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「――これは一体何の騒ぎ?」
あまりにも、聞き覚えのある声だった。
声の調子ですら高飛車に聞こえて、だけど目では〝そんなつもりではない〟と寂しげに語っていた、彼女。
「なぁに? 負け犬がこの輝かしい夜にうろついているなんて……嫌だわ。誰か、あの男をつまみ出して!」
「ふふっ……ひどい言い方。あなたのお兄様なのに」
「あんな情けない男と同じ血が通っていると思うだけで不快だわ!」
先程のふたりがかわいらしく思えるくらい、人を傷つける言葉を平気で吐く王女。
それを窘める振りをして平然としているのは、私がこの世で最も欲して諦めるしかなかった座を溝に捨てた皇女。
ふたりとも顔つきすら変わってしまったかのように、その美貌を歪めジオ様を睨み付けている。
「ふたりとも。言い過ぎだって……確かにあの人は俺達に色々言ってくるけど、リアとアルマを心配してのことだろ?」
「心配? あり得ないわ。自分が婚約者に見向きもされないのを当たり散らしているだけじゃない。自分が劣っているくせに、何も悪くないセイをひがんで」
「その通り。嫉妬に駆られた男は、それはもう見苦しい……同じ空気を吸いたくないくらい」
……侮辱というものには限りがないのだろうか。
恋を言い訳にしても到底足りず、その言葉は徹底的に人を貶めることを当然としている。
彼女達への同情が芽生えたこと自体が間違いだったのか。わからなくなりかけたその時、左の耳朶にわずかな熱が走る。
怒りで燃え上がりそうだった心が一瞬平静を取り戻す。やはり、私達の予想は当たっていたのだ。
「呪術ですね」
「ああ……ところでライラ、私はあれらに嫉妬の欠片すら抱いていない。苦言を呈していた時も一切、だ」
「そう強く言われずともわかっておりますよ」
疑うなどあるはずがない。
あのように彼の想いの証左を示されて、私の心はもう揺らぐ余地もないのだ。
「ごきげんよう。ソラリア・フォルトス・リディシオン王女殿下、アルマリール・エリシュ・ジュエラル皇女殿下……セイ・キシュタールさん」
「ふん……ごきげんよう、シェライラ・ヒメネス」
「ごきげんよう……ヒメネス辺境伯令嬢。その装い、素敵だね。ずいぶん風変わりで、腐った白色のドレス」
皇女が私の装いに侮辱の笑みを浮かべ、ゆったりと扇で口元を隠す。
彼女は貴族にしては変わっていて、微笑んだまま腹の探り合いをする夜会は嫌いで、本を読んだり研究をしている方が余程楽しいと言っていた。
その面影は今やもうない。
「ありがとうございます、皇女殿下。これは西方神国伝来の生地で、当代『祈り子』様にいただいたものです」
「……そう」
『祈り子』はこの世界唯一の宗教の総本山である大聖堂で、神の寵愛を受け祈りを捧げる最上位神官のことだ。
ちなみに聖女は国内で最も祈りの適性がある乙女が選ばれる。地位としては『祈り子』の方が遙かに上である。
大聖堂は我が領地の大図書館と、南方の大闘技場と合わせて特殊な場であるがゆえに交流を持っているのだ。
まさか宗教の頂である『祈り子』の名が出てくるとは思わなかったのだろう。
さすがにそれを知って貶めることなどできようはずもなく、皇女はわずかに目元をひくつかせてそれ以上何かを言い募ることはなかった。
代わりに王女が不快げに鼻を鳴らし、私の隣を憎々しげに見やる。
「シェライラ・ヒメネス、これはどういうこと?」
「王女殿下、申し訳ございませんが質問の意図がわかりかねます」
「っ、この、負け犬を忍び込ませたのはあなたかと聞いているの!」
ゲームでの王女は〝虚勢ばかりで実がない王族の落伍者〟と悪役のアンブロジオ殿下に常に見下されていた。
彼女を励まし花開かせたのは主人公で、最後は失敗を繰り返し転落していく殿下を〝人生の落伍者〟と断じて兄の呪縛から解き放たれるのだ。
現実のジオ様は、当然そんな人格を否定するようなことは言っていない。
ただおそらく彼女を教え諭す言葉が強かったのだろう。王女は厳しいジオ様を確かに苦手としていたが、言葉の端々で成人前から公務を任せられている彼を尊敬しているのがわかった。
