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第082話 木霊する雄叫び

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 まだ戦乱のかけらも見えないのに、村では戦争の咆哮ウォークライが木霊しております。

 はい。

 ちょっと先走り汁を抑えた方が良かったなとも思います。

 だって、リサさんちのご家族がスナイプしたら結果的に防衛戦なんて終わると思っているのですが。

 自主的に訓練が始まりまして……。

 男性陣のみならず、老若男女関係なく。

 まだ遊び始めた子供も輸送訓練を始め、ご老人は指揮系統の構築に勤しみ。

 女性陣は糧食管理を。

 男性陣?

 訓練と称して、石合戦を始めたので慌てて止めましたよ。

 そんな機動しながらの投石ムーヴなんて考えてないですよ?

 壁の上から、投げて下さい。

 何で、そんなに血気盛んに接近戦をしようとするんですか!?

 村長さんに色々相談してみたんですが……。

 ちょっと私の思い違いもありまして。

 言い方は悪いですが、戦争というのは究極の娯楽という側面もありまして。

 これといって楽しい事なんてない田舎暮らしスローライフ

 畑仕事と食事、それにえっちな事くらいしかやることがなく。

 最近は色々お仕事を頼んでおりますが……。

 その程度では治まらないやる気とかがありまして。

 普通なら為政者がぎゅんぎゅんとアクセルを踏んで、そういうのを仕事で発散させちゃうんですが。

 この村、結構らくちんなんです。

 個人的にはばたばた忙しくしていたんですが、村の人にとっては全然負担になっておらず。

 ただでさえ私がお金や獲物を持って帰っているのに、村の人的にはその恩も返せていない。

 何よりも、自分も活躍したいという欲求は強く。

 それにプラスして、何でもない暴力性……ちょっと違う?

 んー。

 こう闘争したい、競いたいという根源的欲求が複雑に絡み合いまして。

 三百からの闘争狂ウォーモンガーが爆誕したわけです。

 まぁ、やる気があるなら良いかなと。

 訓練の後とかに、秋仕込みのお酒とかを振舞いますと。

 もうね。

 上がるんですよ。

 忠誠値とやる気が。

 ゲージが目に見えたら、天井突破リミットブレイクして、天を衝く勢いです。

 あ、お酒なのですが。

 とっても美味しかったです。

 村の若い女の子が一生懸命仕込んだお酒と思うと、ちょっと美味しく感じてしまいます。

 リサさんはじめ、乙女の皆様が一生懸命ふみふみして皮を剥いたりしてましたから。

 いや、そういうフェチは無いのですが。

 やっぱり、若い女の子の手作り品とか書いていると、ちょっと嬉しくなりません?

 それに、森の恵みという訳で。

 村の近くで採れる果実だけではなく、色々と仕込みましたので。

 珍しさも合わせ、もう村の男女問わず、喜ばれております。

 と。

 そんなやる気をマシマシに見せている村の人に合わせまして。

「しかし、戦意が違いますな。精強さすら感じます」

 領主軍でも結構なお偉いさんのお言葉に、苦笑を返す事しかできません。

 なにせ領主軍の人もやる気満々なんです。

 いやぁ。

 村での話し合いがまとまった段階で、領主サイドに相談しようと町に向かったのですが。

 どうも、前に話を聞いていたお客さんの訪問も無事終了したそうで。

 来賓に関しては、国王様の弟さんという事で。

 うわぁ、王族が来るような人なのだとちょっと引いたりもしましたが。

 その際に、かなり高い評価を領主様本人及びお持て成しに受けたらしいのです。

 それって、甘味の事かぁって感じですが。

 もう、引き合いが凄い事になっているようで。

 某ロボットのごとく、どら焼きをたくさん欲しいと言われまして。

 軍事力と交換だと、切り出したわけです。

 甘味と人件費。

 どっちが高いのかなんて、見ればわかるんですが。

 あっさり話が通ってしまいまして。

 滅茶苦茶稼働が厳しい領主軍から、百人程が手弁当で参加して下さる事になりました。

 え?

 本当に良いの?
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