――っ――――ああっっ!! 」
いっそう激しく突かれ、弓なりに反って痙攣した。九郎は精を放ったが、熱い杭は硬さを失わないどころか増々膨張して内を圧迫する。抱き起された月読は足をひらいて向かい合わせに跨る体勢になった。
九郎の熱いものを咥えたまま座り、硬く張りつめた肉杭を深々と根元まで呑みこむ。腹の奥まで貫く杭に愉悦を感じ、全身はふるえて身じろぐ。
月読を抱えた男は腰を浮かせ、ゆっくり下から突き上げた。触れあった肌は燃えるように熱く、ゆっくり突かれる生ぬるい感覚に焦れる。月読は両腕をまわし身体を押しつけた。九郎の舌は首筋をつたい、目の前にある胸の尖りを舌先でつつき吸った。赤く色づいた実を舌先で転がされると、細かい電流が流れて尻へおさまる硬い肉杭を締めつけた。
「……っ」
強く締めつけすぎて九郎は呻いたが、その口元は笑っていた。
溶けてしまった理性は汗になり肌をつたって流れる。恍惚と快感をもとめ、月読も喘ぎながら自らの腰をゆるゆると動かした。互いの息づかいが部屋へ反響した。
熱い杭の先は最奥を抉じ開けるように穿つ。下から突かれるたび九郎の鍛えた腹を白濁で汚し、いやらしく淫らに陰茎は擦られる。快楽の波長がまた大きく波打ち月読は絶頂を迎えた。背筋がしなり九郎のものを咥えて締めつける。
「――――ぁっ――――ああぁっ!! 」
「くっ」
意識が落ちそうになり身体は硬直した。硬直が解けて弛緩すると、九郎の腕はしっかりと抱き留めた。今度は九郎の腰が大きく動かされ最奥へ情熱の滾りを吐き出した。流動体になった鉄を流し込まれたごとく腹の奥は熱い。
月読は小さく跳ね、自身も熱い粘液を散らせた。
抱きよせられキスをされる。貪るような激しい接吻ではなく、優しい口づけだった。いつ流れていたのか目尻の涙を九郎に吸われて多幸感に包まれる。
脱力した月読の身体はシーツへ横たえられた。未だ引き抜かれていない九郎の肉杭が内壁を刺激する。イッたばかりの陰茎はシーツに擦れて反応する。普段なら吐きだして治まるはずの昂りはいっこうに鎮まらない、より敏感になって擦れる度にビクリビクリと震えた。
口へ入れた甘い丸薬の味が舌によみがえる。
「まだ大丈夫そうだな」
九郎が低い声で笑い身体をうつぶせにされた。体位が変わり、肉棒で内壁をかき回されて月読は喘ぐ。挿入されたままの肉杭はふたたび硬さを取りもどす。
「うあっ、ま、だぁ? 」
身体を支えきれず姿勢がくずれる。尻だけ持ち上げられ、情けない腹ばいの姿で九郎と繋がった。先程まで欠落していた恥じらいが多少戻ってくる。
九郎がゆっくり腰を動かしはじめて、羞恥心が削ぎ落されていく。下肢から脳髄へと快感が伝わり、まぶたの内側は白く染まる。共鳴するように理性はふたたび快楽の彼方へと飛んでいった。
チュン、チュンチュン。
はっと目が覚めた月読は辺りを見まわす。九郎は居なくて布団と浴衣もきれいに整っていた。頭の中身もスッキリして、ひょっとしたら昨日の出来事は夢だったのかもしれない。
起き上がって動こうとしたら尻の奥へ疼痛がはしる。
奥のジンジンする感覚に憶えがあり、月読は手を頭へ当てて項垂れる。出来てしまった既成事実に頭をかかえた。立とうとしたが腰にも疼痛がきて呻いた。四つん這いの情けない姿で扉のところまでゴソゴソ進む。
扉を開けるまえに外側から開き、直立不動の九郎が立ちふさがった。黒い双眸は布団の辺を彷徨い、真下にいた月読を発見した。月読は扉を開けるため、片腕を上げた状態で固まっていた。廊下の向こうから人々の話し声が聞こえる。九郎は扉をそっと閉めて寄り、月読の腰を持ちあげてきちんと座らせた。
目の前へ腰をおろした男はじっと見つめてくる。
「大丈夫か? 昨日のことは憶えているか? 」
憶えるもなにも、後半は怪しいけれどしっかり記憶には残っている。昨晩の出来事を思いだし顔へ熱があつまる。よりにも選って一番見られたくない姿を見られた気がして、どんな顔をしたらいいのか分からず月読は引き攣った。
奇妙な薬のせいだと割り切った九郎は昨晩と違い至って普通の態度だ。
「昨日は何を飲んだんだ? 心当たりは? 」
間を置いて九郎が訊いてくる。昨晩も尋ねられた気はするが答えられなかった。
「えっと棚へ置いた袋の中に――――」
思考も冴えて舌もしっかり動く、今日は質問にもちゃんと応じた。口に入れた甘い丸薬ともらった経緯を話す。
「お前……そんな怪しげな物を食べたのか」
九郎がやや呆れ気味に溜息を吐いた。弁明している内にまた顔に熱がたまり月読は気恥ずかしさでうつむく、いたたまれない気持ちで眼前の男をまともに見れない。
口をもごもごさせていると九郎の唇が啄ばんで離れた。食事を運んできた彼に見守られながら遅めの朝食を摂った。
「今日はしばらく休んでろ」
九郎は烏達の待つ仕事部屋へ戻った。
月読は布団へ仰向けに寝転がった。小さいおっさん妖精に嵌められた気がしなくもない、そしておっさん妖精からもらった怪しい薬は没収されたのだった。
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