5 / 5
5話
しおりを挟む「……シルヴァナ。何を笑っている」
情を交わした後のベッドの上。シルヴァナはレイバードの逞しい腕に抱かれながら問い掛けられ、小さな笑い声を漏らした。
「ふふっ。三年前に陛下に初めて抱かれた時のことを思い出したのです」
「なに?」
「結局、最後の最後に私が気絶してしまって、陛下に御迷惑をお掛けてしまったなと」
シルヴァナはレイバードの胸に頬を擦り寄せ、幸せそうに微笑む。たっぷりと愛し合った後の夫の肌の温もりが、シルヴァナは心を焦がすくらいに大好きだった。
「……今では何度身体を重ねても、可愛い反応をしてくれるだろう」
「それは、陛下があの日から毎晩のように私を愛してくれるからですよ」
髪を優しく撫でるレイバードの手を握り、シルヴァナはその指先を愛おしむように何度も口づける。淫らにも見えるその姿にレイバードは顔を顰めると、彼女の顎をぐっと持ち上げた。
「……本当に、お前は私を煽るのが上手くなったものだ」
「陛下…………んっ」
レイバードの唇は、柔らかなシルヴァナの唇を塞ぐ。リップ音を響かせるような甘い口づけから、唾液がくちゅくちゅと混ざるような水音を立てる深い口づけへと変わり、シルヴァナの身体の奥がじんわりと熱くなっていく。
「……陛下」
シルヴァナは自ら唇を離し、徐にレイバードの腰に跨がる。そして鼻先が触れるまで彼に顔を近付け、淡い吐息がこぼれる唇をゆっくりと開いた。
「……そろそろ、三人目も欲しいです。陛下」
艶やかな声で紡がれる問い掛けに、レイバードは瞳を細め、蕩けたような表情を浮かべる。
「先程も身体が果てるほど、愛し合っただろう」
「……抱いてくださらないのなら、私から襲うまでですよ?」
シルヴァナは愛嬌たっぷりの笑顔を浮かべ、レイバードの唇に自分の唇をぐっと押し付ける。離れては重ねて、何度も繰り返される口づけに、レイバードは痺れを切らしたように彼女の両肩を強く掴んだ。
「へい…………きゃっ!」
あっという間にシルヴァナの上にレイバードが覆い被さり、形勢逆転。シルヴァナは何度か睫毛を伏せた後、直ぐに柔らかな笑みをこぼした。
「……お慕いしております。陛下」
「知っている。私もお前を愛している」
二人の唇が近付き、再び重なる。唇を通して伝わる温もりと紡がれる愛に、シルヴァナは涙を流しながら、愛しいレイバードの背中に腕を回した。
(愛しています、陛下。これからも、ずっと)
シルヴァナは幸せな気持ちに心を震わせながら、その日もレイバードの狂おしいほどの愛を受け入れるのだった。
1
お気に入りに追加
666
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく
おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。
そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。
夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。
そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。
全4話です。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。

冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
さくっと読みやすく、とても素敵な作品ありがとうございました!
願わくば、番外編で陛下サイドの話も見てみたいです!
Jasmine777様、感想ありがとうございます!
此方の作品も読んで頂きありがとうございます✨
陛下サイドだと、ひたすらシルヴァナ溺愛になりそうですね(*ノωノ)
時間があれば書いてみたいな、なんて思う作者でございます!