本当に恋に狂うだけで、血縁の絆や敬愛の心すら失せてしまうのか。
疑問は残ったが、それよりも無言を避けるために私は口を開いた。
「……そのお言葉が何を指すのかもわかりかねますが、わたくしをエスコートしてくださるアンブロジオ殿下はこの学園の生徒なので、元々夜会の参加権がございます」
「そういうことではないの! あなたがどうしてその男に従っているの!? また卑劣な手を使っているのだとしたら、わたくしが追い出して……」
「ソラリア・フォルトス・リディシオン王女殿下」
声が震えてしまった。
張り上げそうになって、必死に抑えたせいで。
感情的になってはいけない。本当に感情を出したいのは、肉親である彼のはずだから。
「わたくしの隣におられる方を、今一度お考えください」
「何を言っているの? こんな目の前にいるのに考えなくてもわかるわ」
「では、よく、ご覧になってください」
兄君と同じ、濃い青の瞳。
その瞳は雷雨の後の濁った湖のごとく淀んでいる気がした。
ぞっとした。
彼女はこのような目をしていなかった。
そう言えば先程の侯爵令嬢も聖女も、怒りのせいか瞳がひどく曇っていた気が……
――違う、この目は正常なものではない。
これはおそらく呪術のせいだ。
やはりこの呪術は強烈な思い込みを抱かせるだけではないのだ。本当に人心すらを変えて……いや、シナリオ通り、ジオ様を憎むように操られている……?
「我が妹よ。兄を負け犬と断じるか」
貶められているはずなのに、一切の揺らぎもなく。
ただ事実を確認するかのごとく、彼は言葉を落とした。
「確かに私は甘かった。惰弱な苦言ばかりを繰り返し、何一つ聞き入れられなくてもお前達に自制を求めるのみ。慎みと秩序を失った学園を統制することもできず、王族として臣民に恥ずべき姿を見せた。それは間違いなく、私の愚かさが招いたことだ」
抗いきれなかった支配のことなどとおくびにも出さず、ただ自らの過ちを語る。
しかしその姿は、決して情けないものではない。
その証拠に、彼女達以外の周囲の人間は、彼の気持ちを自らが味わっているかのように表情を苦しげに歪めている。
悪意ある噂をしていたのだろう、祈るように涙する人間までいるのだ。
常に自信に満ちていた眩しい貴人が、苦悩を零した。その事実だけで、周囲の心は大きく動く。
「だが私は王族である。正道を往くべき者である。気概を失った腑抜けになることは二度と許さぬと己に誓い、今この場にいるのだ」
ゆっくりと、王女が瞬きをする。
次第にその顔つきが変わり、感情が抜け落ちる。
そして何度か戦慄くように唇が動いた。
「お兄、様……」
「兄は愚かな負け犬であった。しかしもう踊らされはしない。ソラリア、お前は愚かなままでいるのか」
これはジオ様の最後の情けなのだ。
抗えと、自らの道を閉ざすなと、淀んだ瞳に語りかける。
彼が私から離れ、片手を差し伸べる。
両手を出してそれに応えようとし、だがすぐさま首を横に振った彼女は、自身の両手を強く握りしめ。
「駄目、駄目よ、わたくしは変わるの。愛されるの。セイは正しい。わたくしをわかってくれる。かわいいって言ってくれる。セイは王子様なの。素敵なお姫様だって認めてくれる。愛してくれるの。お兄様を追い出せばもっと、もっともっと、わたくしを一番に愛してくれるの。だから駄目なの。兄様に許してもらってはいけないの。いけない? 許して。許して? いけないの。駄目なの。許して許して」
早口で呟く王女は、誰がどう見ても正気ではなかった。
このままでは彼女は壊れてしまう。呪術と本心がせめぎ合って、心がおかしくなってしまう。
そう思い咄嗟に踏み出した私を、ジオ様が制する。
「ジオ様っ」
「案ずるな……『眠りの闇をここに』」
彼が王女の頭に触れてそう呟くと、彼女は糸が切れたように崩れ落ちる。
倒れる前にその身体を抱き留めたのは全身を黒の衣装に包んだ銀の仮面の人間だった。
女性かも男性かもわからないそれが誰か、少し考えれば理解できた。
「影、ですか」
「これはとうに見限られたと思ったが、幸いなことだ。……王城へ。待機させている呪術士に解呪をさせろ」
命を受けた影は、現れた時と同じく無言で唐突にかき消えた。
