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第13話『Q.新生活は順調ですか?』
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「ーーこうですか?」
「そうですね。高いところはこれを使ってゆっくりと拭き取ってください」
俺は今、宿の仕事の手伝い、基バイトをしている。仕事内容はそれほどたくさんはない。ロビーの掃除は床と、テーブル・椅子と、棚や飾りなどの雑巾・布巾がけ。他は階段の雑巾がけに、客室のシーツ交換、雑巾がけ、ゴミ袋交換など。調理室はダグラスさんがやってくれるので俺はやらない。一応俺も客なので食事関係はオルロッツ夫婦でやってくれるそうだ。
「今日は何人泊まるんですか?」
俺は机を拭きながらエリシアさん聞いてみた。エリシアさんは少し機嫌がよさそうにーー。
「今日は三人止まってくれる予定よ!」
三人か……この表情からしてこの宿としては多めのご利用のようだな。ーーでもなぁ。
そう心の中で考えていると、表情に出ていたのか、エリシアさんが少し寂しそうに話し出した。
「少なめですよね。でもいいんです。夫と二人で協力し合って生活できている。それだけで幸せですから。それに、ウチは他の宿のような立派なものはありませんからーー」
「そんなことはない!」
思わず大きい声を出してしまった。いかんいかん。エリシアさんもびっくりして作業を止めてしまったではないか。
一旦落ち着いてから俺は続きを話し出す。
高級感、豪華さでは確かに他に劣っているかもしれない。でも、俺はこの宿の、この落ち着く、安らぐ雰囲気が好きなのだ。それはどこの宿にも負けていない。と言うことを伝え、そこで俺はあることを思いついた。
「分かりました。僕が宣伝します!」
■■■
「なに? 宣伝をする?」
「はい。こんないい宿をこのままにしておくのはもったいない。大丈夫です。俺に任せてください」
その日の夜。机を三人で囲み、今日は鍋を食べている。そんな中、俺はダグラスさんにもエリシアさんに言ったことを伝えた。
驚きと不安の表情を見せるエリシアさんとダグラスさん。しかしダグラスさんも冒険者。俺の熱い想いに免じてこの挑戦に同意をしてくれた。俺のせいで変な噂が流れないように気をつけながらしっかり宣伝するつもりだ。
「ま、それは学校とかがひと段落たってからな!」
「それと、仕事も覚えてからですね!」
「うぅ……意外と先の話になりそうだなぁ」
そうだな。まずは自分の足場を固めるところからやっていこう。宿の宣伝や元いた世界に帰ることとかは、それを終えてから考えよう。
■■■
「おはようございます」
「おう。おはよう!」
「おはようございます」
翌日の朝。爽やかな挨拶を交わす三人。俺とダグラスさんと、エリシアさんだ。
俺の一日は午前七時に始まる。まずは自分の部屋の掃除。これはそれほど時間がかからない。午前七時十五分、三人で机を囲んでの朝食。基本はブレッド……すまんカッコつけた。パンだ。ミルクと一緒に食べるパンはどこの世界でも美味しいんだな。午前八時半、学校へ出発。騎士学校は朝の出席確認が八時五十分からなので、それでも十分ほどの余裕を持って登校が出来る。
■■■
「おはよう! 今日も一日頑張ってこー!」
席に座って時間になるまで待っていると、後ろから前期の良い声が聞こえてくる。俺はめんどくさそうに振り向いて返したつもりだった。
「なんだよテュー。朝から元気だなぁ」
「んなこと言って、とおるだって機嫌良さそうじゃん。なんかいいことあった?」
うそ? なんでだろう。いや、理由は分かっている。こんな感じで友達と話すのが俺は好きなんだろうな。元いた世界ではオタクの海音しかこんな感じの友達いなかったけど、こっちの世界では友達たくさんできるかな?
「いやぁ? 別にぃ?」
「なんだよそれ。あ、そうだ今日お昼一緒に食べようぜ!」
俺は即答OK。当たり前じゃないか。お昼だよ。一緒にだよ。誘われることなんてなかったからなー。海音との昼飯は……お互いアニメ見ながらだったから一緒に食べてる感じしなかったしなぁ。アッハハ。
■■■
一限の基本科目は、言語の読み書きを習った。取り敢えず文字を覚えるところからってことだな。
二限の基本技術学では、まず初めに剣の種類から学ぶそうだ。国によって様々な剣があるのは、どこの世界でも同じのようだ。そして気づいたことが一つ。この世界の剣の名前と俺が元いた地球の剣の名前が同じということ。固有名詞は違えど、剣の大まかな種類の名前はまるっきり同じだった。まぁながいけん見たらロングソードって名前つけたくなるよね。
そして時刻は十二時十分。朝から楽しみにしていたお昼の時間だ。
俺はエリシアさんに貰ったお弁当を机の上に置き、テューを待っていた。待つこと三十秒。はいそこー! それは待ったとは言わないとかいうツッコミ入れなーい!
ーーさて、テューが扉を開けて教室に入ってくる。やけににやけた顔だ。と、ここまでは思い描いていた通り。
しかし。合わせた机は四つ。俺とテューとユナとあともう一人女の子。…………え? ちょちょちょちょっと待って? なんでユナが居るの? あともう一人誰? まぁユナの友達だと思うけどさ。
なんだか最近こんなこと多い気がする。そう。突然ユナと一緒になる。ーーなんでだ?
