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第42話『Q.御都合主義は好きですか?』
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「合宿二度目のボス戦ですか……」
「ボス戦ってなんだ?」
またしてもあんな巨大生物と戦うのかと思うと少しばかり憂鬱になる。しかし、男というものは不思議なものでワクワクする気持ちがないわけではない。それでも不安があることには変わりはなく、俺はこうして嘆いているわけなのだが、こんな時でも俺の新しい相棒は放っておいてはくれないようだ。
「俺の故郷では階層主との戦いをボス戦っていうんだよ」
「そーなのか」
「ってかボスの意味くらいわかるだろ?」
「……いやこれっぽっちも」
この世界の人の知識は偏りがひどいです。誰か助けてください。と言うかここまであんまり気にすることなく会話して来たけど、文字は読めないのに言葉は通じるんだよね。御都合主義様様ですね。でも一つ突っ込ませろ。
「しっかり仕事しろよ御都合主義だろ? なんで通じる英語と通じない英語があるんだよォォォォォオオ!」
「何騒いでんだよ」
「シャァルアップ!」
「さっきから何言ってんだよ」
くそう。この世界は黙れも通じないと言うのか……。
「黙れって言ったんだよ」
「あぁシャラップね。発音悪過ぎてちょっと何言ってるかわかんなかったよ」
こいつは何故こんなにもムカつくのだろうか……。
鼻で笑いながらそう返してくるテューの顔はいつもの三倍は腹立たしいものだった。
「あと、分けるならシャルアップじゃなくてシャットアップな」
お願いします御都合主義の神様。やっぱりコイツにだけ俺の罵声用語が通じないようにしてください。そしたらたくさん言ってもコイツは馬鹿にされていることにすら気付けないので。言いたい放題です。
そんなことを考えていると頭の中に降りて来た御都合主義の神様が言うのだった。
『それでは言われた側の反応が無くてつまらないではないか』
たしかに……いやちょっと待て? おい神様、そんな理由で罵倒用語はしっかり通じるのか? お前が見て楽しんでるだけじゃねぇかよ! フザケンナよクソ神め、とっとと降りてこい!
御都合主義の神様だから存在Gとでもしましょうか。その存在Gに俺が文句を言っていると、「そんなことを言う奴にはバチを当ててやろう」と言っているように聞こえた。言ってはいないのだが、そう聞こえたとしか言いようがない。
「トールくん。君にレイドの先頭を任せたいのだが頼まれてくれるかい?」
「え? エェェェェェェェエエ?!」
「決闘の試合を見た限りこの学年で一番タフなのは君だ。加えて状況判断能力に優れている。頭を使って戦うタイプだね」
デイヴォリッド元副団長。この人は一体何を言っているんだ? 俺がこの中で一番タフ? んなわけあるかぁぁぁ! ステータス見てから言えよ。HP22なんだって。普通の人間だったら一撃で死ぬんだって。頭を使うタイプ? 使わなきゃ死ぬんじゃボケェい! いやいや、ちょっと待ってくれよ。しかも先頭って……。
「しかし――」
「ああ分かっている。先頭とは最もリスクが高い場所だ。当然戦死率も圧倒的に高い」
拷問かよ……なんで俺なんだよ。ってかそんな説明いらねぇよ。分かっとラァんなことは。存在Gめ、呪い殺してやる。
「だが私は君を高く評価している。剣術は同じクラスのユナさ……ん、ティナさん、テュー君には劣る。それでも君は彼女らと対等に戦っていた。私はこの役目を任せられるのは君しかいないと思っている。どうだ?」
どうだ? じゃないよまったく。キメ顔されても嬉しくないんだよ。……でもまぁ。
「そこまで言われてやらないわけにいかないじゃないですか。……分かりました。俺がみんなの盾として先陣を切ります」
「宜しく頼む」
こうして即死ステータスの俺はほぼ確実に最初の標的となる先頭を務めることとなったのだった。
■■■
レイドとは「急襲」「奇襲」と言った意味を持つ。強大な敵を相手にするとき人々はさらに大きな団結力で立ち向かった。パーティとは違う力強さを称し、この集団をレイドと呼ぶようになったのだ。
レイド戦とはつまり階層主などのパーティレベルでは倒せないような敵に挑むと言うことだ。
それがどう言うわけかクソステの王者天草とおる様がレイドの先頭を行くこととなってしまった。本当にこの世界はどうにかしている。さらにムカつくことにテューは最後尾だ。つまり大将だ。指揮官だ。俺もそこが良かった。まぁそんなことを言っていても仕方がない。
俺たちは十のパーティ、つまり五十人を集めレイドを組んだ。あまり多くても邪魔なだけなので精鋭を集めたと言ったところだ。もちろんユナやティナ、ポールもこのレイドに参加している。というか俺たちのパーティは学年で一番攻略が早かったようでその功績もあり各グループの指揮を任されている。レイド戦はパーティごとに動くのでは無く、役割ごとに分けられる。今回は特攻隊、右サイド、左サイド、バックサイド、サポートの五つのグループだ。それぞれ順に、俺、ティナ、ユナポール、テューがそのグループの指揮をとる。
レイドを組んでいるというだけあり階層主の部屋の入り口まではなんの苦戦もなくくることができていた。
これが数の暴力か。
「さて、これから階層主との戦いが始まるわけだが、ここで我らが突撃大将のトール君から気合の入る一言をいただく!」
おい聞いてないぞ。あとで殺してやる。
テューに無茶振りをされた俺は渋々扉の前へ行くと、振り返りみんなに向かって叫んだ。
「やられる前にやるぞォォォォォオオ!! 突っ込めぇ! 気合いダァァァァアアア!」
