133 / 154
第七章 紫
第131話 「世界樹の根元」
しおりを挟む
聖王都の中央に聳え立つ、世界樹。
その根を伝って行けば、大精霊の棲む神殿に辿り着くことが出来るという。
しかし、フローラもアイリスもこちらの手の内とはいえ、聖王都は聖王マクシミリアンの本拠地だ。念入りな準備が必要不可欠である。
王国側の準備――具体的には、アイリスとフローラの処罰や引き渡しに関しては、ヒューゴが主体となり、フレッドとメーアが補佐に回って処理を進めてくれている。
魔女は、彼女の育ての親である地底人族の師匠の元を離れ、旅への同行を了承してくれた。
また、フローラ、フレッドとの間で何やらやり取りをしていたようだが、詳しいことは教えてくれなかった。
そして、セオも私も、ソフィアと魔女を信じると決めたからか、これまでの寂しく不安に満ちた空気は払拭されていた。
不安は完全には拭えないが、セオが私を避けるようなことはしなくなり、今はほぼ元通りの関係に戻っている。
ただ、時折見せる辛そうな表情――特に、嬉しいことや幸せなことがあった後――それだけはどうすることも出来ず、チクチクと胸を刺すのだった。
そうこうしているうちに数日が経ち、聖王国へ出発する時が近づいてきたある日。
私とセオは城の中庭を散歩していた。
季節はすっかり春めいていて、色とりどりの花たちが咲き始めている。
色を取り戻して初めて迎える春。
風にそよぐ花たちのなんと艶やかで華やかなことか。
黄色やピンク、オレンジ、白――美しく彩られたフラワーアーチをくぐると、春のかおりに包まれる。
「パステル」
「なあに?」
その声に、私は隣を歩くセオを見上げる。
セオはその場に立ち止まると、柔らかい笑顔を浮かべて、私をぎゅっと抱き寄せた。
また少し、背が伸びたみたい――
「……聖王都に行ったら、僕、感情が戻ってないフリをしなきゃならない。だから――今のうちにたくさん、元気を分けて」
「……うん」
目を閉じると、まるで春の真ん中にいるみたいに、ぽかぽかする。
しばらくそうした後、どちらからともなく、唇を寄せ合う。
目を合わせて微笑み合うと、再び指を絡めて中庭をゆっくりと歩き始めた。
「聖王都へは、また変装して行くの?」
「いや、今回は堂々と行くよ。地の神殿と違って、世界樹には基本的に王族と高位神官、高位貴族しか近付けないからね」
「そっか、身分を明かす必要があるんだね。私は、どうすればいい?」
「パステルは、僕が連れて来た『虹の巫女』だから、問題なく世界樹の根元まで行ける。ただ、念のため家名は名乗らない方がいい。一番の問題は、魔女を世界樹の所までどうやって連れて行くか」
「魔女さんは、巫女じゃないもんね。それに、大精霊の神子であることも隠した方がいいんだよね?」
「うん、そう」
「なら……」
私は思いついたアイデアをセオに話す。
この方法なら、私も家名を名乗らなくて済むし、魔女もおそらく同行を許されるはずだ。
セオも納得したようで、頷いてくれた。
全ての準備が整い、私とセオ、魔女の三人で聖王都へ向かうことになったのは、この翌日だった。
エーデルシュタイン聖王国の都、聖王都。
街のすぐそばまでセオの魔法で飛んで行き、検問を抜ける。
セオは聖王国の王族だ――待たされることなく顔パスで検問を通り抜けることができたが、恐らく聖王城にはすぐに連絡が行くだろう。
私たちは、聖王や大神官の部下に捕まる前に、目的地へと急いだ。
『水晶の街』とも呼ばれるその美しい街並みを抜けると、私たちは街の中央に聳える『世界樹』の近くまで再び空を飛んでいく。
世界樹の枝葉が街を覆っているので、それに触れないギリギリの高度だ。
世界樹のすぐ側、目立たない街の一角にたどり着いたところで、セオは地上へと降りた。
ここから二、三分歩けば、世界樹の根元――聖王国の王族が神事を執り行う場所に到着するとのことである。
街に降りてからは、セオは終始無言で冷たい空気を纏っている。
感情を表に出さないようにするためだ。
セオは一歩先を歩き、その後ろを私と魔女がついて行く。
振り返ることはないが、足音が止まったり遠ざかったりしないか気にかけてくれているようで、ちょうど良い速度で歩を進めてくれている。
私としっかり手を繋いで歩く魔女は、いつものとんがり帽子と、ダボッとしたローブ姿ではない。
私とお揃いのワンピースを身につけていて、平民用の質素な装いではあるが、年相応の可愛らしい格好である。
