一坪から始まる新世界創造

文字の大きさ
上 下
4 / 51

第004話 人生という荒波を征くにあたって、時に臭い物に蓋をしなくてはならないのだYo!!

しおりを挟む
 考えなしに飛び出した俺の方を振り向いたドラゴンさん。



 しばしの思考タイムの後に、先程ガブッチョし損なった奴と認識したようで、ムカ着火モードに移行。



 怒髪天を衝く勢いで、顔色がドス黒く変化。



 ふすーっと吐き出された鼻息には炎と黒い煙が入り混じっている訳で。



 いやぁ、元気が良いなぁ、何かいいことでもあったのかい? と問いたい気分ですよ、こんちくしょ!!



 掃除機の云万倍、航空機のエンジンみたいな高音で空気を吸い込むドラゴンさん。



 みちみちと音を鳴らしながら喉が数倍に膨らむ。



 限界とばかりにドラゴンさんの体躯が停止した瞬間。



 世界中が静まり返った静寂の中、再度横っ飛びを敢行した訳ですが。



 歴史フィルムで見た火炎放射器なんて玩具じゃねという勢いの火球が飛来。



「あっちぃ!! あじゃじゃじゃじゃ……」



 横合いを通り抜けた余波ですら灼熱。



 その火球が木々をへし折りながら飛んでいき、轟音とともに爆発。



 ツートンカラーのアイドルもかくやの勢いで大☆炎☆上の火球は粘性の高い可燃物が含まれているようで、べじゃりっと生き物のように広がっていき。



 巻き込まれた立木は樹齢云百年と思われる太い幹をあっという間に炭に変え、焼失していく訳で。



 あんなん、当たったらマジに瞬時に焼死ですよ、チェキラッ!!



 頭の中のDJが叫ぶ中、冷や汗と共に眺めていた俺を瞳で捕捉したドラゴンさん。



 じたばたとしばし暴れながら怒りを表現すると、再度吸引力の変わらないただ一つの生き物って感じで吸い込み開始。



 お前はピンクの球体かと悪態を吐きながら、周りを眺める。



 片や大炎上、片や深い森の中。



 どっちに逃げても、セカンドアクションが取り辛い訳で。



 いや、森の中に逃げ込んでも良いのですが。



 間違いなく爆発物と追いかけっこの中、樹々に邪魔されながら逃げ切れる可能性ゼロなのです。



 うわっ…私の勝算、低すぎ…? と両手で口を覆うイメージを浮かべながら、絶賛大後悔中。



 それでも、女の子二人が逃げる時間を稼いだなら徳が積めたかなぁと。



 魂のスープに戻ってから、天国にいけるなら良かったなと半分諦めた訳ですが。



 咆哮一閃。



 これでもかと広げられた赤黒い顎から放たれる火球。



 眼前にストップモーションで迫る火球を眺めていたら、無性に腹が立ってきた訳で。



 創造神を生身で殴り倒さないと死んでも死に切れるかと。



「あんのじじぃ!! 人中、砕いたらぁぁ!! 邪魔じゃぃ、どっか行かんかいぃぃ!!」



 喉を枯らさん勢いで叫びながら、火球を殴ろうとばかりに右ストレートを繰り出してみた。



 と、その瞬間、火球は消失。



 振り抜いた右ストレートスタイルの俺と吐き出した格好のドラゴンさんは目を丸くして、お見合い。



 両者の頭上を『……とカラス』が通り抜ける中、『一坪の世界』の中には太陽が生まれていた。



 時間停止状態の中、赤々と揺蕩うルビーのような球体が浮かぶ。



 あぁ、こんなものまで入れられるのかと一人納得していると、ドラゴンさんが落ち着きを取り戻し、再度吸引開始。



 一瞬どうしてやろうかと考えた後、火球を『一坪の世界』から排出。



 逆襲じゃぁぁ!!



 自分の吐き出したモノでも食らえ!!



 そんな思いで、ぽいっと。



 迫ってきたのと同じ勢いで飛び出した太陽は、ドラゴンさんに当たった瞬間爆発。



 驚愕の眼差しで息を吸い込んでいたドラゴンさんの鼻や口からも炎は吸い込まれていく訳で。



 次の瞬間ドラゴンさんの胸の辺りがぼごぉっと秘孔を突かれたモブの如く膨らみ、破れ、炎を撒き散らす。



 あぁ、きっと体内には可燃物を貯める器官とかがあったんだろうなと。



 吐き出す時に、引火させつつ排出させると。



 逆に炎なんて吸い込んじゃったら、誘爆しちゃうよなぁなんて眺めていると、体中の穴という穴から血液を垂れ流しているドラゴンさんが座った目でこちらを捕捉。



 体内からの炎で焙られた瞳はほのかに白く濁りながら、怨敵を視線で射殺すという思いを滾らせ、こちらを睨みつけていた。



 ふるふると震えていた後脚はがちりと大地を噛む。



 すぃっと先程までとは違う、体躯全体に酸素を供給する呼吸。



 それが止まった刹那、巨体がブレた。



 あの大空の王者、大地に敵うもの無き生物がなりふりを構わない全力。



 プライドをかなぐり捨てた顎での一閃が迫る中、万策尽きた俺は最後の札を切るしかないなと諦めた。



 両手を差し出し、口を開く。



「臭い物には……」



 世界を揺らし、迫る顎。



 赤い口中の中、煤けた牙はサーブボードを越える大きさを誇りながら、断罪の刃を閉じんと噛み込まれる。



「蓋ぁっ!!」



 その瞬間、巨大なモノが通り抜ける時特有の風が眼前を通り過ぎた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

処理中です...