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坂木兄弟が家にやってきました。
確執と協調
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「おかえり」
会社から帰ってワイシャツ姿のままの父が穏やかに言った。ユウマに手を引かれ席へつく。
「君たちがどんな関係なのか聞かせてくれないか? いつから?」
話を聞いたようすの父は普段の口調で問いかける。こちらを直視できないマミさんは下を向いていた。
付き合うことを明言してないから時期なんてわからない、流され覚悟もあやふやな俺はなにも言えなかった。隣にいたユウマはまっすぐ顔を上げ、親交を深めるうち俺に惹かれたことなど説明した。体の関係のことも聞かれ具体的には濁したけれど、そういった行為があったことは明かした。
「そんな……ユウマ、なんてこと……柊也さんごめんなさい、私達がこの家に来なければこんなことには……」
つねに穏やかにふるまっていたマミさんの手はふるえてる。青ざめた彼女は顔をおおって涙ぐみ、父との再婚を破棄することを申しでた。冷静さを失った彼女の態度を見て俺はとんでもない事をしてしまったのだと覚った。
「その必要はありません。俺、働いて家を出ます。……落ちついたら楓のこと、迎えにくるつもりです」
「ユウマ……あなた……」
マミさんは信じられないといった表情でユウマを見た。まさか公園から家に帰るまでのあいだにこのような決意を固めたとはつゆ知らず、俺も呆然となりゆきを見ることしかできなかった。
「マミさんもユウマ君も、すこし頭を冷やそうか」
混沌とした状況で父が口をひらいた。
「君たちはまだ子供だ」
「もう充分働けます。楓のこと、本気なんです」
「そう言うことじゃない、君が働くことや男同士なのを否定してるわけでもない。一時的な感情にまかせてその後は? 君のお母さんや弟のことは? それで本当に相手を幸せにできるのか? そもそも君は楓の意思を確認したのか?」
見開かれたユウマの目がこちらを見る。彼がやりたいことを捨てて働くなど俺も望んではいない、すみで見守ることしか出来なかったけど勇気をふりしぼって声にだした。
「俺はやめずに大学行ってほしいと思ってる。いつまでも待つよ……だって俺もユウマのこと好き……だから」
よくやったとは言い難いちいさな声だったけどしっかり伝えた。ユウマは食い入るように俺を見つめた。両親のまえだから触れ合うこともできず、たがいの視線は絵の具みたいに溶けて混ざる。短い時間なのに永遠に見つめ合っていた気がする。
「楓の意見も聞けたし、話を前へすすめようか?」
止まった時は動きだす。メガネをなおした父はワイシャツの襟元をゆるめた。ふだん会社でみせる顔、家でうっかり者だった父はとても心強い大人に思えた。マミさんは気の抜けた顔で俺を見てる。リビングは竜巻が過ぎ去ったみたいに静まりかえっていた。
俺やマミさんのためにもユウマは勉強して進学すること。環境が変われば気持ちも変化するかもしれない、大学へ行き俺たちがいまの気持ちを持ち続けることが出来たなら、その時はもうなにも言わないと父は言った。俺も成績が落ちてたからしっかり釘を刺される。さいごに皆が暮らす家で危うい行為は禁止のお達しがでて反省した。
「ユウマ君、マミさんがきみに話したいことがあるそうだ。僕も同席していいかな? 楓はさきに部屋へ帰りなさい」
坂木家の母と長男の話しあいを残し、俺はリビングを出る。嵐のまっただ中をくぐり抜けいっきに肩の力がぬけた。階段でつまづき、なんとか部屋へたどりつく。
ベッドへ大の字になっていたらドアがノックされた。ソウマはベッド脇へ腰をおろし、茫とした俺をじっと見てる。彼に事情を説明するため口をひらいたが頭のなかは滅茶苦茶で言葉にならない。
「ソウマ……もしかしたら再婚なくなるかも……」
「そうなのか。別々に暮らしても、楓の顔を見に来ていいか?」
「うん……いいよ」
