【R18】夫を奪おうとする愚かな女には最高の結末を

みちょこ

文字の大きさ
上 下
7 / 20

7話

しおりを挟む

 昼間から寝室でフィンと無我夢中で身体を何度も重ね、気付けばもう夜中を迎えていた。

 たっぷりと愛し合った余韻に浸るように、フィンと裸で抱き合いながら深い口づけを交わして。身も心も幸せに包まれていた。あとはあのストーカー女さえいなくなれば、完璧なのに。

「フィン。んっ」

 私が舌をチラリと覗かせれば、フィンも躊躇うことなく舌を出して。ざらりとした生温い感触を堪能するように、お互いの舌を念入りに舐め合った。

「はぁ……シャーリー……」

「フィン……っ」

 舌のキスで興奮を煽られたのか、フィンは唇を密着させて口づけをより深くさせていく。ぬちゃぬちゃと唾液が混じる音を立てて互いの口内を貪れば、下腹部を疼くような熱がじんわりと広がっていった。

 この深くて甘い口づけだけは、私だけのものだったのに。あのくそ女、私のフィンにディープキスまでしやがった。本当に本当に許せない。今度フィンに触れたら、四肢を引き千切って──

「シャーリー。どうしたの?」

「え?」

 突然唇を離されたと思ったら、フィンが私の眉間をほぐすように指先で触れてきた。

「眉間にシワ寄ってる。なんか怒ってる?」

 顔を顰めて尋ねるフィンに、ほんの少しだけ、胸の奥につっかえるようなモヤモヤが生まれた。

 フィンもフィンよ。あれだけ気を付けろって言ったのに、簡単にキスされて。舌を入れられてもされるがままで。泣くほど嫌だったのなら、我慢しないでソフィアを殴り飛ばしてくれれば良かったのに。
 例えどんな脅しをされても、撥ね付けて欲しかった。私以外とキスなんてしないで欲しかった。

「……フィ、フィンのバカ……」

 心の中で留めようとした言葉が漏れた瞬間、瞳から滝のように涙がこぼれ始めた。急に泣き始めた私に、フィンは大きく目を見開いて。頭を撫でながら、宥めるように何度も口づけをした。

「泣くな、シャーリー。何があったか、ちゃんと教えてくれ」

「んっ、んっ」

 ちゅっ、ちゅっ、と啄むようなキスを交わしながら、フィンの首に腕を回す。そして、強張った喉に唾を流し込み、震える唇をゆっくりと開いた。

「フィ、フィンは私の旦那さんなのに、他の女と二回もキスするから」

「シャーリー……」

「私以外とキス、しないで。嫌なの。本当に嫌なの」

 キスと言うよりはキス、と言う方が正しいかもしれないけれど、それでも嫌なものは嫌。

 フィンと出会ってから七年、恋人になってから五年、結婚してから二年。そろそろ落ち着いてもいいはずなのに、時が経っても彼への執着心が薄れるどころか膨れ上がるばかり。他の女が少しでも彼に近寄れば、直ぐにやきもちをやくし、牽制もする。髪の毛の一本だって触れられたくない。こんなにも醜い嫉妬をする自分が本当に嫌だ。

「シャーリー」

 フィンは口づけを止めると、微かに震える私の身体をそっと抱き寄せて、背中を優しく擦った。

「ごめん、シャーリー。傷付けて本当にごめん」

「ダメ。許さない」

「困ったな。どうしたら許してくれる?」

 私を抱き締めながら、耳朶に音を立ててキスをするフィン。

 フィンは寧ろ被害者側だからそこまで責めるのは間違いなのかもしれないけれど、ちょっとくらい不貞腐れてもバチは当たらないはずだ。

「……じゃあ、今度の休みにデートして」

「そんなんでいいのか?」

 熱い吐息が混じったフィンの声が、耳に吹きかかる。問い掛けに答えるように、ぎゅっとフィンの身体を抱き締めて小さく頷いた。

「優しいな、シャーリーは。デートで許してくれるんだ」

「ん。心が広いの」

 まぁ、あのストーカー女は死んでも許さないけどな。二度とフィンに近付けないように、身体を切り刻んで鍋でじっくり煮て、最後は肉食獣に食わせて──

「そう言えば、前も思ったんだけど」

「んぇっ」

 頭の中に思い浮かべていたグロテスクな処刑方法が、フィンの一声によって遮られる。抱き締められた腕からフィンの顔を覗き込んだのと同時に、彼の口から思いがけない疑問が放たれた。

「何で、シャーリーは俺とソフィアがキスしたこと、知っているんだ? あの場にいなかったよな?」




しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...