【R18】無愛想な騎士団長様はとても可愛い

7話

　一波乱あったものの、無事に外出の準備を終えたスコールは、足早に玄関から外へと駆け出した。エルヴィールは今朝の出来事が無かったかのように侍女達と並んで夫の後ろ姿を見送っていたが、とあることがふと脳裏に浮かび、寝室へと駆け足で戻った。


「スコール様！」


　寝室から持ってきたものを腕に掛け、玄関から外へ。既に迎えに来ていた騎士団の部下達に囲まれているスコールの元へ駆け寄る。スコールは耳に届いた妻の声に振り返り、慣れた動きでさっと馬から地面へと降りた。

「どうかしたのか。エルヴィール」

　鼻先を僅かに赤らめて駆け寄ってきた妻の頭をスコールは愛おしむように撫でる。一方のエルヴィールは白く濁った吐息を吐き出すと、手に持っていた紺色のコートをさっと夫の広い背中に掛けた。

「今日は冷えるかもしれませんので。いってらっしゃい」

　エルヴィールは柔らかな笑みを浮かべ、コートの裾を握ったままスコールの身体を抱き寄せて。
　夫の頬に自分の唇をちゅっと押し付けた。

　突然肌に与えられた温かく湿った感触に、面食らったような表情を浮かべるスコール。エルヴィールはしてやったりと口角を上げて笑っていたが、それも一瞬、強い力で腕を引き寄せられた。

「んっ！」

　後頭部を掴まれて、刹那にして奪われる唇。

　唇の隙間からぬるりと舌を挿し込まれ、口内を分厚い舌でたっぷりと舐め尽くされていく。

「んっ、スコ……んんっ……！」

　騎士団の人達が──夫の直属の部下である彼等が、自分達の姿を前に明らかに態度を様変わりさせている。あの騎士団長がと言わんばかりの表情を浮かべたり、気まずそうに視線を逸らしたり、顔を真っ赤にさせる者もいたり。

　スコールはそれに構う様子一つ見せずに、エルヴィールの口内を容赦なく犯し続ける。

「んっ、んんっ、んーっ！」

　エルヴィールは羞恥心に頬を真っ赤に染めながら、ドンドンと必死にスコールの胸板を叩いた。

「っ、は……」

　やっと唇が離れてくれたのは、エルヴィールの呼吸が乱れて藍色の瞳にじんわりと涙が滲んできた頃。スコールは唇同士を繋ぐ銀色の糸を辿るように再びキスをすると、口元に笑みを携えた。

「昨日の仕返しだ」

　上唇をペロリと舐め上げて嗤う夫の姿に、エルヴィールは顔全体が更に火照る。

「もう、スコール様のくせに！　今度雷が落ちても一緒に寝てあげませんからね！」

「なっ、それは」

「ほら、遅刻しますよ！」

　目を見開くスコールの腰を押し、無理矢理馬へと乗らせる。
　スコールは何かを言いたげに口を開きかけたものの、直ぐに表情を緩ませてエルヴィールの頭に大きな手を乗せた。

「行ってくる」

　くしゃりと髪を撫で回し、エルヴィールをその場に残して騎士団の仲間達と共に街の中心へと向けて走り出して行く夫。エルヴィールは馬に揺さぶられながら小さくなっていく夫の後ろ姿を見つめ、笑みを隠すように口元を手でそっと覆った。


　(ふふっ、可愛い旦那様。今日の夜を楽しみに待っていなさい)


　エルヴィールは一つに縛った髪をふわりと揺らしながら軽い足取りで屋敷へと戻り、愛おしく可愛い夫の帰りを楽しみに待つのだった。