うまく説明できなかったけどソウマは納得してくれた。仮の同棲は明日終了する。
会社から帰ってワイシャツ姿のままの父が穏やかに言った。ユウマに手を引かれ席へつく。
「君たちがどんな関係なのか聞かせてくれないか? いつから?」
話を聞いたようすの父は普段の口調で問いかける。こちらを直視できないマミさんは下を向いていた。
付き合うことを明言してないから時期なんてわからない、流され覚悟もあやふやな俺はなにも言えなかった。隣にいたユウマはまっすぐ顔を上げ、親交を深めるうち俺に惹かれたことなど説明した。体の関係のことも聞かれ具体的には濁したけれど、そういった行為があったことは明かした。
「そんな……ユウマ、なんてこと……柊也さんごめんなさい、私達がこの家に来なければこんなことには……」
つねに穏やかにふるまっていたマミさんの手はふるえてる。青ざめた彼女は顔をおおって涙ぐみ、父との再婚を破棄することを申しでた。冷静さを失った彼女の態度を見て俺はとんでもない事をしてしまったのだと覚った。
「その必要はありません。俺、働いて家を出ます。……落ちついたら楓のこと、迎えにくるつもりです」
「ユウマ……あなた……」
マミさんは信じられないといった表情でユウマを見た。まさか公園から家に帰るまでのあいだにこのような決意を固めたとはつゆ知らず、俺も呆然となりゆきを見ることしかできなかった。
「マミさんもユウマ君も、すこし頭を冷やそうか」
混沌とした状況で父が口をひらいた。
「君たちはまだ子供だ」
「もう充分働けます。楓のこと、本気なんです」
「そう言うことじゃない、君が働くことや男同士なのを否定してるわけでもない。一時的な感情にまかせてその後は? 君のお母さんや弟のことは? それで本当に相手を幸せにできるのか? そもそも君は楓の意思を確認したのか?」
見開かれたユウマの目がこちらを見る。彼がやりたいことを捨てて働くなど俺も望んではいない、すみで見守ることしか出来なかったけど勇気をふりしぼって声にだした。
「俺はやめずに大学行ってほしいと思ってる。いつまでも待つよ……だって俺もユウマのこと好き……だから」
よくやったとは言い難いちいさな声だったけどしっかり伝えた。ユウマは食い入るように俺を見つめた。両親のまえだから触れ合うこともできず、たがいの視線は絵の具みたいに溶けて混ざる。短い時間なのに永遠に見つめ合っていた気がする。
「楓の意見も聞けたし、話を前へすすめようか?」
止まった時は動きだす。メガネをなおした父はワイシャツの襟元をゆるめた。ふだん会社でみせる顔、家でうっかり者だった父はとても心強い大人に思えた。マミさんは気の抜けた顔で俺を見てる。リビングは竜巻が過ぎ去ったみたいに静まりかえっていた。
俺やマミさんのためにもユウマは勉強して進学すること。環境が変われば気持ちも変化するかもしれない、大学へ行き俺たちがいまの気持ちを持ち続けることが出来たなら、その時はもうなにも言わないと父は言った。俺も成績が落ちてたからしっかり釘を刺される。さいごに皆が暮らす家で危うい行為は禁止のお達しがでて反省した。
「ユウマ君、マミさんがきみに話したいことがあるそうだ。僕も同席していいかな? 楓はさきに部屋へ帰りなさい」
坂木家の母と長男の話しあいを残し、俺はリビングを出る。嵐のまっただ中をくぐり抜けいっきに肩の力がぬけた。階段でつまづき、なんとか部屋へたどりつく。
ベッドへ大の字になっていたらドアがノックされた。ソウマはベッド脇へ腰をおろし、茫とした俺をじっと見てる。彼に事情を説明するため口をひらいたが頭のなかは滅茶苦茶で言葉にならない。
「ソウマ……もしかしたら再婚なくなるかも……」
「そうなのか。別々に暮らしても、楓の顔を見に来ていいか?」
「うん……いいよ」
うまく説明できなかったけどソウマは納得してくれた。仮の同棲は明日終了する。
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