○○○
とおるA「順調ですよ! お給料が減るくらいには」
「そうですね。高いところはこれを使ってゆっくりと拭き取ってください」
俺は今、宿の仕事の手伝い、基バイトをしている。仕事内容はそれほどたくさんはない。ロビーの掃除は床と、テーブル・椅子と、棚や飾りなどの雑巾・布巾がけ。他は階段の雑巾がけに、客室のシーツ交換、雑巾がけ、ゴミ袋交換など。調理室はダグラスさんがやってくれるので俺はやらない。一応俺も客なので食事関係はオルロッツ夫婦でやってくれるそうだ。
「今日は何人泊まるんですか?」
俺は机を拭きながらエリシアさん聞いてみた。エリシアさんは少し機嫌がよさそうにーー。
「今日は三人止まってくれる予定よ!」
三人か……この表情からしてこの宿としては多めのご利用のようだな。ーーでもなぁ。
そう心の中で考えていると、表情に出ていたのか、エリシアさんが少し寂しそうに話し出した。
「少なめですよね。でもいいんです。夫と二人で協力し合って生活できている。それだけで幸せですから。それに、ウチは他の宿のような立派なものはありませんからーー」
「そんなことはない!」
思わず大きい声を出してしまった。いかんいかん。エリシアさんもびっくりして作業を止めてしまったではないか。
一旦落ち着いてから俺は続きを話し出す。
高級感、豪華さでは確かに他に劣っているかもしれない。でも、俺はこの宿の、この落ち着く、安らぐ雰囲気が好きなのだ。それはどこの宿にも負けていない。と言うことを伝え、そこで俺はあることを思いついた。
「分かりました。僕が宣伝します!」
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「なに? 宣伝をする?」
「はい。こんないい宿をこのままにしておくのはもったいない。大丈夫です。俺に任せてください」
その日の夜。机を三人で囲み、今日は鍋を食べている。そんな中、俺はダグラスさんにもエリシアさんに言ったことを伝えた。
驚きと不安の表情を見せるエリシアさんとダグラスさん。しかしダグラスさんも冒険者。俺の熱い想いに免じてこの挑戦に同意をしてくれた。俺のせいで変な噂が流れないように気をつけながらしっかり宣伝するつもりだ。
「ま、それは学校とかがひと段落たってからな!」
「それと、仕事も覚えてからですね!」
「うぅ……意外と先の話になりそうだなぁ」
そうだな。まずは自分の足場を固めるところからやっていこう。宿の宣伝や元いた世界に帰ることとかは、それを終えてから考えよう。
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「おはようございます」
「おう。おはよう!」
「おはようございます」
翌日の朝。爽やかな挨拶を交わす三人。俺とダグラスさんと、エリシアさんだ。
俺の一日は午前七時に始まる。まずは自分の部屋の掃除。これはそれほど時間がかからない。午前七時十五分、三人で机を囲んでの朝食。基本はブレッド……すまんカッコつけた。パンだ。ミルクと一緒に食べるパンはどこの世界でも美味しいんだな。午前八時半、学校へ出発。騎士学校は朝の出席確認が八時五十分からなので、それでも十分ほどの余裕を持って登校が出来る。
■■■
「おはよう! 今日も一日頑張ってこー!」
席に座って時間になるまで待っていると、後ろから前期の良い声が聞こえてくる。俺はめんどくさそうに振り向いて返したつもりだった。
「なんだよテュー。朝から元気だなぁ」
「んなこと言って、とおるだって機嫌良さそうじゃん。なんかいいことあった?」
うそ? なんでだろう。いや、理由は分かっている。こんな感じで友達と話すのが俺は好きなんだろうな。元いた世界ではオタクの海音しかこんな感じの友達いなかったけど、こっちの世界では友達たくさんできるかな?
「いやぁ? 別にぃ?」
「なんだよそれ。あ、そうだ今日お昼一緒に食べようぜ!」
俺は即答OK。当たり前じゃないか。お昼だよ。一緒にだよ。誘われることなんてなかったからなー。海音との昼飯は……お互いアニメ見ながらだったから一緒に食べてる感じしなかったしなぁ。アッハハ。
■■■
一限の基本科目は、言語の読み書きを習った。取り敢えず文字を覚えるところからってことだな。
二限の基本技術学では、まず初めに剣の種類から学ぶそうだ。国によって様々な剣があるのは、どこの世界でも同じのようだ。そして気づいたことが一つ。この世界の剣の名前と俺が元いた地球の剣の名前が同じということ。固有名詞は違えど、剣の大まかな種類の名前はまるっきり同じだった。まぁながいけん見たらロングソードって名前つけたくなるよね。
そして時刻は十二時十分。朝から楽しみにしていたお昼の時間だ。
俺はエリシアさんに貰ったお弁当を机の上に置き、テューを待っていた。待つこと三十秒。はいそこー! それは待ったとは言わないとかいうツッコミ入れなーい!
ーーさて、テューが扉を開けて教室に入ってくる。やけににやけた顔だ。と、ここまでは思い描いていた通り。
しかし。合わせた机は四つ。俺とテューとユナとあともう一人女の子。…………え? ちょちょちょちょっと待って? なんでユナが居るの? あともう一人誰? まぁユナの友達だと思うけどさ。
なんだか最近こんなこと多い気がする。そう。突然ユナと一緒になる。ーーなんでだ?
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とおるA「順調ですよ! お給料が減るくらいには」
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