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第036話 新レシピ開示に伴う余波

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 まぁ、正直。

 精霊さんがいるのなら、山奥に引きこもって一人生活するというのも可能かな。

 そんな事を考えた時期もありました。

 でも、リサさんという伴侶が出来た今。

 そんなアグレッシブニートな生活は駄目な訳で。

 子供に苦労をさせたくもないですし。

 なので、一人国家ではなく、きちんと国造りというやつに目覚めようかなと。

 今回精霊さん達が開墾に打って付けというのは分かりましたので。

 既存の勢力から離れた場所に、にょきにょきっと国を生やしまして。

 既成事実を以って、認めさせようかなと。

 ぶっちゃけてしまうと、精霊さん達とリサさんで生活した方が楽っちゃ楽なのです。

 それでも村人、そして国の民を欲しいと思うのは……。

 精霊さん、考課表ー。

 どんどんどん、ぱふぱふぱふー。

 自然現象に類似するもの、大変よく出来ました。

 指示された単純作業、よく出来ました。

 物品の構築、残念頑張りましょう。

 うん。

 精霊さん達、物作りに向かないのです。

 将来的にもそうなのかは分からないですが、適材適所という事で。

 あ。

 それでも、甘えるだけの人はいりません。

 ブラックだった過去がありますので、優しい国造りは目指します。

 でも、甘い政策にする気は無いです。

 自らのために生きるからこそ人であって、餌をもらって生きるのは家畜です。

 その気概は持ち続けて欲しいのです。

 という訳で。

「大……脱出……ですか?」

 ちょっと困った顔のセディスさん。

「昨日、畑を作ったじゃないですか。あのような形で、森の奥の果てにでも村を作ろうかなと考えています」

 私の言葉に、ざわつく村人。

「あ、これは内緒です。他の村の人が聞いちゃうと、大変な事が起こるかもしれません」

 戸は立てれないけど、不利益で縛ってみようかなと。

「魔法なら可能でしょうが……」

 セディスさんの苦悩、村人の思い。

 一つは、問題が顕在化していないので具体的な痛みに思いが至っていない。

 一つは、父祖の地を離れる事への不安。

 この辺りは、ゆっくりと解消していくしかないかなと。

 最低限村の住人として認められて、信頼されてこそ、初めて共感出来るものだろうし。

 まぁ、結論は先に送るとして。

 残り一割を納める件に関しては、実行で。

 リサさん、セディスさんとも打ち合わせてみたけど。

 冬にある程度、行商に走れば大丈夫との事なので。

 村人の心配顔にも安堵が戻り、肉祭りは閉会と相成りましたとさ。

 あくる日からは、塩、塩、香辛料、塩の塩祭りです。

 精霊さん達はハンティングに目覚めてしまったようで、血気盛んですし。

 何より火の通ったお肉の美味しさに虜なのです。

 保存食が出来上がる前に、おかわり次の獲物を持っていくのは問題ありありなので。

 頑張って行商に励む毎日なのです。

 後、新商品を一つ増やしまして。

 保存食に関して。

 お肉の使い道なのですが、基本干し肉なのです。

 からっからになるまで乾燥させたお肉は削って食べたり、スープの具材にしたり。

 でも、乾燥させきるまでにはそこそこお時間がかかるのです。

 村の規模だと、現在溜め込んでいる分は冬の間の保存食ですが。

 町の規模だと、数日で消費する程度の量。

 ならば、乾燥時間を減らして燻製にしちゃうのはどうかなと。

 おかわりの頻度が上がっても無駄が減りますし。

 ブラック会社時代の楽しみと言えば食。

 おうちDe燻製なんて、お茶の子さいさいな訳です。

 ソミュール液のレシピも問題無く覚えていましたので。

 村の皆さんと協力して、ちっちゃめの豆腐住宅を突貫工事。

 マインクラフトばりの建築速度です。

 やったね、みんな。

 さくさくっと燻製小屋を作りましたとさ。

 で、毛皮目的で狩ってくるオオカミさんとかクマさんをどんどん燻製に。

 若干肉に野趣が溢れていても、薫香の前では旨味のアクセント。

 村の人にもサンプルで配ってみたのですが、大好評。

 酒が飲みたいというカエルの合唱にお姉様方の鉄拳制裁の雨が降りましたが。

 で、燻製。

 どうも燻すという文化が発達していないのか。

 町で空前の大ヒット。

 いやぁ、酒屋のおいちゃんから良い酒場を紹介してもらいまして。

 口利きで仕入れてもらったのですが。

 ちょっと焙ると香る薫香に、酒飲み達はもうメロメロ。

 マタタビ中毒のネコのように酒を消費しまして。

 酒屋も繁盛、酒場も繁盛、私も繁盛って具合なのです。

 使う塩の分が儲かってくれればありがたいかな。

 そんな軽い気持ちだったのですが、利益出まくり。

 その上で、常設市でも売ってくれという引きあいは多いのですが。

 酒場との信頼関係が重要です。

 と、お断り状態。

 酒場のマスターも大感激で。

 幾らでも仕入れるとお墨付きを頂きました。

 それなりに日持ちしますし、クマとかオオカミって現地でしか味わえない珍味なのです。

 まぁ、余禄として。

 酒場なんですが、軍関係者が結構出入りするお店でして。

 兵の皆様も代わり映えしない肴に倦んでいた訳で。

 そこに颯爽と現れる、羊羹……ゲフンゲフン。

 新しい肴。

 その名も燻製肉。

 兵の皆さん、ひゃっほーい状態。

 スタンディングオベーションな訳ですよ。

 もうね、たまに市の方まで来て、感想を述べたり。

 もっと仕入れに来ても良いのよとツンデレを頂いたり。

 自発的に列整理に参加してくれたりと。

 中々良い関係を結べるようになりました。

 商売繁盛、笹もってこい状態です。
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