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第29話『Q.初期魔法といえば?』
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「ヒーリング!」
小さな魔法陣の出現。魔法発動とともに、傷口が暖かな空気に包まれ、切り傷が治っていく。
「おぉ。これが魔法か」
現在時刻午前九時三十分。朝の仕事を終え、俺は部屋で魔法の研究をしている。今発動した魔法は、初級魔法のヒーリングだ。初級魔法とは、その名の通り魔法名さえ知っていればオドとの適正に応じて誰でも使えるような、簡単な魔法のこと。
昨日の四限の授業の後、俺はアザルド先生に魔法について少しだけ教えてもらった。現在この国で使われている魔法は四つ。『ヒーリング』『アイスボルト』『ファイアボルト』『ライトニングボルト』の四つで、どれも初級魔法である。ソオラムでは魔法の研究をあまりしておらず、知っている魔法はこれだけなんだとか……。ヒーリング以外の三つの魔法は威力があまりにも低い為、牽制にしか使えないという理由で、実戦で使われることはほぼ無いそうだ。
「まぁ取り敢えず試して見るよねぇ」
俺はドアの前に立ち、右手を体の前にかざし、魔法をイメージしながら唱えた。
「アイスボルト!」
唱え始めると同時に手のひらの先に魔法陣が形成され、そこから氷の塊が現れる。唱え切ると、氷の塊は一瞬の間を置き勢いよく手をかざした方向へと飛んで行った。
それはベットの上にある布団へとぶつかったが、ぶつかった衝撃でそれなりにずれた……ただそれだけだった。
「確かにこの威力じゃ使えないかもなぁ」
俺は再び右手をかざし、再度別の魔法を唱えた。
「ファイアボルト!」
先ほどと同じような流れで、魔法陣と、そこからなまら小さい火の玉が生まれ、雷のように正面へと走った。ギリギリ布団に届いただろうか……。しかし、燃えない。先ほどよりも明らかに威力が弱い。
「どうやら俺は火属性の適正レベルは低いみたいだな」
さて、次が教えてもらった初級魔法は最後だ。正直なところ、これが本命。これが使えればもしかしたら――。
俺は右手を正面に構え、右肘のあたりを左手で握る。そして唱えた。
「ライトニングボルト!」
右手から魔法陣が形成される。何と無くだがアイスボルトの時よりも大きい気がした。そして稲妻が出現し、前方へと走った。――威力は、まぁボチボチと言ったところか。
「取り敢えず氷と雷属性は使えそうって事でいいのかな? まぁどんな属性がいくつあるのかなんて知らないんだけどさ」
俺はぶつくさ言いながら座り込む。そして、一つ試したい事があったのでそれを試すことにした。
「確かアザルド先生もイメージが大切って言ってたよな。なら……」
ライトニングボルトが初級魔法なのだ。これが使えないはずがない。
俺は人差し指を上に向け、小さく唱えた。
「ザップ」
先ほどの手のひらサイズの魔法陣ではなく、指先サイズの小さな魔法陣が形成され、静電気のような小さな電気が一瞬現れる。
やはり出来た。これはライトニングボルトよりも使える気がする。戦闘中に相手とすれ違いざまにビリっと出来たらいい牽制になりそうだ。ライトニングボルトなんて戦闘中に唱えてたら舌噛むわ。
「まぁライトニングボルトは別の使い方でとても役に立つんだけどねぇ」
そう呟きながら、俺は路地で不良を追っ払った時以来充電が無くなり使えなくなっていたスマートフォンを取りだす。そして、充電器の差込口に人差し指の先をくっ付け、魔法を唱える。
「ライトニングボルト……あれ? ライトニングボルト」
おかしい。魔法陣が形成されない。一体なぜ…………あ、分かった。
黙り込んで数秒。俺は魔法が発動しない理由に気付く。そして軽く絶望する。
新たに取り出したのは冒険者カード。裏柄をなぞり、魔力を注ぐ――。ステータス画面が出現した。
良かった。まだ一は残ってたみたいだな。
天草とおる
人族 男性
lv.8 ランクH
スキルなし
HP[20/20] MP[0/10]
STR/10 DEX/12
VIT/8 AGI/8
INT/1 MND/1
LUK/4
やはりか。MPが無い。これでは研究ができないでは無いか……。仕方ない。自然回復を待つとするか。……自然回復なんてするのかな?
