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第050話 アイドル親衛隊
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「失礼いたしました。寝過ごしました」
顔を赤らめながら、ちょっと俯き加減で出来る侍女ムーヴを見せてくれるゲレティアさん。
ムールちゃんは早めに寝たのかぱっちりお目覚めだったのだが、他の四人は起こしても起きなかったのだ。
まぁ、ムールちゃんは何が何でも歩き回ってみたかったようで、朝から元気にスライムさん達と一緒に動き回っていた。
クリスマスの朝、子供が早起きなのと同じだ。
スライムさんがぷるぷると移動するのを追いかけているのだが、後ろからは心配そうにドラゴンスライムさん達が追っており。
なんだか、大名行列みたいになっているのが微笑ましかった。
「じゃあ、食事に行こうか」
そんなちょっとだけ温かな朝だった。
「七部屋じゃ足らへんかったな」
「構造が弱くなりそうなので、もう一軒を渡り廊下でつなぐ構造にした方が良かろう」
「じゃあ、頂いた場所には広めに作りましょう」
アイシャさん達は資材を買ってきて、新たに家を建設するようで。
俺はディリータさんに新しいメンバーを紹介すべく皆で黒鹿屋さんに向かうことにした。
普通に歩くのに慣れていないメンバーの様子を見ながら黒鹿屋さんに到着。
少し待っていると奥の応接間に案内されたので、ディリータさんに挨拶。
「従業員ですか?」
「施術を教えるメンバーとして集めました」
「なるほど」
実際の施術の部分を明らかにしつつ説明を行う。
メンバーに関しては奴隷であることともう少し詳細まで踏み込んで伝えてはおく。
「ふむぅ……」
まじまじと五人を眺めていたディリータさんが唸ると、口を開く。
「そもそも龍土を扱うほどの出物はそう多くはなく。改めて驚きはしましたが。実際にそれを受けた皆さんであれば信じられると。それは皆さまの様子を拝見しても信じられます」
一人ひとりの瞳を見つめていたディリータさんが告げると、ほっとした雰囲気が広がる。
なんだか面接みたいになっちゃったなと思いながら、微笑みを返す。
「訪問して頂いてで恐縮ですが、こちらからも」
逆にディリータさんから話があるそうで聞いてみると、潰したマッチョメンのお店で働いていた用心棒の件で相談がありまして。
荒事絡みのお仕事をしていた経緯もあり、潤沢な暴力資源を持っていたマッチョメン。
そちらを潰して店舗や人員を再配分する際に、荒事関係者がかなりの数あぶれるそうで。
犯罪歴がありそうな人間は相応の対応をするにしても、真面目に働いていた人間というのも相当数いるようで。
「雇用ですか?」
「調度などを凝るのであれば、盗難対策は必要になるかと。夜警なども含めて考えられてはいかがでしょうか?」
その言葉に、少し考える。
警護は合った方が安心感を与えるのは確かだ。
でも、荒事関係のあんちゃんとサロンの相性を考えるとちょっと微妙だなと。
「……女性……と、仕事に真摯な人間だけを選ぶことは可能ですか?」
「ふむ。それは?」
「ちょっと考えまして」
実は、この世界。
衛兵といっても、揃いの服装があるわけではない。
大きな町になればそれなりに税収もあるので、装備が官給品になったりもする。
それでも、値段の張る胸当てと小剣が配給される程度で、服からその他の装備に関しては自腹だ。
「そういうのを衣装のように華美に整えるというのはどうでしょう」
お芝居があるのかなと思ったけど、劇場は王都クラスになればあるそうで。
逆に辻芝居程度なら村でもやっており。
華美な衣装に憧れる感覚というのはディリータさんにも分かるそうで。
「それは……。予算は必要としますが……。効果がいまひとつ分からないのですが……」
「サロンの話のタネとなればまずは一つ、それにここに雇われる事への憧れの醸成ですね」
サロンに来る人はそれなりにステータスのある人間だ。
その身の回りを守る人間も同じくステータスが求められる。
それを超える何かがあれば、話のタネにはなるだろう。
例えば、凛々しい女性衛兵や紳士な男性衛兵をサロンで囃し立てる。
アイドル、偶像を皆で楽しむというのもあるのではなかろうか。
それに、周囲としてはそこまでお金をかけて行っている仕事に興味が湧くだろうし、自分達も参加してみたいと思うかもしれない。
そういうエステティックサロンにまつわる価値観を新たに生み出すというのはどうだろうかと。
「そ……れは……。全く予測も付きません。しかし……仰られるのを聞いている限りは……胸が躍りますね」
今までに無い概念にディリータさんもちょっと予測出来ない模様。
ここはと、イケメンに傅かれてエステを受けるってどうよと五人に問うてみると……。
ぽわわわわーっと夢の世界に飛んだ四人を指し示し、実績とする。
ムールちゃん?
よく分からなかったようで、首を傾げていた。
というわけで、アイドル親衛隊計画の立ち上げである。
顔を赤らめながら、ちょっと俯き加減で出来る侍女ムーヴを見せてくれるゲレティアさん。
ムールちゃんは早めに寝たのかぱっちりお目覚めだったのだが、他の四人は起こしても起きなかったのだ。
まぁ、ムールちゃんは何が何でも歩き回ってみたかったようで、朝から元気にスライムさん達と一緒に動き回っていた。
クリスマスの朝、子供が早起きなのと同じだ。
スライムさんがぷるぷると移動するのを追いかけているのだが、後ろからは心配そうにドラゴンスライムさん達が追っており。
なんだか、大名行列みたいになっているのが微笑ましかった。
「じゃあ、食事に行こうか」
そんなちょっとだけ温かな朝だった。
「七部屋じゃ足らへんかったな」
「構造が弱くなりそうなので、もう一軒を渡り廊下でつなぐ構造にした方が良かろう」
「じゃあ、頂いた場所には広めに作りましょう」
アイシャさん達は資材を買ってきて、新たに家を建設するようで。
俺はディリータさんに新しいメンバーを紹介すべく皆で黒鹿屋さんに向かうことにした。
普通に歩くのに慣れていないメンバーの様子を見ながら黒鹿屋さんに到着。
少し待っていると奥の応接間に案内されたので、ディリータさんに挨拶。
「従業員ですか?」
「施術を教えるメンバーとして集めました」
「なるほど」
実際の施術の部分を明らかにしつつ説明を行う。
メンバーに関しては奴隷であることともう少し詳細まで踏み込んで伝えてはおく。
「ふむぅ……」
まじまじと五人を眺めていたディリータさんが唸ると、口を開く。
「そもそも龍土を扱うほどの出物はそう多くはなく。改めて驚きはしましたが。実際にそれを受けた皆さんであれば信じられると。それは皆さまの様子を拝見しても信じられます」
一人ひとりの瞳を見つめていたディリータさんが告げると、ほっとした雰囲気が広がる。
なんだか面接みたいになっちゃったなと思いながら、微笑みを返す。
「訪問して頂いてで恐縮ですが、こちらからも」
逆にディリータさんから話があるそうで聞いてみると、潰したマッチョメンのお店で働いていた用心棒の件で相談がありまして。
荒事絡みのお仕事をしていた経緯もあり、潤沢な暴力資源を持っていたマッチョメン。
そちらを潰して店舗や人員を再配分する際に、荒事関係者がかなりの数あぶれるそうで。
犯罪歴がありそうな人間は相応の対応をするにしても、真面目に働いていた人間というのも相当数いるようで。
「雇用ですか?」
「調度などを凝るのであれば、盗難対策は必要になるかと。夜警なども含めて考えられてはいかがでしょうか?」
その言葉に、少し考える。
警護は合った方が安心感を与えるのは確かだ。
でも、荒事関係のあんちゃんとサロンの相性を考えるとちょっと微妙だなと。
「……女性……と、仕事に真摯な人間だけを選ぶことは可能ですか?」
「ふむ。それは?」
「ちょっと考えまして」
実は、この世界。
衛兵といっても、揃いの服装があるわけではない。
大きな町になればそれなりに税収もあるので、装備が官給品になったりもする。
それでも、値段の張る胸当てと小剣が配給される程度で、服からその他の装備に関しては自腹だ。
「そういうのを衣装のように華美に整えるというのはどうでしょう」
お芝居があるのかなと思ったけど、劇場は王都クラスになればあるそうで。
逆に辻芝居程度なら村でもやっており。
華美な衣装に憧れる感覚というのはディリータさんにも分かるそうで。
「それは……。予算は必要としますが……。効果がいまひとつ分からないのですが……」
「サロンの話のタネとなればまずは一つ、それにここに雇われる事への憧れの醸成ですね」
サロンに来る人はそれなりにステータスのある人間だ。
その身の回りを守る人間も同じくステータスが求められる。
それを超える何かがあれば、話のタネにはなるだろう。
例えば、凛々しい女性衛兵や紳士な男性衛兵をサロンで囃し立てる。
アイドル、偶像を皆で楽しむというのもあるのではなかろうか。
それに、周囲としてはそこまでお金をかけて行っている仕事に興味が湧くだろうし、自分達も参加してみたいと思うかもしれない。
そういうエステティックサロンにまつわる価値観を新たに生み出すというのはどうだろうかと。
「そ……れは……。全く予測も付きません。しかし……仰られるのを聞いている限りは……胸が躍りますね」
今までに無い概念にディリータさんもちょっと予測出来ない模様。
ここはと、イケメンに傅かれてエステを受けるってどうよと五人に問うてみると……。
ぽわわわわーっと夢の世界に飛んだ四人を指し示し、実績とする。
ムールちゃん?
よく分からなかったようで、首を傾げていた。
というわけで、アイドル親衛隊計画の立ち上げである。
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