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第020話 老婆の手腕はいかに!?

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「この辺りの薬師の長なの」

 常設市の活況の合間を縫って、老婆の事を尋ねてみる。

 話によると、このくらいの町の規模になると薬師が居つくようになるらしい。

 やっている事は、病院と薬局の合いの子な感じで。

 老婆に関してはかなり高名な薬師だそうで、元締めとして君臨しているそうだ。

 リサさんとは、村に来る流しの薬師を仲介しての付き合いらしく、お爺さんの代から村としてはお付き合いがあったらしい。

 ちなみにリサさんは現場の意見を吸い上げる良い子として、可愛がられているらしい。

 その辺りは照れて答えなかったから、推測だけど。

 で、老婆というか薬師、というよりある程度力を持った民間人について。

 町の政務に直接関わっている訳ではないけど、民間の支持は集めている。

 なので、意見を述べる事は出来るそうだ。

 日本で言えば、小さな町にある大病院が町政に口出しする感じだろうか。

 まぁ、明確な権限がある訳で無し、意見と言っても些細な事らしいけど。

 そうやって、支配層と住民の仲介をやっているそうだ。

 そういう意味では、一定の影響力があるので、任せても信用出来るかなと。

 私が信じる老婆を信じるんじゃない。

 リサさんが信じる老婆を信じるんだ!!

 まぁ、どっちでも良いのだけど。

「はい。薬種は以上ですが、何かお探しですか?」

「ベンガロトは無いのかい? 前に寄った時はえらく新鮮な出物だったが」

 その言葉に、しょんもり顔を作り頭を下げる。

「生憎と、出てしまったんですよ」

「そうか。いや、知らなければ伝えないといけないと思ってな。あれは薬師のところに持っていけば高く買い取ってもらえる。転売されるくらいならな」

 ちょっと荒い感じの男性だが、非常に心温まる一言に自然と頭が下がる。

「そんな大切な事をわざわざお伝え頂き、ありがとうございます。これ、ちょっとしたおまけですが」

 そっと、症状別に分けたミニお薬セットを手渡してみる。

 布包みを開けて覗き込んだ男性が目を剥くが、瞑目、そっと包み直す。

「また寄る。ここの品質は誇るべきだ。周囲にも伝えよう」

 にかっと男臭い笑顔で去っていった。

 こういう交流こそ、醍醐味だろう。

 そんな常設市は、前回同様大盛況で幕を下ろした。

 薬屋の事や常設市での疲労も重なりへとへとだったため、さくっと屋台で夕飯を済ませ、明日に備えて宿に戻る。

 ゆうべはお楽しみでしたねという訳で、朝を迎える。

 何がお楽しみなのかというと、屋台の食事を初めて食べた精霊さん達だ。

 例によって例の如く、フライデーナイトフィーバーしていたがそれすら気にせず寝落ちした。

 疲労回復の方が大切です。

 英気を養い、本日も朝市奥様達の戦場へ。

 常設市に顔を出していたのは伝わっていたようで、商品を並べ始めた段階で列が形成される。

 最後尾札と列整理のコスプレイヤーげふんげふん、人手が欲しいなと思っていると、警邏の人が買って出てくれたのでチップを手渡しておく。

 賄賂じゃない。

 チップ。

 世間には大義名分が大事な事もある。

 という訳で、今回も大盛況の中ふと顔を向けると、老婆が手を振っているのが見えた。

 手を離せないので、リサさんに頼むと、ててーっと駆けていく。

「話、ついたって」

 戻ってきたリサさんによると、領主との話が付いたので、店に寄って欲しいとの事。

 まぁ、この調子なら帰る前に寄っても大した問題じゃないかと、飛ぶような商品の売れ行きにちょっと遠い目を向けてしまった。
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