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閑話『問1、思い出を三文字以内で書きなさい』
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拝啓家族。『新品と言う名の童貞』可愛い息子の とおる だよ。この独り言が皆さんのもとに届くことはまず無いでしょう。でも語らせてください。
俺は今、とある異世界にいます。どうやら魔術師によって召喚されたようなのですが、俺はこの世界ではどうも使い物にならないらしいのです。ハズレ宣告を受けた後はまさかの放置。流石の俺でもビックリしすぎて禿げるかと思いました。……冗談です。しっかり剛毛です。むしろ陰も……辞めておこう。
さてさて、そんなこんなで今に至るわけだが、俺は今、二つスキップをしました。放置されてから今に至るまでを絵的に飛ばしたのと、スキップ歩行の二つです。誰も二歩スキップしたなんて言ってません。上手いこと言ったでしょ? なんでこんなこと言ったのかって? 思い付いただけです。特に意味はありません。
ここでいつもならツッコミが入るのだが、今はそんな相方的存在がいない。俺は孤独だ。人は孤独になると、どうしても過去の楽しかった思い出や、面白かった出来事などを思い出し、ノスタルジックな気分になってしまう。
「そうだな、ここからは俺の昔話にでも付き合ってもらおうか」
おもむろに立ち止まり、太陽を見つめながらしみじみと語り出した俺を、町の人たちは、まるで洗濯したのに取れなかったシミを見るような目で俺を見ていた。
「そう言えば過去の栄光にすがる奴にノスタルジーってあだ名つけたっけ……あれ今思うとすげぇあだ名だなーー」
■■■
あれはそう。高校一年の夏休み、図書館でテスト勉強していたときのことだ。
俺と海音は幼馴染。テスト期間になるとよくこうやって図書館で一緒にべんきょ……ベンキョ…………勉強をしたものだ。
……すまん。ほぼだべってただけです。
それはそうと、俺たちは図書室にいた。夏休みの課題をこなす為に。決して明けにあるテスト勉強をしようなんてこれっぽっちも思ってなどいなかった。
俺はこの日、珍しくやる気が出たので少し真面目に勉強をしていた。向かいに座る海音は、相変わらずやる気なさそうに机に顎を乗せてラッピングされた本を読んでいる。
「うぅーん……」
突如海音が震えながら唸り始めた。……気になる。
せっかく集中できていたのだから気にせず宿題をやっていればよかったのだと、今思い返すと後悔する。俺は好奇心に負け、聞いてしまった。
「海音。何読んでんの?」
「あぁ。グリムレイパー ~歩く死神~ ……かな」
「かな? って何だよ……なんか怖そうだな」
意味ありげに答える海音。俺もホラーが大好きと言うわけではなかったが、怖いもの見たさで話を進める。
「どんな話なん?」
「誰もいないはずの部屋で人が死んだり、まるで神話の悪魔が直接降臨して手を下したように、神話に関連する人物が次々に神話になぞって殺されていくんだ。そんな負の連鎖を食い止める為に立ち上がる主人公の物語だよ」
やばそうな話だ。神話をなぞった物語はよくあるが、悪魔を題材にしてストーリーが進んでいくのか……死神かぁ。本当にそんなやついるのかなぁ。
少し背筋がソワソワしながら、あれから勉強にも集中できず、早三十分。海音も先ほど読んでいた死神の本を読み終えて、重い腰を持ち上げるが如く、のっそりとクリッピングされた宿題のプリントを開く。
「どんな結末だった?」
ふと頭に浮かんだ事を声に出す。しかしコレが最大の間違いだったのだろう。まさかあんな思いをすることになるなんて……。
少し悩んだ後、海音はゆっくりと話し出した。
「結膜は複雑だったから言えない」
「そうか」
やはり難しい本だったようだ。それと、結末はグロテスクだったのかな? 読み終わってからの海音の表情が少し暗い。仕方ない。これ以上は聞かないでおこう。そう思って再びペンを持ったそのとき、海音は言った。
「ただ誰でも知っている死神の名言があるんだ」
この後の海音の言葉を聞いて俺は驚愕とともに愕然とした。その名言はこうだーー。
『真実は、いつも一つ!』
俺の三十分のソワソワを返せ。
