【R18】夫を奪おうとする愚かな女には最高の結末を

みちょこ

文字の大きさ
上 下
1 / 20

1話

しおりを挟む

 きっかけは、侍女のソフィアと夫のフィンが口づけをしたところから。

 口づけをしたと言っても、階段から滑り落ちたソフィアをフィンが受け止めようとした際に、たまたま二人の唇がぶつかったのだけなのだが。いや、と言った方が正しいのかもしれない。

 私は、本当のことを知っている。
 ソフィアの企みは、全て見抜いている。

 ソフィアが階段の死角でフィンが来るタイミングを見計らっていたことを。心優しいフィンが階段から落ちてくる女の子を助けようとしないはずが無いことも。

 二人は唇を重ねたまま数秒間抱き合ったような状態を続け──我に返ったように、んぱっ、と音を立てて唇をほぼ同時に離した。
 最新の監視カメラだと、リップ音までよく聞こえる。まぁ、事故によるキスなのに何故そんな音が鳴ったのかは、敢えて触れないでおこう。

 フィンは慌ててソフィアに頭を下げると、逃げるようにして足早にその場を去っていった。

 一方のソフィアは、自分の唇に触れながら熱を孕んだような眼差しで夫を見つめていて。それは紛れもなく、前々から彼女がフィンに向けてきた視線と同じもので。フィンがソフィアからは見えないところで懸命に口を拭っていることなど、彼女は知る由も無いのだろう。

 それにしても、とうとうこの日が来てしまったのね。勿論、ソフィアがこの屋敷で働き始めた時から覚悟はしていたし、それなりの準備もしてきたけれど。

 舞台俳優である夫は、容姿端麗な上にスタイルも抜群に良い。色目を使われるのも、まぁ仕方が無いことだろう。

 しかし、妻として黙っている訳にはいかない。

 フィンのことは愛しているし、死んでも誰にも渡すつもりはない。

 此れを機会に害虫は徹底的に潰さなければ。



 一先ずは、屋敷のあらゆる箇所に取り付けた監視カメラの映像で、二人の動きを捉えるとしよう。
 来るべきタイミングまでは甘い蜜を与えて、最後は死よりも苦しい絶望を与える。

 ──人の夫を奪おうとするクズには、最高の制裁を。

 モニターの前で優雅に珈琲を啜りながら、私は引き続き二人を見張ることにした。


しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...