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第5章:僕が見つけたフォルテ(9)
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※ ※ ※
凌牙さんが出ていってからほどなくして、僕もドーナツショップを後にした。
そのまま迷うことなく、歩き慣れた道を突き進む。
自分の目がどのように変わったのか確かめるには、あの場所が一番だと思った。
まだまだ日照時間の短い三月。なるべく陽の落ちないうちに辿り着けるように、テンポよく足を動かすこと十分弱。
いつもの河川敷に到着した。
おおらかな芝生の感触を足元で味わいながら、右に、左に、ときどき体ごと後ろに向けて、周囲の人々を観察する。
いつも通り目に映る「風景」から、いつもは見えなかった鮮やかな色合いがあふれ出ていた。
あのおばあさんは、ぼーっと川を眺めるのが好き。
あのお兄さんは、走るのが好き。
あのおじさんは、サックスを吹くのが好き。
あの家族連れは、シャボン玉を吹くのが好き。
あの小学生集団は、石切が好き……。
寛大な緑色の芝生を受け皿にして、たくさんの「好き」が空間をせめぎあっていた。
左上の方から轟音がして、橋を見上げると、電車が勢いよく通っていた。
その横を、たくさんの車が行き交う。
あの電車や、車一台一台の中にいる人たちにも、きっとたくさんの「好き」があって、その気持ちはどれも、一人ひとりにとってかけがえのないもので。
電車が通り過ぎるのを見届けながら川岸まで進み、いつもの階段に座って、スケッチブックを取り出した。
水面を眺めるおばあさん、ランニング中のお兄さん、サックスを吹くおじさん……。
それぞれの「好き」をすくい取って、白紙の上に描き留めた。
凌牙さんが出ていってからほどなくして、僕もドーナツショップを後にした。
そのまま迷うことなく、歩き慣れた道を突き進む。
自分の目がどのように変わったのか確かめるには、あの場所が一番だと思った。
まだまだ日照時間の短い三月。なるべく陽の落ちないうちに辿り着けるように、テンポよく足を動かすこと十分弱。
いつもの河川敷に到着した。
おおらかな芝生の感触を足元で味わいながら、右に、左に、ときどき体ごと後ろに向けて、周囲の人々を観察する。
いつも通り目に映る「風景」から、いつもは見えなかった鮮やかな色合いがあふれ出ていた。
あのおばあさんは、ぼーっと川を眺めるのが好き。
あのお兄さんは、走るのが好き。
あのおじさんは、サックスを吹くのが好き。
あの家族連れは、シャボン玉を吹くのが好き。
あの小学生集団は、石切が好き……。
寛大な緑色の芝生を受け皿にして、たくさんの「好き」が空間をせめぎあっていた。
左上の方から轟音がして、橋を見上げると、電車が勢いよく通っていた。
その横を、たくさんの車が行き交う。
あの電車や、車一台一台の中にいる人たちにも、きっとたくさんの「好き」があって、その気持ちはどれも、一人ひとりにとってかけがえのないもので。
電車が通り過ぎるのを見届けながら川岸まで進み、いつもの階段に座って、スケッチブックを取り出した。
水面を眺めるおばあさん、ランニング中のお兄さん、サックスを吹くおじさん……。
それぞれの「好き」をすくい取って、白紙の上に描き留めた。
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