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第三章
十二話 下町暮らしは想像よりも過酷で…③
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「突然ですが、私達はお金を稼がなくてはいけません」
いつもより少し豪勢な(サーシャとレイラが張り切りすぎた)夕食中、突然父がそんなことを口にした。
お金を稼ぐ。
それは下町暮らしをする上で、最も重要なことだ。
ただ、私も父も生まれてから今まで、何不自由なくとまではいかないが、下町の人達よりは裕福な暮らしを送って来た(はず)ので自らお金を稼ぐにはどうすればいいのか分からなかった。
「具体的にどうやって稼ぐおつもりですか?」
なので、ルイのその質問に答えられるはずもなく、二人して頭に?マークを浮かべるだけだった。
「じゃあ、ケーキ屋さんなんてどうですか?」
そんな私達を見兼ねて、案を出してくれたサーシャ。
「確かにルイもトムさんもお菓子作り得意だしいいか「えー、お菓子屋さんって女の子っぽくてやだなぁ」」
え?
今、お父様はなんて言ったの?
「なら、花屋さんはどうでしょう?」
我儘な父のため、次に案を出してくれたのはレイラで。
「うん、トムさん庭師だったしそれなら「でもぉ、花屋さんって結構お金かかるんじゃない?」」
は?
本当に何言ってるの?
自分じゃ案、出さないくせに…。
チラッと父の方を見ると、ルイに何かを耳打ちされニヤニヤ笑っていて。
「うーん、何でも屋さんとかはどうですかね?」
「いいですね!ルイはなんでも出来るし、それにトムさ「えー、何かありきたりだよねぇ」」
ーブチッ
その父の言葉を聞いた瞬間、私の頭の中で何かが切れる音がした。
案を出してくれたサーシャやレイラさん、トムさんにいくらなんでも失礼すぎでしょ!
「さっきから『あれやだ』『これやだ』うるさいんだけど!そんなに文句があるなら、自分で案を出してみなさいよ!てか、被せて言わないで!!」
やっと言ってやった。
今頃、カタカタと机の下で震えているだろう。
父はガラスのハートだし、勇気なんて”のみ”サイズだから。
そう思い、ジロっと父を睨みつけ…見つめると、父はさっきの数百倍ニヤニヤしていた。
「そんなに言うなら、案を出させて頂きまぁす」
父がそう言うと、ルイがどこからともなく大きな紙を持ってきて。
「ジャーン、これが私が考えた案です」
ーバッ
父の言葉を合図に開いたその紙にはデカデカと、『マリア亭』と書かれていた。
「この家の一階を使って、下町の人々に愛される食堂を開こうと思います!その名も『マリア亭』!」
拳を握りしめ、意気揚々と話す父。
『マリア亭』、確かにいい考えかもしれない。
お菓子屋や花屋は他の店より秀でるものがないと続けていくのは難しいだろうし、何でも屋は この人数で行うにはいくらなんでも大変すぎる。
その点、マリア亭ならそこまで何かに特化していなくても美味しければ人は来る。
ましてや、食べ物だけではなく、お菓子などもお持ち帰り可能とかにすれば、他の食堂との差も出来るかもしれない。
「どうかな?」
私達が反応を示さないからか、不安そうにソワソワし始めた父がか細い声をあげた。
「うん、いいと思う。食堂ならルイやトムさん以外の人も何かしら手伝うことができるし、この辺食堂ないから人も沢山来てくれるかもしれないしね」
「そうですね!ついでに、雑貨とかを売るのはどうですか?私、ぬいぐるみとかハンカチの刺繍とかなら出来ますし」
「いいわね。じゃあ、私は花なんかを生けて飾り付けでもしようかしら」
「それなら、あとこんなのはどうですか?」
「それいい!ついでにこれもやれたらいいね!」
「いいですね!それから…」
「それにこれを足して…」
「あと、こうして…」
下町暮らし一週間目、この日が本当の下町暮らしのスタートだった。
新しい暮らしに不安を抱きながらも少しワクワクし始めた私は、もう貴族だった頃のことなんて忘れようと心に決めた。
これからは、新しいこの場所で生きていこう。
そう決めたのだった。
いつもより少し豪勢な(サーシャとレイラが張り切りすぎた)夕食中、突然父がそんなことを口にした。
お金を稼ぐ。
それは下町暮らしをする上で、最も重要なことだ。
ただ、私も父も生まれてから今まで、何不自由なくとまではいかないが、下町の人達よりは裕福な暮らしを送って来た(はず)ので自らお金を稼ぐにはどうすればいいのか分からなかった。
「具体的にどうやって稼ぐおつもりですか?」
なので、ルイのその質問に答えられるはずもなく、二人して頭に?マークを浮かべるだけだった。
「じゃあ、ケーキ屋さんなんてどうですか?」
そんな私達を見兼ねて、案を出してくれたサーシャ。
「確かにルイもトムさんもお菓子作り得意だしいいか「えー、お菓子屋さんって女の子っぽくてやだなぁ」」
え?
