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プロローグ

こうして始まる復讐劇

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 僕たちは逃げていた。    何から?



 悪魔から。    



 いや違う。正確には人間だ。だがそれは悪魔にも等しい人間。


 村が燃えている。   なぜ?   



 悪魔たちが村を侵略しているから。


 人が死んでいく。   どうして?   



 弱いから。   いや違う。



 権力と強さが全てだと思う者たちが無意味にその力を振るうから。





 僕たちは逃げていた。村が襲われる中でお父さんが僕たち兄弟を守って逃げるチャンスを作ってれたのだ。

「お兄ちゃんどこに逃げるの?」

「わかんない。でも走って! 逃げなきゃ」

 4歳の弟と6歳の僕は状況が把握できておらず、ただ父親から言われた「逃げろ」という言葉通りに村を襲ってきた悪魔達から逃げていた。
 僕の住む村は山の麓に位置するため、道は汚く、こんな暗い夜ではまともに走ることも難しかった。



「わぁっ」

 弟が木の根に足をすくわれ転んでしまった。

「ぅわぁぁ~ん。もー走れないよ。お父さーん! お母さーん!」

「大丈夫だ。ほら早く立って! 逃げなきゃ。あいつらが来ちゃう」

 座り込んで泣き出した弟をなだめ、もう一度走り出そうとしたその時



「み~っけ! だめだろぉ~大人しくしてなきゃ~」

「お父さんカッコよかったぜ~。まぁすぐに殺しちまったけどな」

「やめろって泣いちゃうだろ~。……おせぇよ何してんだよ!」

「すいやせん。だってこの道走りにくくて」


 僕たち2人をあざ笑うこれ以上ないというくらいの悪役のセリフが4人の悪魔達から聞こえてくる。



「弟に手出しはさせない!」

「お? お父さんの真似かい? カッコいいねぇ~」

「そんなに死にてぇなら先に殺してやるよ!」

 僕は4人の悪魔達を前に震えながらも、弟を守ろうと弟の前に立ち、構えた。

 悪魔達はそんな僕を容赦なく攻撃して来た。が、僕は山での生活で自然と身についた狩の動きで、小さな体を駆使してうまく翻弄していた。


「コイツ、ちょこまかと……」

 なかなか攻撃が当たらず、いらだちを見せる悪魔達。そんな中、僕は冷静だった。



(左のやつはサーベルを大きく振り回す癖がある。右のやつの攻撃方法は突進がメイン……うまく誘導できれば……)

 敵の動きの癖や特徴を見抜き、作戦をたてる。狩で身につけた技の一つだ。

「喰らえー!」「もらったー!」



 ザパッ!   ズドーーン!!

「ぐわぁぁ!!なに、、しやが、、る・・・」

「クソッ、ガキがぁ! ぐっ・・・」

 突進攻撃を仕掛けてきた敵をサーベル使いのところまで誘導し、ギリギリのところでかわすことで、突進攻撃を仕掛けてきた敵の首をサーベル使いに斬らせた。
 さらにサーベル使いも突進攻撃を喰らい、足の骨を折り戦えない状態になっていた。



「よし!」(このまま全員倒してやる!)



 軽く喜びながらそんなことを考えた次の瞬間。僕の動きは止まった。

「動くな! コイツがどうなってもいいのか!」

 悪魔の1人が弟を掴み、サーベルを突きつけながら僕を脅した。弟は恐怖で固まってしまっていた。

「きたねぇぞ!」

「ふん。殺させたくなかったらじっとしてな!」


 ドガンっ!

「ぐぁぁぁ」

 弟を人質に取られ、動けない僕にもう1人の悪魔が蹴りを入れてきた。
 僕は思わず悲鳴をあげ、そこに倒れた。


「散々弄ばれたんだ。簡単に殺しちゃぁつまらねぇ」

 弟を掴んでいる悪魔はそう言うと、弟を僕の方へ突き飛ばし、思いっきりサーベルを振りかぶった。

「やめろ~~~~!!!」



 ジャシュッ!