彼女はルールに縛られながらもがいた。それで全てが許されるとは言えないが……正気を失ってまで許しを乞うたのだ。
魔道具の許可と共に申請した魔力を使う許可。だいぶ渋られたが無理矢理押し通したそれで、妹君の心が壊れる前に救うことができたと信じるしかない。
「あれ、リア帰っちゃったね。疲れてたのかな?」
どこか騒然とし出した場を鎮めようとジオ様が片手を上げる前に、のんびりとした声が響く。
その声音は、ぞっとする程平静そのものだった。
「じゃあ、今日のファーストダンスはわたしと……ふふふっ」
「いいよ。ミルもレイもいないし……まだ来てないのかも」
「迎えに行くなんて言うつもり?」
そのふたりは異常、としか言い様がなかった。
今まで黙って静観していたことも、それを見なかったことにしていることも、場違いな程に甘い声音で会話をしていることも。
全てが全て、あまりに不自然だ。
すぐさま私の隣に戻ってきてくれたジオ様が私の腰を強く抱く。
同時に今この場がどこなのかはじめて気づいたとばかりに私を見たキシュタールが、その視線を上から下まで舐めるように動かした。
肌が粟立つのが止まらない。
まるで本当に舌先で舐られているかのごとく、怖気が走る。
「シェライラ先輩。すごく綺麗です! でも先輩にはもっと全体的に淡い色でふんわりしたドレスが似合うと思うな」
「え……」
今挙げたドレスの特徴は、確かゲームのシェライラが主人公にプレゼントされたものと同じだ。
何を言っているのだろうか、キシュタールは。
まさか……本当に『魔術騎士と花の淑女』のシナリオを知っている?
ここがゲームとリンクしていると、認識をしている……?
考えながらも一歩引いてしまいそうになる私を、ジオ様が支えてくれる。
そうだ、私はひとりで立ち向かうのではないのだ。
彼がキシュタールのルールから私を解放してくれた。ならば私はそのルール自体を壊して彼を幸せにする。彼の輝きを取り戻すのだ。
細く息を吐く。
微笑め。私の眩しい方のために、最も美しく。
「ありがとうございます。これは、ジオ様が見立ててくださったんです」
「じおさま……?」
「あなたの目の前にいらっしゃるのに、おわかりにならないのですか?」
そこではじめて、キシュタールの目が私の隣に移る。
瞬間、その瞳が鈍い輝きを持つ。侮蔑と、嘲弄と、嫉妬と、優越と、わずかに滲み出す魔力。
無意識で行使された呪術を、ジオ様は全身で浴びてしまう。
咄嗟にその胸に手を置いてしまったが、彼はそれを優しく下ろし、不敵な笑みを浮かべた。
「それがお前の術か。仕組みがわかれば滑稽な程簡単なものだな……いや、それにかかっていた私の方が余程滑稽か」
「はぁ……? 何、意味わかんねえこと……あんたは退場したはずだろ。嫌がらせもできないくらい縮こまってたから、断罪は許してやろうと思ってたのに」
これはセイ・キシュタールなのか。
事あるごとに皆の中心となり、少女達に囲まれ好意を受け止め、ジオ様の苦言も困ったように笑って流すばかりだったあの青年なのか。
その口調はいやに軽薄で汚いものに変わり、下卑な笑みは人を見下すことに慣れきった様子。まるでジオ様が言っていた〝強者であり全てにおいて正しい〟と、自らを信じ切っているかのような態度が見える。
あまりの豹変ぶりにジオ様が眉根を寄せるが、キシュタールは低く笑い声を上げるだけで。
「あーもう、一番オトしたかったシェラとくっつくなんてクソ過ぎ。パラメータ見えないって仕様バグかよ……こいつやっぱ転落人生でゲームオーバーにしなきゃ消えねえのか? 男に時間掛けるよかハーレム補充したいのになぁ」
周囲からしたら訳のわからない台詞。
しかし私には理解したくなくとも理解できるものだった。
違和感が、確信へと至る。
キシュタールは『魔術騎士と花の淑女』を知っている。
そして自らが主人公であることも、登場人物がどのような結末になるかもわかっているのだ。
だが私と同じく魂の記憶を覚えている、というにはあまりにもゲームと現実を混同し過ぎている。
おそらく、おそらくだが。
キシュタールは〝前世のゲームと今世の現実がリンクしている〟と考えていないのではないだろうか。
これまでの言動や今の態度を鑑みるに、〝前世の記憶を保持してゲームの世界に転生した〟と思っている。
自らの前世を覚えている人間。私もかなり前の世で、そういう前世の記憶持ちが幾人もいる世界を生きていた。だから今世でも絶対にいないとは断言できない。断言できる程、私はまだ今世を深く知らないのだ。
もしキシュタールがその稀有な人間だったとしたら、この認識のずれにも納得がいく。
こくりと、唾を呑み込んでしまう。
推測できた事実が、あまりにも悍ましくて。
私やジオ様、学園内の人間にとってはこの世界は現実だ。
しかしキシュタールにとっては……この世界はゲームという虚構で、主人公の自分のみが人間で、その他はただのキャラクターで、全てが自らの思うまま上手くいく。そんな認識なのだ。
「……ライラ、下がってよい。あれは奇異だが、私自身に術がかからなければどうとでもなる」
「いいえ……いいえ。わたくしも、お傍に。もし話が通じるとしたら、それはおそらくわたくしのみです」
前世のゲームを認識している私だけが、キシュタールに現実を知らしめることができるかもしれないのだ。
ぐっと顎を引き、前を見据える。
「先程から無礼が過ぎますよ、キシュタールさん。まさかあなたがジオ様を断罪するとでも? 何を以て、そうすると言うのですか」
「あるもないも、全部俺次第だっての。シェラもなかなかオチないし変なこと言い出すし……これもバグか?」
左耳が熱い。幾度も幾度も送り込まれる呪術が、私を支配しようとする。
「……ジオ様、少し魔力をいただけますか」
護身の魔道具は元々、不測の術を退けるものなのだ。それを途切れず受けると、魔道具の核となる魔石の魔力が尽きて効力が切れてしまう。
特異体質者が無意識に行使する術がここまで厄介なものとは。いや、これはキシュタールの執念深さが出ているのだろうか。
魔石には自らの魔力を注げばよいのだが……実のところ私はこのホールに入る前からひとつの術を構築している途中で、そこまで回すことができないのである。
ジオ様も私が術を構築していること自体は知っているので、軽く頷いて応えてくれた。
「満たすのもよいが、散らすか?」
「……可能であれば、三分程」
「造作もない」
おもむろに自らの唇へ指を当てた彼が、それを私の左耳へ触れさせる。
圧倒的なまでに魔石を満たしていく魔力が、かすかに届いた温度の違う熱が、私を奮い立たせる。
「『破邪の風をここに』」
囁いた瞬間、私にかかっていた術が霧散する。
素早く足元へ視線を巡らすと、幾度も明滅する魔力陣があった。私に向かう呪術だけを霧散させるそれは結界の一種だ。
見事な術の行使に称賛を送る代わりに小さく礼を述べれば、ジオ様は無言で私の肩を押した。
「シェラがバグかぁ。惜しいなぁ、憧れのお姉様キャラは一枠だけだったのに」
「セイの言葉は未知ばかりでまだ理解できない。でも、お姉様と言うならわたしもあなたより年上」
「アルマは不思議ちゃんキャラだから別。でもシェラを消すのはなぁ……一回くらい皆一緒に楽しみたかったんだけど」
「全く……夜のセイはすごく激しい。おかげでずっとお腹に魔力が残ったまま」
無意識の術だからか、弾かれたことにも気づかないキシュタールは呑気に皇女と下品な会話をしている。
皇女はキシュタールの腕をとってからずっと、艶然と微笑むばかり。それはどこか現実離れして、異常さを引き立たせていた。
――セイ・キシュタールは、危険な存在である。
ジオ様の名誉を回復しても、少女達を解呪しても、キシュタールがその認識を変えない限り呪術は何度もまき散らされるのだ。
キシュタールがゲーム外と考えている場は今のところ無事だが、実際に王城にでも足を踏み入れでもしたら、何も起こらないとは断言できない。
この手は使いたくなかったが……
ほぼ構築し終えていた術を完成させ待機した状態で、私はもうひとつの術の構築を始める。
魔力の流れに気づいたジオ様が私を助けるように魔力を回してくれたので、術は急速に形を成していく。
世界のリンクを断ち切ることはできない。世界そのものを変えることなど、ただの人間である私にできようはずがない。
しかしただひとりの人間の手による事象なら、同じく人間の手で直せるのだ。
だから私は――禁を破る。
あまりにも、聞き覚えのある声だった。
声の調子ですら高飛車に聞こえて、だけど目では〝そんなつもりではない〟と寂しげに語っていた、彼女。
「なぁに? 負け犬がこの輝かしい夜にうろついているなんて……嫌だわ。誰か、あの男をつまみ出して!」
「ふふっ……ひどい言い方。あなたのお兄様なのに」
「あんな情けない男と同じ血が通っていると思うだけで不快だわ!」
先程のふたりがかわいらしく思えるくらい、人を傷つける言葉を平気で吐く王女。
それを窘める振りをして平然としているのは、私がこの世で最も欲して諦めるしかなかった座を溝に捨てた皇女。
ふたりとも顔つきすら変わってしまったかのように、その美貌を歪めジオ様を睨み付けている。
「ふたりとも。言い過ぎだって……確かにあの人は俺達に色々言ってくるけど、リアとアルマを心配してのことだろ?」
「心配? あり得ないわ。自分が婚約者に見向きもされないのを当たり散らしているだけじゃない。自分が劣っているくせに、何も悪くないセイをひがんで」
「その通り。嫉妬に駆られた男は、それはもう見苦しい……同じ空気を吸いたくないくらい」
……侮辱というものには限りがないのだろうか。
恋を言い訳にしても到底足りず、その言葉は徹底的に人を貶めることを当然としている。
彼女達への同情が芽生えたこと自体が間違いだったのか。わからなくなりかけたその時、左の耳朶にわずかな熱が走る。
怒りで燃え上がりそうだった心が一瞬平静を取り戻す。やはり、私達の予想は当たっていたのだ。
「呪術ですね」
「ああ……ところでライラ、私はあれらに嫉妬の欠片すら抱いていない。苦言を呈していた時も一切、だ」
「そう強く言われずともわかっておりますよ」
疑うなどあるはずがない。
あのように彼の想いの証左を示されて、私の心はもう揺らぐ余地もないのだ。
「ごきげんよう。ソラリア・フォルトス・リディシオン王女殿下、アルマリール・エリシュ・ジュエラル皇女殿下……セイ・キシュタールさん」
「ふん……ごきげんよう、シェライラ・ヒメネス」
「ごきげんよう……ヒメネス辺境伯令嬢。その装い、素敵だね。ずいぶん風変わりで、腐った白色のドレス」
皇女が私の装いに侮辱の笑みを浮かべ、ゆったりと扇で口元を隠す。
彼女は貴族にしては変わっていて、微笑んだまま腹の探り合いをする夜会は嫌いで、本を読んだり研究をしている方が余程楽しいと言っていた。
その面影は今やもうない。
「ありがとうございます、皇女殿下。これは西方神国伝来の生地で、当代『祈り子』様にいただいたものです」
「……そう」
『祈り子』はこの世界唯一の宗教の総本山である大聖堂で、神の寵愛を受け祈りを捧げる最上位神官のことだ。
ちなみに聖女は国内で最も祈りの適性がある乙女が選ばれる。地位としては『祈り子』の方が遙かに上である。
大聖堂は我が領地の大図書館と、南方の大闘技場と合わせて特殊な場であるがゆえに交流を持っているのだ。
まさか宗教の頂である『祈り子』の名が出てくるとは思わなかったのだろう。
さすがにそれを知って貶めることなどできようはずもなく、皇女はわずかに目元をひくつかせてそれ以上何かを言い募ることはなかった。
代わりに王女が不快げに鼻を鳴らし、私の隣を憎々しげに見やる。
「シェライラ・ヒメネス、これはどういうこと?」
「王女殿下、申し訳ございませんが質問の意図がわかりかねます」
「っ、この、負け犬を忍び込ませたのはあなたかと聞いているの!」
ゲームでの王女は〝虚勢ばかりで実がない王族の落伍者〟と悪役のアンブロジオ殿下に常に見下されていた。
彼女を励まし花開かせたのは主人公で、最後は失敗を繰り返し転落していく殿下を〝人生の落伍者〟と断じて兄の呪縛から解き放たれるのだ。
現実のジオ様は、当然そんな人格を否定するようなことは言っていない。
ただおそらく彼女を教え諭す言葉が強かったのだろう。王女は厳しいジオ様を確かに苦手としていたが、言葉の端々で成人前から公務を任せられている彼を尊敬しているのがわかった。
本当に恋に狂うだけで、血縁の絆や敬愛の心すら失せてしまうのか。
疑問は残ったが、それよりも無言を避けるために私は口を開いた。
「……そのお言葉が何を指すのかもわかりかねますが、わたくしをエスコートしてくださるアンブロジオ殿下はこの学園の生徒なので、元々夜会の参加権がございます」
「そういうことではないの! あなたがどうしてその男に従っているの!? また卑劣な手を使っているのだとしたら、わたくしが追い出して……」
「ソラリア・フォルトス・リディシオン王女殿下」
声が震えてしまった。
張り上げそうになって、必死に抑えたせいで。
感情的になってはいけない。本当に感情を出したいのは、肉親である彼のはずだから。
「わたくしの隣におられる方を、今一度お考えください」
「何を言っているの? こんな目の前にいるのに考えなくてもわかるわ」
「では、よく、ご覧になってください」
兄君と同じ、濃い青の瞳。
その瞳は雷雨の後の濁った湖のごとく淀んでいる気がした。
ぞっとした。
彼女はこのような目をしていなかった。
そう言えば先程の侯爵令嬢も聖女も、怒りのせいか瞳がひどく曇っていた気が……
――違う、この目は正常なものではない。
これはおそらく呪術のせいだ。
やはりこの呪術は強烈な思い込みを抱かせるだけではないのだ。本当に人心すらを変えて……いや、シナリオ通り、ジオ様を憎むように操られている……?
「我が妹よ。兄を負け犬と断じるか」
貶められているはずなのに、一切の揺らぎもなく。
ただ事実を確認するかのごとく、彼は言葉を落とした。
「確かに私は甘かった。惰弱な苦言ばかりを繰り返し、何一つ聞き入れられなくてもお前達に自制を求めるのみ。慎みと秩序を失った学園を統制することもできず、王族として臣民に恥ずべき姿を見せた。それは間違いなく、私の愚かさが招いたことだ」
抗いきれなかった支配のことなどとおくびにも出さず、ただ自らの過ちを語る。
しかしその姿は、決して情けないものではない。
その証拠に、彼女達以外の周囲の人間は、彼の気持ちを自らが味わっているかのように表情を苦しげに歪めている。
悪意ある噂をしていたのだろう、祈るように涙する人間までいるのだ。
常に自信に満ちていた眩しい貴人が、苦悩を零した。その事実だけで、周囲の心は大きく動く。
「だが私は王族である。正道を往くべき者である。気概を失った腑抜けになることは二度と許さぬと己に誓い、今この場にいるのだ」
ゆっくりと、王女が瞬きをする。
次第にその顔つきが変わり、感情が抜け落ちる。
そして何度か戦慄くように唇が動いた。
「お兄、様……」
「兄は愚かな負け犬であった。しかしもう踊らされはしない。ソラリア、お前は愚かなままでいるのか」
これはジオ様の最後の情けなのだ。
抗えと、自らの道を閉ざすなと、淀んだ瞳に語りかける。
彼が私から離れ、片手を差し伸べる。
両手を出してそれに応えようとし、だがすぐさま首を横に振った彼女は、自身の両手を強く握りしめ。
「駄目、駄目よ、わたくしは変わるの。愛されるの。セイは正しい。わたくしをわかってくれる。かわいいって言ってくれる。セイは王子様なの。素敵なお姫様だって認めてくれる。愛してくれるの。お兄様を追い出せばもっと、もっともっと、わたくしを一番に愛してくれるの。だから駄目なの。兄様に許してもらってはいけないの。いけない? 許して。許して? いけないの。駄目なの。許して許して」
早口で呟く王女は、誰がどう見ても正気ではなかった。
このままでは彼女は壊れてしまう。呪術と本心がせめぎ合って、心がおかしくなってしまう。
そう思い咄嗟に踏み出した私を、ジオ様が制する。
「ジオ様っ」
「案ずるな……『眠りの闇をここに』」
彼が王女の頭に触れてそう呟くと、彼女は糸が切れたように崩れ落ちる。
倒れる前にその身体を抱き留めたのは全身を黒の衣装に包んだ銀の仮面の人間だった。
女性かも男性かもわからないそれが誰か、少し考えれば理解できた。
「影、ですか」
「これはとうに見限られたと思ったが、幸いなことだ。……王城へ。待機させている呪術士に解呪をさせろ」
命を受けた影は、現れた時と同じく無言で唐突にかき消えた。
彼女はルールに縛られながらもがいた。それで全てが許されるとは言えないが……正気を失ってまで許しを乞うたのだ。
魔道具の許可と共に申請した魔力を使う許可。だいぶ渋られたが無理矢理押し通したそれで、妹君の心が壊れる前に救うことができたと信じるしかない。
「あれ、リア帰っちゃったね。疲れてたのかな?」
どこか騒然とし出した場を鎮めようとジオ様が片手を上げる前に、のんびりとした声が響く。
その声音は、ぞっとする程平静そのものだった。
「じゃあ、今日のファーストダンスはわたしと……ふふふっ」
「いいよ。ミルもレイもいないし……まだ来てないのかも」
「迎えに行くなんて言うつもり?」
そのふたりは異常、としか言い様がなかった。
今まで黙って静観していたことも、それを見なかったことにしていることも、場違いな程に甘い声音で会話をしていることも。
全てが全て、あまりに不自然だ。
すぐさま私の隣に戻ってきてくれたジオ様が私の腰を強く抱く。
同時に今この場がどこなのかはじめて気づいたとばかりに私を見たキシュタールが、その視線を上から下まで舐めるように動かした。
肌が粟立つのが止まらない。
まるで本当に舌先で舐られているかのごとく、怖気が走る。
「シェライラ先輩。すごく綺麗です! でも先輩にはもっと全体的に淡い色でふんわりしたドレスが似合うと思うな」
「え……」
今挙げたドレスの特徴は、確かゲームのシェライラが主人公にプレゼントされたものと同じだ。
何を言っているのだろうか、キシュタールは。
まさか……本当に『魔術騎士と花の淑女』のシナリオを知っている?
ここがゲームとリンクしていると、認識をしている……?
考えながらも一歩引いてしまいそうになる私を、ジオ様が支えてくれる。
そうだ、私はひとりで立ち向かうのではないのだ。
彼がキシュタールのルールから私を解放してくれた。ならば私はそのルール自体を壊して彼を幸せにする。彼の輝きを取り戻すのだ。
細く息を吐く。
微笑め。私の眩しい方のために、最も美しく。
「ありがとうございます。これは、ジオ様が見立ててくださったんです」
「じおさま……?」
「あなたの目の前にいらっしゃるのに、おわかりにならないのですか?」
そこではじめて、キシュタールの目が私の隣に移る。
瞬間、その瞳が鈍い輝きを持つ。侮蔑と、嘲弄と、嫉妬と、優越と、わずかに滲み出す魔力。
無意識で行使された呪術を、ジオ様は全身で浴びてしまう。
咄嗟にその胸に手を置いてしまったが、彼はそれを優しく下ろし、不敵な笑みを浮かべた。
「それがお前の術か。仕組みがわかれば滑稽な程簡単なものだな……いや、それにかかっていた私の方が余程滑稽か」
「はぁ……? 何、意味わかんねえこと……あんたは退場したはずだろ。嫌がらせもできないくらい縮こまってたから、断罪は許してやろうと思ってたのに」
これはセイ・キシュタールなのか。
事あるごとに皆の中心となり、少女達に囲まれ好意を受け止め、ジオ様の苦言も困ったように笑って流すばかりだったあの青年なのか。
その口調はいやに軽薄で汚いものに変わり、下卑な笑みは人を見下すことに慣れきった様子。まるでジオ様が言っていた〝強者であり全てにおいて正しい〟と、自らを信じ切っているかのような態度が見える。
あまりの豹変ぶりにジオ様が眉根を寄せるが、キシュタールは低く笑い声を上げるだけで。
「あーもう、一番オトしたかったシェラとくっつくなんてクソ過ぎ。パラメータ見えないって仕様バグかよ……こいつやっぱ転落人生でゲームオーバーにしなきゃ消えねえのか? 男に時間掛けるよかハーレム補充したいのになぁ」
周囲からしたら訳のわからない台詞。
しかし私には理解したくなくとも理解できるものだった。
違和感が、確信へと至る。
キシュタールは『魔術騎士と花の淑女』を知っている。
そして自らが主人公であることも、登場人物がどのような結末になるかもわかっているのだ。
だが私と同じく魂の記憶を覚えている、というにはあまりにもゲームと現実を混同し過ぎている。
おそらく、おそらくだが。
キシュタールは〝前世のゲームと今世の現実がリンクしている〟と考えていないのではないだろうか。
これまでの言動や今の態度を鑑みるに、〝前世の記憶を保持してゲームの世界に転生した〟と思っている。
自らの前世を覚えている人間。私もかなり前の世で、そういう前世の記憶持ちが幾人もいる世界を生きていた。だから今世でも絶対にいないとは断言できない。断言できる程、私はまだ今世を深く知らないのだ。
もしキシュタールがその稀有な人間だったとしたら、この認識のずれにも納得がいく。
こくりと、唾を呑み込んでしまう。
推測できた事実が、あまりにも悍ましくて。
私やジオ様、学園内の人間にとってはこの世界は現実だ。
しかしキシュタールにとっては……この世界はゲームという虚構で、主人公の自分のみが人間で、その他はただのキャラクターで、全てが自らの思うまま上手くいく。そんな認識なのだ。
「……ライラ、下がってよい。あれは奇異だが、私自身に術がかからなければどうとでもなる」
「いいえ……いいえ。わたくしも、お傍に。もし話が通じるとしたら、それはおそらくわたくしのみです」
前世のゲームを認識している私だけが、キシュタールに現実を知らしめることができるかもしれないのだ。
ぐっと顎を引き、前を見据える。
「先程から無礼が過ぎますよ、キシュタールさん。まさかあなたがジオ様を断罪するとでも? 何を以て、そうすると言うのですか」
「あるもないも、全部俺次第だっての。シェラもなかなかオチないし変なこと言い出すし……これもバグか?」
左耳が熱い。幾度も幾度も送り込まれる呪術が、私を支配しようとする。
「……ジオ様、少し魔力をいただけますか」
護身の魔道具は元々、不測の術を退けるものなのだ。それを途切れず受けると、魔道具の核となる魔石の魔力が尽きて効力が切れてしまう。
特異体質者が無意識に行使する術がここまで厄介なものとは。いや、これはキシュタールの執念深さが出ているのだろうか。
魔石には自らの魔力を注げばよいのだが……実のところ私はこのホールに入る前からひとつの術を構築している途中で、そこまで回すことができないのである。
ジオ様も私が術を構築していること自体は知っているので、軽く頷いて応えてくれた。
「満たすのもよいが、散らすか?」
「……可能であれば、三分程」
「造作もない」
おもむろに自らの唇へ指を当てた彼が、それを私の左耳へ触れさせる。
圧倒的なまでに魔石を満たしていく魔力が、かすかに届いた温度の違う熱が、私を奮い立たせる。
「『破邪の風をここに』」
囁いた瞬間、私にかかっていた術が霧散する。
素早く足元へ視線を巡らすと、幾度も明滅する魔力陣があった。私に向かう呪術だけを霧散させるそれは結界の一種だ。
見事な術の行使に称賛を送る代わりに小さく礼を述べれば、ジオ様は無言で私の肩を押した。
「シェラがバグかぁ。惜しいなぁ、憧れのお姉様キャラは一枠だけだったのに」
「セイの言葉は未知ばかりでまだ理解できない。でも、お姉様と言うならわたしもあなたより年上」
「アルマは不思議ちゃんキャラだから別。でもシェラを消すのはなぁ……一回くらい皆一緒に楽しみたかったんだけど」
「全く……夜のセイはすごく激しい。おかげでずっとお腹に魔力が残ったまま」
無意識の術だからか、弾かれたことにも気づかないキシュタールは呑気に皇女と下品な会話をしている。
皇女はキシュタールの腕をとってからずっと、艶然と微笑むばかり。それはどこか現実離れして、異常さを引き立たせていた。
――セイ・キシュタールは、危険な存在である。
ジオ様の名誉を回復しても、少女達を解呪しても、キシュタールがその認識を変えない限り呪術は何度もまき散らされるのだ。
キシュタールがゲーム外と考えている場は今のところ無事だが、実際に王城にでも足を踏み入れでもしたら、何も起こらないとは断言できない。
この手は使いたくなかったが……
ほぼ構築し終えていた術を完成させ待機した状態で、私はもうひとつの術の構築を始める。
魔力の流れに気づいたジオ様が私を助けるように魔力を回してくれたので、術は急速に形を成していく。
世界のリンクを断ち切ることはできない。世界そのものを変えることなど、ただの人間である私にできようはずがない。
しかしただひとりの人間の手による事象なら、同じく人間の手で直せるのだ。
だから私は――禁を破る。
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