香水の類はつけていない筈なのだが、なんだか花のような香りがするし、少し雰囲気が変わったような気がする――魔女は子供だし、見ない間にちょっと成長したのかもしれない。
世界樹の根元に到着したセオは、世界樹を取り囲む結界を張っているウエストウッド侯爵家の関係者に挨拶をした。
セオは無感情な瞳をこちらへ向け、一部分だけ開いてもらった結界を通るように促す。
私、魔女、セオの順に結界を通り抜けると、ぼわん、と音を立てて結界は閉じてしまった。
結界が閉じたのを確認すると、セオは張り詰めていた糸が切れたように、腕を伸ばして深呼吸をする。
感情が戻ったセオにとっては、感情のないフリをするのも疲れるらしい。
「ふふっ」
私が思わず笑みをこぼすと、セオもどこか気の抜けた表情で、少し恥ずかしそうに笑い返した。
「さ、それより、ここが世界樹の根元だ。マクシミリアン陛下が来る前に済ませちゃおう」
「そうね。魔女さん、大精霊の元へはどうやって行くの?」
「んー、ちょっと待つ」
魔女は目に淡い光を宿し、世界樹の根元を念入りに調べ始めた。
そうしているとすぐに、魔女はある場所で立ち止まってしゃがみ込み、両手を差し出した。
他と大して変わり映えのない場所に見えるが、ここに入口があるのだろう。
魔女の放つ光が強くなっていき、私は目を閉じる。
再び目を開けた時には、木の根元から幹にかけて、人の入れるような大きな穴が空いていた。
「大精霊、この先。地下深く、星の中枢に近い場所。あたい、先行く、ついてきて」
私たちが頷いたのを確認して、魔女は幹の穴に入っていったのだった。
その根を伝って行けば、大精霊の棲む神殿に辿り着くことが出来るという。
しかし、フローラもアイリスもこちらの手の内とはいえ、聖王都は聖王マクシミリアンの本拠地だ。念入りな準備が必要不可欠である。
王国側の準備――具体的には、アイリスとフローラの処罰や引き渡しに関しては、ヒューゴが主体となり、フレッドとメーアが補佐に回って処理を進めてくれている。
魔女は、彼女の育ての親である地底人族の師匠の元を離れ、旅への同行を了承してくれた。
また、フローラ、フレッドとの間で何やらやり取りをしていたようだが、詳しいことは教えてくれなかった。
そして、セオも私も、ソフィアと魔女を信じると決めたからか、これまでの寂しく不安に満ちた空気は払拭されていた。
不安は完全には拭えないが、セオが私を避けるようなことはしなくなり、今はほぼ元通りの関係に戻っている。
ただ、時折見せる辛そうな表情――特に、嬉しいことや幸せなことがあった後――それだけはどうすることも出来ず、チクチクと胸を刺すのだった。
そうこうしているうちに数日が経ち、聖王国へ出発する時が近づいてきたある日。
私とセオは城の中庭を散歩していた。
季節はすっかり春めいていて、色とりどりの花たちが咲き始めている。
色を取り戻して初めて迎える春。
風にそよぐ花たちのなんと艶やかで華やかなことか。
黄色やピンク、オレンジ、白――美しく彩られたフラワーアーチをくぐると、春のかおりに包まれる。
「パステル」
「なあに?」
その声に、私は隣を歩くセオを見上げる。
セオはその場に立ち止まると、柔らかい笑顔を浮かべて、私をぎゅっと抱き寄せた。
また少し、背が伸びたみたい――
「……聖王都に行ったら、僕、感情が戻ってないフリをしなきゃならない。だから――今のうちにたくさん、元気を分けて」
「……うん」
目を閉じると、まるで春の真ん中にいるみたいに、ぽかぽかする。
しばらくそうした後、どちらからともなく、唇を寄せ合う。
目を合わせて微笑み合うと、再び指を絡めて中庭をゆっくりと歩き始めた。
「聖王都へは、また変装して行くの?」
「いや、今回は堂々と行くよ。地の神殿と違って、世界樹には基本的に王族と高位神官、高位貴族しか近付けないからね」
「そっか、身分を明かす必要があるんだね。私は、どうすればいい?」
「パステルは、僕が連れて来た『虹の巫女』だから、問題なく世界樹の根元まで行ける。ただ、念のため家名は名乗らない方がいい。一番の問題は、魔女を世界樹の所までどうやって連れて行くか」
「魔女さんは、巫女じゃないもんね。それに、大精霊の神子であることも隠した方がいいんだよね?」
「うん、そう」
「なら……」
私は思いついたアイデアをセオに話す。
この方法なら、私も家名を名乗らなくて済むし、魔女もおそらく同行を許されるはずだ。