俺は勢いよく扉を開けると階層主の待つ部屋へと足を踏み出した。
「ボス戦ってなんだ?」
またしてもあんな巨大生物と戦うのかと思うと少しばかり憂鬱になる。しかし、男というものは不思議なものでワクワクする気持ちがないわけではない。それでも不安があることには変わりはなく、俺はこうして嘆いているわけなのだが、こんな時でも俺の新しい相棒は放っておいてはくれないようだ。
「俺の故郷では階層主との戦いをボス戦っていうんだよ」
「そーなのか」
「ってかボスの意味くらいわかるだろ?」
「……いやこれっぽっちも」
この世界の人の知識は偏りがひどいです。誰か助けてください。と言うかここまであんまり気にすることなく会話して来たけど、文字は読めないのに言葉は通じるんだよね。御都合主義様様ですね。でも一つ突っ込ませろ。
「しっかり仕事しろよ御都合主義だろ? なんで通じる英語と通じない英語があるんだよォォォォォオオ!」
「何騒いでんだよ」
「シャァルアップ!」
「さっきから何言ってんだよ」
くそう。この世界は黙れも通じないと言うのか……。
「黙れって言ったんだよ」
「あぁシャラップね。発音悪過ぎてちょっと何言ってるかわかんなかったよ」
こいつは何故こんなにもムカつくのだろうか……。
鼻で笑いながらそう返してくるテューの顔はいつもの三倍は腹立たしいものだった。
「あと、分けるならシャルアップじゃなくてシャットアップな」
お願いします御都合主義の神様。やっぱりコイツにだけ俺の罵声用語が通じないようにしてください。そしたらたくさん言ってもコイツは馬鹿にされていることにすら気付けないので。言いたい放題です。
そんなことを考えていると頭の中に降りて来た御都合主義の神様が言うのだった。
『それでは言われた側の反応が無くてつまらないではないか』
たしかに……いやちょっと待て? おい神様、そんな理由で罵倒用語はしっかり通じるのか? お前が見て楽しんでるだけじゃねぇかよ! フザケンナよクソ神め、とっとと降りてこい!
御都合主義の神様だから存在Gとでもしましょうか。その存在Gに俺が文句を言っていると、「そんなことを言う奴にはバチを当ててやろう」と言っているように聞こえた。言ってはいないのだが、そう聞こえたとしか言いようがない。
「トールくん。君にレイドの先頭を任せたいのだが頼まれてくれるかい?」
「え? エェェェェェェェエエ?!」
「決闘の試合を見た限りこの学年で一番タフなのは君だ。加えて状況判断能力に優れている。頭を使って戦うタイプだね」
デイヴォリッド元副団長。この人は一体何を言っているんだ? 俺がこの中で一番タフ? んなわけあるかぁぁぁ! ステータス見てから言えよ。HP22なんだって。普通の人間だったら一撃で死ぬんだって。頭を使うタイプ? 使わなきゃ死ぬんじゃボケェい! いやいや、ちょっと待ってくれよ。しかも先頭って……。
「しかし――」
「ああ分かっている。先頭とは最もリスクが高い場所だ。当然戦死率も圧倒的に高い」
拷問かよ……なんで俺なんだよ。ってかそんな説明いらねぇよ。分かっとラァんなことは。存在Gめ、呪い殺してやる。
「だが私は君を高く評価している。剣術は同じクラスのユナさ……ん、ティナさん、テュー君には劣る。それでも君は彼女らと対等に戦っていた。私はこの役目を任せられるのは君しかいないと思っている。どうだ?」
どうだ? じゃないよまったく。キメ顔されても嬉しくないんだよ。……でもまぁ。
「そこまで言われてやらないわけにいかないじゃないですか。……分かりました。俺がみんなの盾として先陣を切ります」
「宜しく頼む」
こうして即死ステータスの俺はほぼ確実に最初の標的となる先頭を務めることとなったのだった。
■■■
レイドとは「急襲」「奇襲」と言った意味を持つ。強大な敵を相手にするとき人々はさらに大きな団結力で立ち向かった。パーティとは違う力強さを称し、この集団をレイドと呼ぶようになったのだ。
レイド戦とはつまり階層主などのパーティレベルでは倒せないような敵に挑むと言うことだ。
それがどう言うわけかクソステの王者天草とおる様がレイドの先頭を行くこととなってしまった。本当にこの世界はどうにかしている。さらにムカつくことにテューは最後尾だ。つまり大将だ。指揮官だ。俺もそこが良かった。まぁそんなことを言っていても仕方がない。
俺たちは十のパーティ、つまり五十人を集めレイドを組んだ。あまり多くても邪魔なだけなので精鋭を集めたと言ったところだ。もちろんユナやティナ、ポールもこのレイドに参加している。というか俺たちのパーティは学年で一番攻略が早かったようでその功績もあり各グループの指揮を任されている。レイド戦はパーティごとに動くのでは無く、役割ごとに分けられる。今回は特攻隊、右サイド、左サイド、バックサイド、サポートの五つのグループだ。それぞれ順に、俺、ティナ、ユナポール、テューがそのグループの指揮をとる。
レイドを組んでいるというだけあり階層主の部屋の入り口まではなんの苦戦もなくくることができていた。
これが数の暴力か。
「さて、これから階層主との戦いが始まるわけだが、ここで我らが突撃大将のトール君から気合の入る一言をいただく!」
おい聞いてないぞ。あとで殺してやる。
テューに無茶振りをされた俺は渋々扉の前へ行くと、振り返りみんなに向かって叫んだ。
「やられる前にやるぞォォォォォオオ!! 突っ込めぇ! 気合いダァァァァアアア!」
俺は勢いよく扉を開けると階層主の待つ部屋へと足を踏み出した。
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