三十分後――。
MP[0/10]
一時間後――。
MP[0/10]
二時間後――。
MP[0/10]
あ、察し。これは自然回復しないですね。椅子に座ってぼーっとしたり、ベットに寝そべってバタバタしたり、部屋の掃除をしたりして時間を過ごしていたが、MPが回復する様子が全く無い。
いや待て。もしかしたら睡眠をとることで回復するかもしれない。それを試す前に……。
現在時刻、午前十二時。お昼だ。
腹が減っては戦はできぬってね。それに、食事をすることでMPが回復する可能性もある。
俺は一旦研究をやめ、部屋を飛び出した。
「この匂いは……は! パスタだ!」
俺は颯爽と階段を降りていくのだった――。
小さな魔法陣の出現。魔法発動とともに、傷口が暖かな空気に包まれ、切り傷が治っていく。
「おぉ。これが魔法か」
現在時刻午前九時三十分。朝の仕事を終え、俺は部屋で魔法の研究をしている。今発動した魔法は、初級魔法のヒーリングだ。初級魔法とは、その名の通り魔法名さえ知っていればオドとの適正に応じて誰でも使えるような、簡単な魔法のこと。
昨日の四限の授業の後、俺はアザルド先生に魔法について少しだけ教えてもらった。現在この国で使われている魔法は四つ。『ヒーリング』『アイスボルト』『ファイアボルト』『ライトニングボルト』の四つで、どれも初級魔法である。ソオラムでは魔法の研究をあまりしておらず、知っている魔法はこれだけなんだとか……。ヒーリング以外の三つの魔法は威力があまりにも低い為、牽制にしか使えないという理由で、実戦で使われることはほぼ無いそうだ。
「まぁ取り敢えず試して見るよねぇ」
俺はドアの前に立ち、右手を体の前にかざし、魔法をイメージしながら唱えた。
「アイスボルト!」
唱え始めると同時に手のひらの先に魔法陣が形成され、そこから氷の塊が現れる。唱え切ると、氷の塊は一瞬の間を置き勢いよく手をかざした方向へと飛んで行った。
それはベットの上にある布団へとぶつかったが、ぶつかった衝撃でそれなりにずれた……ただそれだけだった。
「確かにこの威力じゃ使えないかもなぁ」
俺は再び右手をかざし、再度別の魔法を唱えた。
「ファイアボルト!」
先ほどと同じような流れで、魔法陣と、そこからなまら小さい火の玉が生まれ、雷のように正面へと走った。ギリギリ布団に届いただろうか……。しかし、燃えない。先ほどよりも明らかに威力が弱い。
「どうやら俺は火属性の適正レベルは低いみたいだな」
さて、次が教えてもらった初級魔法は最後だ。正直なところ、これが本命。これが使えればもしかしたら――。
俺は右手を正面に構え、右肘のあたりを左手で握る。そして唱えた。
「ライトニングボルト!」
右手から魔法陣が形成される。何と無くだがアイスボルトの時よりも大きい気がした。そして稲妻が出現し、前方へと走った。――威力は、まぁボチボチと言ったところか。
「取り敢えず氷と雷属性は使えそうって事でいいのかな? まぁどんな属性がいくつあるのかなんて知らないんだけどさ」
俺はぶつくさ言いながら座り込む。そして、一つ試したい事があったのでそれを試すことにした。
「確かアザルド先生もイメージが大切って言ってたよな。なら……」
ライトニングボルトが初級魔法なのだ。これが使えないはずがない。
俺は人差し指を上に向け、小さく唱えた。
「ザップ」
先ほどの手のひらサイズの魔法陣ではなく、指先サイズの小さな魔法陣が形成され、静電気のような小さな電気が一瞬現れる。
やはり出来た。これはライトニングボルトよりも使える気がする。戦闘中に相手とすれ違いざまにビリっと出来たらいい牽制になりそうだ。ライトニングボルトなんて戦闘中に唱えてたら舌噛むわ。
「まぁライトニングボルトは別の使い方でとても役に立つんだけどねぇ」
そう呟きながら、俺は路地で不良を追っ払った時以来充電が無くなり使えなくなっていたスマートフォンを取りだす。そして、充電器の差込口に人差し指の先をくっ付け、魔法を唱える。
「ライトニングボルト……あれ? ライトニングボルト」
おかしい。魔法陣が形成されない。一体なぜ…………あ、分かった。
黙り込んで数秒。俺は魔法が発動しない理由に気付く。そして軽く絶望する。
新たに取り出したのは冒険者カード。裏柄をなぞり、魔力を注ぐ――。ステータス画面が出現した。
良かった。まだ一は残ってたみたいだな。
天草とおる
人族 男性
lv.8 ランクH
スキルなし
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LUK/4
やはりか。MPが無い。これでは研究ができないでは無いか……。仕方ない。自然回復を待つとするか。……自然回復なんてするのかな?
三十分後――。
MP[0/10]
一時間後――。
MP[0/10]
二時間後――。
MP[0/10]
あ、察し。これは自然回復しないですね。椅子に座ってぼーっとしたり、ベットに寝そべってバタバタしたり、部屋の掃除をしたりして時間を過ごしていたが、MPが回復する様子が全く無い。
いや待て。もしかしたら睡眠をとることで回復するかもしれない。それを試す前に……。
現在時刻、午前十二時。お昼だ。
腹が減っては戦はできぬってね。それに、食事をすることでMPが回復する可能性もある。
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俺は颯爽と階段を降りていくのだった――。
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