20 / 70
第18話『Q.最近友達とどうですか?』
しおりを挟む
気持ちのいい光がカーテンの隙間から差し込む。朝だ。カーテンを開け、扉を開ければ綺麗な空気が部屋に入ってくる。
「何て爽やかな朝なんだ」
流石ファンタジー世界。ラノベの主人公達が元の世界に帰りたがらない理由がわかるよ。
俺は鼻歌を歌いながら、いつものように朝のあれこれを始めた。
■■■
「よっす!」
「おうぅあまとうおはよう!」
今日は校門でテューと出くわしての学校スタートだ。教室に行くと、既にユナとティナが机で楽しそうに会話をしていた。
ユナ達二人は席が真逆の左前あたりにあるため、よっ! っと手振りだけして、俺たちは自分の席に座る。
多分俺の人生を覗き見している皆さんは、一限二限の基礎学みたいなのを永遠と語られても面白く無いと思うから、それは定期的に閑話として語っていこうかなと思う。
ってなわけで午前の授業はすっ飛ばして――。
■■■
「なんか一日でこのメンバー構成が定着しちゃったな」
「そうね。ウチはこのメンバー面白いから大歓迎だけどね」
お弁当を広げながら呟く俺の言葉に、相槌を打ってくれたのはティナ。テューも"面白い"と言う部分にすごく共感している様子。ユナはひたすら首縦にコクコク振っていた。なんかめんこい。
ふと俺は、最近ずっと気になっていることがあるんだったと思い出す。
「そう言えばさ、みんなは何でこの学校に通うことにしたの?あんなに強いんなら騎士になっちゃえばいいじゃん」
一瞬三人が黙り込む。と言うか、俺の質問がアホすぎて誰も反応できなかったようだ。一瞬間を置いて、テューが笑いながら答えてくれた。
「何故って、そりゃあまだまだ実力が足りて無いからに決まってるしょ。面白いこと言うなぁ」
「ウチだって"テンペスト"なんて呼ばれてるけど、騎士団に入るなんてまだまだ先の話よ」
ティナ曰く、騎士団に入るためには今の実力の十倍は必要になるらしい。入団試験もまだ受けたことがないんだとか。
そりゃあ俺が受かる訳もありませんよね。国家騎士への道はどうやら相当険しいらしい。
俺が一人で納得して頷いていると、ユナが心配そうにこっちを見て――。
「とおる大丈夫? もしかして昨日の試合で頭を打って……」
「「「アホになった?」」」
「やぁかましぃわ! 元からこの頭じゃい! ってかハモるな!」
何だこいつら。打ち合わせでもしてたのか?ユナのセリフに合わせてみんなでアホ言いやがる。全く、どいつもこいつも俺の優秀さをわからんとは……まだまだよの。
「あ、その卵焼きもーらいぃ」
「したっけ俺はその肉を貰おうか」
そんなくだらない会話をしているとあっという間にお昼の時間は終わり、例のごとく三限目はすっ飛ばし――。
■■■
「それでは昨日の続きから行っていく」
今日もゴッツイ元副団長様による実技の時間がきました。第二予選はテューが二組目で、俺は三組目か。昨日と同じく三組ずつ行うから、今回もテューの試合は見ることができなさそうだな。
試合の流れはどの組みも同じだった。テューはやはり俺より先に試合を終えており、俺は相手がバテるまで攻撃を躱し続け、動きが鈍ったところを一撃で仕留めた。ユナも試合の展開は昨日とほとんど変わらず圧倒していた。
そして迎えた準々決勝。今日は昨日と違い、試合数が少ない為、試合と試合の間の時間が長い。アリーナ外に出なければ何をしても良いと言われているが、恐らくこういった時間で個人の調整力などを見ているのだろう。幸い俺は部活動でこう言うのに離れている。しっかり調整させてもらうさ。
さてさて、次の俺の相手はゴリッゴリの大男。思わず怯んで一歩後ずさってしまいそうなくらい迫力のある相手だ。本当にコイツ俺とタメかそれ以下なのか?
