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後編
鬼が笑う2
しおりを挟む背中を預けた月読が肩で息をしていると、常闇色の鬼に膝を抱えられて大きく開かれた。多娥丸の綻んだ口元から息がもれて、耳元へかかる。
脈打つ肉棒が尻の谷間を往復した。割りひらかれて露わになった窄まりを何度も擦られる。
「こすられる度にヒクついてるな」
「あっ、や……みるなぁ……」
多娥丸の肉棒で弄ばれる窄まりを隼英に晒されて、余りの恥ずかしさに月読は顔を逸らした。逃げた顔へ双子の唇が奪い合うように重なって、舌が喉奥まで潜りこむ。
2つの怒張した魔羅が尻へ交互に擦りつけられた。指で慣らされた窄まりは、待ちわびたように宛てがわれた肉棒の先端へ吸いつく。
隼英がかすかに笑った。
「さあ、俺を、俺たちを受け入れてくれ」
脈打つ雄が月読の身体へ突き入れられた。激しい抽挿、肉棒に擦られる内奥は快楽を生みだし熱を産む。隼英のものが引き抜かれると、後ろから侵入した多娥丸の一物に突かれてかき回される。
「――――っああ――――ああぁっっ! 」
かわるがわる前と後ろから緩やかにそして荒々しく突き上げられ、双子に突かれるまま肉体は揺さぶられる。はさまれた月読は悦楽に戦慄いてダラしなく口をひらいた。意識はフェードアウト寸前、どちらとも判別できない唇が落ちてきて舌が絡みあう。
思考はぐちゃぐちゃで白く霞み考えることさえ出来ない、2人分の熱が身体へ押しこまれ、脈打つ鼓動は歓喜を感じて双子の腕に堕ちた。
うすらぐ意識のなかで声が聞こえる。
「やっぱこうしてると手放すのが惜しくなっちまうなぁ」
「はん、死んじまったくせに未練タラタラだな」
「うるせーよ! テメエが言うんじゃねえ」
仲直りした双子の会話が聞こえて、微睡みに沈んでいた月読は口を動かした。言葉は音にはならず、伝わったか不明だったが返答があった。
「まだ意識あったのか? オマエあんな烏の小僧で満足できるのかよ、ほんとは足りねえんじゃねえの? 」
もたれかかった身体を通して届く声に、月読は笑みをこぼす。足りなくて当り前、互いに補いながら生きていくと決めた。隼英が生きていた頃の少年は大人になって、守られていた明にも大切に守る者が出来た。
「なんだぁ、すげー淋しいじゃねえかよ」
「おい、いつまでくっちゃべっているつもりだ。俺がいることも忘れるなよ」
「多娥丸横入りすんな、なれなれしいんだよ。だいたい明もコイツに甘過ぎねえ? 」
生きていた頃と変わらない調子なので月読は微笑んだ。生涯を共に歩む者はいるけれど、隼英たちとも気の済むまで一緒にいると伝える。
――――肉体が無くなって、意識も消えて、いつか魂が姿を消すその時まで。
双子は息を呑んだように黙った。しばらくして、隼英と多娥丸が穏やかに息を吐きだす音が聞こえた。
「なんの見返りも無く鬼を2匹も従えるとは、とんでもなくロクでもねぇ男に育っちまったなぁ」
隼英と多娥丸の笑い声がして、月読の意識は霞のように霧散した。
***************
「はっ!? ……夢、か? 」
窓から差しこむ淡い陽光、山から降りてきた小鳥が窓辺でチチチと鳴いている。
「誰のせいだと思ってるんだ……」
隼英の最後の言葉にかける声がまたもや届かなかったので、月読はブツブツ独り言ちた。
髪の毛をかき上げた月読は、生々しい夢を思い出して大きく溜息をつく。
股間のあたりが冷たい。嫌な予感がして浴衣の裾をめくって覗くと、パンツは夢精の白い液に塗れていた。夢精なんて久しぶりで、額に手を当てた月読は項垂れる。
廊下を歩く足音がして、誰かが寝室のドアを開けた。
月読は慌てて浴衣の裾を閉じる。
「明、何時までも出てこないと思ったらまだ寝てたのか」
「お……おはよう九郎……」
山伏の黒い装束を着た九郎が立っていた。
――――そういえば、早朝の山駆けを約束してたっけ。
「あーははは、忘れて寝過ごしたみたいだ……」
力なく笑って謝ると、九郎の軽いデコピンが飛んできた。起き抜けのおでこの痛さに大袈裟に呻いて両手で押さえる。
「体の調子が悪いわけではないのだな? 」
近くへ腰を下ろした九郎が体調をうかがう。しかし怪訝な顔になり、辺りを見回して月読の髪や首筋の匂いを嗅ぎはじめた。
「…………いやらしい匂いがする」
「そっ、そんなわけあるか!? 」
月読は動揺して思わず大きな声で否定した。目付きの悪い烏はこちらをジッと見つめている。
間の悪いことに千隼が寝室へ入ってきた。九郎と同じような山伏の格好をしている。
「月読さまっ、頑張って早起きしましたよ! 褒めて下さい……あれ? 起きたばかりですか? 」
――――今日は千隼も来るんだった。
心の中で盛大にうなだれた月読は、平静さを保ちつつ約束に遅れた事を詫びる。千隼は気にしてないと笑っていたが、何かに気がつき月読のにおいを嗅ぎはじめた。
「あれ? ……なんか……月読さま、エッチな匂いがする!? 」
スンスン鳴る鼻が嗅ぎまわり、浴衣の裾へと辿りつきそうになった。
「ない! そんな匂いはドコにもないって!! 」
真っ赤になった月読は立ちあがり、寝室を走り出て洗面所へと逃げ込む。
部屋に残された九郎と千隼は顔を見合わせていた。
―――――――――――――――
お読み頂きありがとうございます。
それは夢か真実だったのか、次回はエピローグです。
※……「くっちゃべる」は「ぺらぺらとよく喋る」「しゃべりまくる」などの意味合い。広域で使われますが方言のようなので記載します。
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