今、お父様はなんて言ったの?
「なら、花屋さんはどうでしょう?」
我儘な父のため、次に案を出してくれたのはレイラで。
「うん、トムさん庭師だったしそれなら「でもぉ、花屋さんって結構お金かかるんじゃない?」」
は?
本当に何言ってるの?
自分じゃ案、出さないくせに…。
チラッと父の方を見ると、ルイに何かを耳打ちされニヤニヤ笑っていて。
「うーん、何でも屋さんとかはどうですかね?」
「いいですね!ルイはなんでも出来るし、それにトムさ「えー、何かありきたりだよねぇ」」
ーブチッ
その父の言葉を聞いた瞬間、私の頭の中で何かが切れる音がした。
案を出してくれたサーシャやレイラさん、トムさんにいくらなんでも失礼すぎでしょ!
「さっきから『あれやだ』『これやだ』うるさいんだけど!そんなに文句があるなら、自分で案を出してみなさいよ!てか、被せて言わないで!!」
やっと言ってやった。
今頃、カタカタと机の下で震えているだろう。
父はガラスのハートだし、勇気なんて”のみ”サイズだから。
そう思い、ジロっと父を睨みつけ…見つめると、父はさっきの数百倍ニヤニヤしていた。
「そんなに言うなら、案を出させて頂きまぁす」
父がそう言うと、ルイがどこからともなく大きな紙を持ってきて。
「ジャーン、これが私が考えた案です」
ーバッ
父の言葉を合図に開いたその紙にはデカデカと、『マリア亭』と書かれていた。
「この家の一階を使って、下町の人々に愛される食堂を開こうと思います!その名も『マリア亭』!」
拳を握りしめ、意気揚々と話す父。
『マリア亭』、確かにいい考えかもしれない。
お菓子屋や花屋は他の店より秀でるものがないと続けていくのは難しいだろうし、何でも屋は この人数で行うにはいくらなんでも大変すぎる。
その点、マリア亭ならそこまで何かに特化していなくても美味しければ人は来る。
ましてや、食べ物だけではなく、お菓子などもお持ち帰り可能とかにすれば、他の食堂との差も出来るかもしれない。
「どうかな?」
私達が反応を示さないからか、不安そうにソワソワし始めた父がか細い声をあげた。
「うん、いいと思う。食堂ならルイやトムさん以外の人も何かしら手伝うことができるし、この辺食堂ないから人も沢山来てくれるかもしれないしね」
「そうですね!ついでに、雑貨とかを売るのはどうですか?私、ぬいぐるみとかハンカチの刺繍とかなら出来ますし」
「いいわね。じゃあ、私は花なんかを生けて飾り付けでもしようかしら」
「それなら、あとこんなのはどうですか?」
「それいい!ついでにこれもやれたらいいね!」
「いいですね!それから…」
「それにこれを足して…」
「あと、こうして…」
下町暮らし一週間目、この日が本当の下町暮らしのスタートだった。
新しい暮らしに不安を抱きながらも少しワクワクし始めた私は、もう貴族だった頃のことなんて忘れようと心に決めた。
これからは、新しいこの場所で生きていこう。
そう決めたのだった。
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