【R18】夫を奪おうとする愚かな女には最高の結末を

みちょこ

文字の大きさ
上 下
14 / 20

14話※

しおりを挟む

 ソフィアは私の言葉に動揺しているのか、浅い呼吸を繰り返しながら怯えたような瞳で私を見つめている。

「は、し、仕事……? な、なに?」

 分かりやすいくらいに声が震えている。
 思わず笑ってしまうくらいに。

 その仕事が何なのかを知った時には、きっと今よりも更に恐怖で震え上がるのだろう。

「……ふふっ。どうせ今の貴女に真っ当な仕事なんて得られないでしょうから、私が代わりに見つけておいてあげたの。手間暇掛かったんだから感謝してちょうだい」

 身体を震わせるソフィアに微笑みかけ、突き飛ばすようにしてセバスチャンの前に差し出した。勢い余り床に転んだソフィアに、セバスチャンは紳士のようにそっと手を差し伸べる。

「さぁ、アデリー様。流石に裸で外を歩く訳にはいきませんから、服を着てください。私が貴女の仕事場まで案内させて頂きます」

「はっ、い、意味が分からない! 仕事って何のことよ!? そんなこと頼んでないわ! こんな勝手なことをして許されるとでも思っているの!?」

 ソフィアは肩で大きく息をしながら荒々しい声を上げ、セバスチャンの手を払いのける。

 これだけの事をしておいて、まだ反省の色を見せないなんて。フィンには怖い思いをさせてしまったけれど、凶悪な犯罪者が世に放たれないよう、余計な手出しをせずに見張っておいたのは正解かもしれない。

 今更過ぎる抵抗を見せる彼女に呆れたように溜め息を吐いた刹那、ソフィアは血走った目で睨むように私を見据え──次にベッドで毛布にくるまるフィンに視線を移した。

「フィンさまっ、毎日セックスをしても妊娠すら出来ないこんな石女よりわたしの方がいいはずです! わたしだったらフィンさまの子供を……!」

 ──石女。

 ソフィアの口から唾液と共に飛び散らかされた悪意ある言葉に、眉間が微かに痙攣する。

 込み上げる怒りに耐える私に気付く様子一つ見せず、ソフィアはベッドを這い上がり、フィンに近付こうとする。その醜い姿は、まるで餌をねだる豚のようで。咄嗟に彼女をベッドから下ろそうと手を伸ばした──が、先に行動したのはフィンだった。

「近寄るな! ストーカー!」

 フィンは容赦なく片足で彼女の顔面を蹴り付け、ストーカー女は裏返った蛙のようにベッドから床にひっくり返った。倒れ落ちたソフィアを見下ろすフィンの目付きは、完全にごみ屑を見るそれで。予想だにしなかった彼の行動に、ソフィアを止めようとベッドに伸ばしかけていた手が硬直してしまった。

「……俺のことはともかく、汚い口でシャーリーのことを喋るな。吐き気がする!」

 息を震わせながら、拳を強く握り締めるフィン。呆然と彼を見つめていると、フィンは私を抱き寄せるようにして自らの腕の中に閉じ込めた。

「俺は子供を生ませる為にシャーリーとセックスをしているんじゃない。愛しているからシャーリーを抱くんだ! これ以上俺とシャーリーに関わるな!」

 怒りからか、憎しみからか、それとも嫌悪感からか。心優しい夫は、今までに見たことがない憎悪に満ちた表情を浮かべていた。

「フィン……」

 いつものように、優しく彼の名を呼んでみる。

 すると、フィンは我に返ったように目を見開いて。抱いている私に穏やかな眼差しを向けた。

「フィン。ありがとう、愛しているわ」

「……シャーリー」

 彼の頬を両手で包み込み、顔を近付ける。フィンも私に合わせるように睫毛をゆっくりと伏せて──唇が重なった瞬間、ソフィアの発狂したような叫び声が寝室に響き渡った。

「いやぁぁぁ! フィンさま、フィンさまぁ!」

 ストーカー女の耳障りな声も、フィンと交わす甘く蕩けるような口づけを前には、一寸の邪魔にもならない。

 唇が繋がって一つになってしまうのではないかと言うほどに、ぐぐぐっと互いの唇を押し潰し合って、強く吸い付き合った。

「シャーリー……」

「フィン……フィン……っ」

 彼の唇から漏れる熱に促されて、唇を重ねたまま自分の服を脱いでいく。

 フィンと素肌で抱き合って、唇がぐちゃぐちゃになるような激しいキスをして、彼と愛を分かち合いたい。フィンと一つになりたい。その想いだけが、私の身体を蝕んでいった。

「んっ、はぁ……はぁ……っ」

「シャーリー……!」

 部屋に響き渡る二つの呼吸。私は脱ぎ去った服と下着をベッドの下に投げ、丸裸でフィンの太股に股がり──彼と向かい合って座っている状態になった。

 互いの頬を両手で包み込み、熱を孕んだ瞳で見つめ合う。
 今すぐにでもフィンに食べられて、私も彼を食べてしまいたい。お互いを貪り尽くしてしまいたい。

「フィン……好きよ。貴方を誰にも渡したくない。愛しているわ」

「シャーリー。俺もだ。シャーリーを世界で一番愛している」

 どちらからともなく顔が近付き、再び唇が重なる。

 熱い吐息を混じらせながら、フィンの柔らかな唇にむしゃぶりつき、唾液でべとべとになった唇を密着させたまま、ゆっくりとゆっくりと腰を上げた。

「んっ」

「あっ、あぁ」

 くちゅりと卑猥な水音を立てて、フィンの熱すぎる先端を蜜口に宛がう。さっきの深い口づけだけで、蜜壷から溢れ出すほどの愛液がこぼれ出していて。
 擦り付けるように腰を回すだけで、ぬちゅぬちゅと厭らしい音が際立った。

「はぁ……シャーリー……」

「フィン……」

 互いの口内を貪り合ったまま、彼の首に手を回し、フィンは骨張った指で私の腰を撫で回す。微かに瞼を開ければ、フィンも薄目を開けていて。

 深い海のような色の瞳を見つめたまま、腰をぐっと下ろした瞬間──空気が切り裂けるようなソフィアの泣き声が響き渡った。

しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...