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第046話 練り香水はじめました

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 若妻と湯船でイチャイチャするためだけに風呂を作ったと思ったかぁ!!

 それなら、家族風呂も一緒に作るわぁ(魂の叫び)!!

 いや、そもそもの理由は加齢臭対策なのですが。

 リサさんに対してだけという訳では無く。

 身嗜みをしてない状態で、会いにくい人と出会う機会が増えまして。

 まぁ、町のお偉いさんなんですけどね。

 あの人達、サウナ風呂ったって、普通に風呂に入ってますから。

 そういう相手に会うのに、きちゃない格好をしているのはねぇ。

 長い社会人経験からするに、NGな訳ですよ。

 くんくんと嗅いでみると、文官さんとか良い匂いとかする訳ですよ。

 これはなんぞいやと。

 困った時は、ダリーヌえも(以下略。

「香油さね?」

 あっさり回答が。

 あぁ、そうかと。

 人類史で香水よりも前に香油が流行っていたのを忘れていました。

 パンからビールを作っている時代には、香油ありましたもんね。

 で、製法を聞き出したところ秘伝らしいのですが。

「果物の皮とかが原料になるというのは良く聞くさ。うちにも買いに来たりするね」

 ダリーヌさんの言葉から、圧搾法での香油抽出というのが分かりました。

 まぁ、精霊さん。

 水分を抜いたり、圧力をかけたりは大得意なので。

 ちょっと試してみたいななどと思います。

 いや、リサさんにプレゼントして喜んでもらいたいとか。

 ほんのちょっとしか考えていません。

 思惑の八割程度ですから。

 社会人マナー大事。

 という訳で、てちてちと帰宅です。

 てちてち。

 取りあえず、材料をピックアップ。

 柑橘系の皮は大量に乾燥させて残しております。

 将来的にお風呂を作った時に、入浴剤のように浮かべようかななどと思っていたのです。

 そして、もう一つ。

 蜂の巣達。

 こいつは、古代の甘味の王様。

 蜂蜜を採取した時に、薬の材料になるかなと思って取っておきました。

 グリセリンをイノシシさんの脂肪から分解しても良いのですが。

 そちらは石鹸を作る時にまとめてやればいいかと。

 今回は、蜜蝋を使った練り香水でも作ろうかなと考えている次第です。

 で、アロマオイルの圧搾法なのですが。

 これが簡単。

 素材に高温のスチームを当てて、圧力をかければ出来上がりです。

 精霊えもー(以下略。

『むしやき?』

『つりてんじょう』

『なたねのよーにしぼりとる!!』

 はい、その連想は物騒です。

 小さな甕を用意して、精霊さん達に材料をパス!!

 受け取った精霊さん達が万歳しながら材料を持って走り回ってます。

 違う、そうじゃない。

 運動会になっています。

 改めて、甕の上に集って頂き、蒸気アンド圧力です。

 力場みたいなものに囚われた皮がぐりんぐりんしながら、蒸気に燻されています。

 艶々してきたなと思ったら、きゅぅぅっとって、縮み過ぎ、縮み過ぎ。

 ブラックホールが生まれそう!?

 そんな紆余曲折の末、てとんてとんと。

 甕に、良い匂いの液体が溜まりました。

 このままだと、さくさくと蒸散しちゃうので。

 一旦、厳重に封印を施します。

 次に、蜂の巣をお湯で茹でます。

 こいつは融点が六十度くらいなので、ちゃっちゃと溶かして、濾す。

 冬のお外に出していたらすぐに固まりますので、表面の蜜蝋部分だけを取り出して。

 再度融解の後、濾す。

 これを三度も繰り返せば、ハニーオレンジな蜜蝋の完成です。

 これに、奇麗な植物油を等量加えて温めます。

 よく混ぜたら、火から下ろして先程の精油をぽとと。

 一心不乱にかき混ぜて、型に入れたら、後は静かに冷やします。

 見慣れないものに興奮した精霊さん達と一緒に、お昼寝です。

 起きたら、しっとり蜜蝋の練り香水が出来上がりです。

 こいつなのですが、基本的にハンドクリームと同じように使えます。

 あ、リサさん、カモンです。

 丁度、夕食を持ってきて下さったリサさんの手を取ります。

 やっぱりお湯を使うからでしょうか。

 さかむけが出来かかってますし、荒れ始めていますね。

 ちょちょいっと軽く取った練り香水をぬりぬり。

 しっとりお手々になりました。

「あ……。良い香り。レンデの実?」

「はい。香りの素を取り出して、塗り薬に混ぜました。いつも水仕事をお願いしていますので」

 そう伝えると、潤んだような瞳で抱き着いてくれました。

 詳しく聞くと、やっぱりこの時期は手荒れに悩んでいたと。

 後、この香りが安心するのだというのを教えてくれました。

 私も、荒れる前に、ぬりぬり。

 これで、厳しい冬も大丈夫です!!
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