時間が迫り、印の位置まで移動して剣を構える。今回も左でテューの試合が行われるようだ。ここまで一度もテューの戦っている姿を見られていない。俺がもっと早く試合を終わらせられたら少しは見られるのだが。まぁそんな余裕があるわけもなく。と言うか、よくここまで勝ち上がったと褒めて欲しいくらいだ。
「何だ? ずいぶん弱気な表情見せるじゃねぇか」
「ご心配なく。……それでも俺は、負ける気は無いんで」
俺の魔物も睨み殺すような冷たい目つきを見て、一度は余裕を見せた相手も気を引き締め直す。
フーっと深めの息を吐き、精神統一。試合開始直前……相手の呼吸の音まで聞こえそうな静けさだーー。
「試合、開始!!」
これに勝てばテューとの勝負。俺は気合を入れて、準々決勝を始めた――。
■■■
「くっ……」
流しきれない……避けきれない……。
試合開始から四分が過ぎた。俺は相手の乱暴な攻撃を受けきれず、二度ほど有効打を入れられていた。
「何て爽やかな朝なんだ」
流石ファンタジー世界。ラノベの主人公達が元の世界に帰りたがらない理由がわかるよ。
俺は鼻歌を歌いながら、いつものように朝のあれこれを始めた。
■■■
「よっす!」
「おうぅあまとうおはよう!」
今日は校門でテューと出くわしての学校スタートだ。教室に行くと、既にユナとティナが机で楽しそうに会話をしていた。
ユナ達二人は席が真逆の左前あたりにあるため、よっ! っと手振りだけして、俺たちは自分の席に座る。
多分俺の人生を覗き見している皆さんは、一限二限の基礎学みたいなのを永遠と語られても面白く無いと思うから、それは定期的に閑話として語っていこうかなと思う。
ってなわけで午前の授業はすっ飛ばして――。
■■■
「なんか一日でこのメンバー構成が定着しちゃったな」
「そうね。ウチはこのメンバー面白いから大歓迎だけどね」
お弁当を広げながら呟く俺の言葉に、相槌を打ってくれたのはティナ。テューも"面白い"と言う部分にすごく共感している様子。ユナはひたすら首縦にコクコク振っていた。なんかめんこい。
ふと俺は、最近ずっと気になっていることがあるんだったと思い出す。
「そう言えばさ、みんなは何でこの学校に通うことにしたの?あんなに強いんなら騎士になっちゃえばいいじゃん」
一瞬三人が黙り込む。と言うか、俺の質問がアホすぎて誰も反応できなかったようだ。一瞬間を置いて、テューが笑いながら答えてくれた。
「何故って、そりゃあまだまだ実力が足りて無いからに決まってるしょ。面白いこと言うなぁ」
「ウチだって"テンペスト"なんて呼ばれてるけど、騎士団に入るなんてまだまだ先の話よ」
ティナ曰く、騎士団に入るためには今の実力の十倍は必要になるらしい。入団試験もまだ受けたことがないんだとか。
そりゃあ俺が受かる訳もありませんよね。国家騎士への道はどうやら相当険しいらしい。
俺が一人で納得して頷いていると、ユナが心配そうにこっちを見て――。
「とおる大丈夫? もしかして昨日の試合で頭を打って……」
「「「アホになった?」」」
「やぁかましぃわ! 元からこの頭じゃい! ってかハモるな!」
何だこいつら。打ち合わせでもしてたのか?ユナのセリフに合わせてみんなでアホ言いやがる。全く、どいつもこいつも俺の優秀さをわからんとは……まだまだよの。
「あ、その卵焼きもーらいぃ」
「したっけ俺はその肉を貰おうか」
そんなくだらない会話をしているとあっという間にお昼の時間は終わり、例のごとく三限目はすっ飛ばし――。
■■■
「それでは昨日の続きから行っていく」
今日もゴッツイ元副団長様による実技の時間がきました。第二予選はテューが二組目で、俺は三組目か。昨日と同じく三組ずつ行うから、今回もテューの試合は見ることができなさそうだな。
試合の流れはどの組みも同じだった。テューはやはり俺より先に試合を終えており、俺は相手がバテるまで攻撃を躱し続け、動きが鈍ったところを一撃で仕留めた。ユナも試合の展開は昨日とほとんど変わらず圧倒していた。
そして迎えた準々決勝。今日は昨日と違い、試合数が少ない為、試合と試合の間の時間が長い。アリーナ外に出なければ何をしても良いと言われているが、恐らくこういった時間で個人の調整力などを見ているのだろう。幸い俺は部活動でこう言うのに離れている。しっかり調整させてもらうさ。
さてさて、次の俺の相手はゴリッゴリの大男。思わず怯んで一歩後ずさってしまいそうなくらい迫力のある相手だ。本当にコイツ俺とタメかそれ以下なのか?
時間が迫り、印の位置まで移動して剣を構える。今回も左でテューの試合が行われるようだ。ここまで一度もテューの戦っている姿を見られていない。俺がもっと早く試合を終わらせられたら少しは見られるのだが。まぁそんな余裕があるわけもなく。と言うか、よくここまで勝ち上がったと褒めて欲しいくらいだ。
「何だ? ずいぶん弱気な表情見せるじゃねぇか」
「ご心配なく。……それでも俺は、負ける気は無いんで」
俺の魔物も睨み殺すような冷たい目つきを見て、一度は余裕を見せた相手も気を引き締め直す。
フーっと深めの息を吐き、精神統一。試合開始直前……相手の呼吸の音まで聞こえそうな静けさだーー。
「試合、開始!!」
これに勝てばテューとの勝負。俺は気合を入れて、準々決勝を始めた――。
■■■
「くっ……」
流しきれない……避けきれない……。
試合開始から四分が過ぎた。俺は相手の乱暴な攻撃を受けきれず、二度ほど有効打を入れられていた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる