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第3章:重ね塗りのシンフォニー(7)

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「ただいま」
 遥奏と別れ、いつもより少し遅い時間に家に着いた僕。設定は、「卓球部の友達とマックで少し勉強してから帰る」。

「おかえり。ご飯あっためて食べて」
「はーい」
 夫婦部屋に入っていく母さんに返事しながら、僕は部屋に一旦荷物を置くべくリビングを横切った。
 そのときだ。
「なあ、秀翔」
 父さんに呼び止められた。今日はお酒を飲まない日らしく、紅茶を片手に椅子に座っている。
「何?」
「たまたま学校のサイトを見たんだけどな。卓球部、すごいじゃないか。団体戦ベストエイトまで進んだんだな」
「あ、うん、そうなんだよ」

 正直に言うと、初耳だった。
 もう一ヶ月以上卓球部の人たちと顔を合わせていない。
「それでな」
 父さんがスマホの画面を僕に見せてきた。
「当日の集合写真にお前が写っていないんだが、どうしたんだ?」
「あ」
 僕は、とっさに嘘をつくのが苦手だ。

「ねえ」
 夫婦部屋から出てきた母さんが、父さんに声をかけた。
「この前頼んだ書類のことなんだけど」
 父さんと母さんの会話が始まり、その間に僕は頭をフル回転させた。

「えっと、僕は補欠だからカメラ係をしてたんだ。僕が写ったやつも、撮ったっけな……。はっきり覚えてないけど、とりあえず、部の全員が写ってるわけじゃないんだよね」
 母さんが夫婦部屋に戻ったあと、頭の中で組み立てたストーリーを父さんに披露する。
 ギリギリの言い訳だった。
「そうか」
 納得したのかしてないのか、父さんの表情は読めない。
「いつか、お前が試合で活躍している姿も見たいもんだ。練習頑張れよ」
 とりあえず、この場を収めることには成功したみたいだ。
「うん、頑張るよ」
 なるべく自然に聞こえるように返事をして、早足で自分の部屋へ向かった。
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