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第39話『Q.体が痺れたらどうしますか?』
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ギギギギという金属音にも似た音がダンジョン内に響き渡った。
俺が放ったのはライトニングボルト。どうやらメタルアントには電気属性の魔法が弱点のようで俺の魔法は切り札となっていた。
しかし敵もただで攻撃を食らってくれるような優しい相手では無い。
左前脚が俺の進路を限定させると、それを避けて飛び出す俺にその巨体をぶつけてきた。直前にライトニングボルトを食らったジャイアントメタルアントは麻痺の影響で体の動きが鈍っており威力はこれまでよりはるかに低かった。受け身の体制をとりその体当たりを受け止めたが、今まさに俺が放った雷が体を巡っているジャイアントメタルアントとの接触は感電するということでそのダメージを分け合う形となってしまった。当然俺の体もしびれ出す。徐々に力が抜け、押し返されていく。だがここで引けばまた振り出しに戻ってしまう。
「踏ん張れよ俺! 気合いと根性の見せ場だぞ!」
俺は再び痺れる体に力を込めジャイアントメタルアントの攻撃を横へと受け流すと、残る脚へと剣を突き刺しザップを放った。流れるように剣を抜くと、残りの足へと剣を次々に刺しその機能を奪っていく。全ての足を失ったジャイアントメタルアントは地面に突っ伏した状態だ。俺は頭部に上がると力一杯剣を押し込んだ。
「トドメダァァァァアアア!」
■■■
目を覚ました時俺はダンジョン入り口付近に設置した拠点に戻ってきていた。
「よかった……本当によかった」
起き上がった俺を泣きながら抱きしめているのはユナだ。
突然の出来事に頭が追いつかないんだが?
ユナは小さな声で「よかった」と何度も口にしている。
視線を上げれば、正面には安堵した様子でこちらを眺めているティナとポールがいた。
その少し後ろで肩をすくめながらやれやれという様子でこちらに笑いかけるのはこの世界に来て初めてできた友達のテューだ。
幻? いや、あのムカつく顔は本物だろう。
どうやら俺は無事にダンジョンを脱出できたようだ。
あのあとジャイアントメタルアントを倒した俺はボロボロになった体を引き摺りながらメタルアントの巣を抜け出したのだが、そのあとどうやって戻ってきたのかは覚えていない。生と死の境を行き来していたせいだろうか。
「なぁテュー、俺どうやってここまで戻ってきたんだ?」
「覚えてないのか?」
数秒考えた後やはり思い出せないことを伝えると、テューはため息を一つ吐いてから俺に事情を教えてくれた。
どうやら俺は自力で第一階層へと登る階段まで来ていたようで、先生たちが討伐編成を組み終えいざ向かおうと階段を降り始めた時血塗れで階段を上がる俺を見つけたようだ。
「最初見たときはゾンビだと思ったぞ」
テューの言葉に俺は力なく笑いかえす。
「それで? トールはあのメタルアントの群れからどうやって逃げてきたんだ?」
テューの質問に、同じく気になっていたのだろう。ティナ、ポール、そして隣にいる先生までもが俺の言葉に注目していた。
「えっとだな、ジャイアントメタルアントを倒したんだが、そしたらちびアントたちは怯えて巣の奥に逃げ帰って行ったんだ」
口が閉まらない目の前の仲間に向かい俺は歯をきらんと光らせ言ってやった。
「その隙に逃げてきた!」
「嘘でしょ? アレを倒したの?」
「あんなのどーやって倒したんだよ……」
「あー……関節を壊して動けなくなったところを、首筋に剣突き刺して体内にライトニングボルトぶち込んでやったのさ!」
一同揃って「まじかよ」「信じられない」などと驚いているが、ここにいるのって確かクラスのトップスリーじゃなかったっけ? もしかして俺って対人より対魔物の方が向いてるのかなぁ。それ完全に冒険者じゃん。守るより壊す方が得意な騎士って……大丈夫かなぁ。
内心そんなことを思いつつも得意げに話していた俺だったが、ようやく泣き止み俺から離れたユナが目の雫をぬぐいながら俺に笑いかけてくれた。
「凄いわねトールは。ありがとう、私たちを助けてくれて」
あぁ心が癒される。尊死しそうです。
俺が照れ臭そうに頭をかいていると、次第にユナの表情は強張っていき遂には怒りの様子が現れ始めていることがわかった。
「でも、もう二度とあんなことしないで!」
「ごめん。でもあの時はああでもしないと全滅するかも――」
「だってもしそれでトールが死んじゃったら私今度は、泣き止めないかもしれないから……」
「え? 最後なんて?」
再び涙袋に雫を貯め始めたユナの声は最後の方は小さ過ぎて聞き取ることができなかった。心配してくれていることだけは分かったのだが……。
「とにかく、もーあんな無茶しないこと!」
「はい!」
俺は思わず敬礼をしてしまった。
あの後デイブォリット先生の回復魔法で身体が完全完治した俺は、予定通り残り二日間のダンジョン攻略にも参加が可能ということとなった。