 僕は叫んだ。悪魔はその声を聞き、最高の笑顔を浮かべながら弟を斬り殺した。


「どーだ? 弟を殺された気分は?」

「わぁぁぁぁぁ~~~!!!」

 悪魔は僕にそんな言葉をかけるが、僕の耳にそんな声は届いていなかった。

 悲しみのあまり僕は更に叫んだ。



「ふん。ガキが調子に乗り過ぎたんだよ!」

 悪魔はうつ伏せに倒れてこちらを睨む僕に向かい、清々したといった顔でそう言った。


 ダッ!!

「ああぁぁぁ!!」


「おっと危ねぇ」



 ……気付いた時には僕の体は動いていた。憎しみを込め、弟を斬り殺した悪魔に殴りかかる。

 しかし先ほどの蹴りのダメージで動きが鈍くなっており、そもそも力では子供の僕が大人の悪魔達に勝てるはずもなく、簡単にねじ伏せられてしまった。


「安心しな。すぐにまた弟に会わせてやるよ。あの世でなぁ!」

 悪魔がそう言いながら、サーベルを空に向かってあげ、振りかぶった。

 その時、僕の頭の中には何か声が聞こえた気がした。天使が呼んでいるのかな?



「死ねぇ~!」

 悪魔がサーベルを振り下ろそうとしたその時


「まて!」

 いかにも貫禄のある低い声がした。声の方を見ると村を攻めてきた悪魔達のボスらしき者が、護衛4人を周りにつけながら歩いてきていた。

「オリバムさん。しかしコイツは我らの仲間を殺したやつですよ!」

 悪魔の1人がオリバムと呼ばれる魔王ボスにそう話すと


「ほぅ。コイツが。4人を相手に1人仕留めたと・・・ん?   もう1人死んではいないが負傷させ戦闘不能まで追い込んでいるようだな・・・」

「そうなんです。同士の仇です。どうか私に取らせてください!」

 オリバムがその場を見て状況を把握しゆっくりとそう呟くと、下っ端と思われる先ほどの悪魔が敵討ちの許可を求め出した。



「いや、コイツは持って帰る」

「「……え?」」

    オリバムが予想外なことを言い出し、悪魔の2人は思わず聞き返した。


「コイツは戦力になるかもしれねぇ。小僧、名はなんと言う?」



「……シダ」



 オリバムが倒れている僕のところへ来て、しゃがみこみながらそう問うた。
 僕は自分の名前を力強く答えた。

「シダか。いい名だ」

 そう言うとオリバムは僕を肩に担いだ。


「よーし。野郎ども、撤収だ!」

 オリバムの合図とともに悪魔ことオリバムの一味が村から撤収していった。


  (ちくしょう。俺は弟1人守れなかった。ちくしょう!   ちくしょう!   ちくしょう!!)

 心の中ではそう叫んでいても戦いの傷と疲れで意識が薄くなり、僕は魔王オリバムの一味のアジトへと連れていかれた。弟を殺した敵の仲間として。



 ーーーー

 [悔しいか?]
(あぁ)
 [苦しいか?]
(あぁ)
 [ならばどうする?]
(僕はどうする…どうすれば・・・)

 [強くなれ!大切なものを守りきれるように。]
(そうだ。僕は強くなるんだ。もう何も失わないために。もう誰も傷つかないように。)

 ーーーー



「おーいシダ!   ボスが呼んでるぞ!」

「あぁ。分かってる。すぐ行くよ」

 あれから何年たっただろうか・・・。
 俺を呼んでいるのは親友のクリスパード。第2部隊の隊長様だ。みんなクリス隊長と呼んでいる。俺とクリスはほぼ同時期にオリバムに連れてこられ、一味の兵士として育てられた。今ではクリスはオリバムの左腕、俺はそのクリスの部隊の参謀長まで上り詰めていた。

