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第058話 魚の干物は貴重品?

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 はい。

 意気揚々といつもの酒場に川魚の干物を卸しに来たわけですが。

 何、この驚愕の眼差し。

「魚だよな……。良いのか?」

 マスターが絞り出すような声を上げるのに、私はくてんと首を傾げるしかなく。

 リサさんがちょっと呆れたように苦笑いしつつ。

 端っこに引っ張っていかれました。

「村でも、ご馳走なの。町でどうやって魚なんて手に入れるの?」

 聞いてみると。

 産直の村でも川から枯渇するようなアイテム。

 いわんや、町の川なんて汚水交じりですし。

 上流で獲れる少ない魚もお偉いさんのところでストップするような世界。

 たまに入ってくる痛みかけの海魚の干物だって高値の華だそうで。

 これはやっちゃったかなと。

 ダリーヌさん案件だったようですが、まぁいつもの誼だしいっかと。

「村で作った新鮮な干物です。是非扱って下さい」

 そう告げると、文字通り滂沱の涙で受け取ってくれました。

 値付けが出来ないとか叫んでましたが、適当な金額に落ち着くだろうと考えます。

 そう言えば、去り際に聞いたのですが。

 豪族さん。

 どうも、適当な屑肉に何かの植物から取れる根っこの汁で色付けしたのを燻製だって売り出したらしく。

 色は近いのですが、えごいし、まずいので詐欺だと騒がれているようです。

 毒が入っていないだけましじゃないのかなとか考えますが、もしかしたらその試験すらしていない気もして。

 触れない方が良い話題のようなので、渇いた笑いだけ返しておきました。

 次回持ってくるものを聞いたら飛び上がるんだろうなとか考えながら、ダリーヌさんのお店へ。

「さっさと持ってくるさね!!」

 訪問と同時に、矢のような催促。

 何の話かと思えば、前に卸した点火棒。

 どうも需要に火が付いたようで、全然足りなくなっているそうです。

 聞くところによると、野営をする人が買っていくのがデフォだったようですが。

 最近、ちょっと家でものを焙るのに最適だという新しい使い方が編み出されたらしく。

 お仕事が終わったお父さんが、ちょっと干し肉を焙っておつまみに一杯なんてやっているそうです。

 それ、卓上コンロじゃねとも思いながら、とんでもない数の注文を頂きまして。

 精霊さんに頑張ってもらわないと死ねるなと思った次第です。

 魚の干物の燻製にも挑戦したいですし、サワガニの干物で出汁を引いたりしてみたいのですが。

 スローライフはどこいったって気分です。
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