■■■
「あれは非常に無駄な時間だったなぁ」
ボソボソと独り言を唱えながら、俺は高速スキップで宿へと戻るのだった。
「飛ばしてくぜ!」
俺は今、とある異世界にいます。どうやら魔術師によって召喚されたようなのですが、俺はこの世界ではどうも使い物にならないらしいのです。ハズレ宣告を受けた後はまさかの放置。流石の俺でもビックリしすぎて禿げるかと思いました。……冗談です。しっかり剛毛です。むしろ陰も……辞めておこう。
さてさて、そんなこんなで今に至るわけだが、俺は今、二つスキップをしました。放置されてから今に至るまでを絵的に飛ばしたのと、スキップ歩行の二つです。誰も二歩スキップしたなんて言ってません。上手いこと言ったでしょ? なんでこんなこと言ったのかって? 思い付いただけです。特に意味はありません。
ここでいつもならツッコミが入るのだが、今はそんな相方的存在がいない。俺は孤独だ。人は孤独になると、どうしても過去の楽しかった思い出や、面白かった出来事などを思い出し、ノスタルジックな気分になってしまう。
「そうだな、ここからは俺の昔話にでも付き合ってもらおうか」
おもむろに立ち止まり、太陽を見つめながらしみじみと語り出した俺を、町の人たちは、まるで洗濯したのに取れなかったシミを見るような目で俺を見ていた。
「そう言えば過去の栄光にすがる奴にノスタルジーってあだ名つけたっけ……あれ今思うとすげぇあだ名だなーー」
■■■
あれはそう。高校一年の夏休み、図書館でテスト勉強していたときのことだ。
俺と海音は幼馴染。テスト期間になるとよくこうやって図書館で一緒にべんきょ……ベンキョ…………勉強をしたものだ。
……すまん。ほぼだべってただけです。
それはそうと、俺たちは図書室にいた。夏休みの課題をこなす為に。決して明けにあるテスト勉強をしようなんてこれっぽっちも思ってなどいなかった。
俺はこの日、珍しくやる気が出たので少し真面目に勉強をしていた。向かいに座る海音は、相変わらずやる気なさそうに机に顎を乗せてラッピングされた本を読んでいる。
「うぅーん……」
突如海音が震えながら唸り始めた。……気になる。
せっかく集中できていたのだから気にせず宿題をやっていればよかったのだと、今思い返すと後悔する。俺は好奇心に負け、聞いてしまった。
「海音。何読んでんの?」
「あぁ。グリムレイパー ~歩く死神~ ……かな」
「かな? って何だよ……なんか怖そうだな」
意味ありげに答える海音。俺もホラーが大好きと言うわけではなかったが、怖いもの見たさで話を進める。
「どんな話なん?」
「誰もいないはずの部屋で人が死んだり、まるで神話の悪魔が直接降臨して手を下したように、神話に関連する人物が次々に神話になぞって殺されていくんだ。そんな負の連鎖を食い止める為に立ち上がる主人公の物語だよ」
やばそうな話だ。神話をなぞった物語はよくあるが、悪魔を題材にしてストーリーが進んでいくのか……死神かぁ。本当にそんなやついるのかなぁ。
少し背筋がソワソワしながら、あれから勉強にも集中できず、早三十分。海音も先ほど読んでいた死神の本を読み終えて、重い腰を持ち上げるが如く、のっそりとクリッピングされた宿題のプリントを開く。
「どんな結末だった?」
ふと頭に浮かんだ事を声に出す。しかしコレが最大の間違いだったのだろう。まさかあんな思いをすることになるなんて……。
少し悩んだ後、海音はゆっくりと話し出した。
「結膜は複雑だったから言えない」
「そうか」
やはり難しい本だったようだ。それと、結末はグロテスクだったのかな? 読み終わってからの海音の表情が少し暗い。仕方ない。これ以上は聞かないでおこう。そう思って再びペンを持ったそのとき、海音は言った。
「ただ誰でも知っている死神の名言があるんだ」
この後の海音の言葉を聞いて俺は驚愕とともに愕然とした。その名言はこうだーー。
『真実は、いつも一つ!』
俺の三十分のソワソワを返せ。
■■■
「あれは非常に無駄な時間だったなぁ」
ボソボソと独り言を唱えながら、俺は高速スキップで宿へと戻るのだった。
「飛ばしてくぜ!」
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