セオも納得したようで、頷いてくれた。
全ての準備が整い、私とセオ、魔女の三人で聖王都へ向かうことになったのは、この翌日だった。
エーデルシュタイン聖王国の都、聖王都。
街のすぐそばまでセオの魔法で飛んで行き、検問を抜ける。
セオは聖王国の王族だ――待たされることなく顔パスで検問を通り抜けることができたが、恐らく聖王城にはすぐに連絡が行くだろう。
私たちは、聖王や大神官の部下に捕まる前に、目的地へと急いだ。
『水晶の街』とも呼ばれるその美しい街並みを抜けると、私たちは街の中央に聳える『世界樹』の近くまで再び空を飛んでいく。
世界樹の枝葉が街を覆っているので、それに触れないギリギリの高度だ。
世界樹のすぐ側、目立たない街の一角にたどり着いたところで、セオは地上へと降りた。
ここから二、三分歩けば、世界樹の根元――聖王国の王族が神事を執り行う場所に到着するとのことである。
街に降りてからは、セオは終始無言で冷たい空気を纏っている。
感情を表に出さないようにするためだ。
セオは一歩先を歩き、その後ろを私と魔女がついて行く。
振り返ることはないが、足音が止まったり遠ざかったりしないか気にかけてくれているようで、ちょうど良い速度で歩を進めてくれている。
私としっかり手を繋いで歩く魔女は、いつものとんがり帽子と、ダボッとしたローブ姿ではない。
私とお揃いのワンピースを身につけていて、平民用の質素な装いではあるが、年相応の可愛らしい格好である。
香水の類はつけていない筈なのだが、なんだか花のような香りがするし、少し雰囲気が変わったような気がする――魔女は子供だし、見ない間にちょっと成長したのかもしれない。
世界樹の根元に到着したセオは、世界樹を取り囲む結界を張っているウエストウッド侯爵家の関係者に挨拶をした。
セオは無感情な瞳をこちらへ向け、一部分だけ開いてもらった結界を通るように促す。
私、魔女、セオの順に結界を通り抜けると、ぼわん、と音を立てて結界は閉じてしまった。
結界が閉じたのを確認すると、セオは張り詰めていた糸が切れたように、腕を伸ばして深呼吸をする。
感情が戻ったセオにとっては、感情のないフリをするのも疲れるらしい。
「ふふっ」
私が思わず笑みをこぼすと、セオもどこか気の抜けた表情で、少し恥ずかしそうに笑い返した。
「さ、それより、ここが世界樹の根元だ。マクシミリアン陛下が来る前に済ませちゃおう」
「そうね。魔女さん、大精霊の元へはどうやって行くの?」
「んー、ちょっと待つ」
魔女は目に淡い光を宿し、世界樹の根元を念入りに調べ始めた。
そうしているとすぐに、魔女はある場所で立ち止まってしゃがみ込み、両手を差し出した。
他と大して変わり映えのない場所に見えるが、ここに入口があるのだろう。
魔女の放つ光が強くなっていき、私は目を閉じる。
再び目を開けた時には、木の根元から幹にかけて、人の入れるような大きな穴が空いていた。
「大精霊、この先。地下深く、星の中枢に近い場所。あたい、先行く、ついてきて」
私たちが頷いたのを確認して、魔女は幹の穴に入っていったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
いつまでもドアマットと思うなよ
あんど もあ
ファンタジー
二年前に母を亡くしたミレーネは、後妻と妹が家にやって来てからすっかり使用人以下の扱いをされている。王宮で舞踏会が開催されるが、用意されたのは妹のドレスだけ。そんなミレーネに手を差し伸べる人が……。
魔法使いとして頑張りますわ!
まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。
そこからは家族ごっこの毎日。
私が継ぐはずだった伯爵家。
花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね?
これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。
2025年に改編しました。
いつも通り、ふんわり設定です。
ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m
Copyright©︎2020-まるねこ
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる