25 / 70
第22話『Q.応急処置といえば?』
しおりを挟む
「……い……おいあまとう? 大丈夫かぁ?」
ほんのりと温かな何かに包まれる感覚とともに、俺の意識は徐々に回復して来ていた。さっきから俺を呼びかけているのは、今まさに対戦を終えた相手。テューだ。
全くうるさいなぁ。疲れてんだから少し寝させろよ。
「意識が戻らないときは確か……」
そう言ってテューが始めたのは心臓マッサージ。まぁ本気ではやってないけどね。肺を押されたせいで、俺はふっふっと音を立てて呼吸をする。呼吸しづらいのでやめろと言いかけたそのときーー。
「お? 意識が戻ったか?」
「頼む。もーちょい寝させろろろろろろろろうぉうぉうぉうぉおぉえぇ……」
突然心臓マッサージが高速化する。
「どうだ! 超高速心臓マッサージ」
「どうだじゃねぇよ! 殺す気か!!」
慌てて起き上がり、テューの頭に平手打ち一発。
「あ、おはよあまとう」
「おうおはよ……ってコラー!」
相変わらずのアホアホトークをしていると、アザルド先生が今回の試合に満足げな表情でアドバイスをくれた。
「テュー君は少し敵を見くびり過ぎていたね。相手との実力差を正確に測ることも、騎士ときてとても重要になる。常に謙虚な姿勢で臨みなさい」
「はーい」
「とおる君はよく頑張った。最後まで諦めないその心を大事にしなさい。技術の方は、言わなくても分かっていると思うがまだまだだ。そこはこれからの授業でいくらでも磨くことができるので安心してくれ」
「はい」
「二人とも次がある。あまり時間もない。しっかり調整するように」
「「はい!」」
テューは強かった。正直最後の一撃はまぐれだと思う。それでも、元いた世界で培ってきた諦めの悪さがこんなところで生かされた。人生何がどこで活かされるかわかんないものだな。
俺は、日々の何気ないことも大切にしていこう。なんて考えながら観客席に戻るのだった。
■■■
「次はユナレアとティティの試合だねぇ」
「どんな戦いするんだろうな……」
観客席に戻った俺たちは、試合開始の合図を待つユナとティナを見ながら体力回復に努めていた。
「そう言やさ、アレどーやってやったんだよ」
俺は先ほどの模擬試合でテューが最初に見せた、防いだはずの剣が逆から飛んできたあの技について聞いてみた。
「あぁアレは反動を利用するんだよ」
得意げに、しかし丁寧にわかりやすく教えてくれるテュー。どうやらそれは、バスケのターンアラウンドの動きに似ていることが分かった。
まず剣が障害物に当たる。その時剣が反動で逆に飛ぶ勢いを回転する力に変える。一歩で体を半回転させる。その後は、まんまターンアラウンドの動きだ。最後のジャンプの代わりに剣を思いっきり斜め上に切り上げるだけ。しかしーー。
「よくそんな動きできるな。あの剣そうとう重いだろ?」
「お前のステータスが低いだけだと思うぞ?」
「……ごもっともです」
痛いところを疲れてしまった。返す言葉もありません。
肩を落としてガッカリする俺に、テューは励ましの肩ポンポンをしてくれた。ーー泣きたい。
そんなこんなで、そろそろユナとティナの準決勝が始まろうとしていたーー。
ほんのりと温かな何かに包まれる感覚とともに、俺の意識は徐々に回復して来ていた。さっきから俺を呼びかけているのは、今まさに対戦を終えた相手。テューだ。
全くうるさいなぁ。疲れてんだから少し寝させろよ。
「意識が戻らないときは確か……」
そう言ってテューが始めたのは心臓マッサージ。まぁ本気ではやってないけどね。肺を押されたせいで、俺はふっふっと音を立てて呼吸をする。呼吸しづらいのでやめろと言いかけたそのときーー。
「お? 意識が戻ったか?」
「頼む。もーちょい寝させろろろろろろろろうぉうぉうぉうぉおぉえぇ……」
突然心臓マッサージが高速化する。
「どうだ! 超高速心臓マッサージ」
「どうだじゃねぇよ! 殺す気か!!」
慌てて起き上がり、テューの頭に平手打ち一発。
「あ、おはよあまとう」
「おうおはよ……ってコラー!」
相変わらずのアホアホトークをしていると、アザルド先生が今回の試合に満足げな表情でアドバイスをくれた。
「テュー君は少し敵を見くびり過ぎていたね。相手との実力差を正確に測ることも、騎士ときてとても重要になる。常に謙虚な姿勢で臨みなさい」
「はーい」
「とおる君はよく頑張った。最後まで諦めないその心を大事にしなさい。技術の方は、言わなくても分かっていると思うがまだまだだ。そこはこれからの授業でいくらでも磨くことができるので安心してくれ」
「はい」
「二人とも次がある。あまり時間もない。しっかり調整するように」
「「はい!」」
テューは強かった。正直最後の一撃はまぐれだと思う。それでも、元いた世界で培ってきた諦めの悪さがこんなところで生かされた。人生何がどこで活かされるかわかんないものだな。
俺は、日々の何気ないことも大切にしていこう。なんて考えながら観客席に戻るのだった。
■■■
「次はユナレアとティティの試合だねぇ」
「どんな戦いするんだろうな……」
観客席に戻った俺たちは、試合開始の合図を待つユナとティナを見ながら体力回復に努めていた。
「そう言やさ、アレどーやってやったんだよ」
俺は先ほどの模擬試合でテューが最初に見せた、防いだはずの剣が逆から飛んできたあの技について聞いてみた。
「あぁアレは反動を利用するんだよ」
得意げに、しかし丁寧にわかりやすく教えてくれるテュー。どうやらそれは、バスケのターンアラウンドの動きに似ていることが分かった。
まず剣が障害物に当たる。その時剣が反動で逆に飛ぶ勢いを回転する力に変える。一歩で体を半回転させる。その後は、まんまターンアラウンドの動きだ。最後のジャンプの代わりに剣を思いっきり斜め上に切り上げるだけ。しかしーー。
「よくそんな動きできるな。あの剣そうとう重いだろ?」
「お前のステータスが低いだけだと思うぞ?」
「……ごもっともです」
痛いところを疲れてしまった。返す言葉もありません。
肩を落としてガッカリする俺に、テューは励ましの肩ポンポンをしてくれた。ーー泣きたい。
そんなこんなで、そろそろユナとティナの準決勝が始まろうとしていたーー。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる