精霊さんと一緒にスローライフ ～異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です～

第059話 ソリューション

　マスターの態度から、至急増産の必要を感じた私はリサさんと一緒にてちてちと一路村を目指す。

　新しい村にはフレッド君と協力して作った、燻製小屋ver2.00がある。

　従来豆腐住宅を丸々燻製小屋にするスタイルだったのを。

　小部屋で区画に分けて同時に大量に処理する事を可能としたのである。

　まぁ、元々小屋しか作る事の出来ない村人による突貫工事だったので、致し方なかったのです。

　で、こちらで最近処理されているのがウサギさんなどの小動物。

　冬場でも活発に活動しているので、精霊さんがちまちま捕獲してくれます。

　大物でないので、処理に少々手間取りますが、味が良いと評判なので量で考えると高く買い取ってもらえます。

　特に高価なのが、リスさんみたいな小さな生き物。

　こいつなのですが、骨が細くしなやかなので。

　燻製肉を薄く切るとそのまま食べられると。

　カルシウムの補給にも良さそうです。

　お店では、歯応えが面白い逸品として珍重されているそうで。

　アイヌ料理でリスさんのチタタプがある事を考えると、良く出来ているなと思います。
　で。

　燻製小屋ですが、まだ使っていないお部屋がありますので。

　こちらでお魚関係を処理しようかなと。

　やっぱり、獣関係は獣っぽい臭いが出ますし。

　お魚はお魚っぽい臭いが出るでしょう。

　なので、初めから分けます。

　という訳で。

　村の手の空いている人に、釣りセットを渡して頼んでおいた干し魚。

　こちらを燻製していく事にします。

　従来は完全に開いて干していたのですが。

　今回は煙の滞留と見た目を考えてお腹を割いて、そこに支持棒を嵌めるスタイルです。

　泳いでいる姿をイメージしやすいですし、高級感も出るかなと。

　紐で吊るした姿が揺れるさまは、まさに魚群という感じですが。

　こちらの中心で、燻しようの鍋を用意し、囲炉裏に火を付けます。

　後は、暫し待てば出来上がり。

　美味しくなるのを祈りながら、燻製小屋を後にします。

　お手隙なので、ダリーヌさんの案件を片付けたいところなのですが。

　これ、点火棒を量産するのが果たして正しい選択なのか。

　ちょっと疑問なのです。

　点火棒さんは、その名の通り。

　点火するのがお仕事です。

　で、今回の話。

　お店とかでちょっと食べ物を焙りたい、旅先でちょっと加熱したい。

　ふむぅ。

　これを点火棒さんで賄うのは危ない気がするのです。

　ここは、もう少し考えるべきだと。

　要は、小さな火仕事をするのに適したソリューションが無いのが問題なのだと。

　竈も焚火も結構大がかりです。

　でも、ちょっとお家でハーブティーが飲みたい。

　いや、何だったら白湯を冬の朝に飲んで、お腹を温めたい。

　そのために、竈に火を入れて鍋に水を満たして、長時間待つ。

　ふむ。

　ここはあれです。

　コンロですね。

　という訳で試作をしてみたのですが。

　初めは持ち運びしやすい、キャンプ用のガスバーナーみたいなのを考えたのですよ。

　足をカパッと開いて、鍋を置くタイプ。

　でも、木でその機構を作ると、耐久性に難があるんです。

　それに重量バランスも悪い。

　あれ、金属である理由ってきちんとあるんですね。

　なので、もうちょっと用途を縮小させて考えたのが。

　民芸コンロ。

　持ち運びには向かないですが、ちょっとした調理には使えますし、鍋もかけられます。

　という訳で、粘土で試作してみたのですが……。

　重いし、作るのが面倒臭い。

　しかも、これ、焼かないとひび割れてくるのです。

　ふむぅ……。

　悩んでいる横で、ころんころん転がって遊ぶ精霊さん達。

「軽石ってご存知ですか？」

『ぱみす？』

『みずにうきます』

『なげてもいたくなーい！！』

　投げちゃ駄目ですが。

　そういう感じで、この出来損ないのコンロに似たものを作って見たくないですか？

　そう問いかけるまでもなく、きらきらと輝き始める精霊さん達の瞳。

　はい。

　こちらがソリューション品です。

　現実では難しい、軽石削り出しの民芸コンロ。

　重さは驚くほど軽く、火にも強い。

　若干脆いきらいはありますが、ケースか何かに入れて大事に持ち運びしてもらったら大丈夫でしょう。

　ふむ……。

「沢山作りたいですか？」

　私の問いに、きらきら（以下略。

　瞬きする間もなく、馬車に乗りきるのかこれって感じの民芸コンロさんの山が出来上がりました。

　えと。

　これの中心に嵌める点火棒さんも作らないといけないのですが……。

　はぁ……。

　頑張ります。