 本当はクリスと共にもう1人連れてこられていたが、今はもういない。

 俺は昔のことを思い出しながら、クリスと共にボスのいる王室へと向かった。



 ……

「入れ」

 オリバム。今となっては【モノボルゥー王国】の国王(俺たちはボスと呼んでいる)が俺たち2人を王室に入る許可を出した。
 この国にノックをする習慣はない。そもそもそんなに礼儀の正しい国ではないからだ。ボスは扉の前に立つ俺たちの気配を感じ取り、部屋に入るように言ったのだ。

「「失礼します」」

 扉を開け、赤いカーペットの上を歩いて進む。



「第2部隊隊長クリスパード」

「同じく第2部隊参謀長シダ。ただ今参りました」

 俺とクリスは片膝を立たせ座る、いわゆる忍者のような格好をし、ボスの前で構えた。

「ボス。今回の呼び出し、もしやリヴェリーの残党の件でしょうか?」

「そうだ。さすがはシダ、頭が切れる」

 ボスの呼び出しの理由をなんとなく察していた俺は、ボスが話し出す前に確認をとった。それに対しボスは感心しながら俺の予想にYesと答えた。

「シダの言う通り今回呼び出したのは他でもない。リヴェリーの残党を鎮圧するため、軍を出すことにした。クリス、お前の部隊に任せる。速やかに鎮圧せよ」

「はっ。その任務、承りました。必ず期待に応えてみせます!」

 1年前に征服した国【リヴェリー】。モノボルゥー王国と陸続きになっていて、モノボルゥー王国の都市ヘットの西北に位置する国。その残党が、ここ数日頻繁にモノボルゥー王国の民を襲っていた。最後の悪あがきといったところか……しかしそれをいつまでも放置しているわけにもいかず、ついにボスから鎮圧の指示が下ったのだった。
 クリスは力強く答え、俺とクリスは王室を後にした。




「なぁ聞いたか?   ハダクトの話」

「いや、何も。何かあったのか?」

 廊下を歩きながら、俺は最近偵察部隊から受け取った情報を共有しようとした。クリスはまだ何も聞いていないようだ。

「国王が殺られたらしい。今までは国王が平和を掲げてきていたから、紛争や戦争のない平和の国として世界でも有名だったが、その国王が殺られたところを見ると……」

「平和の国ではなくなると……あの国は俺たちモノボルゥー王国の占領地の隣にあるからな」

「あぁ。ボスからの指示はまだないが、そろそろ覚悟を決めておかないと……まぁまずは残党の鎮圧だ」

 俺は偵察部隊から聞いていた情報を、今後の動きの予想を踏まえ話した。
 クリスは俺が言い切る前に、話の続きを予想して、先に言いながら少し心配そうな顔をした。
 その表情を見て、俺は次の大きな戦いを予想しつつ、今は残党処理に集中しなければと気合を入れ直した。

「しかしやっぱシダには情報力では……いや、頭を使う分野では勝てる気がしねぇよ」

「まぁこれでも参謀長なんでね!   部隊のみんなを集めてくれ!   これから残党鎮圧の作戦会議をするから」

 クリスが俺の情報力に今更のように感心しているので、俺はそんなの当然だろと言わんばかりに答え、作戦会議のために集合をかけるようにクリスに頼んだ。

「……もぅ作戦考えてあったのかよ」

「残党処理の作戦なんて1年前にリヴェリーを攻めたときから考えてたさ」


「まじかよ……」

 クリスは少し呆れた感じで俺にツッコミを入れたが、クリスの考えていた遥か前に俺が作戦をたてていたことを知り、すでに恐怖すら感じているようだった。

 そんな会話をしながら、俺たちは作戦会議の場へと向かって行った。



 《  俺たちモノボルゥー王国は、オリバムを国王とする、侵略(革命)国家である。100年前、世界的に広まった絶対主義(絶対王政)により、世界の民のほとんどが貧しく辛い生活を余儀なくされた。そんな中10年ほど前に【ワース】と言う国で世界初の革命が起こった。それにつられるように、一部の国を除きほぼ全ての国で革命が起きたのだ。今では革命家達が国を率いて、己が理想の世を作るため戦っている  》

『これは世界を変えたいと願う者達による変革と革命の物語  』
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