こうして俺の波乱万丈なダンジョン攻略合宿の一日目が終了した。
どうか明日はのどかな攻略となりますように……。
俺が放ったのはライトニングボルト。どうやらメタルアントには電気属性の魔法が弱点のようで俺の魔法は切り札となっていた。
しかし敵もただで攻撃を食らってくれるような優しい相手では無い。
左前脚が俺の進路を限定させると、それを避けて飛び出す俺にその巨体をぶつけてきた。直前にライトニングボルトを食らったジャイアントメタルアントは麻痺の影響で体の動きが鈍っており威力はこれまでよりはるかに低かった。受け身の体制をとりその体当たりを受け止めたが、今まさに俺が放った雷が体を巡っているジャイアントメタルアントとの接触は感電するということでそのダメージを分け合う形となってしまった。当然俺の体もしびれ出す。徐々に力が抜け、押し返されていく。だがここで引けばまた振り出しに戻ってしまう。
「踏ん張れよ俺! 気合いと根性の見せ場だぞ!」
俺は再び痺れる体に力を込めジャイアントメタルアントの攻撃を横へと受け流すと、残る脚へと剣を突き刺しザップを放った。流れるように剣を抜くと、残りの足へと剣を次々に刺しその機能を奪っていく。全ての足を失ったジャイアントメタルアントは地面に突っ伏した状態だ。俺は頭部に上がると力一杯剣を押し込んだ。
「トドメダァァァァアアア!」
■■■
目を覚ました時俺はダンジョン入り口付近に設置した拠点に戻ってきていた。
「よかった……本当によかった」
起き上がった俺を泣きながら抱きしめているのはユナだ。
突然の出来事に頭が追いつかないんだが?
ユナは小さな声で「よかった」と何度も口にしている。
視線を上げれば、正面には安堵した様子でこちらを眺めているティナとポールがいた。
その少し後ろで肩をすくめながらやれやれという様子でこちらに笑いかけるのはこの世界に来て初めてできた友達のテューだ。
幻? いや、あのムカつく顔は本物だろう。
どうやら俺は無事にダンジョンを脱出できたようだ。
あのあとジャイアントメタルアントを倒した俺はボロボロになった体を引き摺りながらメタルアントの巣を抜け出したのだが、そのあとどうやって戻ってきたのかは覚えていない。生と死の境を行き来していたせいだろうか。
「なぁテュー、俺どうやってここまで戻ってきたんだ?」
「覚えてないのか?」
数秒考えた後やはり思い出せないことを伝えると、テューはため息を一つ吐いてから俺に事情を教えてくれた。
どうやら俺は自力で第一階層へと登る階段まで来ていたようで、先生たちが討伐編成を組み終えいざ向かおうと階段を降り始めた時血塗れで階段を上がる俺を見つけたようだ。
「最初見たときはゾンビだと思ったぞ」
テューの言葉に俺は力なく笑いかえす。
「それで? トールはあのメタルアントの群れからどうやって逃げてきたんだ?」
テューの質問に、同じく気になっていたのだろう。ティナ、ポール、そして隣にいる先生までもが俺の言葉に注目していた。
「えっとだな、ジャイアントメタルアントを倒したんだが、そしたらちびアントたちは怯えて巣の奥に逃げ帰って行ったんだ」
口が閉まらない目の前の仲間に向かい俺は歯をきらんと光らせ言ってやった。
「その隙に逃げてきた!」
「嘘でしょ? アレを倒したの?」
「あんなのどーやって倒したんだよ……」
「あー……関節を壊して動けなくなったところを、首筋に剣突き刺して体内にライトニングボルトぶち込んでやったのさ!」
一同揃って「まじかよ」「信じられない」などと驚いているが、ここにいるのって確かクラスのトップスリーじゃなかったっけ? もしかして俺って対人より対魔物の方が向いてるのかなぁ。それ完全に冒険者じゃん。守るより壊す方が得意な騎士って……大丈夫かなぁ。
内心そんなことを思いつつも得意げに話していた俺だったが、ようやく泣き止み俺から離れたユナが目の雫をぬぐいながら俺に笑いかけてくれた。
「凄いわねトールは。ありがとう、私たちを助けてくれて」
あぁ心が癒される。尊死しそうです。
俺が照れ臭そうに頭をかいていると、次第にユナの表情は強張っていき遂には怒りの様子が現れ始めていることがわかった。
「でも、もう二度とあんなことしないで!」
「ごめん。でもあの時はああでもしないと全滅するかも――」
「だってもしそれでトールが死んじゃったら私今度は、泣き止めないかもしれないから……」
「え? 最後なんて?」
再び涙袋に雫を貯め始めたユナの声は最後の方は小さ過ぎて聞き取ることができなかった。心配してくれていることだけは分かったのだが……。
「とにかく、もーあんな無茶しないこと!」
「はい!」
俺は思わず敬礼をしてしまった。
あの後デイブォリット先生の回復魔法で身体が完全完治した俺は、予定通り残り二日間のダンジョン攻略にも参加が可能ということとなった。
こうして俺の波乱万丈なダンジョン攻略合宿の一日目が終了した。
どうか明日はのどかな攻略となりますように……。
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